交流会の前半戦は団体戦らしい、京都校でこちらに会いに来たのは禪院真依さんと伏黒津美紀さんの2人だったが2年生もそれなりに多いらしい、向こうの2年生の東堂葵さんはステゴロが強いらしいから気を付けろと秤さんは言っていた。
団体戦の初めに呪霊を探して歩いていると僕の2倍は筋肉がありそうな男性が呪霊を殴り飛ばした場面に遭遇した。
「すみません、あなたが東堂さんですか?」
「ほう?東京校でもオレは有名か、いかにも。」
「始めまして、乙骨憂太です。」
「どんな女が好みだ?」
「・・・里香ちゃんですよ。」
『ゆうたぁ?』
僕の声に反応したのか里香が出現する、呪力の圧が空間を変えるかと錯覚するほどの強さで放出される。
「ほう・・・即答か、つまらんが、見込みはある。」
「やりましょうか」
パンと音が鳴る、何の音かと思い見てみるとそこには里香が居た。
驚いた隙に真横から顔面を殴られ木を数本折りながら殴り飛ばされる。
またパンと音が鳴る。
空中を飛んでいる間に今度は鼻っ面を上から叩き下ろされる。
『ゆうたぁ!!』
音が鳴る。
今度は遠くで里香が地面を殴り爆発した音が聞こえてきた。
「なるほど、位置の入れ替えか!」
「御名答、俺の【不義遊戯】は相手と俺の位置を入れ替える。」
恐らく発動条件は拍手!
音が鳴る、周り全てを吹き飛ばす呪力の衝撃波で迎撃するが今度は位置が変わらなかった。
「入れ替わるとは限らない。」
「ああ、これは」
とても厄介だな。
「特級のお前が気絶、もしくは戦闘不能になった場合、無条件で京都校の勝ちだ、遠慮なく行かせてもらうぞ。」
そう、今回の交流戦、特級クラスの強さを持つ僕がいる東京校のみ、戦いに関しては素人の僕が戦闘不能になった場合そのまま東京校に負けになったのである。
特級呪霊の数倍の呪力量を持つ僕に対する術式効果はとてつもなく減衰する、狗巻君が僕に呪言をかけた瞬間に吐血したように、それでも東堂くんは迷いなく僕と戦おうとしている。
「・・・ふぅ」
つまり東堂くんの不義遊戯は相手の呪力量は関係無い、呪力の位置毎入れ替える術式。
音と共に殴られる、里香も同じく、近接戦闘だけなら恐らく体を鍛えに鍛えているだろう東堂くんのほうが強い。
抜くか。
大きく殴り飛ばされ、大木に強く打ち付けた僕はずっと鞘に入れたままだった刀を抜く。
呪力鍛錬用の呪具で使い手の呪力を強制的に吸い込む貯蓄型の呪具、纏。
僕の膨大な呪力量ならば扱い切れると判断された2級呪具。
「ほう・・・」
『よそ見しない!!』
「無論、していないとも。」
纏は呪力を吸い付くすと一定時間使い手の呪力防御を0にするかわりに吸い尽くした呪力量分の出力を利用して斬撃を飛ばすことができる。
過去にコレを使っていた3級術師は一級呪霊を倒した経験があるらしい。
僕にはそれがどのくらい凄いことなのかは分からないけれど、やるならコレだ。
僕の呪力がグングンと吸い取られていく。
空間がうねるほどの呪力が刀にまとわりつく。
僕の呪力量で撃てる最大威力は大体10発分くらい。
「行くよ。」
「最愛の相手を殺さぬよう気を付けることだ。」
「もちろん」
そのまま東堂くんに突っ込む。
目の前で刀から斬撃を放ったが放った瞬間に位置を変えられて背中に斬撃が刺さる。
振り向きざまにもう一回、低い威力であることを見抜かれて呪力防御で耐え切られる。
そのまま押し込み里香ちゃんに後ろから殴ってもらう、手を叩いて逆に里香ちゃんを叩き切る事になる。
「里香!!」
『だぁいじょうぶ!』
「ただの攻撃ならば先ほどの繰り返しだ、どうする乙骨よ、俺の高田ちゃんへの愛よりもお前の折本里香に向ける愛情は劣っていると判断されても良いのか?」
そんな訳はない。
『ゆうたをいじめるなぁ!!!!』
「怒りを見せたな、呪霊よ。」
三度目の斬撃、入れ替わるタイミングの拍手と同時に斬撃を重ねる軌道で四発目、拍手と同時に入れ替わることなくそのまま東堂くんは踊るようにひらひらと動き回る。
「何度同じ事を言わせるのだ乙骨、お前の愛はまだ途上だ。」
ああもううざったいなこの人!
東堂君の入れ替えは余りにも厄介過ぎる、多対一もその逆でも分かっていても止められないコレはもはや慣れることもキツいくらい。
領域展開
その言葉が脳裏に浮かぶ。
秤さんの使っていた特殊な空間、自分の術式を付与した結界を張って相手と自分だけの空間内で一方的に倒す技。
東堂君の入れ替えも関係無しに攻撃を当てられるだろうそれの使い方を僕は全く知らない、でも逆にいえば使えれば東堂くんは間違いなく倒せるだろう。
指輪を触って里香に命令する。
「里香、やるよ。」
『ウン!!!』
「『領域展開』」
里香の呪霊としての呪力で空間を無理やり覆う、里香の呪力に覆われた人間だけを対象に僕の領域を里香の呪力で無理やり維持してもらう。
「僕の実力不足で迷惑をかけるよ、里香。」
『良いよぉ!もっともっと役に立ってあげるから!!!』
少し流暢に話す里香に嬉しく思いながら領域を組み立てる。
里香に依存したこの領域は未完成ですらない、それでもその呪力のせいで入れ替えは難しいはず。
「『【真贋相愛】』」
「簡易領域!」
一次的に周りの景色が変わり始める。
荒野の風景にいくつかの刀が落ちており、それらは全て誰かのものだったと直感で把握する。
「僕にはやっぱりコレかな。」
まだ1ヶ月しか経っていないけれど確かに友情を感じるその刀を手に取る。
「【動くな】」
「!?」
蛇の目と牙が東堂葵を見つめ、言葉に乗せられた呪力は簡易領域を展開している筈の東堂葵に対し、領域毎削り取る荒業でもって作用した。
「成ったか!」
「僕の勝ちだ。」
少し嬉しそうな東堂くんの顔面に全力の拳をぶつけながら大きく息を吸う。
大木を幾つも折る勢いで吹き飛ばされた彼は穏やかに笑っていた。
『ゆうたぁ、カッコよかったよぉ!』
「うん、甚爾さんと渡愛さんのブートキャンプのお陰かな、里香もありがとう。」
『あいつらきらぁい』
「ははっ・・・それでも悪い人じゃないから。」
乙骨憂太が里香と談笑していると遠くの方から拡声器による結果発表が全域に響き渡った。
東京校の勝利である。
東堂のエミュが難し過ぎて数日をかけた、諦めて虎杖よりかはちょっと酷い位の立ち位置で済ませた。
実は東堂にクラップスタナーさせるかを迷っていた、多分東堂なら出来るやろ。