「すみません!遅れました!」
「おかえりー!」
「見てたぞ、上手いことやったな。」
「うん、かなり力技だったけど領域展開までやっちゃったのは凄いよ。」
集合地点のキャンプにて先生2人が笑顔で僕のことを褒めてくれた。
「ありがとうございます。」
「あー、それでなんだが。」
甚爾さんが歯切れの悪い態度に変わる、何か厄介事が起きたのだろうか。
「五条悟がお前と会いたいだとよ。」
「え?」
「どっからか見てたらしい、いきなり来て明日は俺と戦ってみろだとよ。」
「いきなりですか!?」
「一応直哉には連絡したが、来れるかどうかは運だな。」
直哉って確か渡愛先生の夫の人だ、ストッパー役でもあるのか。
「へぇ・・・君が乙骨くん?」
さっきまで全く気配も感じられなかった真後ろから声がする、全力で裏拳を放つも途中で止められる。
「うん・・・あーなるほど、へぇ・・・」
その人物は白髪のイケメンだった。
「うん、君の術式は模倣、コピーだね。」
そしていきなりそんな事を言ってきた。
「いきなりですね、常識とかないんですか?」
「アッハハ、いきなりひどいなぁ・・・俺の名前は五条悟、聞いてると思うけど特級呪詛師だ。」
甚爾さんが鍵のような形の短剣で五条悟を斬りつける。
「おっと、危ない危ない」
「明日だって言ってただろうが、今日はお前の来る日じゃねえ。」
「まぁまぁ、明日会うんだから今日あっても誤差だよ誤差。」
「チッ」
特級と呼ばれる人達は皆フリーダムだとは言われていたけれど本当に自由なんだな。
「乙骨くん、今日は君に提案があってきたんだ、明日聞こうと思ってね。」
「なんでしょう」
「君、GGOSの非常勤職員にならない?」
「・・・何故です?」
僕が聞くと五条悟は指を一本立てる。
「一つ、単純に呪術界の上層部がクソ、腐りまくってまともな任務を持ってこない」
そしてもう一本指が立つ。
「二つ、GGOSの環境なら君の術式は急速に発展させられる、退職してもGGOSはアットホームでね、保管してある呪詛師も含め、今は千人ほど戦闘が出来ない人間がいる、彼らに協力を仰ぎ君が彼等の術式を模倣出来れば君に勝てる術師は理論上存在しないレベルにまで昇華出来るだろう。」
3本目の指が立てられる。
「3つ、君はとても優しいから仲間が死ぬと精神を病むだろう、俺等は皆悲惨な死に方をする、それは避けられない、だけどその可能性を極限まで減らす努力はする、その前段階で詰ませたくはない。」
「・・・」
このような言葉を言える人が呪詛師、灰原先生とも、甚爾さんや渡愛さんとも違う、世間一般の常識人のようなその言葉を信じたくなる、それでも。
「呪術師としては?」
その言葉に五条悟は人が変わったような笑みを浮かべる。
「君が苦しむことで喜ぶアホがいる、それらをあぶり出して苛め抜くのも俺等の仕事だ。」
その笑みは子供のような笑顔であったが、溢れる無邪気な悪意が思いっきり滲み出ていた。
でも僕に対して嘘はついていない、建前も本音も恐らく大枠は嘘ではない。
「・・・なら。」
「うん?」
「なら明日、僕と貴方とで勝負しませんか?」
「・・・へぇ?」
「高専に来てから僕は呪力を本気で解放したことは一度しかありません。」
あの時、呪力の込め方を習ってとりあえず本気で拳に呪力を込めたあの時しか無い。
「僕はこの呪力の多さのせいで適当にしていても特級ですらまともにぶつかることをやめるほどに力の差がある。」
「そうだね、君はそれだけ呪力が多い、里香ちゃんの呪力と混ざってはいるけれど君自身もかなり多い、僕の目は確実だ、誇っていいよ。」
「ありがとうございます、だからこそ、今間違いなく明確に格上の貴方と本気で戦いたい、自分がどのレベルなのか、把握したいんです。」
五条悟は笑った。
「良いねキミ、ちゃんと呪術師らしくイカれてるよ。」
そのまま手振りで甚爾さんの肩を叩く。
「高専内かどっか、特級同士がぶつかれる広い場所を手配して、ほぼ間違いなく災害級の被害が出るから。」
「おい嘘だろ、本気か?」
「本気も本気、彼の呪力量なら、ただそこにいるだけで周囲の空間を呪力で満たせる。僕も頑張って抑えるけど帷はほとんど無意味だろうから。」
渡愛さんは曖昧に笑ってどこかへと電話を始める、候補地を探し始めたのだろう。
甚爾さんは顔を覆いながら夜蛾学長に電話をかけ始めていた。
「受けていただけるんですね?」
「うん、良いよ、でもその前に手出して。」
「え?はい」
五条悟さんは僕の出した手に手を合わせてくる。
「僕の術式を先に教えておくよ、初見殺しのものだけど君はこの世界に来てからまだ数ヶ月と経ってないからね、これくらいのハンデは必要さ。」
五条悟さんの手に触れそうで触れない?
「俺の術式は【無下限呪術】、様々なものに対して無限の概念を付与し、それを操る術式だ、俺はこれで俺の身体に届く皮一枚外に無限の距離を置いたバリアを使ってる、君がどれほど強かろうとこのバリアを抜けなければ勝ちの目すらでない。」
1日しかないけど頑張って考えな、そう言って五条悟さんは一瞬で消えた。
「だー!!!!コレだから特級連中は嫌いなんだよ!クソっ!!!直哉を見習えクソォ!!!」
甚爾さんは携帯を握り潰しそうな勢いで叫び始めた。
「お父さん?五条さんは帰ったの?」
「アッ」
いつの間にか伏黒津美紀さんが甚爾さんの後ろに立っていた、あの甚爾さんから背後を取れるのか・・・。
「また大変なことになるみたいですけど、お父さんにはお父さんのお仕事がありますね?」
しかも敬語、甚爾さんは無言で正座し、大人しく話を聞く態勢になっている。
「お金、よろしくお願いしますね?」
「・・・ハイ。」
凄い、アレだけ不遜に笑っていた2メートル近い大男が女子高生よりも小さく見える。
その後も伏黒津美紀さんは甚爾さんを詰め始めてしまったので渡愛さんは僕に向かってあっちに行こうと無言のハンドサインを繰り出し、僕もそれに大人しく従った。
「あはは、まぁ仕方ないね、アレは。」
「五条悟さんはあのバリアを抜かれたことってあるんですか?」
「あー言ってたアレ?いくつかあるよ?」
「あ、やっぱりあるんですね?抜かれたことのある人の言い方でしたし。」
渡愛さんはその方法を知っているみたいだ、でも少し歯切れが悪い?
「うーん、かなり特殊なケースだから今回の戦いで使えるかは分からないんだけど・・・」
と前置きがある上でいくつか手段を教えてもらっていた。
一つは領域展開、領域展開で作り出した空間内は撃てば当たる状態なので術式は既に命中しているという状態に出来る、だから相手の術式は関係なくバリアそのものは無効化できなくても直接攻撃を与えられる。
2つ目が単純に五条悟さんが疲弊しまくること、どうしても戦闘が長時間かかると展開速度が落ちる為にラグが発生しやすくなる。
3つ目が空間自体への術式使用で穴を作る方法。
領域展開のように相手の術式をずらして散らすことで術式が無い空間に攻撃を置く事で何とか攻撃をする方法。
渡愛さんの夫の禪院直哉さんは3つ目の方法と2つ目の方法をメインで戦ったらしい。
まぁ領域展開は奥の手に近いからそうなるのも当たり前なのかもしれない。
「空間毎、ですか。」
「君の術式は模倣、コピー能力ってことでしょ?空間に作用しそうな術式も使用できそうではあるけどどう?」
「うーん、あまり思いつきそうな使い方ではないですね、強いていえば東堂さんの不義遊戯くらいですけど自滅させるのも難しくないですか?」
「だねぇ、アレは呪力自体を対象にしてるうえに細かく対象指定できない様になってるから今回の方法だと使い勝手が悪いんだよ。」
「そうなんですか?」
「うん、だって入れ替えするだけならナイフとかに呪力を込めて相手の心臓とか背中とかにぽん置きするだけで勝てちゃうけどあえてそれを絞って人の周囲毎入れ替えてる術式だから」
あー・・・なるほど?
つまり渡愛さんの言いたいことは不義遊戯でバリアだけ他のところに飛ばして無防備になった五条悟さんを攻撃、みたいなことは出来ないってことかな?
前も思ったけど使い方を細かくしたり解釈を変えたりするのが得意なのかな?僕にはそう簡単に思いつけそうもないや。
まぁでも、五条悟さんは絶対に強いから、空間毎薙ぎ払う使い方を目指してみよう。
「僕も特級なんだ、せめて誰かを守れるようにならないと。」
「君は私の夫に似てるねぇ、愛が重いタイプだ。」
「え?」
「ふふっ、思われてる方は嬉しいものだからね、重い生徒は大歓迎ってやつさー。」
渡愛さんはニコニコ笑ってこちらを見ている、まるで血なまぐさい世界のことなど知らないような無垢さを笑顔で覆っている彼女の事が好きなその禪院直哉さんはきっと良い人なのだろうな。
「頑張りなよ?あの白髪はこういう時思ってるより熱くなって殺しそうになるから。」
「・・・それはちょっと勘弁してほしいなぁ。」
渡愛さんはからからと笑い、じゃあ私は場所の選定しなきゃいけないから!と消えていった。
「僕も頑張らないといけないかな、付き合ってくれるかい?里香。」
『良いよぉ、ゆうたのかっこいいところは私が全部みてあげる。』
「うん、僕もきっと役に立てると皆には実感してもらおう。」
気づけばもうこんなに投稿していない、次回は五条戦です、それが終わったら本編開始かなぁ?割と構想は固めたけれど問題は時間がちゃんと合うかどうかなのだなコレが。
何気に呪術に関して破格の看破性能を持つ五条じゃないと出来ない乙骨育成を良い感じにしてくれる五条悟パイセン、完璧やね。