・加茂渡愛を好きになること
・加茂渡愛と結婚すること
・他人から感謝されること
・浮気をしないこと
・他人を虐めないこと
躯倶留隊
・渡愛と試合して負けたら呪力を使わず筋肉痛になるまで訓練
禪院蘭太
・渡愛と試合をして負けたら3日間呪式無しで訓練参加
「禪院らしくない」
女中達からの評価は大まかに上のとおりである。
禪院の家に来てから1年ほど経っても渡愛は変わらない、禪院に染まることも無ければ術師としての強さを誇ることも無かった。
女中たちからすれば、嵐のような人間である。
禪院といえば直哉と言っていいほど人間としてのクズであった直哉は渡愛の式神であるバツカラスによって普段の行動の全てを矯正され、今では口がとてつもなく悪い青年になろうとしている。
口の悪さだけは変わらずじまい、というか渡愛に罵倒する時の調子のままである為、むしろ残したと言っても良いのかもしれない。
それでも他の禪院家の人間からは相変わらずな扱いなのでヒエラルキーが明確に変わっているわけではない。
女中には女中の力関係があり、弱いものはより弱いものを迫害する地獄。
それを関係無しに奔放に生きる渡愛の存在が、全ての呪いを引き受ける事にもなる。
「赤ちゃん生まれるやったったー」
「はしたないですよ渡愛様」
「フフフ、今日の私はご機嫌です、つまり問題ありません」
その様な掛け合いの後、襖が開いた。
そこに立つのは黒い艶やかな髪を伸ばし、でろでろに溶けた様な笑顔を向ける少女であった。
禪院家の当主である直毘人からは戦闘での戦いにより負傷もしくは調子が悪くなれば様々な悪影響が残るために長寿郎と同じく卓上遊戯、囲碁によって戦い、大敗北をした後、ごねにごねまくって30回ほど敗北を重ねた。
勿論直哉は合間合間に理不尽に黒閃を叩き込まれている。
1年も経てば全員慣れきっている直哉への理不尽な攻撃に文句を言うのは本人だけであった。
それはそれとして。
「おお!!双子!?かわいい!」
布に包まれた2人の赤子を見て渡愛はニコニコと笑っていた。
その大きな声で、庭で訓練をしていた躯倶留隊の動きが止まる、その後何事もなかったかのように訓練を再開したが、監督役も含め全員が渡愛の入っていった部屋の方に意識を向けている。
「可愛いねぇ・・・」
双子の小さな手に指を絡ませると双子は指を握り返し、その様子にまたデレデレと頬を緩ませる渡愛。
ここに直哉は居ない、だからこそ、この出会いはある意味で必然であった。
「双子だと?」
渡愛に会わせたくない一心で躯倶留隊と直毘人の双方が会わせなかった人物、禪院扇が、そこに居た。
躯倶留隊は泣きそうになっていた、どう足掻いても巻き込まれるタイミングに居合わせてしまっていたからだ。
「凶兆を産むか、私が当主になれなかったのはやはり貴様らのせいだ。」
扇は、何のためらいもなく刀を抜いた。
「ねぇ」
扇は無視して自らの子供にその刃を振り下ろす。
「無視しないでよ」
パキンと、妙に軽い音を響かせて刀身の短くなった刀を見た扇はやはり激怒する。
「貴様には関係ない、加茂の女」
「私は直哉に嫁入り予定の婚約者です、あなたが思っているよりも関係はある」
「粋がるな女、それはお前の事情だ」
「もしかして老けすぎて目の前の光景も見えてないんですか?メガネでもかけたらどうですか?」
渡愛が今までに無いほどキレている、その上で絶対に直哉の影響だろう煽りを聞いた女中達と躯倶留隊は今ここに居ない直哉を心の中だけで罵倒する。
「双子は凶兆、どちらかを殺す」
「その割に2人毎殺す太刀筋だったけど?」
「話にならんな」
「独り言は終わった?寝言は寝てから言うものだよ?」
扇の妻は双子を抱いて部屋からの逃走を始めた、躯倶留隊もその勢いにつられて出来うる限り遠くに逃がすように女中達と連係プレイを無言で始めた。
呪力が立ち上り二人は部屋の中で対峙する。
「邪魔をするな、加茂の女」
「私には渡愛って名前があるの、いい加減覚えたら?頭が弱いと人の名前も覚えられないの?おじいちゃん?」
扇は壁際にあった観賞用の刀を手に取り、術式を発動させた。
「【術式解放・焦眉之赳】」
刀からは炎が立ち上り、扇は鞘ごと居合の構えを見せた。
渡愛は知らない、御三家が使う簡易領域の応用技。
【落花の情】と呼ばれるそれは扇が主に使う御三家秘伝の技術であり、これを使った事が直毘人にバレると扇は謹慎処分となるだろう。
だが、扇があえてこの技を使った理由はその特性にある。
落花の情は本来であれば相手の領域展開による必中を当たった瞬間に呪力によって跳ね返す事で防御する技。
その特性上、展開中に黒閃が発動する可能性は極端に低い。
「・・・なるほど」
だが、それを知らない渡愛は対策されていることを察しつつも正面から押し通すしかない。
渡愛の拳が扇に迫る、怒りの頂点にいたにも関わらずその動きに精彩を欠いた様子はなく、このまま直撃すれば間違いなく黒閃が放たれる事になる。
扇は簡易領域の中に入ってきた事を知覚し刀を抜刀する。
拳と刀が衝突する直前、落花の情により呪力がその間に飛ばされ、黒閃の発動条件であるタイミングが大幅にずれる。
それを察した渡愛は通常の呪力強化に変化させ、そのまま拳を振り抜こうとするが、扇の抜刀の方が速かった。
渡愛は袈裟斬りにされ、着ていた着物が刀により斬り裂かれる。
「やっぱり対策してたね、でももうだいたい見切ったよ。」
「戯言を・・・」
下半身を完全に露出した渡愛であったがその身体に傷は一切無く、扇の攻撃力は渡愛の呪力の防御を間違いなく抜けない事が確定した。
渡愛は構えを解き、扇に向かって歩いていく。
扇は射程に入った瞬間にまたも抜刀、無防備に歩いてくる渡愛の首に躊躇なく叩き込まれる。
取った、扇がそう思った瞬間、刀だけがポキリと折れる、渡愛が当たる瞬間に呪力を飛ばした結果、刀が小枝のように折れたのだ。
「なっ!?」
「黒閃を狙って打てる私の前で呪力操作のお手本は見せないほうがいいよって、他の誰かに言われなかった?」
扇の腰ほどしか無い身長でありながら渡愛の立ち上る呪力によって脳内に禪院甚爾の幻影を垣間見た扇は、奇声を上げながら渡愛に向かって殴りかかる。
「決めた」
向かってくる拳毎、殴り返す。
「あなたはあの双子と接触禁止、破れば私が制裁を下す。」
黒閃、扇の手毎顔面にめり込んだ拳は、扇の手と顔面を粉砕した。
「気分良かったんだからやりすぎちゃっても文句無しだよ。」
そういった後、周りの大惨事に気がついてしまった渡愛は絶叫することになる。
焦眉之赳によって身体は煤だらけの上に着物は全焼、よって全裸、それ以外にも家屋ごと切った扇のせいで本邸に繋がる廊下までもが切れており、それらにも炎が纏わりついていくのが遠目にもわかる。
自らに効かないからといって周りも無事とは限らない。
徐々に勢いを増す炎を前に渡愛は全力で叫んだ。
「ごめん!!!!!火事だぁ!!!!!!」
その後、立ち昇っていた炎を見た一般人からの通報により禪院家に消防車が数台来るほどの大騒ぎになり、その日の夕刊に禪院家で火事!双子の生まれは吉兆かそれとも凶兆か?なるタイトルの記事が拡散され、出した文屋は訴えられることになった。
哀れ文屋、殺されてないだけマシだと思うよ。
扇はこの後直毘人から激怒され双子と引き離されました、残当。
実は原作だと表向きは扇は双子を虐めるだけで済ませてるっぽいけどここだと常日頃から爆発音やら何やらが轟いてるから余裕がなかったと思われる。
でも秘伝を当たり前のように使ってくるんだからラーニングされても仕方ないと思うの。