チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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◆注意事項(地雷回避用)
以下の要素が含まれます。苦手な方はブラウザバック推奨です。
オリ主(男主人公)
転移/転生要素(本人の自覚あり)
原作改変あり
独自解釈あり
主人公強め(チート寄り)
伝説ポケモン登場(懐く/手懐ける描写あり)
メガシンカ、Z技、ダイマックス、テラスタル等の要素混在
時系列が地方ごとに前後する場合あり
ギャグノリでの悪の組織との関わり
炎上ネタ、SNSネタあり
「ハーレムっぽく見える」描写が出ることがあります
(※主人公は否定します、作者も否定します)
また、戦闘力や設定に関しては、
「ポケモン世界だからまぁそういうこともある」というノリで読んでいただけると助かります。
◆原作知識について
基本的には、ポケモンのゲーム・アニメ・漫画等の要素を混ぜつつ、
作者の都合のいいように解釈して進めます。
原作を完全に網羅していなくても、
「なんとなくポケモン知ってる」くらいで読めるように書くつもりです。
※地方ごとの主人公が同時に存在していたり、
チャンピオンが複数いたりするのも、作者の世界線解釈です。
◆最後に
誤字脱字はできるだけ気を付けますが、
見つけたらそっと教えていただけると嬉しいです。
感想・評価などいただけると、
主人公がアルセウスに怒られながらも頑張れます(?)


本編
第1話 なんか転生した


人生って、もっと段階を踏むべきだと思う。

例えば転生とか異世界転移って、まず神様が出てきて説明して、ステータス画面が出て、チート能力が付与されて、優しい受付嬢が「頑張ってくださいね」とか言ってくれるものじゃないのか。

 

なのに俺の場合は違った。

目を開けたら草むらがあって、遠くに街が見えて、空気が妙に澄んでいて――。

 

聞こえた鳴き声がこれだ。

 

「ピカチュウ!」

 

……いや、嘘だろ。

 

反射的に立ち上がり、草むらの向こうを覗き込むと、黄色いネズミが尻尾を揺らしていた。

赤いほっぺた、稲妻型の尻尾、ちょっと生意気そうな顔。

 

どう見てもピカチュウ。

 

俺は息を呑んだ。

「……ここ、どこだよ」

 

空を見上げる。

青い。異常なくらい青い。

 

日本で見る青空より、どこか作り物みたいに澄んでいる。

その瞬間、背後で「カサ」と草が揺れた。

 

振り返る。

そこにいたのは、白い馬……いや、鹿? いや、神々しい何か。

輪っかを背負った、神々しい存在。

 

俺は知ってる。

知ってるけど、絶対に認めたくないやつ。

 

「……アルセウス?」

 

言った瞬間、頭が痛くなった。

何故か知らないのに知っている感覚。いや、知ってる。俺はポケモンを知っている。

 

ポケモンの神。創造神。輪っか。

そしてクソ神。

 

『そうだ』

 

声が聞こえた。

口は動いていないのに、頭に直接響くタイプの声だ。

 

俺は思わず一歩後ずさる。

「いや、え、待って」

 

「なんでアルセウスが目の前にいるんだよ」

 

『お前は選ばれた』

 

「選ばれたって……何に?」

 

アルセウスは淡々と告げた。

『役割だ』

 

「役割?」

嫌な予感しかしない。

 

アルセウスは当然のように言った。

『お前はチュートリアルお兄さんになる』

 

「……は?」

 

思考が止まった。

いや、待て。チュートリアルお兄さんってなんだよ。

 

ゲームの序盤で主人公に説明してくれるNPCみたいなやつか?それとも優しいお兄さん枠?もしくは攻略情報をくれるキャラ?

いやでも、俺が?

 

「なんで俺が?」

 

『面白いからだ』

 

「ふざけんなよ」

俺が即答すると、アルセウスの輪が微かに光った。

 

圧が増す。

目の前の空間が重くなるような感覚。

 

……やばい。神の圧ってこんな感じなのか。

 

俺は喉を鳴らして言った。

「いや、冗談だろ。俺はただの高校生だぞ。宮城県の」

 

『宮城県はどうでもいい』

 

「どうでもよくねぇよ!!」

俺のツッコミを無視して、アルセウスは説明を続けた。

 

『お前は主人公が旅立つ時に現れ、助言し、導き、適切なタイミングで消えろ』

 

『主人公がチャンピオンになった時、再び現れ、連絡先を渡して次の地方へ行け』

 

俺は目を細めた。

「……それってさ」

 

「めっちゃ都合のいい使い捨て要員じゃね?」

 

『そうだ』

 

認めるな。

俺は思わず頭を抱えた。

 

「いやいやいや、無理無理無理」

 

「そんなテンプレみたいなこと出来るか」

 

『出来る』

 

「根拠は?」

 

『お前は俺が作ったからだ』

 

「最悪の回答来た……」

 

心の底から嫌な汗が出る。

俺が作った? 俺を? なんだそれ。俺は人間だぞ。普通に親から生まれた……と思う。

 

いや、もしかして俺はここで作られた存在なのか?

俺が俺であることすら怪しい。

 

そんなことを考えた瞬間。

アルセウスはさらに追い打ちをかけるように言った。

『お前は主人公を導くことで世界の均衡を保つ』

 

『そして必要な時は戦え』

 

「戦え?」

思わず聞き返すと、アルセウスは当然のように言う。

 

『お前は強い』

 

「いやいや、俺はポケモンバトルとかしたことねぇよ!?」

 

『だが出来る』

クソ神が断言した。

 

俺はもう嫌になった。

「……じゃあ、もし俺が拒否したら?」

 

アルセウスの輪が光った。

草が揺れた。

空気が震えた。

 

そして頭に直接響く声が、冷たく言った。

『拒否権はない』

 

「はい終了」

 

終わった。俺の人生終わった。

この瞬間、俺は悟った。

この神、話が通じないタイプだ。

 

人間が上司に当たっても最悪なのに、上司が神って何なんだよ。

 

俺は深呼吸して、現実逃避するように周囲を見回した。

草むら。道。遠くに街。

 

……マサラタウン?

まさか。いや、でもあの屋根の形、あの配置。

 

そして道の向こうから聞こえてくる、少年の声。

「やった! ついにオレも旅に出るんだ!」

 

見れば、帽子を被った少年が走ってくる。

肩にはピカチュウ。

俺は固まった。

 

――レッド。

 

いや、嘘だろ。

俺が見てきたゲームの主人公。伝説中の伝説。漫画の化け物。

 

その少年が、普通に目の前にいる。しかも普通に喋ってる。

レッドは俺を見た。

そして目が合った。

 

次の瞬間。

レッドがポケットからモンスターボールを取り出した。

 

俺は反射的に叫ぶ。

「ちょ、待て待て待て!!」

 

だが遅かった。

レッドの目が、カントー地方特有の目になった。

つまり――。

 

「ポケモンバトルだ!」

 

「違う違う違う!!」

 

俺は全力で否定したが、レッドはもう戦闘モードだった。

ピカチュウが「ピカ!」と鳴く。

 

俺はアルセウスの方を見た。

「おい! 助けろ!」

 

『お前の役割だ』

 

「いやここでバトルはチュートリアルじゃねぇだろ!!」

 

しかしアルセウスは静かに輪を輝かせた。

すると俺の腰に、何かがぶつかった感覚があった。

 

見ると、モンスターボールが三つ。

いや、もっとある。

 

いつの間にか、俺のバッグが増えていた。

意味が分からない。

俺は震える手で一つを取った。

 

「……何が入ってんだよ」

 

ボールを投げる。

「出てこい!」

 

光と共に現れたのは――。

赤い翼。鋭い爪。燃える尻尾。

巨大なドラゴン。

 

「……リザードン?」

 

嘘だろ。初手リザードン?

しかもこいつ、めっちゃ俺に懐いてる顔してるんだけど。

 

リザードンは俺を見て、低く鳴いた。

「グォォ……」

 

レッドが目を輝かせた。

「すげぇ! リザードンだ!」

ピカチュウが敵意むき出しで構える。

 

俺は冷や汗をかきながら呟いた。

「……俺、チュートリアルお兄さんって聞いたんだけど」

 

アルセウスが言う。

『チュートリアルには強いお兄さんが必要だ』

 

「強すぎだろ!!」

 

こういうのってまだヒトカゲとかじゃないのか!?

 

レッドが叫ぶ。

「いけ! ピカチュウ! でんきショック!」

 

ピカチュウの頬が光った。

黄色い電撃が走る。

 

リザードンに直撃――する前に、俺は反射で叫んでいた。

 

「リザードン、避けろ!」

 

リザードンが翼を広げ、軽く宙に浮いて電撃を回避する。

 

俺は驚いた。

今の、俺の指示で動いた。

しかも自然に。

 

体が勝手に、指揮官として動いている。

 

レッドは悔しそうに歯を食いしばる。

「なら、もう一回!」

 

ピカチュウが再び電撃を放つ。

 

俺は思った。

……これ、普通に勝てるな。

勝てるけど、勝ったらどうなる?

 

伝説の主人公レッドに勝ったら、俺の立場終わるんじゃないか?

 

チュートリアルお兄さんって、主人公に勝っちゃダメなやつだろ。

でも負けたら負けたで、リザードンが可哀想だ。

どうする? どうする?

 

俺が悩んでいると、リザードンが俺を見た。

その目が言っている。

(やれ)

 

いや、やれって。

 

俺は腹を括った。

「……分かったよ」

 

俺は指を前に向ける。

「リザードン、かえんほうしゃ」

 

リザードンの口から炎が噴き出した。

熱波が空気を揺らす。

 

火炎放射。

その威力は、どう見ても旅立ちたてのレッドが耐えられるものではなかった。

 

レッドのピカチュウは目を見開いた。

「ピカッ!?」

炎が迫る。

 

俺は叫んだ。

「当てるな!!」

 

……意味が分からない命令だが、リザードンは器用に火力を調整した。

炎はピカチュウの横を掠め、地面を焦がすだけで止まる。

 

ピカチュウは驚いて尻もちをついた。

レッドも固まった。

 

沈黙。

 

俺は汗を拭いながら言った。

「……えーっと、初めまして」

 

「俺、八雲零。えー……旅の先輩、みたいなもんだ」

 

レッドは目を丸くしたまま、しばらく黙っていた。

 

そして、静かに言った。

「……強いんだな」

 

俺は苦笑した。

「いや、俺もよく分かってない」

 

本当だ。

俺はポケモンを持っていた覚えがない。

バトル経験もない。

 

なのに、リザードンがいて、指示すれば動いて、技が出る。

まるでゲームのコマンド入力みたいに自然だ。

 

俺は背後のアルセウスを睨んだ。

「……お前、何した」

 

『必要なものを与えただけだ』

 

「必要なものの規模がでかいんだよ」

 

レッドはピカチュウを抱き上げて、優しく撫でた。

「ごめんな、ピカチュウ」

 

「ピカ……」

 

その様子を見て、俺は少しだけ安心した。

やっぱりレッドは、優しい。

強さの前に、まずポケモンを心配するタイプ。

 

俺は少し真面目な声で言った。

「レッド」

 

レッドが顔を上げる。

 

「旅に出るなら、これだけ覚えとけ」

 

俺は指を立てる。

「目と目が合ったらバトルになる」

 

レッドが首を傾げた。

「……え?」

 

「いや、今まさにそれで俺と戦っただろ」

 

「……たしかに」

レッドは少し恥ずかしそうに笑った。

 

その笑顔を見て、俺は思う。

こいつは間違いなく主人公だ。

世界を救うとか、伝説になるとか、そういう運命を背負ってる目をしてる。

 

そして俺は。

その主人公の脇で、何かをさせられる役。

チュートリアルお兄さん。

 

……なんだよそれ。

 

俺は肩をすくめて言った。

「困ったら、いつでも頼れ」

 

「俺が手助けする」

 

レッドは真っ直ぐ頷いた。

「分かった!」

 

純粋すぎる。

まぶしい。

俺は少しだけ笑ってしまった。

 

「よし。じゃあ、最初の助言だ」

 

俺は真剣な顔をする。

「絶対に、草むらに突っ込みすぎるな」

 

レッドはきょとんとした。

「なんで?」

 

俺は即答する。

「虫ポケモンが出る」

 

レッドの顔が引きつった。

「……むし?」

 

「キャタピーとか出る」

 

レッドは青ざめた。

「……それは嫌だ」

 

俺は頷く。

「だろ」

 

アルセウスが背後で言った。

『くだらない助言だ』

 

「チュートリアルなんてそんなもんだろ」

 

俺は振り返り、アルセウスに言い放つ。

「で、俺はこれからどうすればいい?」

 

アルセウスは淡々と答えた。

『次の地方へ行く準備をしろ』

 

「いやまだカントー始まったばっかだろ」

 

『お前は各地方を巡り、主人公を導け』

 

「主人公多すぎだろ」

俺は頭を抱えた。

 

レッドは元気よく言う。

「オレ、旅に出る!」

 

「ポケモンリーグを目指す!」

 

俺はレッドを見て、少しだけ複雑な気持ちになった。

こいつはまだ知らない。

旅がどれだけ過酷で、どれだけ楽しくて、どれだけ残酷か。

 

でも、だからこそ主人公なんだろう。

 

俺はリザードンをボールに戻す。

「……リザードン、ありがとな」

 

ボールが光り、静かになる。

 

俺はレッドに背を向けて歩き出した。

「じゃあな、レッド」

 

レッドが叫ぶ。

「また会えるよな!?」

 

俺は片手を上げて答えた。

「ああ」

 

「お前がチャンピオンになった時、また現れる」

 

……その言葉は、自然と口から出た。

まるで台本があるみたいに。

まるで、俺の役割が決まっているみたいに。

 

背後でアルセウスが小さく笑った気がした。

俺はその笑いが心底気に入らなかった。

 

歩きながら呟く。

「……絶対に覚えてろよ、アルセウス」

 

「俺は、お前の思い通りにはならねぇ」

 

その瞬間、スマホが震えた。

ポケットに入っていたはずのないスマホ。

 

俺は嫌な予感を覚えながら取り出す。

画面には通知が出ていた。

 

【連絡先が追加されました】

レッド

 

俺は固まった。

「……は?」

 

いや、待て。

俺、今何もしてない。

連絡先交換してない。

 

そもそもスマホ、なんであるんだよ。

 

俺が震える声で言う。

「……アルセウス」

 

神は静かに言った。

『便利だろう?』

 

「便利じゃねぇよ」

 

俺は天を仰いだ。

空が青い。

どこまでも青い。

 

だけど俺の心は、すでに曇り始めていた。

 

「……俺の人生、詰んだかもしれない」

 

遠くでレッドの声が聞こえる。

「行こうぜ、ピカチュウ!」

 

「ピカチュウ!」

 

主人公は旅立っていく。

俺はそれを見送った。

 

そして、静かに呟く。

「……頑張れよ」

 

「主人公」

 

俺はチュートリアルお兄さん。

そういう役らしい。

……マジで、最悪だ。

 

次回ジョウト地方編

「バッジケースを落としたら人生も落ちた」

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