――このルートは、青春だ。
眩しい。
軽い。
勢いがある。
友情が熱い。
学園が舞台。
なのに。
ハルトが一番危ない。
こいつ、顔は可愛い。
声も爽やか。
雰囲気も柔らかい。
なのに中身が。
狂ってるタイプの主人公。
いや、狂ってるというか。
「普通の顔して無茶をする」タイプ。
つまり。
俺の「ヤバい」を当たり前にしてくる。
そして。
気づけば俺も当たり前に無茶をする。
最悪の同類ルート。
パルデア地方。
オレンジアカデミー。
昼。
俺は階段の前で膝に手をついていた。
「はぁ……はぁ……」
学園、デカすぎ。
坂、急すぎ。
門、でかすぎ。
俺は息を整えながら呟いた。
「……なんで学校って、坂の上に建てたがるんだよ」
その瞬間。
「大丈夫ですか?」
背後から、爽やかな声。
振り返る。
そこにいたのは少年。
制服。
整った髪。
明るい目。
優しそうな笑顔。
でも、どこか目が強い。
ハルト。
俺は言った。
「……誰」
ハルトは笑った。
「ハルトです!」
俺は言った。
「……元気だな」
ハルトは頷いた。
「はい!」
俺は思った。
(この地方、元気な奴しかいねぇのか)
ハルトは俺を見て言った。
「あなた、旅人ですか?」
俺は言った。
「……まあな」
ハルトは目を輝かせた。
「すごい!」
俺は言った。
「何が」
ハルトは言った。
「旅って憧れます!」
俺は思った。
(いや、お前この地方の主人公枠だろ絶対)
ハルトは俺の荷物を見て言った。
「重そうですね」
俺は言った。
「重い」
ハルトは言った。
「持ちますよ!」
俺は言った。
「いい」
ハルトは言った。
「遠慮しないでください!」
俺は言った。
「遠慮じゃなくて警戒だ」
ハルトは笑った。
「えっ、警戒心あるんですか?」
俺は言った。
「あるに決まってるだろ」
ハルトは言った。
「僕はないです!」
俺は思った。
(やばい、こいつ無敵のタイプだ)
ハルトは俺を学園の中へ案内した。
廊下が広い。
人が多い。
先生が濃い。
空気が青春。
俺は呟いた。
「……眩しい」
ハルトは首を傾げた。
「眩しいですか?」
俺は言った。
「精神的に」
ハルトは笑った。
「それ、わかります!」
俺は固まった。
「……分かるのかよ」
ハルトは言った。
「たまに、眩しすぎて疲れますよね!」
俺は思った。
(こいつ、優しさが自然体だな)
学食。
ハルトが当然のように隣に座る。
「何食べます?」
俺は言った。
「……適当でいい」
ハルトは言った。
「適当って一番難しいですよ!」
俺は言った。
「知らねぇよ」
ハルトは笑った。
「じゃあ僕が選びます!」
俺は言った。
「勝手に決めるな」
ハルトは言った。
「はい!」
俺は思った。
(返事だけはいいな)
飯を食い終わった後。
ハルトが言った。
「ところで」
俺は言った。
「なんだよ」
ハルトは真顔で言った。
「あなた、何か隠してますよね」
俺は固まった。
急に。
空気が変わった。
ハルトの目が、妙に鋭い。
俺は言った。
「……隠してねぇよ」
ハルトは笑った。
「隠してます」
俺は言った。
「根拠は」
ハルトは言った。
「勘です!」
俺は叫んだ。
「勘で言うな!!!!」
ハルトは笑った。
「でも当たってますよね?」
俺は思った。
(こいつ、勘で正解引くタイプだ)
その時。
俺のスマホが震えた。
連絡帳。
嫌な予感。
俺は顔をしかめた。
「……来た」
ハルトが覗き込む。
「それ、なんですか?」
俺は言った。
「見るな」
ハルトは言った。
「見ます」
俺は言った。
「おい」
ハルトは笑顔で言った。
「だって危なそうです!」
俺は思った。
(正義感が暴走してる)
俺は渋々スマホを開く。
通知。
【オモダカ:面談】
俺は固まった。
「……あ?」
ハルトが目を輝かせた。
「チャンピオンランクの人だ!!」
俺は言った。
「テンション上げんな」
ハルトは言った。
「上がりますよ!!」
次の瞬間。
学園の空気が変わる。
校内放送みたいに、声が響く。
『八雲零さん』
『少しお時間、よろしいでしょうか』
オモダカの声。
俺は頭を抱えた。
「……うわ、来たよ」
ハルトは言った。
「行きましょう!」
俺は言った。
「行かねぇ」
ハルトは言った。
「行きます!」
俺は言った。
「お前、俺の話聞け!」
ハルトは笑った。
「大丈夫です!僕がいます!」
俺は思った。
(その自信どこから来るんだよ)
チャンピオン面談室。
オモダカが立っている。
圧がすごい。
美人すぎる。
怖い。
『あなたが八雲零さんですね』
俺は言った。
「……はい」
オモダカは微笑む。
『噂は聞いています』
俺は思った。
(また噂かよ)
オモダカが言う。
『あなたは数々の地方で問題を解決してきたとか』
俺は言った。
「問題を呼び寄せてるだけです」
オモダカは楽しそうに笑った。
『面白い方ですね』
その時。
ハルトが前に出た。
「先生!」
俺は固まった。
(おいおいおい)
オモダカが目を細める。
『ハルトくん?』
ハルトは真っ直ぐ言った。
「この人を、いじめないでください!」
俺は吹きそうになった。
「いじめって言うな!!」
オモダカは少し驚いてから、微笑んだ。
『いじめるつもりはありませんよ』
ハルトは言った。
「でも絶対、無茶させる気ですよね?」
俺は思った。
(こいつ、勘が鋭すぎる)
オモダカは静かに言った。
『……あなたは、危険な匂いがします』
俺は言った。
「俺もそう思います」
ハルトは即答した。
「危険です!」
俺は言った。
「お前、味方しろ」
オモダカは笑った。
『素直でいいですね』
そして俺に言う。
『ですが、あなたの力が必要になるかもしれません』
俺はため息を吐いた。
「……またそれかよ」
ハルトが言った。
「必要なら僕も行きます!」
俺は叫んだ。
「行くな!!!!」
ハルトは笑った。
「行きます!!!!」
俺は思った。
(こいつ、止まらねぇ……)
面談が終わった後。
学園の屋上。
夕日。
風が気持ちいい。
俺は言った。
「……お前、怖くないのか」
ハルトは首を傾げた。
「何がですか?」
俺は言った。
「チャンピオンとか、悪の組織とか、神とか」
ハルトは笑った。
「怖いですよ」
俺は驚いた。
ハルトは続ける。
「でも」
「怖いからこそ、行くんです」
俺は思った。
(またその理屈かよ……主人公はみんな同じこと言うな)
ハルトは言った。
「あなたも」
「怖いんですよね?」
俺は黙った。
図星だ。
ハルトは笑った。
「なら、一緒に行きましょう!」
俺は言った。
「……いや、俺は一人で」
ハルトは言った。
「一人はダメです」
俺は言った。
「なんで」
ハルトは真顔で言った。
「一人で無茶して死にそうだからです」
俺は思った。
(正解すぎる)
ハルトは言った。
「あなたは、強いです」
俺は言った。
「……元な」
ハルトは笑った。
「元でも、今でも!」
俺は言った。
「……お前、やけに肯定するな」
ハルトは言った。
「だって、あなたが否定したら」
「誰があなたを肯定するんですか?」
俺は固まった。
こいつ。
パルデアの爽やか主人公みたいな顔して。
言うことが重い。
真っ直ぐすぎて逃げられない。
最後。
学園の門の前。
ハルトが言った。
「零先輩!」
俺は言った。
「呼び方が変わったな」
ハルトは笑った。
「親しみです!」
俺は言った。
「勝手に決めるな」
ハルトは言った。
「はい!」
俺は思った。
(返事だけはいい)
ハルトは真剣に言った。
「僕、あなたと旅したいです」
俺は言った。
「……なんで」
ハルトは笑った。
「楽しそうだから!」
俺は言った。
「俺の旅、楽しくねぇよ」
ハルトは言った。
「じゃあ、楽しくします!」
俺は固まった。
最悪だ。
こいつ、俺の人生を「青春」に塗り替える気だ。
そんなの。
俺が一番弱い。
でも。
そんなの。
少しだけ――救われる。
俺はため息を吐いた。
「……勝手にしろ」
ハルトは笑った。
「はい!!」
このルートは青春だ。
学園だ。
友達だ。
冒険だ。
そして。
主人公が二人になる。
俺は思う。
(こいつと一緒なら、呪いすら課題扱いされそうだな)
それが怖い。
でも。
それが一番、楽しい。
ハルトルート 完
(※このルートの八雲零は、パルデア主人公に巻き込まれて、呪いも事件も「課外授業」にされる)