チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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投稿時間って何時くらいがいいんでしょうか?


第4話 石オタクと遭遇しました

ホウエン地方。

やっぱり海は綺麗だし、空も青い。

アローラほどではないが南国っぽい雰囲気も嫌いじゃない。

 

嫌いじゃないが――暑い。

 

…なんかデジャブな気がするな。

 

とにかく暑い。

俺は日差しにやられながら、適当な木陰に座っていた。

ハルカとのバトルから少し経った今。

 

俺の頭の中は一つのことでいっぱいだった。

「……なんでダイゴの連絡先が入ってるんだよ」

 

スマホを開く。

連絡帳。

そこにしっかりと刻まれている。

 

【ダイゴ】

 

いや、会ってない。

見てもない。

話してもない。

なのに入ってる。

 

しかも、登録されているだけじゃない。

――メッセージが来ていた。

 

【ダイゴ:やあ。突然で申し訳ないんだけど、君は石に興味はあるかい?】

 

「……何だこいつ」

俺は思わず真顔になった。

 

いや、知ってる。

原作通りだ。

ダイゴってそういうやつだ。

 

でもさ。

普通さ。

初対面の人間に送る内容じゃないだろ。

 

俺はスマホを握りしめた。

「俺、ホウエン来たばっかなんだけど」

 

しかもまだ、ジムすら見てない。

何なら、観光すらしてない。

 

なのにチャンピオンから石の勧誘が来る。

 

俺は深いため息をついて返信した。

【俺:興味はないです】

秒で既読がついた。

 

そしてさらに秒で返信。

【ダイゴ:そうかい。それは残念だ。じゃあ興味が湧くまで話そう】

 

「話すな!!」

俺は思わず叫んだ。

 

湧くまで話すってなんだよ。

宗教か?

石教か?

 

俺は頭を抱えた。

「ホウエン、やべぇ……」

 

すると、背後から足音がした。

砂利を踏む音。

静かで落ち着いた足取り。

 

俺は嫌な予感しかしないまま振り返った。

そこにいたのは――。

 

白い服。

長身。

整った顔立ち。

余裕のある微笑み。

 

そして手には、キラキラした石。

「やあ。君が八雲零くんだね?」

 

「……」

俺は固まった。

 

いや、分かる。

分かるよ。

 

この雰囲気。

この顔。

この圧。

 

「……ダイゴさん?」

 

俺がそう言うと、男は嬉しそうに笑った。

「そう。ツワブキ・ダイゴだよ」

 

やっぱりか。

 

ホウエンチャンピオン。

石オタク。

ポケモン界の顔面偏差値トップ層。

 

そして、原作でも屈指の「癖が強い男」。

 

俺は内心で叫んだ。

(なんでこんな所にいるんだよ!!)

ダイゴは俺の隣に当たり前のように座った。

 

距離感が近い。

普通に近い。

俺の人生でこんなイケメンが隣に座ったことはない。

 

しかもチャンピオン。

 

俺は変な汗をかいた。

「……どうして俺のことを?」

 

ダイゴは当然のように答えた。

「君の噂はもう聞いているよ」

 

「噂?」

俺は嫌な予感しかしなかった。

 

ダイゴはにこやかに言う。

「カントー地方出身で、各地方を旅している強いトレーナー。しかも――伝説のポケモンとも関わりがあるとか」

 

「……」

俺は顔を引きつらせた。

 

誰だ。

誰が広めた。

 

絶対ワタルかレッドかアルセウスだろ。

 

俺が黙っていると、ダイゴは石を俺の前に差し出した。

「これ、見てくれないかい?」

 

「……石ですね」

 

「そう。石だ」

 

いや、知ってる。

 

俺は真顔で答える。

「それがどうしたんですか」

 

ダイゴは嬉しそうに目を輝かせた。

「この石はね、最近見つけた珍しい鉱石で――」

 

「ストップ」

俺は即座に手を上げた。

 

ダイゴは首を傾げる。

「どうしたんだい?」

 

「説明すると長くなるタイプですよね、それ」

 

ダイゴは微笑んだ。

「うん。長くなる」

 

即答だった。

迷いがなかった。

俺は震えた。

 

怖い。

石オタクって怖い。

 

だが、ダイゴは悪気ゼロで続ける。

「でもね、君なら分かってくれる気がするんだ。強いトレーナーは、石の美しさにも敏感なはずだから」

 

「いや、俺は別に――」

 

「それに、君の持っているバッジケース……すごいね」

 

ダイゴの視線が、俺の腰に向いた。

 

俺は反射的にバッジケースを押さえた。

「……見ないでください」

 

ダイゴは少し笑った。

「すごい数だ。ジョウトも、ホウエンも……それ以外もあるね」

 

「……」

俺は背筋が冷えた。

 

やばい。

こいつ、観察眼が鋭い。

石見てるだけの男じゃない。

 

流石ホウエンチャンピオンだ。

強いし、頭も回る。

 

俺は咳払いした。

「で、何の用ですか?」

 

ダイゴはあっさり答えた。

「君とバトルがしたい」

 

――来た。

 

俺は心の中で叫んだ。

(やっぱりそうなるよな!!)

 

ダイゴは柔らかい笑顔のまま続けた。

「噂だけじゃ分からないからね。君の強さを、この目で見たい」

 

「……」

 

俺は少しだけ笑った。

確かに、チャンピオンがそう言うなら筋は通ってる。

だが、問題は別にある。

 

俺は言った。

「……俺が勝ったら、石の話やめてくれます?」

 

ダイゴは目を丸くした。

そして、楽しそうに笑った。

 

「それは難しいなぁ」

 

「難しいんだ」

俺は真顔で返した。

 

ダイゴは立ち上がり、モンスターボールを手に取った。

「じゃあ、バトルしようか。場所はここでいいかな?」

 

砂浜でチャンピオン戦。

周りには人もいる。

普通に観光客もいる。

 

……炎上確定だろこれ。

 

俺はため息をついた。

「分かりました。やりますよ」

 

ダイゴは嬉しそうに頷いた。

「ありがとう。君と戦えるのが楽しみだ」

 

その目が、完全に本気だった。

ワクワクしている。

少年みたいに。

 

チャンピオンのくせに。

 

俺は少しだけ、口角が上がった。

「……ホウエンチャンピオン、ワクワクさせんなよ」

 

俺はモンスターボールを取り出す。

相棒を呼ぶなら、こいつしかいない。

 

「出てこい。ブースター」

 

赤い炎の毛並み。

ふわふわの首元。

鋭い目。

 

ブースターが砂浜に降り立つ。

「ブオオオッ!」

 

ダイゴは目を輝かせた。

「いいポケモンだね。炎タイプか」

 

そしてダイゴはボールを投げた。

「いけ、メタグロス」

 

重い金属音と共に、鋼の巨体が現れる。

圧が違う。

砂浜が揺れた気がした。

 

俺は息を呑む。

 

……やっぱりか。

ホウエンチャンピオンと言えばこれだ。

 

ダイゴは穏やかに言う。

「遠慮はいらないよ。君も本気で来てくれ」

 

俺は笑った。

「最初からそのつもりです」

 

ブースターが身構える。

メタグロスが低く唸る。

 

観光客がざわつき始めた。

「え、あれメタグロスじゃね?」

 

「やば、チャンピオンじゃん」

 

「撮れ撮れ!」

 

スマホを構える音が聞こえる。

 

俺は内心で叫んだ。

(また炎上する流れだろこれ!!)

 

だが、もう止まらない。

 

俺は指示を出した。

「ブースター!影分身!」

 

ブースターの姿が増える。

砂浜に炎の残像が揺れる。

 

ダイゴは目を細めた。

「面白い戦い方だね」

 

そして淡々と言う。

「メタグロス、コメットパンチ」

 

鋼の拳が振り下ろされる。

影分身が一気に砕け散る。

だが――。

 

「高速移動!」

 

ブースターが一瞬で間合いを詰めた。

「火炎放射!!」

 

炎がメタグロスを包む。

だがメタグロスは揺るがない。

 

耐える。

耐えている。

そして鋼の目が光った。

 

「……こいつ硬すぎだろ」

 

ダイゴは楽しそうに笑った。

「いいね。その表情」

 

「……は?」

 

「強い相手と戦う時、人は一番いい顔をする」

ダイゴはそう言って、石を握りしめる。

 

「僕も、今すごく楽しいよ」

俺は笑ってしまった。

 

「……石オタクのくせに」

 

「石オタクだからこそ、強いものが好きなんだよ」

 

意味が分からないが、妙に説得力がある。

 

俺はブースターを見た。

「ブースター、だいもんじ」

 

ブースターの口から、巨大な火球が放たれる。

 

メタグロスに直撃。

砂浜が熱で揺らぐ。

観客が悲鳴を上げる。

 

だが――。

メタグロスは、まだ立っていた。

 

鋼の体が赤く焼けている。

それでも倒れない。

 

ダイゴは静かに言った。

「メタグロス、しねんのずつき」

 

鋼の巨体が突っ込む。

ブースターが吹き飛んだ。

 

「ブースター!!」

俺は叫んだ。

 

砂浜に転がるブースター。

息はある。

だが、明らかに限界が近い。

 

俺は歯を食いしばった。

 

――やっぱり強い。

こいつがホウエンチャンピオン。

 

そしてダイゴは、俺を見て笑った。

「君、いいね」

 

その言葉が、妙に腹立った。

 

俺は笑った。

「……あんまワクワクさせんなよ」

 

ブースターが立ち上がる。

最後の力を振り絞って。

 

俺は叫んだ。

「もう一回だいもんじ!!」

 

炎が爆発する。

メタグロスの体が、ついに崩れ落ちた。

砂浜に重い音が響く。

 

観客がどよめく。

「え……勝った?」

 

「チャンピオン負けたぞ!?」

 

俺は息を吐いた。

ブースターも膝をついている。

ギリギリだった。

 

ダイゴはメタグロスを戻し、満足そうに微笑んだ。

「……素晴らしいバトルだった」

 

俺は肩で息をしながら言う。

「いや、強すぎだろ」

 

ダイゴは楽しそうに笑った。

「君もね」

 

そして俺のスマホが震えた。

【ダイゴ:友達になろう。あと石を見に行こう】

 

「やめろ!!」

俺は叫んだ。

 

ダイゴはきょとんとした。

「どうしたんだい?」

 

俺は涙目で言った。

「なんでもないです……」

 

ホウエン地方。

石オタクと遭遇した結果。

俺の人生はまた一段階、終わった。

 

次回「マグマ団とアクア団が来ました」

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