チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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ついに読者層が似ている作品が出てきました。嬉しい!


第5話 マグマ団とアクア団が来ました

ホウエン地方。

海が綺麗で、空が広くて、気温が終わってる場所。

そして――悪の組織が湧く場所。

 

俺は今、さっきまでチャンピオンのダイゴと戦っていた砂浜を歩いていた。

ブースターはモンスターボールの中で休んでいる。

 

俺は汗を拭きながらため息をつく。

「……まさか砂浜でチャンピオン戦するとは思わなかったな」

 

俺の隣には、ダイゴがいる。

なんでいるのかは分からない。

というか、分かりたくない。

 

ダイゴは満足そうに微笑んでいた。

「やっぱり君はすごいね。石のように輝いている」

 

「それ褒め言葉じゃなくて石の感想ですよね?」

俺が真顔で返すと、ダイゴは首を傾げた。

 

「褒め言葉だよ?」

 

「……そうですか」

 

この人、天然で怖い。

 

だが、俺は知っている。

このホウエン地方という土地は、平和そうに見えて――だいぶ治安が悪い。

 

マグマ団とアクア団。

原作でも出てきた、世界を作り替えようとしてた連中。

火山を増やすか、海を増やすかで揉めてる謎の思想集団。

 

どっちも迷惑。

 

そして、俺は嫌な予感がしていた。

さっきから妙に周りが騒がしい。

観光客が減ってきている。

 

遠くの方で、何か叫び声が聞こえる。

ダイゴも気づいたのか、視線を遠くへ向けた。

「……ん?」

 

俺も目を細める。

砂浜の向こう。

道路の方から、黒い影がどんどん近づいてくる。

 

そして次の瞬間。

赤い服を着た集団が現れた。

真ん中にいる男は、赤いフードを被っている。

 

間違いない。

――マグマ団だ。

 

「……来たか」

俺が呟くと、ダイゴは少し驚いた顔をした。

 

「知っているのかい?」

 

「まぁ、なんとなく」

 

マグマ団の男たちは、こちらを見て立ち止まった。

そして先頭の男が叫ぶ。

「おい! そこのトレーナー!」

 

俺は嫌な予感しかしなかった。

 

ダイゴはいつもの微笑みのまま、のんびり手を振る。

「やあ」

 

「チャンピオンのダイゴ!? なぜここに……!」

マグマ団の空気が一瞬で固まった。

 

そりゃそうだ。

一般人を脅して物資を奪うつもりが、チャンピオンがいるんだから。

 

マグマ団の男たちは明らかに動揺していた。

 

だが――。

その動揺を上書きするように、さらに別方向から声が聞こえた。

「待ちな! その荷物はアクア団がいただく!」

 

「は?」

 

俺は振り向いた。

青い服の集団が海側から現れる。

海賊っぽい格好。

自信満々の顔。

 

間違いない。

――アクア団だ。

 

「……うわぁ」

俺は思わず顔を覆った。

 

マグマ団とアクア団。

同時に出てくるな。

順番を守れ。

 

アクア団の男がダイゴを見て、顔を引きつらせた。

「げっ、チャンピオン……!」

 

マグマ団が叫ぶ。

「アクア団! 邪魔するな!」

 

アクア団も叫ぶ。

「そっちこそ引っ込め! 陸ばっか増やしてどうすんだ!」

 

俺は冷めた目で両方を見た。

「……お前ら小学生かよ」

 

ダイゴが静かに言った。

「争いは良くないね」

 

マグマ団とアクア団は一瞬だけ黙った。

 

だが次の瞬間。

アクア団が叫ぶ。

「チャンピオンがいようが関係ねぇ!俺たちには信念がある!」

 

マグマ団も叫ぶ。

「そうだ!地上を広げるためなら、俺たちは止まらない!」

 

俺はため息をついた。

「……だよなぁ。そうなるよなぁ」

 

こういう奴らは、説得しても無駄だ。

原作通りだ。

結局、拳で分からせるしかない。

 

俺はモンスターボールを取り出した。

するとダイゴが少し意外そうに俺を見る。

 

「君がやるのかい?」

 

「はい」

 

俺は真顔で答えた。

「……俺、悪の組織に絡まれるの慣れてきたんで」

 

ダイゴは少し笑った。

「それはそれでどうかと思うけどね」

 

俺は肩をすくめた。

そしてマグマ団とアクア団に向かって言う。

「なぁ、君たちさ」

 

両方が俺を見る。

「今から俺と戦う?」

 

マグマ団が鼻で笑う。

「ガキが! 俺たちを止められると思うなよ!」

 

アクア団も笑う。

「二人で相手してやるよ!」

 

俺はうんざりした。

「……あー、はいはい」

 

俺はポケットからもう一つ、別のボールを出した。

黒くて、不穏な光沢。

――ダークボール。

 

それを見た瞬間、ダイゴが目を細めた。

「……それは?」

 

「えーと……」

 

俺は一瞬迷った。

出したら怒られるかもしれない。

アルセウスに。

 

でも今は、面倒を片付けたい。

早く帰って寝たい。

 

俺は開き直った。

「……ギラティナ、出番だ」

 

ダークボールから、異質な影が噴き出す。

空気が一気に冷える。

波が止まったような錯覚。

 

そして――。

異世界の王が、砂浜に降り立った。

 

ギラティナ。

 

反転世界の支配者。

禁忌の存在。

 

ダイゴが静かに呟いた。

「……なるほど。噂は本当だったんだね」

 

マグマ団とアクア団は、完全に固まった。

「……は?」

 

「え?」

 

「な、なんだよあれ……」

 

ギラティナが低く唸る。

砂浜が揺れる。

空が暗くなる。

 

観光客が悲鳴を上げ、全力で逃げ始めた。

当然だ。

俺でも逃げる。

 

マグマ団の男が震えながら叫んだ。

「お、おい! 伝説って……」

 

アクア団の男も顔面蒼白で言う。

「そんなの聞いてねぇぞ……!」

 

俺は冷たい目で言った。

「お前らが喧嘩してる暇に、世界滅ぶぞ」

 

ギラティナの目が光る。

 

俺は命令した。

「ギラティナ。シャドーボール」

 

闇の塊が放たれ、地面に着弾する。

爆発。

砂が舞い上がる。

 

マグマ団もアクア団も吹き飛んだ。

「ぐあああ!」

 

「うわあああ!」

 

俺は腕を組んだ。

「……はい、解散」

 

だが、マグマ団とアクア団はまだ諦めていなかった。

リーダー格らしい男が叫ぶ。

「く、くそ! 行け! グラエナ!」

 

「行け! サメハダー!」

 

ポケモンが飛び出す。

だが、ギラティナの圧で明らかに怯えている。

俺はため息をついた。

 

「……かわいそうだからさ」

 

俺はギラティナを戻した。

代わりにモンスターボールを投げる。

 

「リザードン、カメックス、フシギバナ。行くぞ」

 

御三家三体。

砂浜に並ぶだけで、圧が違う。

 

マグマ団とアクア団が絶望した顔になる。

「……なんで三体も」

 

「何者だよこいつ……」

 

俺は笑った。

「俺? ただのチュートリアルお兄さんだよ」

 

絶対嘘だ。

俺自身が一番分かってる。

 

ダイゴは苦笑いした。

「チュートリアルお兄さんっていうのは、普通こんなことしないと思うけどね」

 

俺はリザードンを指さす。

「火炎放射」

マグマ団のグラエナが一撃で沈む。

 

カメックス。

「ハイドロポンプ」

アクア団のサメハダーが吹き飛ぶ。

 

フシギバナ。

「はなびらのまい」

残った雑魚がまとめて散った。

 

マグマ団とアクア団は、完全に戦意を失った。

「……撤退だ!!」

 

「くそ! 覚えてろ!」

 

テンプレ捨て台詞を残して逃げていく。

 

俺は肩を落とした。

「……毎回これだよ」

 

ダイゴが笑った。

「君、やっぱり面白いね」

 

「面白くないです」

俺は即答した。

 

するとスマホが震えた。

通知。

【マツブサ:お前、うちに入らないか?】

【アオギリ:お前、うちに入らないか?】

 

「同時に来るな!!!」

俺は叫んだ。

 

ダイゴが興味深そうに俺を見る。

「彼らとも知り合いなのかい?」

 

「知らないです!!」

 

俺は即答した。

だが、通知は止まらない。

【ゲーチス:保険は必要か?】

【フラダリ:君の名を勝手に使うな】

【サカキ:……面白い】

 

「……なんでだよ」

俺はその場にしゃがみ込んだ。

 

人生が終わっていく音がした。

 

ダイゴがのんびり言う。

「ところで零くん」

 

「なんですか」

 

「石、好きになった?」

 

「ならねぇよ!!」

俺は叫んだ。

 

俺は某春日部の幼稚園児じゃないし。

 

ホウエン地方。

海は綺麗だ。

空も青い。

 

そして悪の組織は、今日も元気だった。

 

次回

「ハルカとユウキがチャンピオンになりました」

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