チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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第14話 …なんで四天王のところ?

――終わった。

俺はヒウンアイスを食べながら、心の底からそう思っていた。

 

いや、正確には。

食べてる場合じゃないのに食べていた。

 

甘くて冷たい。

最高に美味い。

なのに、人生が最悪の方向に転がっていく味がする。

 

俺のスマホは通知で震え続けていた。

ピコン。

ピコンピコン。

 

メイは満足そうに頷きながら言う。

「いやー!やっぱりバズったね!」

 

トウコは呆れた顔で腕を組んでいた。

「……バズらせるなよ」

 

俺は虚無の目で呟いた。

「……なんで?」

 

メイが首を傾げる。

「え?なんでって?」

 

俺はアイスを一口食べて、静かに言った。

「……俺、ただアイス食べてただけなんだけど」

 

トウコがぼそっと言う。

「それが一番怖いんだよね」

 

メイが笑う。

「零くん、存在がもう面白いもん!」

 

嬉しくない。

全然嬉しくない。

そして俺は、通知欄の中に最悪な名前を見つけてしまった。

 

【アイリス:ねえ、あなた誰?】

俺は固まった。

 

メイがスマホを覗き込んで叫ぶ。

「えっ!?アイリス!?チャンピオンの!?」

 

トウコは目を細める。

「……やっぱり来たね」

 

俺は青ざめたまま、スマホを閉じた。

「……やめてくれ」

 

メイが楽しそうに言う。

「返事しないの?」

 

俺は即答した。

「しない」

 

トウコが静かに言った。

「返事しなかったら、逆に怪しまれるよ」

 

俺は苦笑した。

「もう怪しまれてる」

 

トウコは頷いた。

「確かに」

 

その時だった。

背後から聞こえる声。

「……君が噂の?」

 

低い声。

落ち着いた声。

でも、圧がある。

 

俺はスプーンを咥えたまま、ゆっくり振り返った。

 

そこにいたのは――

スーツ姿の男。

目つきが鋭く、知的な雰囲気。

そして、どこか「面倒ごと」を背負ってそうな顔。

 

俺は知っている。

こいつは。

イッシュ地方の四天王。

 

シキミ……じゃない。

カトレアでもない。

ギーマでもない。

レンブだ。

 

格闘タイプの四天王。

いや、格闘タイプのくせに、本人が一番怖いタイプの人間。

 

俺はゆっくりスプーンを口から外した。

「……こんにちは」

 

レンブは俺をじっと見つめる。

「君が、八雲零くんだね?」

 

俺は笑顔を作った。

「はい。そうです」

 

レンブは淡々と続ける。

「チャンピオンのアイリスから、連絡があった」

 

俺は固まった。

「……え?」

 

メイが小声で言った。

「うわ、もう四天王にまで行ってる……」

 

トウコがため息を吐く。

「最悪のルートだね」

 

レンブは俺の肩に乗っているミュウを見た。

 

ミュウは楽しそうに鳴く。

「みゅー♪」

 

レンブの眉が僅かに動く。

「……ミュウ、か」

 

俺は無言で頷いた。

 

レンブはさらにセレビィを見る。

「……セレビィもいる」

 

俺は目を逸らした。

 

レンブは静かに言った。

「君は、普通のトレーナーではないな」

 

俺は即答した。

「普通です」

 

レンブは即答で返す。

「違う」

 

俺は負けた。

完敗だ。

 

トウコが小声で俺に囁く。

「言ったでしょ、嘘下手だって」

 

俺は泣きたかった。

 

レンブは続けた。

「今すぐ、ポケモンリーグへ来てもらう」

 

俺は眉をひそめる。

「……なんで?」

 

レンブは平然と言った。

「君の素性を確認するためだ」

 

俺は即答した。

「嫌です」

 

レンブは首を傾げた。

「拒否する理由は?」

 

俺は言った。

「面倒だから」

 

レンブは一瞬沈黙し、そして静かに言う。

「……君、度胸があるな」

 

メイが元気よく手を挙げた。

「零くん!逃げよう!」

 

トウコが冷静に言う。

「逃げても捕まるよ」

 

メイが即答する。

「じゃあ全力で逃げよう!」

 

トウコが呆れた。

「君たち、四天王の前でなに言ってるの」

 

俺は深呼吸した。

こういう時、逃げるのが正解だ。

 

でも。

目の前の相手は四天王。

逃げたら余計に疑われる。

 

……つまり詰み。

 

レンブは腕を組んで言った。

「君はすでに注目されている」

 

俺は小さく呟いた。

「……嬉しくない」

 

レンブは淡々と続ける。

「チャンピオン候補として見られている」

 

俺は即座に叫んだ。

「やめてください!!」

 

メイが笑う。

「えー!いいじゃんチャンピオン!」

 

トウコが冷静に突っ込む。

「嫌がってるでしょ」

 

俺は首を横に振った。

「俺もうチャンピオンになる気はないですよ?」

 

レンブは静かに言った。

「……それは本人が決めることではない」

 

俺は即答した。

「俺が決めます」

 

レンブの目が鋭くなる。

空気が変わる。

 

あ、これ。

バトルの流れだ。

俺は周囲を見回した。

 

人が集まってきてる。

みんなスマホ構えてる。

終わった。

完全に終わった。

 

そして俺は、最悪なタイミングで思い出した。

――カントー地方の悪癖。

目と目が合ったら、ポケモンバトル。

 

レンブと目が合った。

 

俺の口が勝手に動いた。

「あ、目と目があったからポケモンバトルだ!」

 

メイが爆笑した。

「なにそれ!?カントーの考え方!?!」

 

トウコが頭を抱えた。

「……最悪」

 

レンブは、少しだけ口元を上げた。

「……なるほど。君、面白いな」

 

俺は泣きそうになりながら、モンスターボールを取り出した。

「……ジュカイン!君に決めた!」

 

メイが目を丸くする。

「ジュカイン!?ホウエンの!?」

 

トウコも驚く。

「……なんでそんなの持ってるの」

 

俺は答えなかった。

答えられない。

 

レンブは静かに構える。

「いいだろう。私も手加減はしない」

 

俺は小さく呟いた。

「……だる」

 

そして。

なぜか俺の手には、見覚えのないものがあった。

 

金属のリング。

輝く石。

 

――メガリングとキーストーン。

 

俺はそれを見つめた。

「……何故かもう持ってるんだけど」

 

メイが叫ぶ。

「ええええ!?!?!?」

 

トウコが呆然と呟く。

「……この人、本当に何者なの」

 

俺はため息を吐いた。

「俺も知りたい」

 

そして俺は、リングを掲げた。

「ジュカイン!」

 

空気が震える。

視線が集まる。

スマホのカメラが一斉に向けられる。

 

俺は叫んだ。

「メガシンカ!!」

 

――光が弾けた。

 

次回

「メガシンカして葉っぱカッター」

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