チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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第23話 うるさいよトウコ!

『零ぃぃぃぃぃ!!!!』

スマホ越しに、怒号が鼓膜を殴ってきた。

 

俺は思わずスマホを耳から離した。

「……うるさ」

 

いや、うるさいとかいうレベルじゃない。

もはや災害警報。

 

ミヅキが隣で目を丸くしている。

「えっ……なにこの声……」

 

ククイ博士は笑っていた。

「ハハハ!元気な子だな!」

 

元気じゃない。

怒りだ。

怒りの塊だ。

 

俺はスマホを耳に戻し、力なく言った。

「……もしもし」

 

『もしもしじゃない!!どこ行ったの!?』

 

「……アローラ」

 

『アローラァ!?!?』

トウコの声が一段階上がった。

 

俺は空を見上げた。

青空が眩しい。

この青空の下で、俺は今人生最大級に怒られている。

 

理不尽。

 

『イッシュのリーグ代表取締役の名刺渡したくせに、本人が消えるってどういうこと!?』

 

「俺は知らない」

 

『知らないじゃない!!』

 

俺はため息を吐いた。

「……トウコうるさいよ。メイとでも話しといてくれ」

 

その瞬間、電話の向こうが静かになった。

……一瞬だけ。

 

『はぁ!?』

次の瞬間、トウコの怒りが倍になって返ってきた。

 

『なんでメイに丸投げするの!?』

 

「だってお前怖いし」

 

『怖いのはそっちでしょ!?』

 

いや、確かに。

俺もだいぶ怖い。

でも俺は暴れてない。

 

たぶん。

 

ミヅキが小声でククイ博士に聞いている。

「博士……れいって何者なの……?」

 

ククイ博士は腕を組んで頷いた。

「分からん!」

 

分からんのかよ。

 

トウコの声がさらに鋭くなる。

『いい!?今すぐ戻ってきなさい!!』

 

「嫌です」

 

『即答すんな!!』

 

俺はスマホを握りしめながら言った。

「戻ったらまた四天王のところ連れていかれるじゃん」

 

『当たり前でしょ!?』

 

「嫌だよ俺、もうチャンピオンになる気ないんだって」

 

『そんなの関係ない!!』

トウコの怒りは止まらない。

 

俺は思った。

これ、電話切ったら殺されるやつだ。

 

でも切らないと永遠に続く。

詰み。

その時だった。

 

ミヅキが俺の袖を引っ張った。

「ねえ、れい……その人誰……?」

 

俺は即答した。

「鬼」

 

「鬼!?」

 

ククイ博士が腹を抱えて笑い出す。

「ハハハハ!!鬼ってなんだ!!」

 

トウコの声がスマホから響く。

『誰が鬼よ!!!!』

 

聞こえてる。

全部聞こえてる。

 

俺は顔を覆った。

「……あーもう」

 

その瞬間。

ピコン。

スマホに通知が来た。

 

メッセージ。

【メイ:写真送るね^^】

 

嫌な予感がした。

 

俺は固まる。

「……え?」

 

次の瞬間。

画像が送られてきた。

開いた瞬間、俺の魂が抜けかけた。

 

そこに写っていたのは――

さっきの俺。

 

しまキング・ハラとバトルしている俺。

サーナイトがムーンフォースを放っている瞬間。

 

そしてその横で、ミヅキが「すごーい!」みたいな顔で俺を見ている。

さらに、ククイ博士が満面の笑みで親指を立てている。

 

完全に「仲良し集合写真」みたいな構図。

 

俺は震える声で呟いた。

「……終わった」

 

トウコが電話越しに言った。

『……何?今度は何したの?』

 

俺は力なく答えた。

「メイが写真送ってきた」

 

『……また撮られてるの!?』

 

「撮られてる」

 

『なんで毎回撮られてるの!?』

 

「俺が聞きたい」

 

ミヅキが俺のスマホを覗き込んで、目を輝かせた。

「わぁ!この写真いいじゃん!」

 

良くない。

最悪だ。

俺の人生がまた燃える。

 

そして――

スマホが震えた。

 

通知。

【メイ:もう投稿したよ^^】

 

俺は目を見開いた。

「……は?」

 

トウコが察して叫ぶ。

『まさか……!』

 

俺は震える声で言った。

「……投稿したらしい」

 

『あのバカ!!!!』

トウコの怒鳴り声が、アローラの青空に響き渡る勢いだった。

 

ミヅキがびくっと肩を震わせた。

「うわ……」

 

ククイ博士は笑っている。

「元気すぎるぞ!!」

 

元気じゃない。

修羅場だ。

 

俺は恐る恐るSNSを開いた。

そして、目に入った。

 

【速報:八雲零、アローラ上陸】

【しまキングを倒した謎の男】

【ミヅキとククイ博士と仲良くバトル】

【また女性と絡んでるww】

【女癖悪い説、確定】

 

俺はスマホを握りしめたまま、膝から崩れ落ちた。

「……誰か俺を殺してくれ」

 

ミヅキが慌てて俺の肩を叩く。

「れ、れい!?大丈夫!?」

 

トウコが電話越しに怒鳴る。

『大丈夫なわけないでしょ!!』

 

俺は涙目になりながら叫んだ。

「うるさいよトウコ!!メイとでも話しといてくれ!!」

 

『メイは今逃げてるわよ!!』

 

「逃げるなよあいつ!!」

 

その瞬間、さらに通知が来た。

 

【ヒカリ:アローラで何してんのwww】

【セレナ:……?】

【ハルカ:八雲さん、説明して】

【ユウキ:草】

【ダイゴ:アローラの石もいいよ】

 

俺はスマホを見つめたまま呟いた。

「……なんでダイゴはどこにでもいるんだよ」

 

ククイ博士が俺の肩を叩く。

「零!人気者じゃないか!」

 

「人気者じゃないです……」

俺は心の底から否定した。

 

これは人気じゃない。

これは炎上だ。

 

そして、トウコが低い声で言った。

『零』

 

「……はい」

 

『もう逃げるのはやめなさい』

 

「……無理」

 

『無理じゃない』

 

俺は静かに言った。

「俺、ただ静かに生きたいだけなんだよ」

 

トウコは少し黙った。

だが次の瞬間、冷たく言い放った。

『静かに生きたいなら、まずあんたが言う主人公?に近づかないで』

 

俺は反論できなかった。

「……それは、そう」

 

ミヅキが首を傾げる。

「主人公……?」

 

俺は笑顔を作って誤魔化した。

「気にしないで」

 

だが、その時。

遠くから声が聞こえた。

「ミヅキーー!!」

 

そして、別の声。

「ククイ博士ーー!!」

 

俺は嫌な予感がして振り返った。

そこには――

 

明らかに島巡り関係者っぽい大人たちが集まってきていた。

 

俺は思った。

終わった。

 

しまキング戦を見られたせいで、俺は島巡りに巻き込まれる。

逃げ道がない。

 

トウコの声が電話越しに響く。

『ほら、言わんこっちゃない』

 

俺はスマホを握りしめたまま、乾いた笑いを漏らした。

「……あはは」

 

そして心の中で叫んだ。

――俺の人生、バッジケース落としたあたりからずっとおかしいだろ。

 

次回

「…あー大炎上だ」

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