スマホを握りしめたまま、俺は海風に吹かれて立ちすくむ。
炎上の余韻で心臓がバクバクしている。
だが、目の前にはもっとやばいものがいた。
――伝説ポケモン、サンダー。
黄色に光るオーラが、静かに俺を睨んでいる。
……いや、これヤバいやつだろ。
てかなんでここにいるんだよ
でも俺は、冷静を装う。
「……じゃあ行け!ミュウツー。サイコキネシス!」
紫の光が渦巻き、海の水面にさざ波を立てる。
俺は深呼吸して心を落ち着ける。
伝説ポケモン相手に、今の俺は完全に一般人。
いや、元カントーチャンピオンだけど、炎上で精神が崩壊中。
だが、ここで弱気になったら負ける。
俺は冷静に指示を出す。
「……右に避けながらサイコキネシス!」
ミュウツーが動く。
空中で静止するその姿は、美しくも畏怖の念を抱かせる。
次の瞬間、海面に巨大なエネルギーの波が走る。
俺は思わず叫ぶ。
「避けろ、俺!!」
しかし、ミュウツーは指示通り、光の衝撃波を敵に向ける。
光が海に反射して、まぶしすぎて目がくらむ。
遠くで波がざわめき、海鳥たちが一斉に飛び立つ。
俺は後ずさりながらも、感動と恐怖で口を開けていた。
「……すげぇ……」
そんな俺の背後で、スマホが震える。
通知だ。
炎上中のトウコやメイのメッセージ、Tw◯tterのタグが次々と流れ込む。
しかし、今はどうでもいい。
目の前のミュウツーがすべてを奪っていく。
俺はさらに指示を出す。
「ミュウツー、もっと!サイコキネシス、集中!!」
紫の光が増幅し、海の水面に巨大な渦を作る。
その圧倒的な力に、俺は後ずさるしかなかった。
が、同時に心の奥に小さな達成感が芽生える。
――俺、今、この世界で伝説と戦ってる。
炎上とか、女癖疑惑とか、全部どうでもいい。
この瞬間だけは、俺が主人公だ。
――いや、少なくともチュートリアルお兄さんじゃない、完全に戦闘中の零だ。
そしてミュウツーが光の渦の中で跳ねる。
その姿は、まさに神話の生き物だった。
俺は小さく息を吐き、呟く。
「……行け、俺たちのミュウツー……」
その瞬間、海と空が一体になったような光景に包まれた。
紫の光が消えた後、静寂。
そしてミュウツーが俺の方を見て、小さくうなずいた。
――勝った。
いや、勝った、というより生き残った。
俺は震える手でスマホを握り、小さく呟いた。
「……これで少しだけ平和……?」
だが、遠くの空で見えた光。
次の伝説の影が、すでに俺を待っている。
――アローラの波は、まだまだ荒れそうだ。
次回
「ミュウか…久しぶりに見たな」