チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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本当にすみません。いろいろミスってました。


第33話 てことでよろ。アルセウス

会議室の空気が、凍った。

さっきまでスーツの偉い人たちが「特別顧問がどうの」とか「リーグの安定がどうの」とか真面目に話していたのに。

 

今はもう、そんなの全部どうでもよくなっていた。

俺のスマホ画面には、たった一つの文字。

【アルセウス】

 

――神。

よりにもよって神。

 

俺はスマホを耳に当てたまま、深く息を吐く。

「……もしもし」

 

返ってきた声は、冷たくも、やけに楽しそうだった。

『楽しそうだな』

 

俺は即答した。

「楽しくねぇよ」

 

スーツの偉い人たちは、完全に固まっていた。

いや、当然だ。

普通に考えて、電話の相手がアルセウスってだけで意味不明だ。

 

ディアンシーが小さく輝く。

ビクティニが「びぃ」と鳴く。

ミュウが天井近くで、面白そうに回っている。

 

……お前も共犯だろ。

 

俺は低い声で言った。

「お前さ、見てただろ」

 

『当然だ』

 

「当然じゃねぇよ」

俺は頭を抱えたくなった。

 

会議室の外で何かが軋む音がする。

ギシ……ギシ……と、床が歪むような。

嫌な予感がした。

 

スーツの男が恐る恐る呟く。

「……八雲さん、その、外で何か……」

 

俺は反射的に答えた。

「多分、神です」

 

偉い人たちが顔面蒼白になる。

……いや、そうなるよな。

 

次の瞬間。

ドンッ!!

 

建物が揺れた。

会議室の窓がビリビリと震え、机の上の書類が跳ねる。

 

そして。

会議室の中央に、光が生まれた。

眩しいほどの白い光。

 

その光の中から、ゆっくりと姿を現す。

白い体。

金色の輪。

赤い模様。

 

圧倒的な存在感。

――アルセウス。

神話そのものが、会議室に降り立った。

 

全員が息を呑む。

スーツの偉い人たちは椅子から立ち上がることすらできず、ただ目を見開いて固まっている。

 

俺は、スマホを耳に当てたまま、冷めた目で呟いた。

「……いや電話してた意味」

 

アルセウスは、俺を見下ろして言った。

『久しいな、零』

 

俺は椅子に座ったまま、手をひらひらさせた。

「はいはい、久しぶり」

 

アルセウスが視線を移す。

幻ポケモンたちを見て、少し眉をひそめた……ような気がした。

『……随分と増えたな』

 

俺は即答した。

「増やしたのは俺じゃねぇよ」

 

ミュウが「みゅっ♪」と鳴く。

アルセウスがミュウを睨む。

ミュウは目を逸らした。

 

……おい、ミュウ。

お前でも怒られるんだな。

 

その時、ディアンシーがふわりと前に出た。

神に対しても物怖じしない。

 

幻ってすげぇ。

 

アルセウスは、会議室を見渡した。

スーツの偉い人たちは、完全に現実を受け入れられていない顔をしている。

中には口をぱくぱくさせてる人もいる。

 

アルセウスは淡々と言った。

『人間たちよ。恐れるな』

 

恐れない方が無理だろ。

俺は心の中でツッコんだ。

 

アルセウスは俺に視線を戻す。

『……お前は、また騒動を起こしたな』

 

俺は乾いた笑いを漏らした。

「いや、騒動に巻き込まれただけなんだけど」

 

『だが、結果として世界は揺れた』

 

「それは否定できない」

俺はため息をついた。

 

確かに、アローラは揺れた。

ミュウのオリジンズスーパーノヴァで。

ミュウツーがキレたせいで。

 

俺は机に肘をついて、アルセウスを見上げる。

「で?今回は何だよ」

 

アルセウスは静かに言った。

『お前がプレートを集めた理由を、確認しに来た』

 

俺は一瞬だけ黙った。

 

――プレート。

俺が集めて、渡したもの。

 

あれは、俺なりの答えだった。

神に対する反抗でもあり、諦めでもあり、覚悟でもあった。

 

俺は目を細めた。

「確認って、何を」

 

アルセウスは答える。

『お前は運命を受け入れたと言った』

 

『だが本当に、受け入れたのか?』

 

会議室の空気がさらに重くなる。

スーツの偉い人たちは息をしていない。

幻ポケモンたちすら静かになっている。

 

俺は小さく笑った。

「……まだ疑ってんのかよ」

 

アルセウスは淡々と告げる。

『お前は、己の世界を捨てた』

 

『それは覚悟か、それとも逃避か』

 

その言葉が胸に刺さる。

痛い。

でも、図星でもある。

 

俺はしばらく黙ってから、言った。

「……どっちもだよ」

 

アルセウスは目を細める。

 

俺は続けた。

「俺はただの高校生だった」

 

「pi○ivとハー○ルン見て、夢小説読んで、普通に生きてただけだ」

 

「それなのに突然連れてこられて、チャンピオンやらされて、伝説と戦わされて」

 

「……そりゃ嫌いにもなるだろ」

 

アルセウスは黙った。

 

俺は深く息を吐き、机に置いてあった名刺を指で叩く。

「でもさ、俺はもう分かってる」

 

「この世界に罪はない」

 

「ポケモンも、人間も、地方も」

 

「……悪いのは、お前だけだ」

 

偉い人たちが息を呑んだ。

いや、当然だ。

神に向かって「お前が悪い」って言った。

 

俺、命知らずすぎる。

でも、止まらなかった。

 

俺はアルセウスを真っ直ぐ見た。

「だから言ってやる」

 

そして、俺は立ち上がった。

幻ポケモンたちが一斉に俺を見た。

ミュウですら静かになっている。

 

俺は、はっきりと言った。

「てことでよろ。アルセウス」

 

アルセウスが沈黙する。

 

俺は続ける。

「俺はもう逃げない」

 

「この世界で生きる」

 

「戦う」

 

「守る」

 

「……ただし」

 

俺は指を立てた。

「俺を巻き込むなら、責任は取れ」

 

「次に俺の人生壊したら、お前が全部謝れ」

 

アルセウスの目が、ほんの少しだけ細くなる。

怒りかと思った。

 

だが違う。

――笑っている。

 

『……良い』

 

神は、あっさりと認めた。

『それでこそ、お前だ』

 

俺は眉をひそめた。

「褒めんな。気持ち悪い」

 

アルセウスは淡々と続けた。

『そして、零』

 

『お前は今、アローラリーグの特別顧問となった』

 

『ならば一つ、仕事を与える』

 

俺は嫌な予感しかしなかった。

「……何」

 

アルセウスが静かに告げる。

『過去に送った子供がいる』

 

『時代はシンオウ。いや、ヒスイ』

 

俺の顔が引きつった。

「……は?」

 

アルセウスはさらに追撃する。

『その子供は、本来この世界に存在してはならない』

 

『歪みが生まれた』

 

『そして、ギラティナが動き始めている』

 

俺は机を叩いた。

「おい」

 

アルセウスは動じない。

『断罪ではない。修正だ』

 

俺は怒鳴った。

「ふざけんなお前!!」

 

スーツの偉い人たちがビクッと跳ねた。

でも止まらない。

 

俺はアルセウスを睨みつけた。

「誰が好き好んであんなところに行くかってんだ!!」

 

『だが、お前は行くだろう』

 

アルセウスは確信している。

俺は歯ぎしりした。

 

……確かに行く。

 

行くしかない。

放っておけない。

 

俺は大きくため息をついて、鞄を肩にかけた。

幻ポケモンたちが、ぞろぞろついてくる。

 

スーツの偉い人たちが慌てて立ち上がる。

「え、あの!八雲さん!?契約は!?」

 

俺は振り返り、疲れた笑顔で言った。

「……すみません。出張です」

 

そして俺は、アルセウスを睨みながら言った。

「お前がやれって言ったんだろうがよ」

 

アルセウスは静かに頷く。

『そうだ』

 

「ふざけんな」

 

俺はZリングを握った。

そして、最後に一言。

「心配だから行ってくるよ」

 

アルセウスは静かに、時空の裂け目を開いた。

白い光。

そこに、俺は足を踏み入れる。

 

そして。

世界が、歪んだ。

 

次回ヒスイ地方編

「…ギンガ団って昔はこんな感じだったんだな…」

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