チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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第34話 ギンガ団って昔はこんな感じだったんだな…

目を開けた瞬間。

空気が違った。

 

湿っていて、土の匂いが濃い。

海の匂いでも、都会の匂いでもない。

 

森。

獣。

自然。

それが剥き出しのまま、俺の肺に突き刺さる。

 

「……うわ」

思わず声が漏れた。

 

視界に広がるのは、広大な草原と、遠くに見える山々。

どこを見ても人工物が少ない。

いや、少ないというか、ほぼ無い。

 

電柱もなければ、道路もない。

あるのは木と岩と、そして……遠くに見える小さな村。

 

俺は顔をしかめた。

「……あー……これ、完全に昔だな」

 

靴の下の土は柔らかい。

空は妙に澄んでいる。

風が冷たい。

アローラの暑さとは真逆だ。

 

俺は肩にかけた鞄を確認し、腰のボールケースを触った。

――幻ポケモンたちの気配はない。

 

いや、正確には。

ボールに戻っている。

 

よかった。

この時代にビクティニとかディアンシーとか出したら、村が滅ぶ。

 

俺は深く息を吐き、歩き出した。

遠くの村へ。

あそこなら、情報があるはずだ。

 

だが、その途中。

俺は妙なものを見つけた。

 

草むらの向こう。

人影がある。

しかも複数。

全員が同じ服を着ていた。

 

黒と灰色。

胸には、見覚えのあるマーク。

――赤いG。

 

俺は足を止めた。

「……は?」

 

嫌な汗が背中を流れた。

見間違いじゃない。

それは、ギンガ団の紋章だった。

 

俺は呟いた。

「……ギンガ団って昔はこんな感じだったんだな…」

 

だが、違和感があった。

俺の知っているギンガ団は、もっと洗練されていた。

未来的で、機械的で、冷たかった。

 

なのに今目の前にいる奴らは――

妙に「田舎の自警団」っぽい。

 

服もどこか粗い。

装備も簡素。

それなのに、目だけは鋭い。

 

俺は慎重に近づき、木の影から様子をうかがった。

すると、彼らは何かを囲んでいた。

……いや、誰かを。

 

そこにいたのは、若い女の子だった。

ショートカット。

活発そうな雰囲気。

そして――顔が、見覚えありすぎる。

 

俺は目を細めた。

「……え?」

 

似てる。

似すぎてる。

ヒカリに。

 

いや、ヒカリ本人じゃない。

髪型も服も違う。

でも顔の造形が同じだ。

表情も、目の強さも。

 

俺は確信した。

「……ヒカリの祖先みたいな子がいる…」

 

その子は、ギンガ団(っぽい連中)に囲まれながら、全く怯えていなかった。

むしろ睨み返している。

……強い。

流石主人公。強い。

 

ギンガ団の一人が言う。

「おい、お前!勝手に調査区域に入るな!」

 

少女は即答した。

「調査区域?そんなの知らないよ!」

 

ギンガ団が怒鳴る。

「知らないじゃ済まされない!」

 

俺は思った。

……あれ?

ギンガ団って、こんな感じで揉めてたっけ?

 

もっと宇宙とか理想世界とか言ってたはずだが。

 

今はただの治安組織に見える。

その時。

草むらが、ざわりと揺れた。

 

嫌な気配。

低い唸り声。

 

ギンガ団たちが一斉に振り返る。

「……来るぞ!」

 

少女も身構える。

俺も、嫌な予感がして目を凝らした。

草むらの奥から、巨大な影が現れる。

 

赤い目。

異様な体格。

身体から立ち上る、殺気。

 

――オヤブンポケモン。

しかも、見たことないレベルでデカい。

 

俺は思わず呟いた。

「……うわ、マジかよ」

 

オヤブンは、咆哮した。

地面が揺れる。

木が揺れる。

 

ギンガ団の連中が怯む。

「くっ……!」

 

少女が叫ぶ。

「ちょっと!あんたたち!何とかしなよ!」

 

ギンガ団が叫び返す。

「無理だ!あれは手に負えん!」

 

……おい。

自警団みたいなことしてるくせに、戦闘力低いのかよ。

 

その瞬間。

オヤブンが突進してきた。

 

ギンガ団たちが散る。

少女が逃げ遅れる。

 

「っ!?」

 

俺は舌打ちした。

――あーもう。

こういうの放っておけない。

 

俺は木陰から飛び出した。

「おい!!」

全員が俺を見る。

 

ギンガ団が叫ぶ。

「誰だお前!?」

 

少女も目を見開く。

「えっ、何!?味方!?」

 

俺は走りながら、ボールケースに手をかける。

幻ポケモンは出せない。

この時代で出したら世界が終わる。

 

なら、普通の手持ち。

強いやつ。

頼れるやつ。

 

俺は叫んだ。

「……久しぶりに行くか」

 

そしてボールを投げる。

「サンダース!!」

 

白い光と共に現れたのは、黄色い雷の獣。

耳が鋭く、全身が電気をまとっている。

 

サンダースは地面に降り立つと、すぐに俺を見た。

目が合う。

懐かしい。

 

俺は笑って言った。

「レッドの時ぶりだよな?」

 

サンダースは「シャアアアッ!」と鳴いた。

まるで「遅い」と言うみたいに。

 

オヤブンが突進してくる。

サンダースが身構える。

 

俺は叫ぶ。

「高速移動!」

 

サンダースの身体が雷光になった。

バチバチッ!!

視界から消えるほどの速度。

 

次の瞬間、オヤブンの横に回り込み、電撃を叩き込む。

「10まんボルト!!」

 

雷が炸裂する。

オヤブンが唸り、怯む。

 

ギンガ団たちが驚愕する。

「……は!?速すぎる!!」

 

少女が叫んだ。

「すご……!!」

 

だがオヤブンは止まらない。

 

怒り狂い、さらに暴れる。

その爪が地面を抉り、土が飛ぶ。

木が倒れる。

 

俺は歯ぎしりした。

「……やっぱこの時代、野生が強すぎるな」

 

そして俺は、ふと気づく。

草むらの向こうに、赤い影がある。

……別のオヤブン?

 

いや違う。

あれは――

ヒードラン。

 

しかも普通のじゃない。

目つきが悪い。

威圧感が異常。

 

俺は顔を引きつらせた。

サンダースが一瞬だけそっちを睨む。

 

俺は呟いた。

「……おい、アルセウス」

 

風が吹く。

返事はない。

当然だ。

 

俺は苦笑しながら言った。

「……これ、絶対お前の趣味だろ」

 

少女が俺の方へ走ってきて叫ぶ。

「ねぇ!あんた何者!?助けてくれるの!?」

 

俺は戦闘態勢のまま答えた。

「とりあえず今は逃げろ!」

 

「逃げられないってば!」

 

ギンガ団の一人が叫ぶ。

「おい!お前!そのポケモン使いは何者だ!」

 

俺は舌打ちした。

説明してる暇はない。

 

オヤブンが咆哮する。

ヒードランが動く。

 

地面が熱を帯び始める。

――最悪の組み合わせ。

 

俺はサンダースを見て言った。

「……行けるか?」

 

サンダースは牙を剥き、笑ったように鳴いた。

「シャアアッ!!」

 

俺は笑った。

「よし」

 

そして俺は叫ぶ。

「サンダース!あのヒードラン、ぶっ飛ばすぞ!!」

 

雷が走った。

俺のヒスイ生活は――

 

初日から、地獄だった。

 

次回

「アルセウスの趣味?」

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