チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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第39話 ああもうだるい!

俺は息を切らしながら、雨の中で立っていた。

足元は泥。

服はびしょ濡れ。

髪から水が滴り落ちる。

 

視界の先には、まだ倒れないヒードラン。

空には、まだしぶとく浮いているランドロス。

そして周りには、ギンガ団の連中が呆然と立ち尽くしている。

 

……なにこの状況。

 

俺は思った。

これ、ゲームじゃない。

現実だ。

 

なのに敵だけゲーム仕様で硬すぎる。

理不尽すぎる。

 

俺は空を睨みつけた。

そこにいるのは分かってる。

姿は見えなくても、気配だけで分かる。

 

アルセウス。

あのクソ神。

俺の人生をおもちゃにしてる張本人。

 

俺は深く息を吸って――

叫んだ。

「……ああもうだるい!!」

 

そして、ボールケースを乱暴に開ける。

中にはいくつものボール。

伝説、幻、相棒、全部。

 

俺はもう考えるのをやめた。

理性が限界だった。

 

俺は吠えるように言った。

「マナフィとカイオーガ行くぞ!!」

 

ギンガ団がざわついた。

「え……?」

 

「またあの海の神を出すのか……!?」

 

「やめろ!村が沈む!!」

 

……知らねぇよ。

沈むなら沈むで、アルセウスが責任取れ。

 

俺はボールを投げた。

「来い、マナフィ!!」

 

青い光。

水の精霊が現れる。

マナフィが空中に浮かび、周囲の雨を操るように手を広げる。

 

そして、俺は迷いなくもう一つ投げた。

「来い、カイオーガ!!」

 

ドン――――!!!

 

世界の空気が変わった。

森が震える。

 

ギンガ団の隊員が腰を抜かした。

「……また出たぁぁぁ!!」

 

「終わった!!村が終わる!!」

 

ショウが目を見開いて叫ぶ。

「零!?やりすぎ!!」

 

俺は叫び返した。

「うるせぇ!!俺だって好きでやってねぇよ!!」

 

ヒードランが怒り狂ったように吠える。

ランドロスも空で暴れ、雷雲を呼び寄せる。

 

雷鳴。

炎。

土砂。

嵐。

 

災害が同時に起きている。

 

俺は目を細めて言った。

「……はいはい、神々の喧嘩ね」

 

そして、俺は手を上げた。

Zリング。

光が走る。

雨の中でも、リングだけが眩しく輝いた。

 

ギンガ団がさらに騒ぐ。

「腕輪が光った!?」

 

「なんだそれは!!」

 

ショウが目を輝かせる。

「え、なに!?かっこいい!!」

 

俺はその声を無視して、ただ静かに呟いた。

「……アルセウス、お前見てるだろ」

 

返事はない。

だが、圧は感じる。

絶対に見てる。

 

俺はニヤッと笑った。

「じゃあ見とけよ」

 

そして叫ぶ。

「カイオーガ!!しおふき!!」

 

――ゴォォォォォォ!!!

 

森の中なのに、海が爆発したみたいな水量が噴き出した。

土が削れる。

木が倒れる。

 

ギンガ団が悲鳴を上げる。

「うわぁぁぁ!!」

 

「洪水だぁぁぁ!!」

 

ヒードランは水圧に押され、後退する。

ランドロスもバランスを崩して、空中でぐらつく。

だが。

 

ヒードランはしぶとく耐えた。

ランドロスは雷雲を濃くする。

 

……まだ終わらない。

 

俺は目を細めた。

「いや、お前ら本当にしつこいな?」

 

俺は雨の中で、冷たく笑った。

そして次の瞬間。

 

俺は指を空へ突き上げた。

「マナフィ!!あまごい強化!!」

 

雨がさらに激しくなる。

世界が水のカーテンに包まれた。

炎が弱まる。

雷が水面に落ちて、バチバチと弾ける。

 

俺は大きく息を吐いた。

「……サンダースはあそこにいるランドロスをまたボコボコにしといてくれ」

 

サンダースが「サン!!」と鳴き、雷のように走り出す。

 

空へ飛び上がるランドロス。

そこへサンダースが跳び、雷を叩き込む。

 

バチィッ!!

 

ランドロスが呻く。

俺はその光景を見ながら、ヒードランに視線を戻した。

そして。

俺はZリングに手を置いた。

 

指先が震える。

……使うか?

この世界でZ技。

 

絶対やばい。

でももういい。

俺は限界だった。

 

俺は叫んだ。

「……やってられるか!!」

 

そして、Zクリスタルをセットする。

光が爆発した。

 

俺の周囲の雨が一瞬蒸発する。

ギンガ団が目を覆う。

 

ショウが叫ぶ。

「零!?それ何!?光ってる!!」

 

俺は低い声で言った。

「黙って見てろ」

 

そして叫ぶ。

「カイオーガ!!」

 

Zリングが燃えるように輝く。

俺の身体が勝手に動く。

踊るような動作。

 

――Z技の型。

 

俺は心の中で悪態をつく。

(なんで俺、踊れるんだよ)

でも止まらない。

 

そして最後に、俺は腕を振り下ろした。

「スーパーアクアトルネード!!!」

 

水が渦を巻いた。

巨大な竜巻のような水柱が生まれ、ヒードランを飲み込む。

 

轟音。

森が揺れる。

地面が抉れる。

 

ヒードランが耐えようとするが、無理だった。

水圧で押しつぶされる。

そして――

 

ドン!!

 

ヒードランはついに倒れた。

地面に沈むように崩れ落ち、赤い光が消えていく。

 

俺は肩で息をしながら、呟いた。

「……やっとかよ」

 

雨が静かに降り続ける。

森の中に、勝利の静寂が落ちた。

遠くでランドロスがサンダースにボコられて、森の向こうへ逃げていく。

 

サンダースが「サン!」と勝ち誇った声を上げた。

 

俺は少し笑ってしまった。

「よしよし、偉い」

 

そして、俺は空を見上げた。

アルセウスの気配。

 

まだある。

消えてない。

むしろ濃くなっている。

 

……怒ってる。

 

俺はため息を吐いた。

「はいはい、怒るんだろ?」

 

ショウが恐る恐る近づいてきた。

 

目を輝かせながら言う。

「零……すごい……!」

 

ギンガ団の隊員たちは、完全に固まっている。

「……神話だ」

 

「人間が、あんな力を……」

 

「いや、あいつ絶対人間じゃない……」

 

俺は苦笑して肩をすくめた。

「俺もそう思う」

 

そして、ボールを取り出しながら呟いた。

「戻れ、カイオーガ、マナフィ」

 

光が消え、二匹はボールへ戻った。

静かになった森。

雨音だけが響く。

 

だが。

その雨音の中に、別の音が混ざった。

 

――カツン。

 

足音。

後ろから。

俺は振り返らなくても分かった。

 

圧が違う。

空気が重い。

神が降りてきた。

 

俺はゆっくりと振り返る。

そこにいたのは――

 

白い体躯。

金の輪。

赤い瞳。

 

アルセウス。

俺の背後に立っていた。

 

ショウが息を呑む。

「……っ!?」

 

ギンガ団が一斉に跪いた。

「アルセウス様……!!」

 

俺だけが立ったままだった。

 

そして俺は、濡れた髪をかき上げて言った。

「……で?文句ある?」

 

アルセウスの瞳が細くなる。

怒りの気配。

圧が強まる。

世界が止まったみたいに静かになる。

 

俺は笑った。

もう怖くなかった。

だってここまで来たら、怒られるのも日常だ。

 

俺は肩をすくめて言った。

「俺さ、言ったよな?」

 

「好きでやってるわけじゃないって」

 

アルセウスは何も言わない。

でも分かる。

今、絶対「こいつ面倒だな」って思ってる。

 

俺は心の中で勝ったと思った。

そして、最後に呟く。

「……ほんと、お前の趣味最悪だよ」

 

アルセウスの瞳が、ギラリと光った。

次の瞬間。

白い光が世界を包んだ。

 

次回ガラル地方編

「…あれ?ガラル地方じゃん」

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