チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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第43話 …あれがダイマックスってやつ?

カレーは美味かった。

いや、マジで美味かった。

 

スパイスの香りが強いのに、辛すぎない。

具材がごろごろ入ってて、食べ応えがある。

しかも米がちゃんと米で、涙が出そうになった。

 

俺はスプーンを持つ手を止めて呟く。

「……ガラル、最高かもしれん」

 

ユウリが得意げに笑った。

「でしょ!?」

 

ショウは黙々と食べていたが、明らかに機嫌がいい。

 

俺は気づいた。

こいつ、カレーでHP回復するタイプだ。

 

……まぁ俺もだけど。

 

だが。

俺のスマホは、まだ震えていた。

通知地獄。

着信地獄。

 

シルバー、トウコ、メイ、セレナ、ヒカリ、ハルカ、ミヅキ――

俺は途中で考えるのをやめた。

見たら負けだ。

 

俺はスマホを裏返したまま、ユウリに言った。

「……ありがとう。命救われた」

 

ユウリは笑う。

「カレーは世界を救うからね!」

 

ショウが頷いた。

「正しい」

 

……なんだこの宗教。

 

俺が二杯目を食べ終えた頃。

外が騒がしくなった。

 

ドドドド……という振動。

遠くから聞こえる歓声。

 

何かの音楽。

スタジアムみたいな、派手なBGM。

 

俺は顔を上げた。

「……なんか外、うるさくないか?」

 

ユウリが目を輝かせる。

「あっ!今日ダイマックスバトルのイベントあるんだ!」

 

俺は嫌な予感しかしなかった。

「……ダイマックス?」

 

ショウがスプーンを置いて言う。

「ポケモンが巨大化するやつ」

 

俺は思わず言った。

「……メガシンカの親戚?」

 

ユウリが首を振った。

「ううん!全然違うよ!」

 

ショウが淡々と補足する。

「デカくなる。強くなる。時間制限あり」

 

俺は乾いた笑いを漏らした。

「説明雑すぎるだろ」

 

ユウリが椅子から立ち上がる。

「見に行こ!レイもショウも!」

 

俺は即答したかった。

「行かない」

 

だが、ユウリの目がキラキラしてる。

ショウも微妙に興味ありそう。

 

そして俺は気づく。

――この流れ、断ったら強制イベントで事故るやつだ。

 

なら行った方がマシ。

 

俺は諦めた声で言った。

「……見るだけな」

 

「もちろん!」

ユウリは元気よく答えた。

 

そして数十分後。

俺たちはスタジアム近くの広場にいた。

 

人が多い。

屋台が並んでいる。

カレーの匂いが漂う。

 

……ガラル、カレー推しすぎだろ。

 

だが、その匂いより強烈なものがあった。

スタジアムの中央。

フィールド。

 

そこに立つのは――

巨大なポケモン。

デカい。

 

とにかくデカい。

建物よりデカい。

普通に怖い。

 

俺は口を開けたまま呟いた。

「……え、なにこれ」

 

ユウリが嬉しそうに叫ぶ。

「それがダイマックスだよ!!」

 

俺は目を見開いたまま言った。

「……あれがダイマックスってやつ?」

 

ショウが腕を組んで頷く。

「そう」

 

俺はスタジアムの天井を見上げた。

天井、閉じてる。

いや、これ壊れるだろ。

 

俺は真顔で言った。

「……天井とか壊れないのか?」

 

ユウリが笑った。

「壊れないよ!ちゃんとダイマックス用のスタジアムだから!」

 

俺は納得できなかった。

「絶対嘘だろ……」

 

巨大ポケモンが動くたび、地面が揺れる。

観客は歓声を上げてる。

いや、慣れすぎだろ。

 

俺は思った。

ガラルの人間、メンタル強すぎる。

 

ショウが俺の服の袖を引っ張った。

「零、顔が引きつってる」

 

「当たり前だろ」

俺は即答した。

 

巨大ポケモンが吠えた。

 

ドォォォン!!

 

音圧だけで耳が痛い。

俺は反射的にショウを後ろに引き寄せた。

 

ショウは驚いた顔をしたが、すぐに小さく笑った。

「過保護」

 

「うるせぇ」

俺は言い返した。

 

その時、ユウリが俺の肩を叩いた。

「ねぇレイ!ダイマックス、やってみたい?」

 

俺は即答した。

「やらない」

 

ユウリが目を丸くする。

「えー!?絶対楽しいよ!」

 

俺は冷静に言った。

「俺、巨大化とか嫌な思い出しかない」

 

ヒスイのオヤブン。

巨大な怒り。

巨大な理不尽。

 

俺はもう「デカい敵」にはうんざりしていた。

 

だがユウリは悪気なく言った。

「でもほら!レイ強そうだし!」

 

ショウが頷く。

「零は強い。頭おかしいぐらい」

 

「褒めてないだろそれ」

俺は突っ込んだ。

 

その瞬間。

俺のスマホが震えた。

俺は反射的に見る。

 

着信――ヒカリ。

 

俺は顔面蒼白になった。

「……うわ、来た」

 

ショウが覗き込む。

「出ないの?」

 

「出たら死ぬ」

 

ユウリが不思議そうに言った。

「なんで!?」

 

俺は小声で答える。

「今の俺、色々誤解されてる」

 

ユウリは首を傾げる。

「レイって浮気者なの?」

 

俺は即答した。

「違う!!」

 

ショウがボソッと言った。

「でも連絡帳、ほぼ女性しかいない」

 

「お前は黙れ!!」

俺はキレた。

 

その時だった。

スタジアムの巨大ポケモンが、突然こちらを向いた。

いや、向いたというか――

 

視線が合った気がした。

 

観客がざわつく。

「え……?」

 

「なんでこっち見てる……?」

 

俺は嫌な汗が背中を流れるのを感じた。

「……まさか」

 

巨大ポケモンが一歩踏み出した。

 

ドン!!

 

地面が揺れる。

柵がきしむ。

 

観客が悲鳴を上げ始める。

「うわぁぁぁ!!」

 

「こっち来た!!」

 

ユウリが驚いて叫ぶ。

「えっ!?なんで!?」

 

ショウが俺を見て言った。

「零、たぶんそれ」

 

「俺のせいって言いたいんだろ」

俺は即答した。

 

……そうだよな。

こういうの、だいたい俺のせいだ。

 

俺は深く息を吸った。

そして、覚悟を決めてボールケースに手を伸ばす。

「……ユウリ、下がれ」

 

ユウリが目を見開く。

「レイ!?」

 

俺は笑った。

「大丈夫。慣れてる」

 

ショウがぼそっと言う。

「慣れたらダメ」

 

俺はボールを握りしめた。

 

巨大ポケモンが吠える。

スタジアムの空気が震える。

観客が逃げ惑う。

 

ユウリが叫んだ。

「レイ、危ない!!」

 

俺は静かに呟いた。

「……ガラルでも結局こうなるのかよ」

 

そして俺はボールを投げた。

「出てこい――」

 

光が弾ける。

現れたのは、紫のオーラを纏った存在。

 

ユウリが息を呑む。

「え……なにそのポケモン……」

 

ショウが小さく言った。

「……ミュウツーってやつ?」

 

俺は肩を落として笑った。

「はい。いつものやつです」

 

ミュウツーがゆっくり宙に浮く。

巨大ポケモンと向かい合い、目を細める。

 

俺はZリングに触れながら呟いた。

「……巨大化には巨大化ぶつけたいけど」

 

「今それやったらガラル滅ぶな」

 

ユウリが震えた声で言った。

「レイ……あなた何者……?」

 

俺は乾いた笑いを漏らした。

「俺も知りたい」

 

そして、俺は指を前に突き出した。

――やるしかない。

 

俺は叫ぶ。

「ミュウツー!」

 

紫のオーラが膨れ上がる。

空気が重くなる。

 

観客の悲鳴が止まった。

ユウリが呆然とする。

ショウは腕を組んだ。

 

そして俺は、覚悟を決めて言った。

「サイコキネシス!!」

 

紫の光が弾けた。

巨大ポケモンの身体が宙に浮く。

 

観客が叫ぶ。

「うわぁぁぁぁ!!」

 

俺は歯を食いしばった。

「……頼むから、これ以上面倒起こすなよ……!」

 

だが俺は知っている。

この世界は。

俺に平和をくれない。

 

次回

「それヤドンの尻尾だよな?」

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