チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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第53話 …アカギ。お前はいい案ないか?

学園の中庭。

視線。

視線。

視線。

視線。

 

俺は完全に晒されていた。

 

ネモは目を輝かせているし、アオイは混乱しているし、ヒカリは腕を組んで説教モード。

 

セレナは笑顔のまま目が死んでいる。

ユウリはまだ笑ってる。

ハルカとメイは「えっえっ」ってなってる。

 

ミヅキは面白がってる。

ショウは俺の後ろで静かに見守ってる。

レッドは無言で圧をかけてくる。

 

俺は悟った。

――これ、誰かに助けてもらわないと無理だ。

 

俺はスマホを握りしめた。

連絡帳を開く。

そして指が勝手に動く。

 

……アカギ。

 

ギンガ団のボス。

神を作ろうとした男。

宇宙の歪みみたいな思想の持ち主。

 

普通なら絶対に頼らない相手だ。

でも今の俺には、頼れるものが「悪の組織」しか残っていなかった。

 

プルルルル……。

 

コール音が鳴る。

周囲が静かになった。

 

ヒカリが眉をひそめる。

「……また電話?」

 

俺は聞こえないふりをした。

 

数秒後。

『……誰だ』

 

低い声。

氷みたいな温度の声。

 

出た。

アカギだ。

 

俺は即座に言った。

「……もしもしアカギ。お前はいい案ないか?」

 

沈黙。

スマホの向こうで、アカギが一拍置いた。

『……零か』

 

俺は驚いた。

「え、俺って分かるの?」

 

『お前の声は忘れん』

 

いや、嬉しくない。

忘れてくれ。

 

俺は早口で続けた。

「今俺、パルデア地方の学園にいるんだけど」

 

『ほう』

 

「レッドとヒカリとセレナとハルカとメイとミヅキがいる」

 

『……』

 

「あとネモっていう戦闘狂もいる」

 

『……』

 

「みんな俺にバトルしろって言ってる」

 

『……なるほど』

アカギは淡々と答えた。

 

淡々としすぎて逆に怖い。

 

俺は言った。

「どうしたらいい」

 

『答えは一つだ』

 

俺は食いついた。

「マジで?助かる!」

 

『世界を作り直せ』

 

俺は固まった。

「……え?」

 

『この世界は不要な感情が多すぎる』

 

「いや世界の話してねぇんだよ!!!!」

俺は思わず叫んだ。

 

周囲がビクッとする。

 

アオイが目を丸くした。

「えっ、今の何!?」

 

ネモがキラキラした目で言った。

「世界を作り直すって何!?かっこよくない!?」

 

ユウリが笑いながら言った。

「レイ、厨二病すぎ!」

 

「違う!!俺じゃない!!」

 

俺は叫び、スマホに向かって必死に言った。

「アカギ!もっと現実的な案!!現実的なやつ!!」

 

アカギは静かに言った。

『現実的、か』

 

『ならば一つある』

 

俺は即答した。

「それだ!!」

 

アカギは淡々と告げる。

『お前が負ければいい』

 

俺は口を開けた。

「……は?」

 

『負ければ、彼らは満足する』

 

「いやしねぇよ!!」

俺は叫んだ。

 

「ネモとか絶対満足しないだろ!負けたら次!勝ったら次!で無限にバトルするタイプだろあいつ!!」

 

ネモが「えっ、分かってる!」みたいな顔で頷いた。

「うん!私そういうタイプ!」

 

「ほらな!!」

俺はスマホに叫ぶ。

 

アカギは変わらない声で言った。

『ならば勝て』

 

「それが出来たら苦労しねぇよ!!」

 

『……』

アカギが少し黙った。

 

そして、静かに言った。

『零』

 

「何」

 

『お前は何を恐れている』

俺は一瞬、言葉に詰まった。

 

何を恐れてる?

そりゃ――

俺は視線を動かした。

 

ヒカリの鋭い目。

セレナの静かな圧。

レッドの無言の威圧。

ネモの狂気じみたバトル欲。

 

そして、俺のスマホに入ってる連絡帳。

 

俺は小さく言った。

「……誤解」

 

『誤解?』

 

「俺が女癖悪いって誤解されるのが嫌なんだよ……」

 

周囲が静かになった。

 

ハルカがぽつりと言った。

「……気にしてたんだ」

 

メイが小声で言う。

「かわいいとこあるじゃん……」

 

ミヅキがニヤッとする。

「それ気にしてるの、めっちゃウケる」

 

ヒカリはため息をついた。

「……当たり前じゃん。連絡帳ほぼ女なんだから」

 

「うるせぇ!!」

俺は叫んだ。

 

アカギは淡々と告げた。

『誤解なら、説明すればいい』

 

俺は即答した。

「説明できるならしてるわ!!」

 

『ならば――』

 

アカギは言った。

『消せ』

 

「……は?」

 

『連絡先を消せ』

俺は固まった。

 

……天才か?

 

いや。

アカギがまともなこと言った?

奇跡?

 

俺は思わず声が裏返った。

「お前……珍しくまともなこと言ったな……?」

 

『不要な繋がりは切れ』

 

「それギンガ団の思想じゃん!!」

 

俺はツッコミつつも、内心めちゃくちゃ納得してしまった。

 

そうだ。

消せばいい。

全て消せば。

 

俺は自由になれる。

 

俺はスマホを握り直し、決意した。

「……よし」

 

そしてアカギに言った。

「ありがとう。お前意外といいやつだな」

 

『勘違いするな。俺は善でも悪でもない』

 

「厨二みたいなこと言うな」

 

『事実だ』

 

俺は苦笑して通話を切った。

 

ピッ。

 

静寂。

俺はスマホを見つめた。

 

連絡帳。

そこにはまだ、彼女たちの名前が並んでいる。

俺は震える指で「編集」を押した。

 

ユウリが覗き込む。

「え、なにするの?」

 

俺は深呼吸して言った。

「……連絡先を消す」

 

ヒカリが目を丸くする。

「は?」

 

セレナが静かに言う。

「……消す?」

 

ネモが首を傾げる。

「連絡先って消せるの!?」

 

アオイも慌てて言った。

「え、え、待って!それって……みんなと連絡取れなくなるってこと!?」

 

俺は頷いた。

「そうだよ」

 

ハルカが焦る。

「えっ、なんで!?」

 

俺は叫んだ。

「お前らが追いかけてくるからだろ!!!!!!」

 

メイがムッとする。

「追いかけてないし!」

 

「追いかけてるわ!!」

 

ミヅキが笑いながら言った。

「れい、必死すぎ~」

 

俺はスマホを操作しながら、震える声で呟いた。

「……これで終わる」

 

これで俺は。

やっと平穏になれる。

 

そして俺は――

削除ボタンを押そうとした。

 

その瞬間。

背後から、神の気配がした。

空気が変わった。

 

嫌な汗が一気に噴き出る。

俺はゆっくり振り向いた。

 

そこにいた。

白く眩い存在。

 

馬。

輪っか。

全知全能。

 

――アルセウス。

 

俺の指が止まった。

世界が止まった。

 

アルセウスが静かに言った。

『……零』

 

俺は震える声で返した。

「……はい」

 

アルセウスは穏やかに告げる。

『今、何をしようとした?』

 

俺は固まった。

背中に冷たい汗が流れる。

 

ヒカリたちは息を呑む。

ネモは「え、アルセウス!?」と目を輝かせる。

アオイは口を開けたまま固まっている。

 

ユウリは完全に黙った。

ショウは静かに俺を見ている。

レッドは無言で腕を組んだ。

 

俺は、笑顔を作った。

そして、震える声で言った。

「……えーと」

 

削除ボタンの上で止まった指。

アルセウスの視線。

全員の視線。

 

俺は、乾いた声で言った。

「……何も?」

 

アルセウスは目を細めた。

『嘘をつくな』

 

俺は泣きそうになった。

 

終わった。

終わった終わった終わった。

俺は、スマホを持ったまま固まる。

 

そして心の中で叫んだ。

(神がストーカーしてくる世界、終わってるだろ!!!!)

 

次回

「マツブサ、アオギリ。なんかあるだろ?」

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