チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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第54話 マツブサ、アオギリ。なんかあるだろ?

俺は今。

パルデア地方の学園の中庭で。

アルセウスに見下ろされていた。

 

――いや、見下ろされてるというか。

神に監視されている。

 

これが人間の生活か?

違うだろ。

 

俺はスマホを握りしめたまま、震える声で言った。

「……アルセウス、これは違うんだ」

 

アルセウスは静かに言った。

『何が違う』

 

「いや、えっと……」

俺は言葉に詰まった。

 

何が違うんだ?

全部事実だろ。

 

連絡先を消そうとした。

逃げようとした。

 

現実から。

女から。

バトル狂から。

 

神から。

そして俺の人生から。

 

アルセウスの目は冷たい。

 

ヒカリが腕を組んで言った。

「零……さすがに今のは怪しいよ」

 

セレナは笑顔のまま言った。

「説明して?」

 

ハルカは困った顔で言った。

「零さん、なんで消すの……?」

 

メイはムスッとする。

「私たちのこと、嫌いなんですか?」

 

ミヅキは笑ってる。

「これめっちゃ面白い」

 

ネモは目を輝かせて言った。

「ねえねえ!アルセウスいるならバトルしようよ!」

 

「するな!!!!」

俺は即座に叫んだ。

 

アオイはパニック気味に言う。

「え、え、え!?なにこの状況!?なんで神様いるの!?」

 

ユウリは口を押さえて小声で言った。

「レイ……ほんとにヤバいやつだったんだ……」

 

「お前だけは黙れ!!」

俺は叫んだ。

 

ショウは俺の隣で静かに言った。

「零、落ち着いて」

 

「落ち着けるか!!!」

俺は叫びながら、スマホを握り直した。

 

……そうだ。

こういう時は。

もっと頭のおかしいやつに頼めば、相対的に俺が普通になる。

 

俺は連絡帳を開いた。

アルセウスがじっと見てくる。

俺は目を逸らして、指を滑らせる。

 

――マツブサ。

――アオギリ。

 

マグマ団とアクア団のボス。

俺の人生を「暑苦しさ」と「海水」で破壊した張本人たち。

 

だが今は、頼れる味方だ。

たぶん。

 

俺は同時に電話をかけた。

 

……二重通話?

知らん。

スマホは頑張れ。

 

プルルルル……。

プルルルル……。

 

周囲がまた静かになる。

アルセウスがため息をついた。

『……まだやるのか』

 

「やるよ!!!!」

 

俺は叫んだ。

「俺にはもうこれしか残ってないんだよ!!」

 

そして。

先に繋がった。

『……もしもし?』

マツブサの声。

 

次の瞬間。

『……おい、誰だ?』

アオギリの声も繋がった。

 

俺は即座に言った。

「もしもしマツブサ、アオギリ。お前らならなんかあるだろ?」

 

マツブサが即答する。

『零か。久しぶりだな』

 

アオギリも鼻で笑った。

『ハッ、また面倒に巻き込まれてる顔してんな』

 

俺はキレ気味に言った。

「面倒どころじゃねぇよ!!今アルセウスがいるんだよ!!」

 

空気が止まった。

周囲も止まった。

スマホの向こうも止まった。

 

……数秒後。

 

『……は?』

マツブサが聞き返した。

 

『……はぁ?』

アオギリも聞き返した。

 

俺は叫ぶ。

「アルセウスが目の前にいる!!!!」

 

アルセウスが静かに言った。

『……零』

 

「今は黙ってて!!!!」

俺は神に向かって言った。

 

ヒカリが呆れた声で言う。

「零、神にタメ口……」

 

セレナが小さく呟く。

「ほんとにこの人……」

 

ネモはキラキラしてる。

「すごい!神様に怒鳴ってる!」

 

アオイはドン引きしている。

ユウリはもう笑ってない。

ショウは諦めた顔をしている。

 

スマホの向こうでマツブサが咳払いした。

『……それで、どうした』

 

俺は早口で説明した。

「俺が女癖悪いって誤解されてて」

 

『ほう』

 

「パルデアの学園に来たらヒカリとかハルカとかメイとかセレナとかネモとかアオイとか増えて」

 

『増えて』

 

「レッドまで来て」

 

『レッドまで』

 

「アルセウスまで来た」

 

『神まで』

 

マツブサが静かに言った。

『……お前、何をした?』

 

「何もしてねぇよ!!!!」

俺は叫んだ。

 

アオギリが笑いながら言った。

『何もしてねぇやつの周りにそんな集まるかよ』

 

「集まるんだよ!!俺の人生はそういう仕様なんだよ!!」

 

俺は叫び、続けた。

「で、俺は連絡先を消して逃げようとしたらアルセウスに止められた!」

 

アオギリが大笑いした。

『ハハハハ!!最高かよ!!』

 

マツブサは真面目に考えている。

『……逃げたいのか?』

 

「逃げたい!!」

 

『ならば火山だ』

 

「火山!?」

 

マツブサが言った。

『マグマ団の基地に来い。暑さで全てを忘れられる』

 

「忘れられるか!!!死ぬだろ!!」

 

アオギリが割り込んだ。

『だったら海だ。海はいいぞ、零。全部洗い流せる』

 

「洗い流せるか!!溺れるわ!!」

 

アオギリは楽しそうに続ける。

『溺れたら誤解も何もなくなるしな!』

 

「縁起でもねぇこと言うな!!!!」

俺は叫んだ。

 

マツブサが静かに言う。

『ならば答えは簡単だ』

 

「お、まともなやつ来たか?」

 

『お前が我々の団員になればいい』

 

「ならねぇよ!!!!」

 

アオギリも即答した。

『アクア団に来い!海を広げるぞ!』

 

「広げなくていい!!!」

俺は絶叫した。

 

その瞬間、ハルカが俺のスマホを覗き込んで言った。

「……ねえ、今マツブサとアオギリ?」

俺は凍り付いた。

 

やばい。

聞かれた。

 

アオギリの声がスピーカー越しに響く。

『お?ハルカか?久しぶりだな!』

 

ハルカが眉をひそめる。

「久しぶりじゃないし、関わりたくもない」

 

マツブサが淡々と言う。

『……人の縁とは不思議なものだ』

 

セレナが微笑んで言った。

「八雲さん、あなたは……悪の組織と仲良しなんですか?」

 

「仲良しじゃねぇよ!!」

俺は叫んだ。

 

メイが目を輝かせた。

「え、すご!ボスと直通!?」

 

「すごくねぇよ!!」

 

ヒカリが心配そうに言う。

「零、危ない人たちと付き合ってるの?」

 

「付き合ってねぇよ!!」

 

ミヅキが笑う。

「付き合ってるって言い方、意味深~」

 

「意味深じゃねぇ!!」

 

ネモが楽しそうに言った。

「ねえねえ!マツブサさんとアオギリさんって強いの!?バトルしよ!」

 

『バトル?』

 

マツブサが反応する。

『望むところだ』

 

アオギリも笑う。

『おもしれぇ!今すぐ行くか!?』

 

「来るな!!!!!!」

俺は叫んだ。

 

アルセウスが静かに言った。

『……零』

 

「はい」

 

『お前は何をしている』

 

俺は泣きそうになった。

「……助けを求めてます」

 

アルセウスは一拍置いて言った。

『……助けを求める相手を間違えている』

 

「俺もそう思う!!!!」

俺は即答した。

 

マツブサが静かに言う。

『零。いいか』

 

「なに」

 

『お前は逃げようとしているから追われる』

 

「は?」

『堂々と立て。堂々と胸を張れ』

 

 

アオギリが続ける。

『そうだ。堂々と開き直れ。海の男みたいにな!』

 

「……開き直れ?」

俺は呟いた。

 

そして。

ふと気づく。

 

……確かに。

 

俺が「誤解される!」って騒ぐから怪しく見える。

俺が「逃げる!」って言うから追われる。

俺が「連絡帳消す!」ってやるから大騒ぎになる。

 

つまり。

最強の解決策は。

開き直って、堂々とすること。

 

俺はゆっくり立ち上がった。

そして、周囲を見渡す。

 

ヒカリ。

セレナ。

ハルカ。

 

メイ。

ミヅキ。

ネモ。

アオイ。

 

ユウリ。

ショウ。

レッド。

そしてアルセウス。

 

全員が俺を見ている。

俺はスマホを持ったまま、深呼吸した。

そして宣言した。

 

「……分かった」

 

全員が息を呑む。

 

俺は叫んだ。

「俺は女癖悪くない!!!!」

 

ヒカリが即答した。

「怪しい」

 

セレナが即答した。

「怪しいです」

 

メイが首を傾げる。

「怪しいかも」

 

ミヅキが爆笑する。

「怪しいっていうかもう黒じゃん!」

 

ユウリが腹を抱える。

「レイ、無理だってそれ!!」

 

ショウが真顔で言った。

「零、開き直り方が間違ってる」

 

俺は叫んだ。

「うるせぇ!!!!!!!!」

 

そしてスマホに向かって言う。

「マツブサ!アオギリ!ありがとな!!」

 

『礼はいい』

 

『ハハッ、今度酒でも飲もうぜ!』

 

「飲まねぇよ!!」

俺は通話を切った。

 

ピッ。

 

そして静寂。

俺は目を閉じた。

……結局、何も解決してない。

 

だが。

不思議と、さっきより心は軽かった。

 

俺は目を開けて、ネモを見る。

ネモは笑顔で言った。

「じゃあバトルしよ!」

 

俺は真顔で答えた。

「……はい」

 

俺のパルデア生活は。

開き直っても、結局バトルから逃げられなかった。

 

次回、

「まだ諦めないぞ…グズマ」




そう言えばポケマス始めました
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