チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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第55話 まだ諦めないぞ…グズマ

俺は思った。

……この世界、終わってる。

 

パルデア地方の学園。

青春の象徴みたいな場所で。

俺は今、神と元主人公たちと現主人公たちに囲まれながら、人生の危機を迎えている。

 

いや、危機じゃない。

もう手遅れだ。

 

俺の人生はすでに爆発している。

 

ネモは目をキラキラさせて言った。

「ねえねえ!バトルしよ!今すぐ!」

 

アオイもノリノリになっている。

「私も見たい!強いんでしょ!?零!」

 

ヒカリは腕を組んで言う。

「零、逃げたら許さないから」

 

セレナは微笑んでいる。

だが目が笑っていない。

 

ハルカとメイは「楽しそう!」と盛り上がってる。

ミヅキは「最高じゃん」と笑ってる。

ユウリは「青春だね!」と煽ってくる。

 

ショウは俺の袖を握ってる。

レッドは無言で圧をかけてくる。

アルセウスは上空で静かに見下ろしている。

 

……なんだこの地獄絵図。

 

俺は悟った。

普通の手段ではもう無理だ。

 

なら、最後の手段。

――もっとヤバいやつを呼ぶ。

 

そうすれば今度こそ相対的に俺がまともに見える。

そういう作戦だ。

 

俺はスマホを取り出した。

連絡帳。

悪の組織の欄をスクロールする。

 

サカキ。

アカギ。

ゲーチス。

 

フラダリ(本人)。

マツブサ。

アオギリ。

 

……そして。

グズマ。

スカル団のボス。

 

叫ぶ。

荒れる。

喧嘩上等。

 

そして何より、話が通じるタイプの悪人。

 

俺は震える指でタップした。

 

プルルルル……。

 

コール音。

 

ヒカリが呆れたように言う。

「また電話してる……」

 

セレナが笑顔で言う。

「八雲さん、今度は誰ですか?」

 

ネモが興味津々で覗き込む。

「ねえ!誰!?強い人!?」

 

俺は心の中で祈った。

頼む。

出てくれ。

 

そして俺を救ってくれ。

 

数秒後。

『……あぁ?誰だよ』

 

出た。

荒い声。

 

間違いない。

グズマだ。

 

俺は即座に言った。

「まだ諦めないぞ……もしもし!グズマ。」

 

『……は?』

グズマが間の抜けた声を出した。

 

『お前、零か?』

 

「そうだ」

 

『お前どこだよ、今』

 

俺は答えた。

「パルデア」

 

『……パルデアァ!?』

 

グズマが叫んだ。

『お前、なんでそんなとこいんだよ!?アローラじゃねぇぞ!?』

 

「俺もそう思ってる」

俺は即答した。

 

グズマは怒鳴った。

『で!?なんの用だよ!!』

 

俺は真剣に言った。

「助けてくれ」

 

『は?』

 

「俺、今学園で囲まれてる」

 

『囲まれてる?』

 

「ヒカリ、ハルカ、メイ、セレナ、ミヅキ、ユウリ、ショウ、アオイ、ネモ、レッド、アルセウスがいる」

 

『……』

 

沈黙。

 

そして。

『……お前、何した?』

グズマが冷静に聞いてきた。

 

いや、グズマが冷静になる状況って何だよ。

 

俺は即答した。

「何もしてない」

 

『嘘つけ!!!』

グズマが即座に叫んだ。

 

『何もしてねぇやつの周りにそんな揃うわけねぇだろ!!!』

 

「揃うんだよ!!俺の人生はそういうバグなんだよ!!」

俺が叫ぶと、周囲がざわついた。

 

アオイが「バグ?」と首を傾げる。

ネモが「人生がバグってるって面白い!」と笑う。

ユウリが「レイはいつもバグってるよ」と言う。

 

「黙れ」

俺はユウリを睨んだ。

 

スマホの向こうでグズマがため息をついた。

『……で、何をしてほしいんだよ』

 

「俺を助けろ」

 

『具体的に』

 

「この場から逃がしてくれ」

 

『……無理だろ』

 

「即答すんな!!」

俺は叫んだ。

 

グズマは続ける。

『だってよ、レッドいるんだろ?』

 

「いる」

 

『神もいるんだろ?』

 

「いる」

『女もいっぱいなんだろ?』

 

「いる」

 

『お前もう終わってるじゃん』

 

「終わってねぇ!!まだ諦めてねぇ!!」

俺は叫んだ。

 

グズマは少し笑った。

『……いいねぇ、その顔だよ』

 

『そういう時はよ、逃げるんじゃねぇ』

 

「じゃあどうすんだよ!」

 

『ぶち壊せ』

 

俺は固まった。

「……は?」

 

グズマは笑いながら言った。

『状況をよ』

 

『お前、いつも逃げてばっかなんだろ?』

 

「……」

 

図星だ。

俺は逃げてばっかだ。

 

誤解されるのが嫌で逃げて。

バトルが嫌で逃げて。

 

関係が深まるのが怖くて逃げて。

世界がめんどくさくて逃げて。

 

グズマが言った。

『なら逆に行けよ』

 

『「やってやる」って顔してみろ』

 

俺は息を飲んだ。

 

ヒカリたちが俺を見ている。

ネモはまだバトルする気満々。

レッドは無言で待ってる。

アルセウスは上から見てる。

 

俺は、スマホを握りしめた。

 

グズマの声が続く。

『零』

 

「……なんだよ」

 

『お前が本気出しゃ、誰も文句言えねぇんだろ?』

 

「……」

 

『だったら見せろよ』

 

『逃げてる暇あんなら、ぶっ飛ばして黙らせろ』

 

俺は喉を鳴らした。

 

正直。

俺はもう。

疲れた。

 

逃げるのにも疲れた。

言い訳するのにも疲れた。

誤解されるのにも疲れた。

 

……だったら。

開き直るしかない。

 

俺は、ゆっくり顔を上げた。

そして言った。

「……分かった」

 

グズマが笑う。

『その顔だ』

 

俺は小さく言った。

「ありがとう、グズマ」

 

『礼はいらねぇよ』

 

『お前が勝ったらスカル団に入れ』

 

「やだよ!!!!」

 

『じゃあ俺のことも連絡帳から消すなよ』

 

「それは……考えとく」

 

『ハッ!それでいい!』

グズマはそう言って、通話を切った。

 

ピッ。

 

俺はスマホをポケットにしまった。

そして、周囲を見渡す。

全員が俺を見ている。

 

ネモが満面の笑みで言った。

「ねえ!やっとやる気になった!?」

 

俺は静かに答えた。

「……ああ」

 

アオイが嬉しそうに言う。

「やった!バトルだ!」

 

ヒカリが腕を組む。

「やっと腹くくった?」

 

セレナは微笑む。

「逃げないのね?」

 

レッドが短く言った。

「……来い」

 

俺は、深呼吸した。

そして。

ボールケースに手を伸ばした。

 

「……お前ら」

 

俺は低い声で言った。

「俺が勝ったら――」

 

ネモが身を乗り出す。

「勝ったら!?」

 

俺は宣言した。

「全員、ヒウンアイス奢れ」

 

全員が固まった。

 

次の瞬間。

ミヅキが吹き出した。

「ヒウンアイスってwwww」

 

メイが目を輝かせる。

「懐かしいねそれ!!」

 

ハルカが笑う。

「零さん、そういうとこだよ!」

 

ヒカリが呆れたように言った。

「何その条件……」

 

セレナが微笑む。

「いいですよ。勝ったら奢りますね」

 

ネモがニヤッと笑った。

「面白いじゃん!じゃあ負けたらどうするの?」

 

俺は即答した。

「俺が奢る」

 

ネモが叫ぶ。

「決まり!バトルだ!!」

 

俺はボールを握りしめる。

クチートが前に出る。

鋼の顎がギチギチと鳴った。

 

俺は笑った。

逃げない。

今日は逃げない。

 

俺は叫ぶ。

「行くぞクチート!!」

 

そして。

俺は思った。

 

――これで負けたら、俺の財布が死ぬ。

 

俺の人生、金銭面でも終わってる。

 

次回

「…サカキ。…なんかないか?」

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