俺は今、人生で一番意味がわからない状況にいる。
レインボーロケット団のアジト。
豪華。
無駄に豪華。
悪の組織ってもっとこう、地下基地とか薄暗い部屋とかそういうのじゃないのか。
なんでホテルみたいなロビーがあるんだよ。
俺はソファに座らされ、目の前には――
サカキ。
アカギ。
ゲーチス。
フラダリ。
マツブサ。
アオギリ。
グズマ。
そして……俺。
この場にいるだけで胃が痛い。
俺は震える声で言った。
「……俺、本当に採用されたんですか?」
サカキが淡々と言った。
「ああ」
アカギが頷く。
「合理的だ」
ゲーチスが笑う。
「即採用だ。素晴らしいだろう?」
フラダリが両手を広げる。
「君は美しい未来に必要な存在だ!」
マツブサが腕を組む。
「根性ありそうだしな」
アオギリが笑う。
「いい船乗りになりそうだ」
グズマが肩をすくめる。
「ま、悪くねぇんじゃね?」
俺は死んだ目で呟いた。
「……悪くないの基準が怖いんだよ」
サカキが俺に封筒を投げた。
俺は反射的に受け取る。
封筒の中身を見ると――
社員証。
名札。
そして契約書。
俺は叫んだ。
「準備良すぎだろ!!!!」
ゲーチスが満足そうに頷いた。
「優秀な組織とはそういうものだ」
俺は震える声で言った。
「……で、仕事内容は?」
その瞬間。
全員が静かに笑った。
嫌な予感しかしない。
サカキが淡々と言った。
「簡単な任務だ」
俺はホッとした。
「簡単……よかった……」
サカキは続けた。
「パルデア地方で、人脈を広げろ」
俺は固まった。
「……人脈?」
サカキは頷く。
「そうだ」
ゲーチスがニヤリとする。
「つまり連絡先集めだな」
俺は叫んだ。
「俺の特技欄を本気にするな!!!!!!」
フラダリが微笑んで言った。
「君には才能がある。人を惹きつける才能がね」
俺は即答した。
「惹きつけたくて惹きつけてるわけじゃない!!」
アカギが冷たく言った。
「運命だ」
俺は泣きそうになった。
「運命って言葉で全部片付けるな!!!!」
グズマが笑う。
「お前、もう諦めろよ」
俺は机を叩いた。
「諦めたら終わりだろ!!!!」
その時、サカキが一枚の紙を俺に渡した。
俺は受け取って見た。
そこには、こう書かれていた。
【新人任務:レインボーロケット団】
・学園関係者の連絡先を確保
・チャンピオン級の戦力をスカウト
・協力者候補の好感度を上げる
・ついでに彼女を作れ(時給アップ)
俺は紙を見たまま固まった。
そして、ゆっくり顔を上げた。
「……最後の一文、誰が書いた」
ゲーチスがニコニコして言った。
「私だ」
俺は叫んだ。
「お前かよ!!!!!!!!」
ゲーチスが肩をすくめる。
「仕事は効率が重要だろう?」
俺は机を叩いた。
「彼女作るのは仕事じゃねぇだろ!!!!」
サカキが淡々と言った。
「組織の士気が上がる」
俺は震えた。
「悪の組織の士気ってそういうもんなのか……?」
フラダリが熱く語る。
「恋とは美しい!世界を輝かせる!」
俺は叫んだ。
「お前の恋愛観はもう信用できねぇ!!」
アオギリが笑う。
「海賊団でも恋は大事だぞ」
マツブサが頷く。
「火山でも恋は燃える」
俺は叫んだ。
「燃えなくていい!!!!」
アカギが無表情で言った。
「感情は不要」
俺は即答した。
「じゃあ彼女作る任務消せよ!!!!」
アカギは黙った。
ゲーチスがニヤニヤする。
「さて、零くん」
俺は嫌な予感がした。
「……何ですか」
ゲーチスは言った。
「君には既に強い武器がある」
俺は眉をひそめる。
「武器?」
ゲーチスが指を鳴らした。
すると、部屋の扉が開く。
そこに立っていたのは――
俺が見たことある顔。
しかも、俺の連絡帳にいた顔。
ナンジャモ。
カミツレ。
カトレア。
そしてなぜか……
ヒカリ。
セレナ。
ユウリ。
メイ。
ハルカ。
アオイ。
ネモ。
全員集合。
俺は叫んだ。
「なんでここにいるんだよお前ら!!!!!!!!」
ネモが元気よく叫ぶ。
「零が悪の組織に就職したって聞いたから来たよ!!」
ユウリが笑う。
「面白そうだから見学」
ヒカリが睨む。
「……零、後で話がある」
俺は震えた。
「やめてください」
セレナが微笑む。
「八雲さん、ちゃんと説明して?」
俺はさらに震えた。
「やめてください」
ナンジャモが動画回してた。
「はいどーもー!パルデアの闇を暴きに来たナンジャモでーす!」
俺は叫んだ。
「やめろ!!!!!!!!炎上する!!!!!!!!」
カミツレが微笑んだ。
「悪の組織って、意外とオシャレなのね」
カトレアが静かに言った。
「……あなた、覚悟はあるの?」
俺は死んだ目で言った。
「……お前らは俺の人生を終わらせたいの?」
ゲーチスが満足そうに言った。
「見ろ、これが君の人脈だ」
俺は叫んだ。
「人脈じゃなくて地雷原だろ!!!!!!」
サカキが立ち上がり、淡々と言った。
「八雲零。今から実技試験だ」
俺は固まった。
「実技試験……?」
サカキは言った。
「この場にいる者たちのうち、誰か一人をスカウトしろ」
俺は叫んだ。
「無理!!!!!!!!」
サカキは即答した。
「やれ」
俺は泣きそうになった。
「拒否権は!?」
サカキは冷たく言った。
「ない」
俺は震えながら周囲を見た。
全員が俺を見ている。
ネモは期待の目。
ヒカリは殺意の目。
セレナは微笑みの目。
ユウリはニヤニヤの目。
ナンジャモは撮影の目。
カトレアは圧の目。
カミツレはモデルの目。
俺は絶望した。
「……これ詰んでね?」
その瞬間。
俺の背後で、神の気配がした。
振り返ると――
アルセウスがいた。
当然のようにいた。
俺は叫んだ。
「お前!!!!!!!!」
アルセウスが静かに言った。
『仕事だ』
「仕事じゃねぇよ!!!!!!!!」
俺は叫びながら、全員を見回した。
そして。
俺は最終的に、一人を選んだ。
俺は深呼吸し、覚悟を決める。
――一番安全な相手。
――一番炎上しない相手。
――一番無害な相手。
俺は、静かに言った。
「……ネモ」
ネモが目を輝かせた。
「え!?私!?いいの!?スカウト!?!?」
俺は真顔で言った。
「レインボーロケット団に入らないか?」
ネモは即答した。
「入る!!!!!!!!」
俺は叫んだ。
「即答すんな!!!!!!!!」
ヒカリが頭を抱えた。
「終わった……」
ユウリが爆笑する。
「ネモ最強すぎwwwww」
サカキが頷いた。
「……合格だ」
俺は固まった。
「え、これでいいの?」
サカキは淡々と言った。
「ネモは戦闘狂。組織に適している」
ネモが元気よく言う。
「ねえねえ!今日から私も悪の組織!?バトルしよう!!」
俺は叫んだ。
「悪化しただけじゃねぇか!!!!!!!!」
アルセウスが満足そうに頷いた。
『よくやった』
「褒めるな!!!!!!」
その瞬間。
ナンジャモが叫んだ。
「はい!この瞬間を切り抜き動画にします!!!」
俺は絶叫した。
「やめろ!!!!!!!!!!!!!!!!」
こうして俺は。
履歴書を出したら即採用され。
初日で新人任務を達成し。
ついでに学園最強の爆弾(ネモ)を悪の組織に入団させた。
――終わった。
完全に終わった。
俺の人生、終わった。
次回
「アルセウスとまた口喧嘩する転生者」