チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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仮にこの子に零以外の名前をつけるなら八雲明莉ですね。


番外編7 別世界の俺と遭遇した。

俺は思う。

神ってのは、人を試すのが好きだ。

でもその試し方がだいたい間違ってる。

 

そして今日もアルセウスはやらかした。

 

いつものように俺は日本にいた。

平和だった。

……平和だったはずだった。

 

コンビニで買ったカップ麺にお湯を入れて、箸を割って、スマホを見た。

 

通知。

【ハーメルン:コメント】

【次は女体化IFですね!】

【別世界の零と会ってほしい】

【女零ちゃんルートお願いします】

【逆ハーレムの次は地獄のミラー戦で】

 

俺はスマホを見つめたまま呟いた。

「……コメント欄さぁ」

 

「お前ら、俺の人生を何だと思ってる?」

 

次の瞬間。

スマホが震えた。

 

着信。

【アルセウス】

 

俺は即座に叫んだ。

「やめろ!!!!!!!」

 

だが遅い。

 

光。

転移。

強制イベント。

いつもの神の悪ふざけ。

 

俺の視界が白く染まった。

目を開けた瞬間、俺は森の中にいた。

 

空気が違う。

木々が大きい。

空が近い。

鳥の鳴き声が、ポケモンの鳴き声。

 

俺はため息をついた。

「……またポケモン世界かよ」

 

そして背後から声。

「……あの」

 

俺は振り返った。

そこにいたのは――

 

俺だった。

 

いや、正確には。

俺に似た顔。

俺と同じ目つき。

俺と同じ雰囲気。

俺と同じ、人生を諦めたような顔。

 

ただし。

髪が長い。

体格が細い。

声が高い。

そして何より――

 

女だった。

 

俺は固まった。

「……は?」

 

相手も固まった。

「……は?」

 

俺は言った。

「……誰だよお前」

 

相手は即答した。

「……それ、こっちのセリフなんだけど」

 

俺は頭を抱えた。

「……終わった」

 

女の俺は俺をじっと見た。

 

そして口を開く。

「……え、なに?私の男バージョン?」

 

俺は言った。

「多分そう」

 

女の俺は腕を組む。

「……うわぁ……顔がムカつく」

 

俺は言った。

「それな」

 

女の俺は眉をひそめた。

「いや、でも……私、こんな声低くないし」

 

俺は言った。

「俺もこんな声高くない」

 

女の俺はため息を吐いた。

「……最悪」

 

俺は言った。

「同意」

 

そして二人同時に言った。

「「アルセウスのせいだろ」」

 

沈黙。

 

女の俺が呟く。

「……やっぱ同じだね」

 

俺は言った。

「黙れ」

 

その瞬間、空が光った。

金色の輪。

やっぱり来た。

 

アルセウス。

 

『よく会えたな、零』

 

俺は叫んだ。

「会わせるな!!!!!!!!!!」

 

女の俺も叫んだ。

「呼ぶな!!!!!!!!!!」

 

俺は一瞬固まった。

「……叫び方まで同じかよ」

 

女の俺が言った。

「そっちもでしょ」

 

アルセウスは淡々と告げる。

『これは試練だ』

 

俺は言った。

「試練って言えば何でも許されると思うな」

 

女の俺も言った。

「ほんとそれ」

 

アルセウスは続ける。

『二人で協力し、世界の歪みを正せ』

 

俺は言った。

「歪ませたの誰だよ」

 

女の俺が言った。

「まず歪ませた神が直せよ」

 

アルセウス『それは無理だ』

 

俺「なんでだよ!!!!」

 

女の俺「無理じゃねぇよ!!!!」

 

アルセウス『面白くないから』

 

俺「神やめろ!!!!!!」

 

女の俺「神失格!!!!!!」

 

アルセウスの光が消える。

残されたのは俺と女の俺。

 

俺はため息を吐いた。

「……で、どうする」

 

女の俺は同じようにため息を吐いた。

「……とりあえず状況整理しよう」

 

俺は言った。

「冷静だな」

 

女の俺は言った。

「いや、私もテンパってる」

 

「でもテンパったところで神は止まらない」

 

俺は言った。

「正論やめろ」

 

女の俺は俺を見て言った。

「ねぇ、あなたの世界ってどうなってるの?」

 

俺は言った。

「悪の組織がコメント欄で喧嘩してる」

 

女の俺は目を見開いた。

「……何それ」

 

俺は言った。

「俺もそう思う」

 

女の俺は言った。

「こっちは普通にチャンピオンやってたらアルセウスに嫌われた」

 

俺は言った。

「嫌われた理由は?」

 

女の俺は言った。

「口喧嘩した」

 

俺は言った。

「俺と同じじゃん」

 

女の俺は言った。

「あなたも?」

 

俺は言った。

「当たり前だろ」

 

女の俺は頷く。

「……だよね」

 

俺は言った。

「納得すんな」

 

その時。

草むらが揺れた。

 

大きい音。

バキバキと木が折れる。

 

俺は即座に警戒した。

「……来る」

 

女の俺が腰のボールに手をかける。

「オヤブンか、伝説か、どっち?」

 

俺は言った。

「……嫌な二択だな」

 

そこから現れたのは――

見たことのないポケモン。

 

いや、見たことある。

でも違う。

 

全身が黒く、赤い模様。

目が光ってる。

禍々しいオーラ。

 

女の俺が呟いた。

「……ダークポケモン?」

 

俺は呟いた。

「……シャドウポケモンか?」

 

そいつが吠えた。

「ギャオオオオオオ!!」

 

俺は言った。

「……アルセウス、絶対関係あるだろ」

 

女の俺が言った。

「間違いない」

 

俺はボールを投げた。

「行け、ミュウツー!」

 

女の俺も投げた。

「出てきて、ミュウツー!」

 

同時に二体のミュウツーが現れた。

俺のミュウツーは落ち着いている。

女の俺のミュウツーは、若干キレてる。

 

俺は言った。

「……性格まで違うのかよ」

 

女の俺が言った。

「そっちのミュウツー、優しそうで腹立つ」

 

俺は言った。

「腹立つ要素どこだよ」

 

女の俺が叫ぶ。

「ミュウツー!サイコブレイク!」

 

俺も叫ぶ。

「ミュウツー!サイコブレイク!」

 

二つのサイコブレイクが重なり合い、黒いポケモンに直撃。

爆発。

土煙。

黒いポケモンが倒れる。

 

……が。

立ち上がった。

赤い目がさらに光る。

 

俺は呟いた。

「……硬すぎだろ」

 

女の俺が言った。

「こういうの大体第二形態ある」

 

俺は言った。

「言うな」

 

その瞬間。

黒いポケモンの体が割れるように光った。

そして姿を変える。

 

翼。

長い体。

異様な影。

 

俺は息を呑んだ。

「……ギラティナ?」

 

女の俺が叫んだ。

「いや、雰囲気が違う!!」

 

黒いギラティナ――いや、シャドウギラティナが空に浮かぶ。

空が暗くなる。

地面が揺れる。

 

俺は言った。

「……最悪の展開だ」

 

女の俺が言った。

「でも、分かりやすい」

 

俺は言った。

「何が?」

 

女の俺は言った。

「これ倒したら歪み直る」

 

俺は言った。

「……お前、意外と頭いいな」

 

女の俺は言った。

「私だよ?」

 

俺は言った。

「黙れ」

 

俺は深呼吸した。

「ミュウツー、メガシンカ」

 

女の俺も言った。

「メガシンカ、いくよ」

 

光。

二体のメガミュウツー。

 

並ぶ姿は圧巻だった。

 

女の俺が言う。

「……こういうの、ちょっとかっこいいね」

 

俺は言った。

「認める」

 

女の俺がニヤっと笑う。

「じゃあ、行こうか」

 

俺も笑った。

「……行くぞ」

 

二人同時に叫ぶ。

「「ミュウツー!!フルパワーで行け!!!!」」

 

メガミュウツーのサイコパワーが炸裂する。

空が割れる。

闇が削れる。

 

シャドウギラティナが叫ぶ。

「ギャアアアアアアアア!!!!!」

 

そして――

消えた。

 

次の瞬間。

空が晴れた。

風が優しくなった。

森が静かになった。

 

女の俺が言った。

「……終わった?」

 

俺は言った。

「多分な」

 

その瞬間。

また空が光った。

 

アルセウス。

 

『よくやった』

 

俺は叫んだ。

「二度とやるな!!!!!!」

 

女の俺も叫んだ。

「次やったら絶対殴る!!!!!!」

 

アルセウス『無理だ』

 

俺「なんでだよ!」

 

アルセウス『神だから』

 

女の俺「最悪!!!!」

 

アルセウスが告げる。

『二人の零は、元の世界へ戻る』

 

俺は言った。

「……おい」

 

女の俺が俺を見る。

「……なに?」

 

俺は言った。

「お前、元気でな」

 

女の俺は一瞬驚いた顔をして――

すぐに笑った。

「……あなたもね」

 

そして小さく呟く。

「……私、あなたみたいなやつ嫌いだけど」

 

「……でも、ちょっと安心した」

 

俺は言った。

「……俺も」

 

女の俺が手を差し出した。

「握手しよ」

 

俺は言った。

「……気持ち悪い」

 

女の俺が言った。

「自分に言うな」

 

俺は仕方なく手を握った。

 

同じ手。

同じ温度。

でも違う人生。

 

俺は思った。

(……俺が女だったら、こんな感じなのか)

 

女の俺が言った。

「……ねぇ」

 

俺は言った。

「なんだ」

 

女の俺は笑って言った。

「私たち、アルセウスに振り回される運命なんだね」

 

俺は言った。

「……やめろ」

 

「認めたくない」

 

女の俺は笑った。

「だよね」

 

光が包む。

世界が遠ざかる。

最後に聞こえたのは女の俺の声。

 

「次会ったら――」

 

「もっと平和なイベントにしようね」

 

俺は叫んだ。

「それを神に言え!!!!!!」

 

気づけば俺は日本に戻っていた。

コンビニの前。

冷めたカップ麺。

 

スマホ。

通知。

【ハーメルン:コメント】

【女零ちゃん可愛かったです】

【男零と女零で夫婦みたい】

【次は同居編ですね】

【二人でチャンピオン戦やってください】

 

俺はスマホを閉じた。

そして空を見上げる。

「……アルセウス」

 

「お前、絶対読んでるだろ」

 

雲の隙間に金色の輪。

神が笑ってる気がした。

 

俺は呟いた。

「……次は絶対許さねぇ」

 

番外編7 完

(※八雲零は「自分は増やしてはいけない」という宇宙の真理を学んだ)

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