チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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第61話 アルセウスとまた口喧嘩する転生者

俺は今、人生最大級の理不尽に直面している。

目の前にいるのは――神。

 

アルセウス。

白くてデカくて威圧感があって、声が無駄に荘厳で、存在そのものが反則なやつ。

 

そして俺は。

ただの高校生。

ただの元チュートリアルお兄さん。

ただの、人生詰みかけ男。

 

なのに。

なぜか。

俺は神と口喧嘩している。

 

終わってる。

完全に終わってる。

 

俺は暑さで汗をかきながら、目の前のアルセウスを睨んだ。

「……お前さ」

 

アルセウスがゆっくり首を傾ける。

『なんだ』

 

「何で俺の人生、こんなことになってんの?」

 

アルセウスは即答した。

『面白いからだ』

 

俺は叫んだ。

「ふざけんな!!!!!!!!!!」

 

アオイが隣で青ざめている。

ネモは遠くで「喧嘩!?喧嘩!?バトル!?」みたいな顔をしてる。

ヒカリは頭を抱えている。

 

ショウは通信機越しに無言。

セレナは微笑んでいる。

ユウリは笑いを堪えている。

 

俺はアルセウスを指さした。

「お前、俺のこと完全に玩具だと思ってるだろ!」

 

アルセウスは堂々と言った。

『玩具ではない』

 

俺は即答した。

「じゃあ何だよ」

 

『娯楽だ』

 

「余計悪いわ!!!!!!!!」

 

俺は地面を蹴った。

「俺はなぁ!!本当はただ主人公にポケモン図鑑渡して、旅のアドバイスして、チャンピオンになったら『久しぶりだな』って出てきて連絡先渡すだけの存在だったんだよ!!」

 

アルセウスは頷いた。

『知っている』

 

「知ってるなら戻せ!!!!!!!!」

 

アルセウスは静かに言った。

『戻す気はない』

 

俺は絶望した。

 

「……は?」

俺の声が震えた。

 

アルセウスは淡々と続ける。

『お前は予想以上に世界に影響を与えた』

 

「与えてねぇよ!!!!!!」

 

『与えた』

 

「与えてねぇって!!!!!!」

 

アオイが小声で言った。

「零先輩……神様にそんな言い方して大丈夫なんですか……?」

 

俺は即答した。

「大丈夫じゃない」

 

アルセウスが俺を見下ろす。

『そもそも、お前が連絡先を増やし続けたのが原因だ』

 

俺は即座に反論した。

「違う!!それは俺のせいじゃない!!」

 

『では誰のせいだ』

 

俺は迷いなく言った。

「お前!!!!!!!!」

 

その場の空気が凍った。

 

アオイが息を止めた。

ネモが「うおおお」って顔をした。

ヒカリが「やめて零!!」って顔をした。

 

ユウリは腹を抱えた。

ショウの通信機が「……」って沈黙した。

セレナは楽しそうだった。

 

アルセウスはしばらく黙っていた。

 

そして。

静かに言った。

『……ほう』

 

俺は叫んだ。

「ほうじゃねぇよ!!!!」

 

俺は指を突きつける。

「だいたいお前、俺がパルデア来たら悪の組織のボス全員集合させるとかどうかしてるだろ!!」

 

アルセウスは淡々と言った。

『お前が「レインボーロケット団に入ればいい」と言った』

 

俺は叫ぶ。

「言ったけど!!言ったけどさぁ!!普通は冗談として流すだろ!!」

 

アルセウスは首を傾げた。

『冗談?』

 

「そうだよ!!」

 

『神に冗談は通じない』

 

「厄介すぎるだろ!!!!!!!!」

 

俺は深呼吸して、言った。

「じゃあ聞くけどさ……俺が女癖悪いみたいになってるのも、お前のせいだろ?」

 

アルセウスは即答した。

『そうだ』

 

「認めるな!!!!!!!!」

 

アオイが叫んだ。

「え!?神様認めた!?」

 

俺は続けた。

「だいたい連絡帳が女だらけなのは、俺が悪いんじゃない!!お前が俺を色んな地方に飛ばして、しかもそのたびに知り合い増やして、しかもその知り合いがだいたい女の子で!!」

 

アルセウスが淡々と言う。

『お前が話しかけた』

 

「話しかけるだろ!!礼儀だろ!!」

 

『礼儀で連絡先を交換するのか』

 

「するだろ!!」

 

アルセウスは静かに言った。

『しない』

 

俺は叫んだ。

「する!!!!!!!!!!」

 

ヒカリが遠くから叫んだ。

「しない!!!!!!!!!!」

 

俺はヒカリを指さした。

「ヒカリ!!お前どっちの味方だよ!!」

 

ヒカリが叫ぶ。

「常識の味方だよ!!!!」

 

俺はアルセウスに向き直る。

「お前さ、俺が困ってるの見て楽しいの?」

 

アルセウスは堂々と頷いた。

『楽しい』

 

「最低!!!!!!!!!!」

 

アオイが小声で呟いた。

「神様って……こんな感じなんだ……」

 

俺はさらに言った。

「そもそも!なんで俺はチュートリアルお兄さんなのに戦えるんだよ!!」

 

アルセウスは即答した。

『面白いからだ』

 

「それしか言わねぇな!!!!!!!!」

俺は叫びながら、今までのことを思い返した。

 

ギンガ団。

プラズマ団。

フレア団。

ロケット団。

レインボーロケット団。

 

何度も転職。

何度もボロ負け。

何度もメガシンカ。

何度もZ技。

何度もテラスタル。

 

そして何度も怒られる。

 

俺は叫んだ。

「俺はなぁ!!主人公の横で『ポケモンは仲間だ』とか言ってニコニコしてるだけの役なんだよ!!なんで伝説のポケモン出して戦ってんだよ!!」

 

アルセウスが静かに言った。

『お前が出した』

 

「出さざるを得ない状況にしたのお前だろ!!!!!!!!」

 

アルセウスは無言だった。

 

俺は続けた。

「しかもなんで俺、やたら服着るんだよ!!ギンガ団の服とか、プラズマ団の服とか、フレア団の服とか!!」

 

アルセウスが淡々と言った。

『似合うからだ』

 

「じゃあやめろ!!!!!!!!」

 

『やめない』

 

「お前!!!!!!!!」

 

俺は怒りで震えながら叫んだ。

「俺を元の世界に戻せ!!!!!!」

 

アルセウスはゆっくり言った。

『戻しても良い』

 

俺は固まった。

「……え?」

 

アオイも固まった。

「え?」

 

ヒカリが顔を上げた。

「え?」

 

ネモが叫んだ。

「え!?日本!?行くの!?私も行く!!」

 

俺はネモを無視してアルセウスに詰め寄った。

「マジ!?戻してくれるの!?今すぐ!?!」

 

アルセウスは静かに言った。

『条件がある』

 

俺は嫌な予感しかしなかった。

「……条件?」

 

アルセウスは堂々と言った。

『連絡帳を整理しろ』

 

俺は即答した。

「無理!!!!!!!!!!」

 

アルセウスが静かに言う。

『なら戻さない』

 

俺は叫んだ。

「いやいやいやいや!!!!!!!!」

 

俺は頭を抱えた。

「整理って何!?消すってこと!?俺の人生の証を消せってこと!?!」

 

アルセウスは淡々と言った。

『そうだ』

 

俺は叫んだ。

「無理に決まってるだろ!!!!!!!!」

 

アルセウスは首を傾げる。

『なぜだ』

 

俺は震えながら言った。

「……だって、みんなと知り合ったのは……悪くなかったから」

 

一瞬。

沈黙が落ちた。

 

アオイが目を丸くした。

ヒカリも、セレナも、ユウリも、ネモも。

少しだけ黙った。

 

俺は小さく続けた。

「……めんどくさいけどさ。地獄だけどさ。怒られるけどさ」

 

「……全部が全部、嫌だったわけじゃないんだよ」

 

アルセウスはしばらく黙っていた。

 

そして、ゆっくり言った。

『……ならば良い』

 

俺は顔を上げた。

「え?」

 

アルセウスは続けた。

『だが、お前は調子に乗るな』

 

俺は即答した。

「乗ってねぇよ!!!!!!!!」

 

アルセウスは静かに言った。

『乗っている』

 

俺は叫んだ。

「乗ってねぇ!!!!!!!!」

 

アオイが震えながら言った。

「……すごい。神様と対等に喧嘩してる……」

 

俺は叫んだ。

「対等じゃねぇよ!!俺は一方的に殴られてるだけだ!!」

 

アルセウスは淡々と言った。

『だが生きている』

 

「それが不思議なんだよ!!!!!!!!」

 

アルセウスがゆっくり背を向ける。

『……次は気を付けろ』

 

俺は叫んだ。

「気を付けられるか!!!!!!!!」

 

アルセウスが消えかけた瞬間、俺は最後に叫んだ。

「おい!!!!!!!!」

 

アルセウスが振り返る。

『なんだ』

 

俺は言った。

「俺が女癖悪いって噂、なんとかしろ!!!!!!」

 

アルセウスは一瞬黙り――

そして。

『……努力しろ』

 

そう言い残して消えた。

 

俺は叫んだ。

「神の努力ってなんだよ!!!!!!!!!!」

 

アオイが呟いた。

「……終わった」

 

ネモが元気よく叫んだ。

「零!バトルしよう!!神様も見てたし絶対盛り上がるよ!!」

 

俺は空を見上げて、乾いた笑いを漏らした。

「……俺の人生、どうなってんだよ」

 

帰還編

「帰還、日本。なのに連絡帳が消えない」

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