翌朝。
俺は目覚めた瞬間、嫌な予感がした。
こういうのは経験で分かる。
夢じゃない。
地獄は続いてる。
そして案の定、枕元のスマホが震えていた。
通知。
通知。
通知。
通知。
通知。
通知。
……通知。
うるさい。
俺は寝ぼけたままスマホを手に取り、画面を見た。
LI○Eの通知がまず大量。
【ネモ】
【ヒカリ】
【ユウリ】
【ショウ】
【ゲーチス】
【サカキ】
【アルセウス】
……もう嫌だ。
俺は一旦LINEを無視し、最初に開いたのはハーメ○ンだった。
昨夜、勢いで投稿した。
あれがどうなったか確認するためだ。
俺は眠い目でログインし、マイページを開く。
そして。
俺は固まった。
「……は?」
画面に表示されていた数字。
【総合評価】 9,821
【ブックマーク】 4,103
【感想】 1,252
【レビュー】 46
【PV】 148,932
俺は無言でスマホを見つめた。
数秒。
十秒。
十五秒。
俺はようやく声を出した。
「……閲覧数が異常なんだが」
いや、異常すぎる。
何が起きてる?
昨日投稿したばかりだぞ?
俺はスマホを二度見する。
いや三度見する。
数字が変わらない。
夢じゃない。
現実。
俺はベッドから飛び起きた。
「ちょっと待って待って待って」
俺は布団を蹴り飛ばしながら机に向かった。
パソコンを開く。
ハー○ルンを開く。
マイページを更新。
数字。
増えてる。
【PV】 149,540
【PV】 150,021
【PV】 150,890
増えてる。
リアルタイムで増えてる。
怖い。
俺は鳥肌が立った。
「なんで……?」
俺は慌ててランキングを確認した。
総合ランキング。
俺の作品が――
載っている。
しかも。
上の方。
信じられない位置。
俺は震える声で呟いた。
「……え、嘘だろ」
その瞬間。
スマホが震えた。
LINE。
【ネモ】
俺は嫌な予感で開く。
ネモ:
『零!!!!!!すごい!!!!!!ランキング上位!!!!!!』
『コメント欄がバトルしてる!!!!!!』
『めっちゃ面白い!!!!!!続き書いて!!!!!!』
俺は叫んだ。
「コメント欄がバトルしてるって何だよ!!!!!!」
次の通知。
【ヒカリ】
ヒカリ:
『……零、あなた今すぐはコメント欄見ない方がいい』
『心が折れる』
俺は震えた。
「え、そんなヤバいの……?」
次の通知。
【ユウリ】
ユウリ:
『やばいwwwww』
『なんでレイの話、日本でも人気なのwwww』
『私笑い死ぬwwwww』
死ぬのは俺だ。
俺は喉を鳴らしながら、恐る恐る感想欄を開いた。
そこにあったのは。
地獄。
地獄のスクロール。
地獄の文章。
【感想】
・「腹筋が死んだ」
・「アルセウスが一番クズで草」
・「主人公の人生が炎上してるのに面白いのズルい」
・「ネモが現代日本に来たら終わる」
・「ゲーチスが時給制なの笑う」
・「サカキが上司すぎる」
・「ヒカリ可哀想」
・「オリ主が不憫すぎて逆に好き」
・「連絡帳の女子率がヤバい」
・「浮気してないのに浮気してるみたいなの草」
・「これアルセウスの二次創作では?」
・「作者、神に監視されてません?」
俺は呟いた。
「監視されてるよ……」
さらにスクロール。
感想が続く。
・「主人公が可哀想なのに自業自得感もあるの絶妙」
・「こういうギャグオリ主待ってた」
・「続き早く」
・「更新遅いとアルセウスが怒りそう」
・「神に怒られる主人公、斬新」
・「これは評価入れるしかない」
俺は、ほんの少しだけ安心した。
好意的な感想が多い。
良かった。
……良かったのか?
いや、良くない。
俺の人生が晒されてる。
だが。
さらにスクロールしていくと。
空気が変わった。
・「これ作者の願望だろ。女キャラと連絡先交換しまくりとか」
・「ただのハーレム系じゃん」
・「作者キモい」
・「主人公の性格が無理」
・「アルセウスが可哀想」
・「原作キャラを道具にするな」
・「これネタにしてるけど普通に不快」
俺は無言になった。
胸がズキッとした。
「……あぁ」
こういうのは、来る。
ネットってこういうもんだ。
分かってる。
分かってた。
でも、刺さる。
だって事実だから。
俺は本当に女の連絡先が多い。
俺は本当に色んなキャラと絡んだ。
俺は本当に世界を引っ掻き回した。
俺は本当に――。
その時。
コメント欄に、とんでもない書き込みがあった。
・「これ絶対本人だろ」
俺は固まった。
「……は?」
続く書き込み。
・「この作者、現実でもポケモン世界でも同じことしてそう」
俺は青ざめた。
「やめろ」
さらに。
・「作者の名前“八雲零”ってもしかして実名?」
俺は叫んだ。
「違う!!!!!!!!!!」
実名じゃない。
絶対に違う。
……違うよな?
俺は不安になった。
俺の名前、なんだっけ。
八雲零は設定上の名前だ。
俺の本名は――
俺は急に怖くなって、スマホを握りしめた。
その瞬間。
LI○Eが鳴る。
通知。
【アルセウス】
俺は震える手で開いた。
アルセウス:
『人気だな』
俺は叫んだ。
「お前のせいだろ!!!!!!!!!!」
送信。
既読。
すぐ返信。
アルセウス:
『当然だ』
当然じゃねぇ。
俺は勢いで打った。
「閲覧数おかしいだろ!!お前何した!?」
送信。
既読。
アルセウスの返信。
アルセウス:
『少し宣伝した』
俺は叫んだ。
「宣伝って何したんだよ!!!!!!!!!!」
既読。
返信。
アルセウス:
『全地方の端末に表示した』
俺は死んだ。
「……は?」
つまり。
ポケモン世界の人間全員が。
俺の黒歴史小説を。
見ている。
読んでいる。
感想を書いている。
評価している。
ブックマークしている。
ランキングを上げている。
だからPVが異常。
だから伸び方が異常。
だからコメント欄が戦争。
俺はベッドに倒れ込んだ。
「……終わった」
俺の人生。
終わった。
俺は枕に顔を押し付けた。
「……俺、もう日本に帰ってきた意味ないじゃん……」
その瞬間。
またLI○E通知。
【不明】
俺の心臓が跳ねた。
昨日の、あの「読んだ」のやつ。
俺は恐る恐る開いた。
???:
『続きまだか』
俺は震えながら打った。
「誰だよ」
既読。
返信。
???:
『俺だ』
俺は叫んだ。
「分かるわけねぇだろ!!!!!!!!!!!!」
その直後。
スマホが震えた。
今度は着信。
電話。
表示された名前。
【レッド】
俺は固まった。
レッド。
レッド。
レッド。
あの無口で。
強くて。
圧が強くて。
無言で○しにくる。
あのレッド。
俺は青ざめた。
「……嘘だろ」
着信は鳴り続ける。
俺は出るべきか迷った。
でも。
出なかったら。
何が起きるか分からない。
俺は震える指で通話ボタンを押した。
「……もしもし」
電話の向こう。
沈黙。
数秒後。
低い声が一言だけ。
『……読んだ』
俺は死んだ目で呟いた。
「……ですよね」
レッドは淡々と言った。
『続き』
俺は震えた。
「……え?」
レッドが言う。
『続き書け』
俺は泣きそうになりながら叫んだ。
「読者が圧強い!!!!!!!!!!」
電話は切れた。
俺はスマホを握りしめたまま、呆然と天井を見つめた。
PVは増え続ける。
通知は止まらない。
コメント欄は燃えている。
俺の人生は燃えている。
そして。
俺は悟った。
もう逃げられない。
この物語を――
完結させるまで。
次回
「コメント欄で悪の組織が喧嘩してる」