チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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第65話 閲覧数が異常なんだが

翌朝。

俺は目覚めた瞬間、嫌な予感がした。

 

こういうのは経験で分かる。

夢じゃない。

地獄は続いてる。

 

そして案の定、枕元のスマホが震えていた。

 

通知。

通知。

通知。

通知。

通知。

通知。

 

……通知。

 

うるさい。

俺は寝ぼけたままスマホを手に取り、画面を見た。

 

LI○Eの通知がまず大量。

【ネモ】

【ヒカリ】

【ユウリ】

【ショウ】

【ゲーチス】

【サカキ】

【アルセウス】

 

……もう嫌だ。

 

俺は一旦LINEを無視し、最初に開いたのはハーメ○ンだった。

昨夜、勢いで投稿した。

あれがどうなったか確認するためだ。

 

俺は眠い目でログインし、マイページを開く。

 

そして。

俺は固まった。

「……は?」

 

画面に表示されていた数字。

【総合評価】 9,821

【ブックマーク】 4,103

【感想】 1,252

【レビュー】 46

【PV】 148,932 

 

俺は無言でスマホを見つめた。

数秒。

十秒。

十五秒。

 

俺はようやく声を出した。

「……閲覧数が異常なんだが」

 

いや、異常すぎる。

何が起きてる?

昨日投稿したばかりだぞ?

 

俺はスマホを二度見する。

いや三度見する。

数字が変わらない。

 

夢じゃない。

現実。

 

俺はベッドから飛び起きた。

「ちょっと待って待って待って」

俺は布団を蹴り飛ばしながら机に向かった。

 

パソコンを開く。

ハー○ルンを開く。

マイページを更新。

 

数字。

増えてる。

【PV】 149,540

【PV】 150,021

【PV】 150,890

 

増えてる。

リアルタイムで増えてる。

怖い。

 

俺は鳥肌が立った。

「なんで……?」

 

俺は慌ててランキングを確認した。

総合ランキング。

俺の作品が――

 

載っている。

しかも。

上の方。

 

信じられない位置。

 

俺は震える声で呟いた。

「……え、嘘だろ」

 

その瞬間。

スマホが震えた。

LINE。

 

【ネモ】

俺は嫌な予感で開く。

ネモ:

『零!!!!!!すごい!!!!!!ランキング上位!!!!!!』

 

『コメント欄がバトルしてる!!!!!!』

 

『めっちゃ面白い!!!!!!続き書いて!!!!!!』

 

俺は叫んだ。

「コメント欄がバトルしてるって何だよ!!!!!!」

 

次の通知。

【ヒカリ】

 

ヒカリ:

『……零、あなた今すぐはコメント欄見ない方がいい』

 

『心が折れる』

 

俺は震えた。

「え、そんなヤバいの……?」

 

次の通知。

【ユウリ】

 

ユウリ:

『やばいwwwww』

 

『なんでレイの話、日本でも人気なのwwww』

 

『私笑い死ぬwwwww』

 

死ぬのは俺だ。

俺は喉を鳴らしながら、恐る恐る感想欄を開いた。

 

そこにあったのは。

地獄。

地獄のスクロール。

地獄の文章。

 

【感想】

・「腹筋が死んだ」

・「アルセウスが一番クズで草」

・「主人公の人生が炎上してるのに面白いのズルい」

・「ネモが現代日本に来たら終わる」

・「ゲーチスが時給制なの笑う」

・「サカキが上司すぎる」

・「ヒカリ可哀想」

・「オリ主が不憫すぎて逆に好き」

・「連絡帳の女子率がヤバい」

・「浮気してないのに浮気してるみたいなの草」

・「これアルセウスの二次創作では?」

・「作者、神に監視されてません?」

 

俺は呟いた。

「監視されてるよ……」

 

さらにスクロール。

感想が続く。

 

・「主人公が可哀想なのに自業自得感もあるの絶妙」

・「こういうギャグオリ主待ってた」

・「続き早く」

・「更新遅いとアルセウスが怒りそう」

・「神に怒られる主人公、斬新」

・「これは評価入れるしかない」

 

俺は、ほんの少しだけ安心した。

好意的な感想が多い。

良かった。

 

……良かったのか?

 

いや、良くない。

俺の人生が晒されてる。

 

だが。

さらにスクロールしていくと。

 

空気が変わった。

 

・「これ作者の願望だろ。女キャラと連絡先交換しまくりとか」

・「ただのハーレム系じゃん」

・「作者キモい」

・「主人公の性格が無理」

・「アルセウスが可哀想」

・「原作キャラを道具にするな」

・「これネタにしてるけど普通に不快」

 

俺は無言になった。

胸がズキッとした。

「……あぁ」

 

こういうのは、来る。

ネットってこういうもんだ。

 

分かってる。

分かってた。

 

でも、刺さる。

だって事実だから。

 

俺は本当に女の連絡先が多い。

俺は本当に色んなキャラと絡んだ。

俺は本当に世界を引っ掻き回した。

 

俺は本当に――。

 

その時。

コメント欄に、とんでもない書き込みがあった。

・「これ絶対本人だろ」

 

俺は固まった。

「……は?」

 

続く書き込み。

・「この作者、現実でもポケモン世界でも同じことしてそう」

 

俺は青ざめた。

「やめろ」

 

さらに。

・「作者の名前“八雲零”ってもしかして実名?」

 

俺は叫んだ。

「違う!!!!!!!!!!」

 

実名じゃない。

絶対に違う。

 

……違うよな?

 

俺は不安になった。

俺の名前、なんだっけ。

八雲零は設定上の名前だ。

 

俺の本名は――

 

俺は急に怖くなって、スマホを握りしめた。

その瞬間。

LI○Eが鳴る。

 

通知。

【アルセウス】

 

俺は震える手で開いた。

 

アルセウス:

『人気だな』

 

俺は叫んだ。

「お前のせいだろ!!!!!!!!!!」

 

送信。

既読。

すぐ返信。

 

アルセウス:

『当然だ』

 

当然じゃねぇ。

 

俺は勢いで打った。

「閲覧数おかしいだろ!!お前何した!?」

 

送信。

既読。

アルセウスの返信。

 

アルセウス:

『少し宣伝した』

 

俺は叫んだ。

「宣伝って何したんだよ!!!!!!!!!!」

 

既読。

返信。

 

アルセウス:

『全地方の端末に表示した』

 

俺は死んだ。

「……は?」

 

つまり。

ポケモン世界の人間全員が。

俺の黒歴史小説を。

 

見ている。

読んでいる。

感想を書いている。

 

評価している。

ブックマークしている。

ランキングを上げている。

 

だからPVが異常。

だから伸び方が異常。

だからコメント欄が戦争。

 

俺はベッドに倒れ込んだ。

「……終わった」

 

俺の人生。

終わった。

 

俺は枕に顔を押し付けた。

「……俺、もう日本に帰ってきた意味ないじゃん……」

 

その瞬間。

またLI○E通知。

 

【不明】

 

俺の心臓が跳ねた。

昨日の、あの「読んだ」のやつ。

 

俺は恐る恐る開いた。

 

???:

『続きまだか』

 

俺は震えながら打った。

「誰だよ」

 

既読。

返信。

 

???:

『俺だ』

 

俺は叫んだ。

「分かるわけねぇだろ!!!!!!!!!!!!」

 

その直後。

スマホが震えた。

 

今度は着信。

電話。

 

表示された名前。

【レッド】

 

俺は固まった。

 

レッド。

レッド。

レッド。

 

あの無口で。

強くて。

圧が強くて。

無言で○しにくる。

 

あのレッド。

 

俺は青ざめた。

「……嘘だろ」

 

着信は鳴り続ける。

俺は出るべきか迷った。

 

でも。

出なかったら。

 

何が起きるか分からない。

 

俺は震える指で通話ボタンを押した。

「……もしもし」

 

電話の向こう。

沈黙。

数秒後。

 

低い声が一言だけ。

『……読んだ』

 

俺は死んだ目で呟いた。

「……ですよね」

 

レッドは淡々と言った。

『続き』

 

俺は震えた。

「……え?」

 

レッドが言う。

『続き書け』

 

俺は泣きそうになりながら叫んだ。

「読者が圧強い!!!!!!!!!!」

 

電話は切れた。

俺はスマホを握りしめたまま、呆然と天井を見つめた。

 

PVは増え続ける。

通知は止まらない。

コメント欄は燃えている。

俺の人生は燃えている。

 

そして。

俺は悟った。

もう逃げられない。

 

この物語を――

完結させるまで。

 

次回

「コメント欄で悪の組織が喧嘩してる」

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