俺はもう、現実を受け入れつつあった。
スマホの連絡帳は消えない。
通知は止まらない。
アルセウスは暇人。
そして俺の黒歴史小説は、なぜか全世界規模で読まれている。
……いや、全地方規模で読まれている。
つまり。
俺の人生は「公式」になった。
終わりである。
俺は机に突っ伏しながら、ハーメルンの感想欄を眺めていた。
もう怖いものはない。
怖いものはない……はずだった。
しかし。
俺はあるコメントを見た瞬間、思考停止した。
【感想】
ギンガ団幹部(匿名):
「我らが団の制服が似合うのは当然だ。宇宙の美学は洗練されている」
俺は呟いた。
「……お前ら本当に見てるんだな」
さらに下。
プラズマ団員(匿名):
「いやいや、うちの団の方がホワイト企業なんだが?時給2250円出してるんだが?」
俺は即座にツッコんだ。
「時給の話をするな!!!!!!」
そして。
その下に、見たことある口調が現れた。
フレア団(匿名):
「美しい世界を作るためには選別が必要。つまり零は選ばれた人間ということだ」
俺は眉間にしわを寄せた。
「お前絶対フラダリだろ!!!!!!!!」
さらに。
スカル団(匿名):
「いや零は俺らの仲間だろ。ノリがいい。つまり俺らが一番合ってる」
俺は目を細めた。
「グズマお前、コメント欄でも馴れ馴れしいな!!!!」
その瞬間。
コメント欄が、明らかに戦場になった。
プラズマ団員(匿名):
「ギンガ団とか時代遅れだろ。宇宙とか言って給料いくらだよ」
ギンガ団幹部(匿名):
「給料など俗物の概念。我らは宇宙の理を目指している」
フレア団(匿名):
「給料ではなく理念が重要だ。美しさこそ正義」
スカル団(匿名):
「うっせぇ!ノリで決めろよ!」
マグマ団(匿名):
「陸を増やせば全て解決だろ」
アクア団(匿名):
「海を増やせば全て解決だろ」
俺は叫んだ。
「解決しねぇよ!!!!!!!!!!!!」
そして、最悪なことに。
コメント欄がどんどん伸びる。
伸びる伸びる伸びる。
しかも、全員本気。
レスバが始まっている。
完全に始まっている。
ギンガ団幹部(匿名):
「零が我らを選んだのは必然。あの完璧な制服の着こなしが証明している」
プラズマ団員(匿名):
「いや零は金に釣られてたけど?“時給は?”って聞いてたけど?」
フレア団(匿名):
「零は美しい世界に惹かれていた。つまりフレア団が正解だ」
スカル団(匿名):
「零はヤケクソで来ただけだろw」
ロケット団(匿名):
「フッ……真の組織はロケット団だ。零、君は分かっているな?」
俺は固まった。
「……え?」
ロケット団のコメント。
これ、口調が。
あまりにも。
あまりにも。
“上司”だった。
そして、返信がついた。
レインボーロケット団(匿名):
「採用したのは我々だ。異論は認めない」
俺は目を見開いた。
「……やめろ!!!!!!」
もうやめてくれ。
コメント欄で派閥争いすんな。
俺の物語の感想欄だぞ?
いや、感想欄というか戦場だ。
俺の人生を巡って、悪の組織が争ってる。
俺は冷や汗をかきながらスクロールした。
すると、さらにとんでもない流れになっていた。
プラズマ団員(匿名):
「フレア団って炎上しかしてなくね?」
フレア団(匿名):
「黙れ。美しさを理解できぬ愚者め」
ギンガ団幹部(匿名):
「そもそも世界を変えるなら宇宙規模で考えろ」
スカル団(匿名):
「宇宙とか厨二www」
ギンガ団幹部(匿名):
「……貴様、言ったな?」
俺は叫んだ。
「やめろ!!!!!ギンガ団はマジで殺しに行くぞ!!!!!!」
さらに。
マグマ団(匿名):
「零を採用したいなら陸を増やせ」
アクア団(匿名):
「いや海を増やせ」
マグマ団(匿名):
「いや陸」
アクア団(匿名):
「いや海」
俺は頭を抱えた。
「お前らは永遠にそれ言ってろ!!!!!!」
その時。
突然、コメント欄の空気が変わった。
今までの罵倒と煽りが、急に止まった。
誰も返信しなくなった。
まるで、何かに気づいたように。
俺はスクロールを止めた。
そして、見た。
新しいコメント。
たった一つ。
短い。
しかし圧倒的。
サカキ(匿名ではない):
「静かにしろ」
俺は息を止めた。
コメント欄が――
凍った。
本当に凍った。
さっきまでレスバしてた悪の組織たちが、一斉に黙った。
誰も返信しない。
煽りもない。
反論もない。
ただ。
沈黙。
俺は呟いた。
「……コメント欄で悪の組織が喧嘩してるだけでも終わってるのに」
「……サカキの一言で全員黙るの、もっと終わってるだろ」
その瞬間、さらにサカキが追撃した。
サカキ:
「零。続きを書け。これは命令だ」
俺は叫んだ。
「読者じゃなくて上司が命令してくんな!!!!!!!!!!!!」
そしてコメント欄が再び動き出す。
だが、さっきとは違う。
全員、敬語になっていた。
プラズマ団員(匿名):
「し、失礼しました……」
ギンガ団幹部(匿名):
「……申し訳ない」
フレア団(匿名):
「……美しくなかった」
スカル団(匿名):
「すんませんっした……」
マグマ団(匿名):
「……陸は、また今度にする」
アクア団(匿名):
「……海も、また今度にする」
俺は呆然とした。
「統率力が異常なんだよ!!!!!!!!」
その時。
スマホが震えた。
LI○E通知。
【アルセウス】
俺は嫌な予感で開く。
アルセウス:
『面白い』
俺は即答した。
「面白くねぇよ!!!!!!!!!!」
俺は頭を抱えたまま、天井を見上げた。
俺の人生。
いつから、こんな壮大な茶番になったんだ。
俺は静かに呟く。
「……もうやだ」
だが。
コメント欄は、まだ終わっていなかった。
最後に一つ。
新しいコメントが追加される。
レッド:
「続きを」
俺は叫んだ。
「お前も来るな!!!!!!!!!!!!!!!!」
次回
「コメント欄が神に監視されてる」