チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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第66話 コメント欄で悪の組織が喧嘩してる

俺はもう、現実を受け入れつつあった。

スマホの連絡帳は消えない。

通知は止まらない。

 

アルセウスは暇人。

 

そして俺の黒歴史小説は、なぜか全世界規模で読まれている。

……いや、全地方規模で読まれている。

 

つまり。

俺の人生は「公式」になった。

終わりである。

 

俺は机に突っ伏しながら、ハーメルンの感想欄を眺めていた。

もう怖いものはない。

 

怖いものはない……はずだった。

 

しかし。

俺はあるコメントを見た瞬間、思考停止した。

 

【感想】

ギンガ団幹部(匿名):

「我らが団の制服が似合うのは当然だ。宇宙の美学は洗練されている」

 

俺は呟いた。

「……お前ら本当に見てるんだな」

 

さらに下。

 

プラズマ団員(匿名):

「いやいや、うちの団の方がホワイト企業なんだが?時給2250円出してるんだが?」

 

俺は即座にツッコんだ。

「時給の話をするな!!!!!!」

 

そして。

その下に、見たことある口調が現れた。

 

フレア団(匿名):

「美しい世界を作るためには選別が必要。つまり零は選ばれた人間ということだ」

 

俺は眉間にしわを寄せた。

「お前絶対フラダリだろ!!!!!!!!」

 

さらに。

 

スカル団(匿名):

「いや零は俺らの仲間だろ。ノリがいい。つまり俺らが一番合ってる」

 

俺は目を細めた。

「グズマお前、コメント欄でも馴れ馴れしいな!!!!」

 

その瞬間。

コメント欄が、明らかに戦場になった。

 

プラズマ団員(匿名):

「ギンガ団とか時代遅れだろ。宇宙とか言って給料いくらだよ」

 

ギンガ団幹部(匿名):

「給料など俗物の概念。我らは宇宙の理を目指している」

 

フレア団(匿名):

「給料ではなく理念が重要だ。美しさこそ正義」

 

スカル団(匿名):

「うっせぇ!ノリで決めろよ!」

 

マグマ団(匿名):

「陸を増やせば全て解決だろ」

 

アクア団(匿名):

「海を増やせば全て解決だろ」

 

俺は叫んだ。

「解決しねぇよ!!!!!!!!!!!!」

 

そして、最悪なことに。

コメント欄がどんどん伸びる。

伸びる伸びる伸びる。

 

しかも、全員本気。

 

レスバが始まっている。

完全に始まっている。

 

ギンガ団幹部(匿名):

「零が我らを選んだのは必然。あの完璧な制服の着こなしが証明している」

 

プラズマ団員(匿名):

「いや零は金に釣られてたけど?“時給は?”って聞いてたけど?」

 

フレア団(匿名):

「零は美しい世界に惹かれていた。つまりフレア団が正解だ」

 

スカル団(匿名):

「零はヤケクソで来ただけだろw」

 

ロケット団(匿名):

「フッ……真の組織はロケット団だ。零、君は分かっているな?」

 

俺は固まった。

「……え?」

 

ロケット団のコメント。

 

これ、口調が。

あまりにも。

あまりにも。

 

“上司”だった。

 

そして、返信がついた。

レインボーロケット団(匿名):

「採用したのは我々だ。異論は認めない」

 

俺は目を見開いた。

「……やめろ!!!!!!」

 

もうやめてくれ。

コメント欄で派閥争いすんな。

俺の物語の感想欄だぞ?

 

いや、感想欄というか戦場だ。

俺の人生を巡って、悪の組織が争ってる。

 

俺は冷や汗をかきながらスクロールした。

すると、さらにとんでもない流れになっていた。

 

プラズマ団員(匿名):

「フレア団って炎上しかしてなくね?」

 

フレア団(匿名):

「黙れ。美しさを理解できぬ愚者め」

 

ギンガ団幹部(匿名):

「そもそも世界を変えるなら宇宙規模で考えろ」

 

スカル団(匿名):

「宇宙とか厨二www」

 

ギンガ団幹部(匿名):

「……貴様、言ったな?」

 

俺は叫んだ。

「やめろ!!!!!ギンガ団はマジで殺しに行くぞ!!!!!!」

 

さらに。

マグマ団(匿名):

「零を採用したいなら陸を増やせ」

 

アクア団(匿名):

「いや海を増やせ」

 

マグマ団(匿名):

「いや陸」

 

アクア団(匿名):

「いや海」

 

俺は頭を抱えた。

「お前らは永遠にそれ言ってろ!!!!!!」

 

その時。

突然、コメント欄の空気が変わった。

 

今までの罵倒と煽りが、急に止まった。

誰も返信しなくなった。

 

まるで、何かに気づいたように。

 

俺はスクロールを止めた。

そして、見た。

 

新しいコメント。

たった一つ。

 

短い。

しかし圧倒的。

 

サカキ(匿名ではない):

「静かにしろ」

 

俺は息を止めた。

 

コメント欄が――

凍った。

本当に凍った。

 

さっきまでレスバしてた悪の組織たちが、一斉に黙った。

 

誰も返信しない。

煽りもない。

反論もない。

 

ただ。

沈黙。

 

俺は呟いた。

「……コメント欄で悪の組織が喧嘩してるだけでも終わってるのに」

 

「……サカキの一言で全員黙るの、もっと終わってるだろ」

 

その瞬間、さらにサカキが追撃した。

 

サカキ:

「零。続きを書け。これは命令だ」

 

俺は叫んだ。

「読者じゃなくて上司が命令してくんな!!!!!!!!!!!!」

 

そしてコメント欄が再び動き出す。

だが、さっきとは違う。

 

全員、敬語になっていた。

 

プラズマ団員(匿名):

「し、失礼しました……」

 

ギンガ団幹部(匿名):

「……申し訳ない」

 

フレア団(匿名):

「……美しくなかった」

 

スカル団(匿名):

「すんませんっした……」

 

マグマ団(匿名):

「……陸は、また今度にする」

 

アクア団(匿名):

「……海も、また今度にする」

 

俺は呆然とした。

「統率力が異常なんだよ!!!!!!!!」

 

その時。

スマホが震えた。

LI○E通知。

 

【アルセウス】

 

俺は嫌な予感で開く。

 

アルセウス:

『面白い』

 

俺は即答した。

「面白くねぇよ!!!!!!!!!!」

 

俺は頭を抱えたまま、天井を見上げた。

 

俺の人生。

いつから、こんな壮大な茶番になったんだ。

 

俺は静かに呟く。

「……もうやだ」

 

だが。

コメント欄は、まだ終わっていなかった。

 

最後に一つ。

新しいコメントが追加される。

 

レッド:

「続きを」

 

俺は叫んだ。

「お前も来るな!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

次回

「コメント欄が神に監視されてる」

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