俺は思った。
コメント欄が荒れるのは、まぁ分かる。
ネットだから。
悪の組織が喧嘩するのも、まぁ分かる。
あいつら現実でも喧嘩してるし。
サカキが一言で黙らせるのも、まぁ分かる。
上司だし。
でも。
でもだ。
俺はパソコンの前で、目を見開いたまま固まっていた。
なぜなら。
新しい感想が投稿された通知が来たからだ。
感想者名を見た瞬間、俺の脳が停止した。
【感想者】
アルセウス
俺は声が出なかった。
「…………」
いや。
違う。
これはなりすましだ。
絶対そうだ。
さすがに神がハーメ○ンで感想を書くわけがない。
あるわけがない。
俺はそう自分に言い聞かせながら、震える指でその感想を開いた。
そして。
俺は死んだ。
アルセウス:
「読んだ。概ね良い。だが誤解を招く表現が多い。修正せよ」
俺は叫んだ。
「修正せよじゃねぇよ!!!!!!!!!!」
何様だ。
いや、神様だ。
神様だった。
俺は頭を抱えた。
「うわ……最悪だ……」
俺はさらにスクロールした。
アルセウスの感想は、続いていた。
アルセウス:
「特に、私が暇人であるかのような描写は不適切だ。私は忙しい」
「また、私が零を玩具扱いしているという点も誤りだ。私は観察しているだけだ」
「それと、零が『女癖が悪い』と誤解されているのは私のせいではない。零の行動による」
俺は机を叩いた。
「全部お前のせいだろ!!!!!!!!!!」
俺は即座に返信を書いた。
感想返し。
作者返信。
震える指で打つ。
【作者返信】
「全部あなたのせいです。あと忙しいならコメント書かないでください。」
送信。
俺は心臓バクバクで待った。
数秒後。
返信が来た。
アルセウスが、さらに感想を追記してきた。
アルセウス:
「返信が早いな。零は暇なのか?」
俺は叫んだ。
「○すぞ!!!!!!!!!!」
俺は慌てて周囲を見た。
もちろん自室だ。
誰もいない。
なのに俺は、なぜか小声になっていた。
「……お前、どこで見てんだよ」
すると。
感想欄に、新たな書き込みが追加された。
アルセウス:
「見ている」
俺は震えた。
「いや、怖すぎるだろ!!!!!!」
コメント欄が一気にざわついた。
感想が次々と流れる。
・「!?!?!?!?」
・「え、アルセウス本物?」
・「神が感想欄に降臨してて草」
・「作者終わったな」
・「アルセウス様、続きをお願いします」
・「神が“概ね良い”ってレビューするの面白すぎる」
・「これもう公式だろ」
俺は頭を抱えた。
「公式にするな!!!!!!!!!!」
さらに。
悪の組織たちが反応し始めた。
ギンガ団幹部(匿名):
「……神よ。貴方が降臨するとは」
プラズマ団員(匿名):
「いやいや、感想欄で神と会話してる零やっぱり何者だよ」
フレア団(匿名):
「美しい……神の降臨……」
スカル団(匿名):
「え、マジで神!?やばwww」
俺は叫んだ。
「お前らテンション上げるな!!!!!!!!」
その時。
また新しい感想が投稿された。
今度は、レビュー。
レビュー欄。
星評価。
投稿者名。
俺はそれを見た瞬間、目を疑った。
【レビュー投稿者】
アルセウス
【評価】 ★★★★★
俺は絶叫した。
「満点つけるな!!!!!!!!!!!!!!!!」
てかその機能あるからそれでして!?
レビュー内容。
アルセウス:
「零は愚かだが面白い。今後の成長に期待する」
俺は顔面蒼白になった。
「お前、何目線だよ!!!!!!!!!!」
いや神目線だ。
神様だった。
…さっきも言った気がするなこれ。
そのレビューが投稿された瞬間、PVが跳ね上がった。
ブックマークが増える。
評価が増える。
感想が爆増する。
俺の小説は、神のレビューによってバズった。
バズり方が異常。
もはや爆発。
俺は画面を見つめながら呟いた。
「……これもう俺が書いてるんじゃなくて、神がプロデュースしてるだろ」
すると。
感想欄に新しい書き込み。
アルセウス:
「その通りだ」
俺は叫んだ。
「認めるな!!!!!!!!!!!!」
その瞬間。
スマホが震えた。
L○NE通知。
【ヒカリ】
俺は慌てて開く。
ヒカリ:
『零……神様が感想欄にいるんだけど……』
『あなた、今度は何したの……?』
俺は震えながら返信した。
「俺も知らない」
送信。
既読。
すぐ返信。
ヒカリ:
『絶対嘘』
俺は叫んだ。
「信用しろ!!!!!!!!!!!!」
その時。
新たな感想が追加された。
名前。
【レッド】
俺は心臓が跳ねた。
内容。
レッド:
「神が監視してるなら更新しろ」
俺は叫んだ。
「神が監視してるから更新しろって何だよ!!!!!!!!」
さらに感想。
サカキ:
「アルセウス。余計なことをするな」
俺は目を見開いた。
「サカキ、神に喧嘩売ってんのかよ!!!!!!!!」
そして。
アルセウスが返信した。
アルセウス:
「貴様こそ余計なことをするな」
俺は椅子からずり落ちた。
「終わった……コメント欄が終わった……」
神と悪の組織が。
ネット上で。
レスバしている。
ハー○ルンで。
レビュー欄で。
PVが爆増しながら。
俺は呟いた。
「これもう……俺の小説じゃなくて……世界の会議室だろ……」
すると。
感想欄にまた新しい書き込み。
アルセウス:
「零。続きを書け。皆が待っている」
俺は震えながら言った。
「……皆って誰だよ」
即座に返信。
アルセウス:
「全てだ」
俺は死んだ目で、パソコン画面を見つめた。
俺はもう逃げられない。
神に監視されながら。
全地方の人間に読まれながら。
悪の組織に圧をかけられながら。
レッドに続きを要求されながら。
俺は小説を書き続ける。
そう。
これはもう。
俺の人生じゃない。
神の娯楽番組だ。
俺はキーボードに手を置き、泣きそうな声で呟いた。
「……分かったよ」
「書けばいいんだろ……書けば……!」
その瞬間。
感想欄に最後の一文が追加された。
アルセウス:
「よろしい」
俺は叫んだ。
「圧が強ぇんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!」
次回
「更新した瞬間、現実で事件が起きた」