俺は覚悟を決めた。
もう逃げられない。
神に監視されている。
悪の組織がコメント欄でレスバしている。
レッドが「続きを」としか言わない。
サカキが命令してくる。
ゲーチスが宣伝する。
ネモがレビューを書く。
ヒカリが「やめて」と泣きそうになっている。
……俺の人生、何?
俺は机に座り、キーボードに手を置いた。
カタカタ。
カタカタ。
文字が増えていく。
更新。
更新。
更新。
俺は泣きそうな顔で呟く。
「……俺は何を書いてるんだ……」
だが指は止まらない。
止めたら終わる。
止めたら殺される。
いや、殺されるっていうか、社会的に死ぬ。
俺は必死に書き続けた。
そして。
ついに、更新ボタンを押した。
カチッ。
【更新しました】
その瞬間。
スマホが震えた。
通知の嵐。
PVが爆増する音が聞こえる気がした。
そして同時に――
部屋の電気が、チカッと消えた。
「……え?」
俺は固まった。
停電?
いや、そんなわけない。
外は普通に明るい。
なのに。
部屋の空気だけが重い。
窓の外から、妙な風が吹き込んできた。
カーテンが揺れる。
……嫌な予感しかしない。
俺は恐る恐る立ち上がり、窓を開けて外を見た。
そして。
俺は言葉を失った。
「……は?」
空が。
歪んでいた。
いや、歪んでいるように見える。
遠くの雲の隙間に、紫色の裂け目みたいなものが見える。
まるで――
空が割れている。
俺は震えた。
「やめろ……やめろやめろ……」
俺は急いでスマホを開く。
LI○E通知が大量。
まず、一番上。
【アルセウス】
俺は嫌な汗をかきながら開いた。
アルセウス:
『始まった』
俺は叫んだ。
「始まったって何だよ!!!!!!!!!!」
次の通知。
【ヒカリ】
ヒカリ:
『零!!!!今すぐ外見て!!!!』
『空がおかしい!!!!!!』
俺は即返信した。
「見てる!!!!!!!!」
次の通知。
【ネモ】
ネモ:
『うわ!!!!すご!!!!!!日本の空、バトルフィールドみたい!!!!!!』
俺は叫んだ。
「バトルフィールドじゃねぇよ!!!!!!」
てか、お前らなんでわかるんだよ?
…アルセウスのせいか。
次。
【ユウリ】
ユウリ:
『レイ、これマジでヤバいんじゃない?www』
『いや笑えないわ』
次。
【サカキ】
サカキ:
『零。余計なことをしたな』
俺は泣きそうになりながら返信した。
「してねぇよ!!!!!!更新しただけだよ!!!!!!」
次。
【レッド】
レッド:
『……来た』
俺は青ざめた。
「来たって何が来たんだよ!!!!!!」
その瞬間。
窓の外から、爆音が響いた。
ドンッ!!!!
地面が揺れる。
俺の部屋の机がガタッと揺れた。
俺は反射的に床にしゃがんだ。
「うわっ!?」
地震?
いや違う。
音の方向が明らかに違う。
爆発音だ。
俺は慌てて窓から外を見る。
すると。
道路の向こう、交差点のあたりに――
黒い影が立っていた。
人影じゃない。
でかい。
異常にでかい。
四足で。
翼があって。
そして。
紫のオーラ。
俺は声が出なかった。
「……ギラティナ」
間違いない。
あの異形の姿。
あの存在感。
あの禍々しさ。
俺が一度、世界を変えようとして呼び出した存在。
それが。
今。
日本の道路に立っている。
俺は震えながら呟いた。
「……嘘だろ」
すると。
ギラティナが顔を上げた。
そして空に向かって、咆哮した。
「グオオオオオオオオ!!!!!!」
その声が空気を裂く。
ガラスが震える。
近所の車のアラームが一斉に鳴り出した。
俺スマホを握りしめたまま、呆然と立ち尽くした。
そして、背後から声がした。
「……やっぱりここだったんだ」
俺は心臓が止まった。
振り返る。
そこにいたのは。
知らない男じゃない。
知らない服じゃない。
赤い帽子。
無言の圧。
そして目つき。
レッドだった。
俺の部屋に。
いつの間にか。
普通に立っていた。
俺は引きつった笑顔で言った。
「……お、おかえり?」
レッドは短く言った。
「……更新したな」
俺は震えながら頷く。
「……した」
レッドは窓の外のギラティナを見て言った。
「……出たな」
俺は泣きそうになった。
「出たね!!!!!!!!!!」
その時。
玄関のチャイムが鳴った。
ピンポーン。
ピンポーン。
ピンポーン。
連打。
俺は叫んだ。
「誰だよ!!!!!!!!」
扉を開ける前に、ドアの向こうから声が聞こえた。
「零!!!!!いる!?!?!?」
聞き覚えがある。
明るくて。
元気で。
テンションが高い。
そして戦闘狂。
ネモの声だった。
俺は青ざめた。
「いや待って待って待って!!!!!!!!」
鍵を開ける暇もなく。
ドアが普通に開いた。
壊れてない。
開いた。
ネモが笑顔で立っていた。
制服姿。
まるで転校生みたいなノリで。
「やっほー!!!零!!!」
俺は震える声で言った。
「……なんでいるんだよ」
ネモはキラキラした目で言った。
「だってさ!!更新した瞬間、こっちに引っ張られた!!」
引っ張られたで来るな。
俺は頭を抱えた。
「最悪だ……」
すると、さらに廊下の奥から声。
「レイ!!!いるの!?」
「ちょっと待って、ここどこ!?」
「え、ここ日本!?」
複数の声。
聞き覚えがありすぎる。
ヒカリ。
ユウリ。
アオイ。
セレナ。
……そしてショウ。
俺は白目になった。
「いやいやいやいや!!!!!!!!!!」
みんな普通に、俺のマンションの廊下に立っていた。
異世界から来た人間が、普通に集合してる。
俺の家の前で。
まるでオフ会だ。
俺は震えながら呟いた。
「……更新した瞬間、現実で事件が起きたって」
「こういう意味じゃねぇだろ!!!!!!!!!!」
レッドが静かに言った。
「……ギラティナ、倒す」
ネモが目を輝かせた。
「え!?バトル!?いいの!?やった!!」
ヒカリが青ざめた顔で言う。
「ちょっと待って!!なんでギラティナが日本にいるの!?」
ユウリが俺を指差して言った。
「レイのせいでしょ!!!!!」
俺は即答した。
「俺のせいじゃねぇ!!!!!!!!!!」
アオイが泣きそうに叫ぶ。
「え、え、どうするの!?警察呼ぶ!?消防!?!?」
セレナが冷静に言った。
「警察に説明できるの?“ギラティナが出ました”って」
俺は泣きそうになった。
「できるわけねぇだろ!!!!!!!!」
ショウが呆れた顔で言った。
「零……小説、更新しちゃったんだね」
俺は叫んだ。
「更新しろって言ったのお前らだろ!!!!!!!!!!」
その瞬間。
スマホが震えた。
LI○E通知。
【アルセウス】
俺は開く。
アルセウス:
『零。責任を取れ』
俺は絶叫した。
「だからなんで俺が責任取る流れになるんだよ!!!!!!!!!!!!」
窓の外。
ギラティナが再び咆哮する。
空の裂け目が広がる。
紫の光が街を染める。
車のクラクション。
悲鳴。
遠くからサイレンの音。
完全に、現実が壊れ始めている。
俺は震える手で、自分のスマホを握りしめた。
そして呟いた。
「……これ」
「俺が書いた小説が、現実を引っ張ってるのか?」
レッドが短く答えた。
「……そうだ」
ネモが笑顔で言った。
「最高じゃん!!」
俺は叫んだ。
「最高なわけあるか!!!!!!!!!!!!!!!!」
だが。
もう、逃げられない。
俺が書いた物語が。
現実を侵食するなら。
俺は――
書き方を変えるしかない。
俺は決意した。
「……分かった」
「じゃあ次の更新で」
「全部終わらせる方向に書く」
すると。
スマホに新しい通知。
ハーメ○ン。
感想。
投稿者。
【アルセウス】
俺は嫌な汗をかきながら開いた。
アルセウス:
「それは許可しない」
俺は叫んだ。
「なんでだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
神が監視してる。
神が介入してる。
神が物語を操作してる。
俺は悟った。
これはもう。
俺の人生じゃない。
俺の物語でもない。
これは。
神が書かせている物語だ。
そして俺はその瞬間、確信した。
このまま更新を続ければ――
日本は、ポケモン世界と繋がる。
完全に。
取り返しがつかない形で。
…前世の友達の健助けて。
俺は震える声で呟いた。
「……俺、詰んでない?」
レッドが静かに言った。
「……詰んでる」
ネモが笑顔で言った。
「詰んでないよ!まだバトルできる!!」
ヒカリが泣きそうに叫ぶ。
「それ詰んでるってことだよ!!!!」
そして外で、ギラティナが動き出した。
道路の真ん中。
交差点を踏み潰しながら。
日本の街を、ゆっくりと歩き始める。
俺は顔面蒼白で呟いた。
「……終わった」
こうして。
俺の「更新」は。
ただの投稿ではなく――
現実を歪ませるスイッチになった。
次回
「ギラティナが日本で職質されそう」