チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

77 / 109
第68話 更新した瞬間、現実で事件が起きた

俺は覚悟を決めた。

もう逃げられない。

 

神に監視されている。

悪の組織がコメント欄でレスバしている。

レッドが「続きを」としか言わない。

 

サカキが命令してくる。

ゲーチスが宣伝する。

 

ネモがレビューを書く。

ヒカリが「やめて」と泣きそうになっている。

 

……俺の人生、何?

 

俺は机に座り、キーボードに手を置いた。

 

カタカタ。

カタカタ。

 

文字が増えていく。

更新。

更新。

更新。

 

俺は泣きそうな顔で呟く。

「……俺は何を書いてるんだ……」

 

だが指は止まらない。

止めたら終わる。

止めたら殺される。

 

いや、殺されるっていうか、社会的に死ぬ。

 

俺は必死に書き続けた。

そして。

ついに、更新ボタンを押した。

 

カチッ。

【更新しました】

 

その瞬間。

スマホが震えた。

 

通知の嵐。

PVが爆増する音が聞こえる気がした。

そして同時に――

 

部屋の電気が、チカッと消えた。

 

「……え?」

俺は固まった。

 

停電?

いや、そんなわけない。

 

外は普通に明るい。

なのに。

部屋の空気だけが重い。

 

窓の外から、妙な風が吹き込んできた。

カーテンが揺れる。

 

……嫌な予感しかしない。

 

俺は恐る恐る立ち上がり、窓を開けて外を見た。

そして。

俺は言葉を失った。

 

「……は?」

 

空が。

歪んでいた。

いや、歪んでいるように見える。

 

遠くの雲の隙間に、紫色の裂け目みたいなものが見える。

まるで――

 

空が割れている。

 

俺は震えた。

「やめろ……やめろやめろ……」

 

俺は急いでスマホを開く。

LI○E通知が大量。

 

まず、一番上。

【アルセウス】

 

俺は嫌な汗をかきながら開いた。

 

アルセウス:

『始まった』

 

俺は叫んだ。

「始まったって何だよ!!!!!!!!!!」

 

次の通知。

【ヒカリ】

 

ヒカリ:

『零!!!!今すぐ外見て!!!!』

 

『空がおかしい!!!!!!』

 

俺は即返信した。

「見てる!!!!!!!!」

 

次の通知。

【ネモ】

 

ネモ:

『うわ!!!!すご!!!!!!日本の空、バトルフィールドみたい!!!!!!』

 

俺は叫んだ。

「バトルフィールドじゃねぇよ!!!!!!」

 

てか、お前らなんでわかるんだよ?

…アルセウスのせいか。

 

次。

【ユウリ】

 

ユウリ:

『レイ、これマジでヤバいんじゃない?www』

 

『いや笑えないわ』

 

次。

【サカキ】

 

サカキ:

『零。余計なことをしたな』

 

俺は泣きそうになりながら返信した。

「してねぇよ!!!!!!更新しただけだよ!!!!!!」

 

次。

【レッド】

 

レッド:

『……来た』

 

俺は青ざめた。

「来たって何が来たんだよ!!!!!!」

 

その瞬間。

窓の外から、爆音が響いた。

 

ドンッ!!!!

 

地面が揺れる。

俺の部屋の机がガタッと揺れた。

 

俺は反射的に床にしゃがんだ。

「うわっ!?」

 

地震?

いや違う。

音の方向が明らかに違う。

 

爆発音だ。

 

俺は慌てて窓から外を見る。

すると。

道路の向こう、交差点のあたりに――

 

黒い影が立っていた。

 

人影じゃない。

でかい。

異常にでかい。

 

四足で。

翼があって。

そして。

紫のオーラ。

 

俺は声が出なかった。

「……ギラティナ」

 

間違いない。

あの異形の姿。

あの存在感。

あの禍々しさ。

 

俺が一度、世界を変えようとして呼び出した存在。

 

それが。

今。

日本の道路に立っている。

 

俺は震えながら呟いた。

「……嘘だろ」

 

すると。

ギラティナが顔を上げた。

そして空に向かって、咆哮した。

 

「グオオオオオオオオ!!!!!!」

 

その声が空気を裂く。

ガラスが震える。

近所の車のアラームが一斉に鳴り出した。

 

俺スマホを握りしめたまま、呆然と立ち尽くした。

 

そして、背後から声がした。

「……やっぱりここだったんだ」

 

俺は心臓が止まった。

 

振り返る。

そこにいたのは。

知らない男じゃない。

知らない服じゃない。

 

赤い帽子。

無言の圧。

そして目つき。

 

レッドだった。

 

俺の部屋に。

いつの間にか。

普通に立っていた。

 

俺は引きつった笑顔で言った。

「……お、おかえり?」

 

レッドは短く言った。

「……更新したな」

 

俺は震えながら頷く。

「……した」

 

レッドは窓の外のギラティナを見て言った。

「……出たな」

 

俺は泣きそうになった。

「出たね!!!!!!!!!!」

 

その時。

玄関のチャイムが鳴った。

 

ピンポーン。

ピンポーン。

ピンポーン。

 

連打。

 

俺は叫んだ。

「誰だよ!!!!!!!!」

 

扉を開ける前に、ドアの向こうから声が聞こえた。

「零!!!!!いる!?!?!?」

 

聞き覚えがある。

 

明るくて。

元気で。

テンションが高い。

そして戦闘狂。

 

ネモの声だった。

 

俺は青ざめた。

「いや待って待って待って!!!!!!!!」

 

鍵を開ける暇もなく。

ドアが普通に開いた。

 

壊れてない。

開いた。

 

ネモが笑顔で立っていた。

制服姿。

まるで転校生みたいなノリで。

 

「やっほー!!!零!!!」

 

俺は震える声で言った。

「……なんでいるんだよ」

 

ネモはキラキラした目で言った。

「だってさ!!更新した瞬間、こっちに引っ張られた!!」

 

引っ張られたで来るな。

 

俺は頭を抱えた。

「最悪だ……」

 

すると、さらに廊下の奥から声。

「レイ!!!いるの!?」

 

「ちょっと待って、ここどこ!?」

 

「え、ここ日本!?」

 

複数の声。

聞き覚えがありすぎる。

 

ヒカリ。

ユウリ。

アオイ。

セレナ。

……そしてショウ。

 

俺は白目になった。

「いやいやいやいや!!!!!!!!!!」

 

みんな普通に、俺のマンションの廊下に立っていた。

異世界から来た人間が、普通に集合してる。

俺の家の前で。

 

まるでオフ会だ。

 

俺は震えながら呟いた。

「……更新した瞬間、現実で事件が起きたって」

 

「こういう意味じゃねぇだろ!!!!!!!!!!」

 

レッドが静かに言った。

「……ギラティナ、倒す」

 

ネモが目を輝かせた。

「え!?バトル!?いいの!?やった!!」

 

ヒカリが青ざめた顔で言う。

「ちょっと待って!!なんでギラティナが日本にいるの!?」

 

ユウリが俺を指差して言った。

「レイのせいでしょ!!!!!」

 

俺は即答した。

「俺のせいじゃねぇ!!!!!!!!!!」

 

アオイが泣きそうに叫ぶ。

「え、え、どうするの!?警察呼ぶ!?消防!?!?」

 

セレナが冷静に言った。

「警察に説明できるの?“ギラティナが出ました”って」

 

俺は泣きそうになった。

「できるわけねぇだろ!!!!!!!!」

 

ショウが呆れた顔で言った。

「零……小説、更新しちゃったんだね」

 

俺は叫んだ。

「更新しろって言ったのお前らだろ!!!!!!!!!!」

 

その瞬間。

スマホが震えた。

LI○E通知。

 

【アルセウス】

 

俺は開く。

 

アルセウス:

『零。責任を取れ』

 

俺は絶叫した。

「だからなんで俺が責任取る流れになるんだよ!!!!!!!!!!!!」

 

窓の外。

ギラティナが再び咆哮する。

 

空の裂け目が広がる。

紫の光が街を染める。

 

車のクラクション。

悲鳴。

遠くからサイレンの音。

 

完全に、現実が壊れ始めている。

 

俺は震える手で、自分のスマホを握りしめた。

そして呟いた。

「……これ」

 

「俺が書いた小説が、現実を引っ張ってるのか?」

 

レッドが短く答えた。

「……そうだ」

 

ネモが笑顔で言った。

「最高じゃん!!」

 

俺は叫んだ。

「最高なわけあるか!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

だが。

もう、逃げられない。

 

俺が書いた物語が。

現実を侵食するなら。

俺は――

 

書き方を変えるしかない。

 

俺は決意した。

「……分かった」

 

「じゃあ次の更新で」

 

「全部終わらせる方向に書く」

 

すると。

スマホに新しい通知。

 

ハーメ○ン。

感想。

 

投稿者。

【アルセウス】

 

俺は嫌な汗をかきながら開いた。

 

アルセウス:

「それは許可しない」

 

俺は叫んだ。

「なんでだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

神が監視してる。

神が介入してる。

神が物語を操作してる。

 

俺は悟った。

これはもう。

俺の人生じゃない。

俺の物語でもない。

 

これは。

神が書かせている物語だ。

 

そして俺はその瞬間、確信した。

このまま更新を続ければ――

日本は、ポケモン世界と繋がる。

 

完全に。

取り返しがつかない形で。

 

…前世の友達の健助けて。

 

俺は震える声で呟いた。

「……俺、詰んでない?」

 

レッドが静かに言った。

「……詰んでる」

 

ネモが笑顔で言った。

「詰んでないよ!まだバトルできる!!」

 

ヒカリが泣きそうに叫ぶ。

「それ詰んでるってことだよ!!!!」

 

そして外で、ギラティナが動き出した。

道路の真ん中。

交差点を踏み潰しながら。

 

日本の街を、ゆっくりと歩き始める。

 

俺は顔面蒼白で呟いた。

「……終わった」

 

こうして。

俺の「更新」は。

ただの投稿ではなく――

 

現実を歪ませるスイッチになった。

 

次回

「ギラティナが日本で職質されそう」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。