ギラティナが日本の交差点を歩いている。
この時点でおかしい。
世界がおかしい。
物理法則も常識も終わってる。
なのに。
なのに、だ。
日本という国は強い。
強すぎる。
なぜなら――
遠くから聞こえてきたサイレンの音が、どんどん近づいてきたからだ。
俺は窓の外を見ながら、震える声で呟いた。
「……来るな」
ユウリが横で真顔で言った。
「来るでしょ。警察だし」
ヒカリは顔面蒼白で叫ぶ。
「いや無理だって!!警察がギラティナ相手に何するの!?」
ネモは目を輝かせた。
「ねぇねぇ!警察って強いの!?バトルするの!?」
俺は即答した。
「しねぇよ!!!!!!!!」
レッドは黙って腕を組んでいる。
何も言わないのに圧が強い。
ショウはため息をついた。
「零……これ、本当に現実なんだよね……?」
俺は泣きそうになった。
「俺が一番信じたくねぇよ!!!!!!」
そして。
パトカーが現れた。
交差点の手前で止まる。
警察官が降りる。
拡声器。
俺は見た瞬間に理解した。
あ、終わった。
終わった終わった終わった。
警察官が、ギラティナに向かって叫んだ。
「そこの……えー……」
警察官が言葉に詰まる。
当然だ。
目の前にいるのは巨大な異形のドラゴンで、紫のオーラをまとっている。
分類できるわけがない。
だが警察官は、プロだった。
職務に忠実だった。
警察官は一度深呼吸して、言った。
「そこの……大きい方!!」
俺は叫んだ。
「大きい方って何だよ!!!!!!!!」
警察官が続ける。
「通報が入ってます!!」
ギラティナは止まった。
首を傾げるように警察官を見下ろす。
その瞬間、俺は悟った。
あ、これ噛み合ってない。
言語が違う。
警察官はさらに言った。
「道路の真ん中にいると危険です!!」
ギラティナは、ゆっくりと咆哮した。
「グオオオオオオオ……」
警察官は一瞬たじろいだ。
でも逃げなかった。
警察官、メンタル強すぎる。
そして。
警察官は腰のホルスターに手を置いた。
俺は叫んだ。
「撃つな!!!!!!!!!!!!!!!!」
ヒカリが泣きそうに叫ぶ。
「やめて!!!撃ったら逆に怒らせるだけだよ!!!」
ユウリが呟く。
「いや撃っても効かないでしょ……」
ネモがワクワクしながら言った。
「え!?銃!?それ武器!?すごい!!」
ショウが静かに言った。
「ネモ、黙って」
ネモが「はーい」と返事する。
レッドは一言。
「……邪魔」
俺は叫んだ。
「レッド!!!!お前は絶対やめろ!!!!!!!!」
その時。
警察官が、さらに踏み込んだ。
「身分証を提示してください!!」
俺は吹き出した。
「提示できるわけねぇだろ!!!!!!!!!!」
ギラティナは、静かに羽を広げた。
紫の霧が広がる。
道路が歪む。
空気が歪む。
アスファルトが、ミシミシと音を立てる。
警察官が一歩後退した。
そして、無線で叫ぶ。
「本部!!応援要請!!対象が、えー……ドラゴンです!!」
俺は頭を抱えた。
「ドラゴンで通じてるのが逆にすげぇよ!!!!!!」
パトカーのライトが回り続ける。
赤色灯がギラティナの体を照らす。
ギラティナは、まるで「うるさい」と言うように目を細めた。
そして――
警察官に向かって、一歩踏み出した。
警察官が反射的に叫ぶ。
「止まれ!!」
ギラティナは止まらない。
俺は叫んだ。
「止まるわけねぇだろ!!!!!!!!」
その瞬間。
俺のスマホが震えた。
LI○E通知。
【アルセウス】
俺は即座に開いた。
アルセウス:
『職質とは、こういうものか』
俺は叫んだ。
「お前、学習してる場合じゃねぇよ!!!!!!!!!!」
次の通知。
【サカキ】
サカキ:
『零。あれを止めろ』
俺は即返信した。
「無理!!!!!!!!!!」
既読。
返信。
サカキ:
『無理ではない。やれ』
俺は泣きそうになった。
「パワハラだ!!!!!!!!!!!!!!」
そして、次の通知。
【ゲーチス】
ゲーチス:
『警察は使える。取り込め』
俺は叫んだ。
「取り込むな!!!!!!!!!!」
そして。
ネモが突然、俺の肩を掴んだ。
「零!!行こう!!」
俺は目を見開いた。
「どこに!?」
ネモが笑顔で言った。
「ギラティナのところ!!」
俺は叫んだ。
「行くな!!!!!!!!!!!!!!!!」
だがネモは止まらない。
玄関に向かう。
ユウリもついていく。
「私も行くね。面白そうだし」
俺は叫ぶ。
「面白そうで行くな!!!!!!!!!!」
ヒカリも慌てて言った。
「待って!危ないって!」
セレナが冷静に言う。
「八雲さん、あなたが止めるなら今しかないです」
俺は青ざめた。
「俺が止めるって何をどうやって!?」
ショウが真顔で言った。
「……零、あなたが書いたんでしょ?」
俺は叫んだ。
「書いたけど!!!!!!出すって書いてない!!!!!!」
レッドが玄関へ歩きながら言う。
「……戦う」
俺は叫んだ。
「お前はやめろ!!!!!!!!!!!!!!」
その瞬間。
外で警察官が、ギラティナに向かって最後の警告をした。
「これ以上進むと、やむを得ず強制措置を取ります!!」
俺は呟いた。
「強制措置ってなんだよ……」
その時。
ギラティナが、ゆっくりと口を開いた。
紫の光が喉の奥で渦を巻く。
あ、やばい。
あれは。
シャドーダイブか、あやしいかぜか、りゅうのはどうか。
何にせよ、街が終わる。
俺は反射的に叫んだ。
「やめろ!!!!!!!!!」
そして。
俺は玄関を飛び出した。
靴も履かずに。
外に出ると、夏の熱気が肌に刺さった。
近所の人たちが遠巻きに見ている。
スマホで撮影してるやつもいる。
終わってる。
完全に終わってる。
俺は道路の真ん中に立って叫んだ。
「待てギラティナ!!!!!!!!」
ギラティナが止まった。
警察官も止まった。
全員が俺を見た。
俺は息を切らしながら、必死に叫ぶ。
「こいつは……!」
「えーと……!」
「えーと……!」
言葉が出ない。
警察官が叫ぶ。
「あなた危険です!!下がってください!!」
俺は叫び返す。
「下がれない!!!!!!!!」
ネモが後ろから叫ぶ。
「零!かっこいい!!」
ユウリが笑いながら言う。
「いや、裸足だけど」
俺は泣きそうになった。
「そこツッコむな!!!!!!」
ギラティナが俺を見下ろす。
紫の目。
圧倒的な存在感。
俺は震えながら言った。
「……俺のせいで出てきたんだろ」
「なら……俺が戻す」
ギラティナが低く唸った。
そして、俺の頭の中に声が響く。
『……オマエ……』
俺は青ざめた。
「うわ、脳内に直接!?」
ギラティナの声。
『……ナゼ……ココニ……』
俺は叫びたいのを堪え、必死に答えた。
「知らねぇよ!!!!!!!!」
警察官が困惑している。
当然だ。
俺が道路でドラゴンと会話している。
完全にヤバい奴だ。
警察官が言った。
「あなた、ちょっとこちらへ……」
俺は振り返って叫んだ。
「今それどころじゃない!!!!!!!!」
ネモが笑顔で言う。
「え!?今度は零が職質される!?」
俺は叫んだ。
「やめろ!!!!!!!!!!!!!!!!」
その瞬間。
ギラティナの背後の空が、さらに裂けた。
紫の裂け目が広がる。
そこから、別の影が見えた。
――翼。
銀色の翼。
俺は震えた。
「……ルギア?」
しかも。
色が。
黒い。
黒すぎる。
俺は絶望した。
「……ダークルギア」
俺は天を仰いで叫んだ。
「増えるな!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
次回
「ダークルギアが上空でホバリングしてる」