チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

79 / 109
第70話 ダークルギアが上空でホバリングしてる

ギラティナが道路の真ん中にいる時点で終わってる。

なのに。

空が割れた。

 

紫の裂け目から、黒い影が現れた。

翼が大きく広がる。

そして、圧倒的な存在感。

 

空気が冷える。

日差しがあるのに、寒い。

 

俺はその姿を見た瞬間、膝が震えた。

「……ダークルギア」

 

黒いルギア。

いや、ルギアというより“影”。

見上げるだけで、心が削られるような圧。

 

ダークボールから出した記憶が蘇る。

 

あの時俺は、勢いで言っただけだった。

『乗せて』

 

たったそれだけ。

なのに。

今。

そいつが。

 

日本の上空でホバリングしている。

 

あり得ない。

絶対にあり得ない。

なのに現実だ。

 

俺は呟いた。

「……なんで来たんだよ」

 

ダークルギアは、何も言わない。

ただ、空中で静かに浮いている。

巨大な翼を広げたまま。

 

まるで。

“待っている”。

俺のことを。

 

俺は嫌な汗をかきながら、周囲を見た。

道路はすでにパニック。

 

人が逃げる。

車がクラクションを鳴らす。

スマホで撮影する奴がいる。

遠くで子どもが泣いてる。

 

警察官は完全にフリーズしていた。

さっきまでギラティナに職質してたのに。

今は上空を見上げたまま、口を開けている。

 

そして。

震える声で呟いた。

「……増えた……」

 

俺は叫びたいのを必死に堪えた。

 

ネモが隣で目を輝かせている。

「すごい!!!空にもう一体いる!!!」

 

ユウリが口元を押さえた。

「いや、これニュースになるやつでしょ……」

 

ヒカリは泣きそうな顔で叫ぶ。

「零!!どうするの!?どうするのこれ!?」

 

俺は即答した。

「知らねぇよ!!!!!!!!」

 

ショウが呆れたように言う。

「……零、これもあなたのせいじゃない?」

 

俺は必死に否定した。

「違う!!!!!!俺はただ……ただ……」

 

俺は言葉に詰まった。

だって、事実だ。

 

俺がダークルギアを出した。

俺が呼んだ。

俺が“乗せて”って言った。

 

俺は震える声で言った。

「……いや、まぁ、ちょっとは俺のせいかもしれない」

 

ネモが即ツッコミした。

「ちょっとどころじゃないよ!!」

 

俺は叫んだ。

「黙れ!!!!!!!!」

 

レッドが静かに言った。

「……あれは危険」

 

ユウリが言う。

「危険じゃないの探す方が難しいでしょ」

 

その瞬間。

ダークルギアがゆっくりと翼を動かした。

 

バサァ……と、空気が揺れる。

それだけで風圧が降りてくる。

 

木が揺れる。

看板がガタガタ鳴る。

人々の悲鳴が大きくなる。

 

警察官が我に返り、無線を握りしめて叫んだ。

「本部!!対象が二体に増えました!!繰り返します!!対象が二体に!!」

 

俺は呟いた。

「対象って言い方やめろ……」

 

そして警察官は、俺を見た。

完全に疑っている目。

 

いや、当然だ。

俺だけがギラティナに話しかけて、俺だけが名前を呼んでいる。

 

完全に俺が犯人だ。

 

警察官が震える声で言った。

「……あなた、何者ですか」

 

俺は即答した。

「一般人です」

 

警察官は真顔で言った。

「嘘はやめてください」

 

俺は泣きそうになった。

「本当なんです!!!!!!!!」

 

その時。

俺のスマホが震えた。

 

LI○E通知。

【アルセウス】

 

俺は嫌な予感しかしない。

でも開くしかない。

 

アルセウス:

『増えたな』

 

俺は叫んだ。

「お前が言うな!!!!!!!!!!」

 

さらに通知。

【サカキ】

 

サカキ:

『零。制圧しろ』

 

俺は叫ぶ。

「無理!!!!!!!!!!」

 

既読

返信。

 

サカキ:

『できる。やれ』

 

俺は泣きながら言った。

「パワハラが過ぎる!!!!!!!!!!!!」

 

次。

【ゲーチス】

 

ゲーチス:

『これは好機だ。日本をプラズマ団の支配下に置ける』

 

俺は叫んだ。

「置けるわけねぇだろ!!!!!!!!!!」

 

次。

【トウコ】

 

トウコ:

『零!!これ、あなたが小説に書いたから?』

 

俺は即返信した。

「書いてない!!!!!!」

 

だが。

俺はその瞬間、気づいた。

書いてないのに出た。

 

つまり。

小説の更新が引き金になってるだけで、出てくる内容はランダム。

 

俺の記憶にある伝説が。

俺の過去の行動が。

俺の黒歴史が。

 

勝手に現実に引っ張り出されている。

 

俺は青ざめた。

「……最悪のシステムじゃん」

 

そして。

ダークルギアが、ゆっくりと降下してきた。

 

ギラティナのすぐ後ろ。

交差点の上空で止まる。

 

まるで。

ギラティナの味方。

 

いや、違う。

ギラティナを監視しているようにも見える。

 

そして次の瞬間。

ダークルギアが低く鳴いた。

「……グルァ……」

 

音が空気を震わせる。

人々が一斉に耳を塞ぐ。

 

俺の頭にも響いた。

脳が揺れる感覚。

 

俺は膝をついた。

「うっ……!」

 

ヒカリが叫ぶ。

「零!!大丈夫!?」

 

ネモが俺の背中を叩く。

「零!!しっかり!!」

 

俺は息を荒くしながら立ち上がった。

 

そして。

俺は、ダークルギアを見上げて叫んだ。

「……おい!!!」

 

俺の声が交差点に響く。

警察官が「やめろ!」と叫ぶ。

 

でも俺は止まらない。

「ダークルギア!!!!!!」

 

ダークルギアの目が光った。

黒い翼がゆっくりと動く。

 

俺は震えながら言った。

「……お前、俺のこと覚えてるか?」

 

返事はない。

だが、空気が変わった。

確実に俺を見ている。

 

俺は続けた。

「俺は……あの時……」

 

「お前に“乗せて”って言った」

 

ネモが横で小声で言う。

「それ今言うこと!?」

 

俺は叫び返す。

「今しかないだろ!!!!!!!!」

 

そして俺は、腹を括った。

恥も外聞も捨てた。

 

警察も見てる。

近所の人も見てる。

ニュースになる。

 

人生は終わる。

でも、今はそれどころじゃない。

 

俺は叫んだ。

「頼む!!!」

 

「お前、俺を助けろ!!!!!!!!」

 

その瞬間。

ダークルギアが、ゆっくりと降りてきた。

地面すれすれまで。

 

風圧で砂が舞う。

警察官が一歩後ずさった。

人々が悲鳴を上げた。

 

でも。

ダークルギアは攻撃しなかった。

 

ただ。

俺の目の前に降り立った。

そして。

その背中を、ほんの少しだけ下げた。

 

まるで。

「乗れ」と言うように。

 

俺は固まった。

「……え?」

 

ネモが叫んだ。

「え!?ほんとに乗れるの!?すご!!!!!」

 

ユウリが真顔で言う。

「いや乗らないでよ!?!?!?」

 

ヒカリが叫ぶ。

「零!!やめて!!危ない!!」

 

ショウが呆れたように言った。

「……零、また変なフラグ立てたね」

 

俺は泣きそうになりながら呟いた。

「……俺もそう思う」

 

でも。

ダークルギアは確かに俺を待っている。

 

俺が乗れば。

ギラティナを止められるかもしれない。

空の裂け目を閉じられるかもしれない。

この地獄を終わらせられるかもしれない。

 

俺は震える足で一歩踏み出した。

そして。

背中に手を置いた。

 

冷たい。

生き物なのに、石みたいに冷たい。

 

俺は息を飲んで呟いた。

「……久しぶりだな」

 

その瞬間。

ダークルギアが翼を広げた。

そして一気に跳び上がる。

 

俺は叫んだ。

「うわああああああ!!!!!!」

 

ネモが叫ぶ。

「いいなぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

ヒカリが叫ぶ。

「零ーーーー!!!!!!!!」

 

警察官が叫ぶ。

「待てーーーー!!!!!!!!」

 

ユウリが叫ぶ。

「いや何してるの!?!?!?」

 

俺は叫びながら、空へ舞い上がった。

 

地上が小さくなる。

街が遠ざかる。

ギラティナが下で唸っている。

 

そして俺は悟った。

今、俺は――

日本の上空で、伝説に乗っている。

 

意味が分からない。

人生、どこで間違えた?

 

俺は叫ぶ。

「俺、ただのチュートリアルお兄さんなんだよ!!!!!!!!!!!!」

 

だが、ダークルギアは答えない。

ただ、静かに飛ぶ。

 

日本の空を。

支配するように。

 

その背中で、俺は気づいた。

――このままじゃ終わらない。

 

むしろ。

ここからが本番だ。

 

俺は震える声で呟いた。

「……ギラティナ」

 

「待ってろ」

 

「次の更新で……終わらせてやる」

 

スマホが震えた。

なぜか、空でも繋がる。

 

通知。

【アルセウス】

 

アルセウス:

『終わらせるな』

 

俺は叫んだ。

「うるせぇ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

空の上。

ダークルギアがホバリングする。

 

地上。

ギラティナが暴れ始める。

 

そして。

俺は伝説の背中で、次の物語を強制される。

 

この世界はもう。

俺のものじゃない。

 

神の娯楽で。

読者の玩具で。

 

俺の人生の続きだった。

 

次回

「ダークルギアで飛んでたら自衛隊が来た」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。