俺は空の上で、泣きそうになりながら叫んだ。
「投稿してねぇよ!!!!!!!!!!」
でも、現実は最悪だ。
スマホの画面には確かに表示されている。
【ハー○ルン】
『最新話を投稿しました』
俺は震える指で画面をスクロールした。
そして。
目を疑った。
俺が書いてない文章が、勝手に投稿されている。
しかも内容がヤバい。
タイトル。
第72話
「コメント欄が現実に出てきた」
俺は叫んだ。
「それ今俺が見てるやつだろ!!!!!!!!!!」
いや、待て。
冷静になれ。
俺は今、ダークルギアの背中に乗ってる。
空には自衛隊。
地上にはギラティナ。
空間の裂け目からアルセウス。
そしてレッドが殺意。
この状況で、何が起きてもおかしくない。
俺は絶望しながら呟いた。
「……もう夢であってくれ」
その瞬間。
空気が変わった。
急に、静かになった。
戦闘機の轟音が遠く感じる。
人の悲鳴も聞こえない。
世界が、一瞬だけ無音になった。
そして。
空中に、文字が浮かび上がった。
最初は薄い光。
次に、はっきりとした黒文字。
まるで――
スクリーンの字幕みたいに。
【コメント:草】
俺は固まった。
「……は?」
次。
【コメント:作者生きてる?】
次。
【コメント:これもう国家案件だろ】
俺は叫んだ。
「やめろ!!!!!!」
でも止まらない。
文字が、空中にどんどん浮かんでくる。
しかも流れていく。
上から下へ。
右から左へ。
ニコ○コ動画みたいに。
いや、もっと質が悪い。
現実の空に、コメントが流れている。
【コメント:自衛隊頑張れ】
【コメント:ダークルギア草】
【コメント:ギラティナ職質は神回】
【コメント:零またやらかしてて草】
【コメント:アルセウスレビュー★5は笑う】
俺は叫んだ。
「やめろ!!!!!!現実に流すな!!!!!!!!」
戦闘機のパイロットも気づいた。
『……管制、空中に文字が見える』
『目の錯覚か?』
『いや、確実に文字だ』
俺は泣きそうになった。
「自衛隊が困惑してる!!!!!!!!!!」
地上からも声が聞こえる。
人々が空を見上げて叫んでいた。
「え、何あれ!?」
「文字!?空に文字!?」
「誰かプロジェクター飛ばしてんの!?」
「え、これ配信!?」
俺は叫んだ。
「配信じゃねぇ!!!!!!!!!!」
そして。
最悪なコメントが流れた。
【コメント:作者の住所特定した】
俺は叫んだ。
「おい!!!!!!!!!!!!!!!!」
続けて。
【コメント:作者、今〇〇県〇〇市だろ】
俺は青ざめた。
「やめろやめろやめろ!!!!!!!!」
ダークルギアの背中で、俺は必死にスマホを見た。
コメント欄。
感想欄。
レビュー欄。
全部が地獄。
そして、そこに見覚えのある名前があった。
【感想者】
アルセウス
俺は叫んだ。
「お前がまた原因か!!!!!!!!!!」
すると空中に新しいコメント。
【コメント:アルセウス様降臨www】
アルセウスが空中で言った。
『零』
俺は叫ぶ。
「なんだよ!!!!!!!!」
アルセウスは淡々と答えた。
『お前の物語が、現実に侵食している』
『コメントも例外ではない』
俺は叫んだ。
「侵食って言葉がもう怖いんだよ!!!!!!!!」
その時。
地上から、怒鳴り声が聞こえた。
「おい!!!!!!!!!!」
俺は振り向いた。
ギラティナの横。
交差点。
そこに――
誰かが立っていた。
見たことのない男。
スーツ姿。
眼鏡。
首から社員証。
そして手にはスマホ。
まるで現代の一般人。
なのに、明らかに異常。
男が叫んだ。
「作者!!!!!!!!!!」
俺は青ざめた。
「……誰だよ」
男はニヤッと笑った。
「コメント欄から来ました」
俺は絶叫した。
「来るな!!!!!!!!!!!!!!!!」
次の瞬間。
空間が歪んで、さらに人が出てきた。
若い女。
学生っぽい男。
パーカーの男。
全員スマホを持っている。
そして全員が口々に叫んだ。
「作者!!更新ありがとうございます!!」
「作者生きてた!!」
「生存確認できた!!」
「零推しです!!」
「悪の組織箱推しです!!」
「ヒカリ推しです!!」
俺は叫んだ。
「推しとか言ってる場合じゃねぇ!!!!!!!!」
てか悪の組織アイドルじゃねぇから!!
さらに。
誰かが言った。
「この作者、女癖悪いんでしょ?」
俺は即座に叫ぶ。
「違う!!!!!!!!!!!!」
すると空中に流れるコメント。
【コメント:作者必死で草】
【コメント:女癖悪いの否定してて草】
【コメント:でも連絡帳ほぼ女だったよな】
【コメント:草】
【コメント:アルセウスに誓った男】
俺は泣きそうになった。
「現実で晒し上げるな!!!!!!!!」
そして。
また空間が歪んだ。
次に出てきたのは――
明らかに異質な奴だった。
黒いローブ。
仮面。
肩幅が異常にデカい。
そして背中に、なぜか厨二っぽい羽根。
男が言った。
「ふっ……作者よ」
「我こそはコメント欄最強の読者……」
俺叫んだ。
「帰れ!!!!!!!!!!」
その男が続けた。
「貴様の物語に不満がある」
「もっと俺を活躍させろ」
俺は叫んだ。
「誰だよ!!!!!!!!!!」
すると。
空中に流れたコメントが答えた。
【コメント:こいつ前から荒らしてる奴だろ】
【コメント:出禁にしろ】
【コメント:草】
俺は叫んだ。
「コメントがツッコミ役になるな!!!!!!!!」
その時。
ギラティナが低く唸った。
「……グォォ……」
周囲の読者たちが一斉に固まる。
「……え」
「え、待って、近い」
「ギラティナ本物?」
「CGじゃない?」
俺は叫んだ。
「本物だよ!!!!!!!!」
読者たちはスマホを構え始めた。
「撮ろ」
「え、やば、バズる」
「これTik○ok行ける」
俺は絶叫した。
「バズらせるな!!!!!!!!!!」
その瞬間。
ギラティナの目が赤く光った。
読者の一人が言った。
「え、これ攻撃来るやつ?」
俺は叫んだ。
「来る!!!!!!!!!!」
だが遅かった。
ギラティナが口を開き、闇のエネルギーが溜まる。
破壊の光。
俺は叫んだ。
「おい!!!!ギラティナ!!!!待て!!!!」
だが。
ギラティナは止まらない。
その時。
読者の一人が叫んだ。
「作者!!助けて!!」
俺は叫んだ。
「助けたいのは俺だよ!!!!!!!!!!」
その瞬間。
空中に流れたコメント。
【コメント:作者、ここで覚醒しろ】
【コメント:伝説統べろ】
【コメント:チュートリアルお兄さんの本気見せろ】
俺は叫んだ。
「無茶言うな!!!!!!!!!!!!」
だが。
その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが弾けた。
――覚醒?
――統べろ?
――本気?
ふざけるな。
俺はただ、平凡に生きたかった。
ただ主人公達と会って連絡先を渡すだけの人生でよかった。
なのに。
なんで俺が。
なんで俺が神と伝説と悪の組織と自衛隊とコメント欄に振り回されなきゃいけないんだ。
俺は、叫んだ。
「……いい加減にしろよ!!!!!!!!!!!!!!」
ダークルギアが、俺の声に反応した。
翼が大きく広がる。
黒い波動が空に走る。
戦闘機が距離を取る。
読者が悲鳴を上げる。
俺は叫んだ。
「ギラティナ!!!!!!」
「暴れるなら俺が止める!!!!!!!!」
ギラティナが俺を見上げた。
空中に流れるコメント。
【コメント:うおおおおお】
【コメント:主人公覚醒回】
【コメント:神回】
【コメント:作者が主人公だった】
俺は泣きそうになりながら叫んだ。
「神回とか言ってる場合じゃねぇ!!!!!!!!!!」
その時。
アルセウスが空中で、静かに言った。
『零』
『これが、お前の物語だ』
俺は叫んだ。
「違う!!!!!!これは俺の黒歴史だ!!!!!!!!!!」
だがアルセウスは続けた。
『コメント欄が現実に出た以上』
『もう、引き返せない』
俺は青ざめた。
「……引き返せない?」
その瞬間。
読者の一人が、震える声で言った。
「……あの」
「コメント欄から来た俺たちって……」
「帰れるの?」
俺は言葉を失った。
そして。
空中に、最後のコメントが流れた。
【コメント:帰れません】
俺は叫んだ。
「誰だよ今の!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
だが。
そのコメントの横に、投稿者名が表示された。
【投稿者:ハー○ルン運営】
俺は膝から崩れ落ちた。
「運営!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
運営が、現実に介入してきた。
そして。
スマホの画面に、新しい通知が表示された。
【システムメッセージ】
『この物語は、現実と同期しました』
『作者は更新を停止できません』
『更新が止まった場合、現実が崩壊します』
俺は絶望した。
「……終わった」
俺は泣きそうな声で呟く。
「俺、もう……」
「一生書かされるじゃん……」
アルセウスが、優しい声で言った。
『安心しろ』
『私は見守っている』
俺は叫んだ。
「安心できる要素どこだよ!!!!!!!!!!!!!!!!」
そして。
ギラティナが動いた。
破壊の光が、読者の群れに向かって放たれる。
俺は叫んだ。
「ダークルギア!!!!!!」
「避けろ!!!!!!!!」
ダークルギアが急上昇。
俺は振り落とされそうになりながら叫ぶ。
「うわああああああ!!!!!!!!!!」
その瞬間。
空間がさらに裂けた。
今度は、裂け目から“何か”が落ちてきた。
スマホ。
大量のスマホ。
無数のスマホが雨のように降ってくる。
地上に叩きつけられ、割れ、散らばる。
そして。
それらの画面に映っていたのは――
俺の連絡帳だった。
俺は叫んだ。
「やめろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
空中に流れるコメント。
【コメント:連絡帳解放www】
【コメント:ほとんど女しかいなくて草】
【コメント:作者の人生終わった】
【コメント:アルセウスに誓った男、終了】
俺は泣きながら叫んだ。
「終わってるのは俺の人生じゃなくて世界だよ!!!!!!!!!!!!!!!!」
その瞬間。
アルセウスが、淡々と言った。
『零』
『次の更新で』
『この世界は決まる』
俺は青ざめた。
「……決まる?」
アルセウスは言った。
『お前が書いた結末が』
『現実になる』
俺は叫んだ。
「無理だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
でも。
コメント欄は盛り上がった。
【コメント:最終回くる!?】
【コメント:作者が世界の神になる回】
【コメント:頼むぞ零!!】
【コメント:更新しろ】
【コメント:更新しろ】
【コメント:更新しろ】
【コメント:更新しろ】
俺は震えながら呟いた。
「……コメント欄が圧をかけてくるの、現実だと恐怖でしかないな」
そして。
俺のスマホが勝手に文字を打ち始めた。
画面に表示されるタイトル。
第73話
「俺が神になるしかない」
俺は絶叫した。
「嫌だァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
次回
「俺が神になるしかない」