チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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第74話 神になったらレッドが本気出してきた

俺は神になった。

神になったのに

 

真っ先に思った感想がこれだ。

 

「……終わった」

 

いや、正確には

“終わってなかった”

 

空中で時間を止めて、コメント欄を消して、運営を黙らせて、ギラティナを帰らせた。

 

普通ならここでハッピーエンド。

普通ならここで拍手喝采。

普通ならここで俺は帰宅してゲームして寝る。

 

なのに、

地上で、レッドだけが動いていた。

止まった世界の中で、あいつだけが歩いている。

 

神の支配を無視して、

神のルールを無視して、

まるで「そんなの関係ない」と言わんばかりに。 

 

俺は空中で青ざめた。

「……おいおいおい」

 

レッドは静かにモンスターボールを投げた。

光。

白いシルエット。

 

そして、

ミュウツー。

 

紫の体。

鋭い目。

最強のエスパー。

 

俺は叫んだ。

「お前それ出すの早いだろ!!!!!!!!!!!」

 

最初はピカチュウかリザードン出せよ!!!

 

レッドは無言。

ミュウツーが空中を見上げ、俺を見た。

 

その瞬間、俺の背筋が凍った。

こいつ、俺が神だって分かってる。

分かった上で、敵として認識している。

 

ミュウツーが低く呟いた。

「……貴様が“原因”か」

 

俺は叫んだ。

「そうだけど!!今頑張って収拾つけてんだよ!!!!!!」

 

ミュウツーは冷たく言う。

「遅い」

 

俺は言い返す。

「正論やめろ!!!!!!!!!!!!!!」

 

レッドが静かに呟いた。

「……終わらせる」

 

俺は震えた。

いや、怖いのはミュウツーじゃない。

レッドだ。

 

こいつは、迷いがない

感情がない

慈悲がない

 

“主人公補正”がある。

 

俺は叫んだ。

「待て待て待て!!!!!!」

 

「俺が神になったんだぞ!?神に逆らうなよ!!!!」

 

レッドは、ただ一言。

「……関係ない」

 

俺は泣きそうになった。

「関係あるだろ!!!!!!!!!!!!!!」

 

その瞬間

ミュウツーが空中へ浮かび上がった。

俺の目の前まで、一瞬で距離を詰める。

 

エスパーの瞬間移動。

 

俺は反射的に後ろへ下がった。

背中にリングの重みを感じる。

 

神の輪。

神の権限。

神の責任。

 

ミュウツーが冷たい目で言った。

「神だろうと関係ない」

 

「私は、レッドの命令に従う」

 

俺は叫んだ。

「忠誠心強すぎだろ!!!!!!!!!!」

 

そして

ミュウツーが手を上げた。

紫の波動。

空気が歪む。

 

――サイコブレイク。

 

俺は叫んだ。

「やめろ!!!!!!」

 

だが、発動した。

目に見えない破壊が俺に迫る。

俺は咄嗟に指を鳴らした。

 

パチン

 

神の権限。

時間停止。

 

世界が止まる。

サイコブレイクの波動も止まる。

ミュウツーも止まる。

レッドも止まる。

 

俺は息を吐いた。

「……ふぅ」

 

勝った。

いや、これで終わりだ。

 

俺はゆっくりと地上に降りる。

止まったレッドの前へ行く。

 

そして言った。

「……レッド」

 

「俺はお前と戦いたくない」

 

レッドは止まっている。

でも、その目は

 

止まっていない気がした。

 

俺は嫌な予感がした。

「……おい」

 

その瞬間

レッドが、動いた。

止まった時間の中で。

 

ゆっくりと

確実に

動いた。

 

俺の血の気が引いた。

「……は?」

 

あり得ない。

時間停止は神の権限だ。

なのにレッドは、普通に動いている。

 

レッドが口を開いた。

「……それ、卑怯」

 

俺は叫んだ。

「卑怯じゃない!!!!!神の能力だ!!!!!」

 

レッドは無言で歩く。

俺に近づく。

 

俺は後ずさる。

「待て待て待て……」

 

ミュウツーも、少しずつ動き始めた。

 

世界が止まっているのに。

こいつらだけが動く。

 

俺は震えながら叫んだ。

「なんで動けるんだよ!!!!!!!!!!!」

 

レッドは、淡々と答えた。

「……俺は、止まらない」

 

俺は叫んだ。

「意味分かんねぇよ!!!!!!!!!!!!!」

 

ミュウツーが言う。

「レッドの意思は、世界の法則より強い」

 

俺は叫んだ。

「主人公補正の権化かよ!!!!!!!!!!!」

 

その瞬間。

俺は悟った。

こいつらは、神の支配を超える。

 

レッドは世界のバグ。

いや、世界の“仕様”。

 

俺が神になっても、レッドは止まらない。

 

俺は青ざめた。

「……詰みじゃん」

 

レッドが、モンスターボールをもう一つ投げた。

 

俺は目を見開いた。

「待て、まだ出すのかよ!?」

 

光。

シルエット。

 

そして――

ピカチュウ。

 

俺は叫んだ。

「お前!!!!それは!!!!」

 

ピカチュウがこちらを見上げる。

そして、

ほっぺたが光った。

 

バチバチバチッ!!

 

俺は震えた。

「……それ、やばいやつだろ」

 

レッドが言った。

「……いけ」

 

ピカチュウが跳ねる。

雷が落ちる。

 

――10まんボルト。

 

俺は反射的に手を上げた。

神の権限で、雷を消そうとした。

 

だが。

雷は消えなかった。

俺の体に直撃した。

 

バチィィィィィィ!!!!!

 

俺は叫んだ。

「ぐあああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

 

痛い。

いや、痛いとかじゃない。

魂が焼かれる。

 

神になったのに。

普通に痛い。

 

サトシ達、よくこれに耐えれたな。

 

俺は泣きながら叫んだ。

「神って痛覚あるのかよ!!!!!!!!!」

 

アルセウスの声が響いた。

『当然だ』

 

『神とは、全てを感じる存在だ』

 

俺は叫んだ。

「最悪!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

レッドがゆっくりと近づく。

その歩みは止まらない。

 

俺はダークルギアを呼んだ。

「ダークルギア!!!!!!」

 

だが、

ダークルギアは動かなかった。

時間停止の中で、完全に固まっている。

 

俺は叫んだ。

「おい!!!!動けよ!!!!!!!!」

 

ミュウツーが冷たく言う。

「お前の支配は、私たちには通用しない」

 

俺は震えながら呟いた。

「……つまり」

 

「俺は神なのに」

 

「レッドとミュウツーには勝てないってこと?」

 

レッドは、淡々と頷いた。

「……そう」

 

俺は泣きそうになった。

「そんな神いるか!!!!!!!!!!!!!!!」

 

その時。

地上で止まっていた世界が、ゆっくり動き始めた。

 

時間停止が崩れた。

俺の神の能力が、侵食されている。

 

いや、違う。

レッドが時間停止を破壊している。

 

自衛隊の戦闘機が再び動き出す。

人々が叫び出す。

読者たちが騒ぎ出す。

世界が戻っていく。

 

そして。

空にコメントが流れた。

 

【コメント:レッド強すぎて草】

【コメント:神なのに負けてて草】

【コメント:作者、最終回?】

【コメント:ピカチュウが神に雷落としてるの笑う】

 

俺は叫んだ。

「コメント欄復活すんな!!!!!!!!!!!!!」

 

レッドは言った。

「……お前が神になったなら」

 

「責任を取れ」

 

俺は叫んだ。

「取ってるだろ!!!!!!」

 

レッドは静かに言った。

「……責任は、命だ」

 

俺は青ざめた。

「……は?」

 

ミュウツーが、手を上げる。

紫の光が溜まる。

今度は止まらない。

今度は防げない。

 

俺は理解した。

レッドは俺を○す。

神だろうと○す。

 

この世界を守るためなら。

俺という神を消してでも。

 

俺は震えながら呟いた。

「……やばい」

 

その瞬間。

俺のスマホが震えた。

通知。

 

【ハー○ルン運営】

『次回、最終回です』

 

俺は叫んだ。

「勝手に決めるな!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

だが、もう遅い。

ミュウツーのサイコブレイクが放たれる。

レッドのピカチュウが雷を落とす。

 

俺の神のリングがひび割れる。

 

ダークルギアが叫ぶ。

「グルァァァァァァ!!!!!!」

 

俺は叫んだ。

「待て!!!!!!!!!!」

 

「俺が死んだら世界が崩壊するんだぞ!!!!!!!!!!!!!!」

 

レッドは一言。

「……それでいい」

 

俺は絶望した。

「よくねぇよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

世界が光に包まれる。

空が割れる。

地上が揺れる。

全てが崩壊し始める。

 

俺は、最後に思った。

――ああ。

俺が神になったのは。

罰ゲームじゃなかった。

 

“処刑”だった。

 

次回

『チュートリアルお兄さん(呪い)』

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