――このルートは、日差しが眩しすぎて死ぬ。
南国。
海。
青空。
笑顔。
……そして。
圧倒的コミュ力の暴力。
アローラは明るい。
明るすぎる。
俺みたいな「人生落とした系主人公」が行く場所じゃない。
だが。
行ってしまった。
呪いってそういうもんだ。
アローラ地方。
メレメレ島。
ハウオリシティ。
俺は汗だくで歩いていた。
「……暑い」
いや、暑いじゃない。
地獄だ。
太陽が本気出してる。
肌が焼ける。
心も焼ける。
そんな俺の前に、元気すぎる声が飛んできた。
「こんにちはー!!」
俺は反射的に振り向く。
そこにいたのは少女。
ショートカット。
笑顔。
明るい目。
そして、全身から放たれる陽キャオーラ。
――ミヅキ。
俺は心の中で呟いた。
(終わった)
ミヅキは手を振った。
「あなたが八雲零さん?」
俺は固まった。
「……なんで知ってる」
ミヅキは笑った。
「有名だよ!」
俺は叫びそうになった。
(有名って何だよ!!!!!!!!!!)
ミヅキはニコニコしながら言った。
「よろしくね!」
俺は言った。
「……よろしく」
その瞬間。
ミヅキは俺の手を掴んだ。
「じゃあ行こ!」
俺は叫んだ。
「どこに!!!!!!!!!!」
ミヅキは笑った。
「海!」
俺は叫んだ。
「俺の意思!!!!!!!!!!」
ミヅキルートの特徴。
それは。
ミヅキが「考えさせない」ことだ。
悩む暇がない。
落ち込む暇がない。
逃げる暇もない。
気づけば海。
気づけば祭り。
気づけばしまキング。
気づけばポケモンバトル。
気づけば知らない人に囲まれてる。
俺は心の中で泣いた。
(この地方、社交性が高すぎる……)
ミヅキはとにかく明るい。
俺が黙ってても話しかける。
俺が疲れてても笑わせようとする。
俺が死んだ目でも「大丈夫!」で押し切る。
ある日。
俺が木陰で倒れかけていた。
「……無理」
ミヅキが覗き込む。
「え?何が無理?」
俺は言った。
「太陽」
ミヅキは笑った。
「太陽は無理じゃないよ!」
俺は叫んだ。
「無理だよ!!!!!!!!!!」
ミヅキは言った。
「じゃあ日陰行こ!」
俺は言った。
「今いるだろ!!!!!!!!!!」
ミヅキは笑った。
「じゃあ冷たいジュース飲も!」
俺は言った。
「それは助かる」
ミヅキはニコニコして走り去った。
俺は思った。
(この子、テンポが早すぎる……)
そして最悪なことに。
ミヅキは俺の「呪い」を怖がらない。
連絡帳が増えても。
悪の組織が絡んでも。
伝説が出ても。
神が降りても。
全部、こう言う。
「わー!すごい!」
俺は叫んだ。
「すごくねぇ!!!!!!!!!!」
ミヅキは笑う。
「えー?すごいよ!」
俺は頭を抱えた。
(この子、恐怖の基準が狂ってる)
ある日。
俺はついにスマホを落とした。
連絡帳が開く。
地獄の一覧。
ミヅキが覗き込んだ。
「うわぁ!」
俺は青ざめた。
「やめろ見るな!!!!!!!!!!」
ミヅキは目を輝かせた。
「すごい!」
俺は叫んだ。
「だからすごくねぇ!!!!!!!!!!」
ミヅキは言った。
「ねえねえ!」
「これ全部知り合い?」
俺は言った。
「呪い」
ミヅキは首を傾げた。
「呪いって、連絡先増えるの?」
俺は言った。
「増える」
ミヅキは笑った。
「じゃあさ!」
「私も入れてよ!」
俺は叫んだ。
「出た!!!!!!!!!!」
ミヅキはにっこり笑った。
「だって仲良くなりたいもん!」
俺は言った。
「お前は仲良くなるスピードが速すぎるんだよ」
ミヅキは胸を張る。
「それが私!」
俺は叫んだ。
「誇るな!!!!!!!!!!」
だが。
俺は断れなかった。
なぜならミヅキは、断られると悲しそうな顔をする。
でも泣かない。
怒らない。
責めない。
ただ、少しだけ寂しそうに笑う。
それが一番効く。
俺は負けた。
「……分かったよ」
ミヅキは満面の笑み。
「やったー!!」
俺は連絡帳に登録した。
その瞬間。
スマホが震えた。
光が走った。
嫌な予感しかしない。
画面に表示された。
【ミヅキ:太陽】
俺は叫んだ。
「属性が眩しい!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ミヅキは笑った。
「え!?なにそれ!?嬉しい!」
俺は叫ぶ。
「嬉しくねぇ!!!!!!!!!!」
中盤。
エーテル財団。
ルザミーネ。
ウルトラホール。
UB。
世界が変な方向に行く。
俺は頭を抱えた。
「……やっぱアローラも平和じゃないな」
ミヅキは言った。
「行こう!」
俺は言った。
「お前、怖くないのか」
ミヅキは笑った。
「怖いよ!」
俺は頷く。
「だよな」
ミヅキは続けた。
「でも八雲さんが怖がってる顔してるの、ちょっと面白い!」
俺は叫んだ。
「面白がるな!!!!!!!!!!」
ミヅキは笑う。
「ごめんごめん!」
「でもね」
そして少しだけ真面目な顔をした。
「八雲さんが笑うまで、私が笑わせる」
俺は息を止めた。
この子は軽い。
軽いのに、言葉が刺さる。
太陽みたいに。
熱いのに、逃げられない。
終盤。
空が裂ける。
UBが暴れる。
アルセウスが降りる。
俺は叫んだ。
「お前も来るのかよ!!!!!!!!!!」
アルセウスが言う。
『零』
『お前は選べ』
『神になるか、呪いに戻るか』
俺はため息をついた。
「またそれかよ…」
ミヅキが前に出る。
「神様!」
アルセウスが沈黙する。
ミヅキはニコニコして言った。
「八雲さん、神にならなくていいよ!」
俺は固まった。
アルセウスが言う。
『ならばどうする』
ミヅキは即答した。
「私が神になる!」
俺は叫んだ。
「無茶!!!!!!!!!!」
アルセウスが沈黙した。
ミヅキは笑った。
「だって八雲さん、もう疲れてるもん!」
俺は息を止めた。
ミヅキは続けた。
「神様ってさ」
「偉いんでしょ?」
「偉いなら、休ませてあげて!」
アルセウスが静かに言った。
『……愚かだ』
ミヅキは笑った。
「愚かでいいよ!」
「私は八雲さんが好きだから!」
俺は固まった。
告白が雑すぎる。
だが。
雑なのに真っ直ぐで。
逃げられない。
アルセウスが言った。
『……零』
『この娘は、お前にとって何だ』
俺は震えた。
「……うるさい太陽」
ミヅキは笑った。
「ひどい!」
アルセウスが沈黙し。
そして光を降ろした。
スマホが震える。
連絡帳が更新される。
【ミヅキ:日常】
俺は叫んだ。
「日常ってなんだよ!!!!!!!!!!」
ミヅキは笑った。
「え!?嬉しい!」
俺は叫ぶ。
「お前は何でも嬉しいな!!!!!!!!!!」
最後。
夕方の浜辺。
空がオレンジ。
潮風。
ミヅキが砂浜に座って言った。
「ねえ八雲さん」
俺は言った。
「……何だよ」
ミヅキは笑った。
「私さ、八雲さんのこと、好きだよ」
俺はため息をついた。
「さっきも言っただろ」
ミヅキは笑う。
「何回でも言う!」
俺は呟いた。
「……眩しいんだよ、お前」
ミヅキは首を傾げた。
「え?褒めてる?」
俺は言った。
「半分褒めてる」
ミヅキは満面の笑み。
「やった!」
俺は思った。
このルートは、静かに救われる。
優しさで包むんじゃない。
癒すんじゃない。
ただ。
太陽みたいに。
「暗くなる暇を奪う」救い方。
それがミヅキルート。
そして俺は、最後に一言だけ言った。
「……ありがとな」
ミヅキは目を丸くした。
「え?」
俺は言った。
「うるさいけど、助かった」
ミヅキは、少しだけ照れて笑った。
「えへへ」
「じゃあ、これからもよろしくね!」
俺は叫んだ。
「結局それかよ!!!!!!!!!!」
ミヅキは笑った。
海も笑ってる気がした。
ミヅキルート 完
(※このルートの八雲零は「太陽」に焼かれながら救われる)