――このルートは、最初は普通だ。
普通に会う。
普通に話す。
普通に旅する。
普通に笑う。
……そして気づいた時には。
逃げ道が、完全に塞がっている。
なぜならユウリは。
静かで。
礼儀正しくて。
可愛くて。
常識人に見えて――
根性がバケモノだから。
ガラル地方。
ブラッシータウン。
俺は海風に当たりながら歩いていた。
「……寒い」
アローラの暑さで死んだあとに、ガラルの寒さは反則だろ。
そんなことを考えながら、坂道を登っていた。
そこに。
少女がいた。
帽子。
バッグ。
活発そうな目。
……ユウリ。
俺は反射的に言った。
「……あ、こんにちは」
ユウリは元気よく手を振った。
「こんにちは!」
俺は少し安心した。
(あ、普通の子だ)
だが次の瞬間。
ユウリは言った。
「八雲零さんですよね?」
俺は固まった。
「……なんで知ってる」
ユウリは笑った。
「え?知ってますよ?」
俺は震えた。
(ガラルまで噂回ってんのかよ!!!!!!!!!!)
ユウリルートの特徴。
それは。
ユウリが「普通っぽい」のに、普通じゃないところだ。
言葉遣いは丁寧。
態度も礼儀正しい。
常識もある。
空気も読める。
でも。
ユウリは一度決めたら曲げない。
つまり。
ガラル式・鉄の意志。
ユウリは言った。
「八雲さん、旅してるんですか?」
俺は言った。
「……まあな」
ユウリは頷いた。
「じゃあ私も一緒に行きます!」
俺は即答した。
「ダメ」
ユウリは笑顔で言った。
「はい!」
俺は言った。
「いや、ダメって言ったんだけど」
ユウリは言った。
「聞こえました!」
俺は叫んだ。
「聞こえててその返事なの怖いわ!!!!!!!!!!」
ユウリは笑う。
「だって八雲さん、困ってそうだから!」
俺は言った。
「困ってるけど、それと一緒に行くのは別だろ」
ユウリは首を傾げた。
「別じゃないですよ」
俺は思った。
(理屈が通じないタイプだ……)
数日後。
俺は理解した。
ユウリは、戦闘民族だった。
ガラルの空気を吸って育った女。
つまり。
バトルが日常。
会話よりバトル。
挨拶代わりにバトル。
困ったらバトル。
悩んだらバトル。
俺が「疲れた」と言うと――
「じゃあ気分転換にバトルしましょう!」
俺は叫んだ。
「休ませろ!!!!!!!!!!」
ユウリは笑った。
「バトルは元気出ますよ!」
俺は思った。
(こいつ、根本が狂ってる……)
ある日。
俺がため息をついた。
「……もう俺、何やってんだろ」
ユウリは言った。
「八雲さん」
俺は顔を上げた。
ユウリは真剣な顔をしていた。
「人生が分からなくなった時は」
俺は思った。
(お、いいこと言う流れか?)
ユウリは言った。
「とりあえず殴れば大体解決します」
俺は叫んだ。
「ガラルが脳筋すぎる!!!!!!!!!!」
ユウリは笑った。
「冗談です!」
俺はため息をついた。
「冗談に聞こえねぇんだよ……」
そして事件。
ムゲンダイナ。
ダイマックス。
ローズ委員長。
ガラルの危機。
俺は頭を抱えた。
「……また世界滅びる系か」
ユウリは拳を握った。
「行きましょう!」
俺は言った。
「お前、怖くないのか」
ユウリは笑った。
「怖いですよ?」
俺は頷く。
「だよな」
ユウリは続けた。
「でも!」
「怖いからこそ、私が行きます!」
俺は呟いた。
「……なんでそうなる」
ユウリは言った。
「八雲さんが行くと、一人で抱え込みそうだから」
俺は固まった。
ユウリは続けた。
「だから、私が横で殴ります」
俺は叫んだ。
「やっぱ殴るんじゃねぇか!!!!!!!!!!」
ある日。
俺はスマホを落とした。
連絡帳が開く。
いつもの地獄。
ユウリが覗き込んだ。
「……わ」
俺は青ざめた。
「見るな」
ユウリは真顔で言った。
「これ、やばいですね」
俺は言った。
「やばいよ」
ユウリは頷く。
「でも」
俺は警戒した。
「……でも?」
ユウリは言った。
「私も入れときます?」
俺は叫んだ。
「出た!!!!!!!!!!」
ユウリは首を傾げる。
「え?だって必要じゃないですか」
俺は言った。
「必要じゃない」
ユウリは笑った。
「必要ですよ」
俺は叫んだ。
「何で!!!!!!!!!!」
ユウリは真顔で言った。
「八雲さんが逃げた時、捕まえるために」
俺は叫んだ。
「目的が怖い!!!!!!!!!!」
ユウリは笑った。
「冗談です!」
俺は言った。
「冗談に聞こえねぇんだよ!!!!!!!!!!」
その夜。
スマホが勝手に震えた。
通知。
連絡帳更新。
嫌な予感しかしない。
画面を見る。
【ユウリ:捕獲対象】
俺は叫んだ。
「俺が捕獲される側かよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
次の通知。
【ユウリ:捕獲者】
俺は叫んだ。
「役職決まってんじゃねぇか!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ユウリが笑顔で言った。
「やった!」
俺は叫んだ。
「やったじゃねぇ!!!!!!!!!!」
終盤。
アルセウスが降りる。
空が裂ける。
俺は叫んだ。
「また来たのかよ!!!!!!!!!!」
アルセウスが言う。
『零』
『お前は選べ』
『神になるか、呪いに戻るか』
俺はため息をついた。
「だからそれ飽きたって」
ユウリが前に出た。
そしてアルセウスを見上げて言った。
「神様」
アルセウスが沈黙する。
ユウリは礼儀正しく言った。
「八雲さんを返してください」
俺は固まった。
(返すって何だよ)
アルセウスが言う。
『返す?』
ユウリは頷いた。
「はい」
「この人、ずっと誰かの役目ばっかりしてます」
「チュートリアルとか」
「呪いとか」
「神とか」
「悪の組織とか」
ユウリは続ける。
「でも八雲さんは」
「八雲さんの人生を生きるべきです」
俺は息を止めた。
ユウリは真っ直ぐ言った。
「だから、返してください」
アルセウスが沈黙した。
俺は思った。
(ガラルの女、真っ直ぐすぎる……)
アルセウスが言った。
『……ならば、お前が背負うか?』
ユウリは即答した。
「はい」
俺は叫んだ。
「軽率!!!!!!!!!!」
ユウリは真顔で言った。
「軽率じゃないです」
「覚悟です」
アルセウスが静かに言った。
『……良い』
光が降りる。
スマホが震える。
連絡帳が更新される。
【ユウリ:鉄壁】
俺は叫んだ。
「鉄壁ってなんだよ!!!!!!!!!!」
ユウリは笑った。
「私、守り得意なんです!」
俺は呟いた。
「攻撃も得意だろ……」
最後。
ガラルの丘。
夕日。
風が冷たい。
ユウリが隣で言った。
「八雲さん」
俺は言った。
「……なんだよ」
ユウリは少しだけ照れたように笑った。
「私、八雲さんのこと好きです」
俺は固まった。
「……急だな」
ユウリは頷いた。
「急じゃないです」
「ずっと思ってました」
俺は言った。
「……なんで俺なんだよ」
ユウリは笑った。
「放っておけないから」
俺は苦笑した。
「……お前、そればっかだな」
ユウリは真顔で言った。
「それが理由じゃダメですか?」
俺は、言葉に詰まった。
ダメなわけがない。
だが、怖い。
この子は。
一度守ると決めたら、絶対に離さない。
ユウリは言った。
「逃げてもいいですよ」
俺は驚いた。
「……いいのか?」
ユウリは笑った。
「はい」
「でも」
そして静かに続けた。
「捕まえますから」
俺は叫んだ。
「結局それ!!!!!!!!!!」
ユウリは笑った。
「冗談です!」
俺は言った。
「冗談に聞こえねぇ!!!!!!!!!!」
でも。
その笑顔が。
不思議と安心できた。
捕まるのが怖いのに。
捕まっていいと思ってしまう。
それがユウリルート。
ユウリルート 完
(※このルートの八雲零は「鉄壁の執着」で守られ、逃げられなくなる)