チュートリアルお兄さん(呪い)   作:夜神桜

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突然なんですが皆さんはリーフとブルーどっちが好きですか?


番外編11 本編未登場 リーフルート編

――このルートは、優しい。

優しいのに。

容赦がない。

 

なぜならリーフは、明るい。

眩しい。

強い。

そして、何より。

 

「全部分かってる顔」で、平然と笑うからだ。

 

レッドでもない。

グリーンでもない。

でも、カントーを支えたもう一人の主人公。

 

その存在感は、旅の途中で出会った程度じゃ済まない。

 

俺はリーフを、絶対に本編に入れられなかった。

理由は簡単。

こいつが出てきた瞬間。

 

物語が「恋愛」になるからだ。

 

カントー地方。

タマムシシティ。

夕暮れの大通り。

 

俺はコンビニみたいな店の前で、紙パックの飲み物を飲んでいた。

「……はぁ」

 

静かだ。

事件もない。

神もいない。

悪の組織もいない。

レッドもいない。

 

完璧だ。

 

……そう思った瞬間。

「ねえ」

 

背後から声がした。

 

女の声。

明るい。

軽い。

でも、芯がある。

 

俺は嫌な予感がして振り返った。

そこにいたのは――

 

帽子。

長い髪。

自信満々の笑顔。

カントーの空気をそのまま形にしたような女。

 

リーフ。

 

俺は固まった。

「……え」

 

リーフは笑った。

「久しぶり!……って言ったら驚く?」

 

俺は言った。

「驚く」

 

リーフは笑った。

「だよね!」

 

俺は言った。

「いや、待て」

 

「俺、お前に会ったことない」

 

リーフは首を傾げた。

「そう?」

 

俺は言った。

「そうだよ」

 

リーフはニコッと笑った。

「じゃあ今会ったね」

 

俺は思った。

(強引すぎる)

 

リーフは俺の隣に立ち、紙パックを覗き込んだ。

「それ、何飲んでるの?」

 

俺は言った。

「ミックスオレ」

 

リーフは言った。

「へー!いいね!」

 

そして、俺の顔をじっと見た。

「……ねえ」

 

俺は言った。

「なんだよ」

 

リーフは言った。

「あなた、旅してる人?」

 

俺は言った。

「まあな」

 

リーフは言った。

「ただの旅人じゃないでしょ」

 

俺は固まった。

 

俺の世界では、こういうのが始まると碌なことがない。

 

リーフは笑って続けた。

「顔がさ」

 

「“いろんなこと知ってる顔”してる」

 

俺は言った。

「……それ、褒めてんのか?」

 

リーフは言った。

「褒めてる!」

 

「でも、同時に」

 

リーフは少しだけ声を落とす。

「めちゃくちゃ疲れてる顔」

 

俺は視線を逸らした。

 

この手の女は厄介だ。

直感が鋭い。

そして何より。

 

優しさが、まっすぐ過ぎる。

 

リーフは突然言った。

「ねえ、バトルしよ!」

 

俺は言った。

「は?」

 

リーフは言った。

「バトル!」

 

俺は言った。

「いや、なんで」

 

リーフは笑った。

「だって、話すより早いじゃん!」

 

俺は思った。

(カントーって、こういう文化だったっけ……?)

 

でも。

断っても無駄だと悟った。

この女は、レッドとグリーンの間にいた人間だ。

 

常識が「バトル」側に寄っている。

 

そしてバトル。

リーフのポケモンは強かった。

 

強いだけじゃない。

判断が速い。

手持ちのバランスが完璧。

技構成がいやらしい。

 

何より。

楽しそうに戦う。

 

俺は思った。

(この女、チャンピオン級だろ)

 

俺が勝った瞬間。

リーフは負けたのに笑った。

「うわー!強い!」

 

俺は言った。

「お前も強い」

 

リーフは言った。

「でしょ?」

 

俺は思った。

(負けてるのにドヤ顔すんな)

 

リーフは手を腰に当てて言った。

「じゃあ決まりね」

 

俺は言った。

「何が」

 

リーフは笑った。

「あなた、私と旅しなさい」

 

俺は固まった。

「……は?」

 

俺は言った。

「いやいやいや」

 

「俺は一人でいい」

 

リーフは言った。

「ダメ」

 

俺は言った。

「なんで」

 

リーフは言った。

「あなた、絶対一人で潰れるタイプだもん」

 

俺は言った。

「余計なお世話だ」

 

リーフは笑った。

「余計なお世話するのが私の趣味!」

 

俺は叫んだ。

「最悪!!!!!!!!!!」

 

リーフは笑いながら言った。

「最高でしょ!」

 

俺は思った。

(こいつ、メンタルが太陽すぎる)

 

数日後。

俺は気づいた。

リーフは、普通に距離が近い。

 

近すぎる。

 

肩に寄りかかる。

腕を組む。

髪をいじる。

何気なく触れてくる。

 

そして言う。

「ねえ、レイ」

 

俺は言った。

「……呼び方が軽い」

 

リーフは言った。

「軽い方がいいじゃん!」

 

俺は言った。

「よくない」

 

リーフは言った。

「よくなるよ」

 

俺は思った。

(こいつ、強引さが神レベルだな)

 

ある夜。

ポケモンセンターの前。

俺はベンチでぼんやりしていた。

 

リーフが隣に座る。

「ねえ」

 

俺は言った。

「なんだよ」

 

リーフは言った。

「あなたってさ」

 

「すごいこといっぱいしてるでしょ」

 

俺は言った。

「……してない」

 

リーフは言った。

「してる」

 

俺は黙った。

 

リーフは続けた。

「でも、誰にも褒められてない顔してる」

 

俺は固まった。

 

リーフは笑って言った。

「だから私が褒めるね」

 

俺は言った。

「……いらねぇ」

 

リーフは言った。

「いらないって言う人ほど、必要なんだよ」

 

俺は思った。

(こいつ、何者だよ)

 

その瞬間。

スマホが震えた。

 

嫌な予感。

 

連絡帳。

悪の組織。

伝説。

神。

呪い。

 

そして。

――レッド。

 

俺は顔を青くした。

「……最悪だ」

 

リーフが覗き込んだ。

「なにそれ」

 

俺は言った。

「見るな」

 

リーフは真顔で言った。

「……ねえ」

 

「これ、全部あなたが関わってるの?」

 

俺は黙った。

 

リーフは言った。

「うそでしょ」

 

俺は言った。

「本当だよ」

 

リーフは沈黙した。

数秒。

 

そしてリーフは、笑った。

「なにそれ」

 

「めっちゃ面白いじゃん」

 

俺は叫んだ。

「面白くねぇよ!!!!!!!!!!」

 

リーフは言った。

「面白いよ!」

 

「だってあなた、生きてるんだもん」

 

俺は固まった。

 

リーフは続ける。

「そんなの、すごいじゃん」

 

俺は思った。

(こいつ……価値観が違いすぎる)

 

その夜。

リーフが言った。

「レイ」

 

俺は言った。

「……なんだよ」

 

リーフは言った。

「私ね、レッドもグリーンも知ってる」

 

俺は言った。

「……知ってるだろうな」

 

リーフは言った。

「二人とも、すごいよ」

 

「強いし、かっこいいし」

 

俺は黙る。

 

リーフは続けた。

「でもね」

 

その声が、少しだけ真剣になった。

「あなたの方が、ずっと怖い」

 

俺は固まった。

 

リーフは言った。

「あなたってさ」

 

「強いのに、全然自分を大事にしない」

 

俺は息を止めた。

 

リーフは言った。

「だから私が、あなたを大事にする」

 

俺は言った。

「……余計なお世話だ」

 

リーフは笑った。

「うん」

 

「余計なお世話!」

 

俺は思った。

(こいつ、笑いながら心に刺してくる……)

 

最後。

タマムシの夜景。

屋上。

 

風が気持ちよかった。

 

リーフが隣で言った。

「ねえ、レイ」

 

俺は言った。

「……何」

 

リーフは笑って言った。

「好き」

 

俺は固まった。

「……は?」

 

リーフは言った。

「好き!」

 

俺は言った。

「急すぎるだろ」

 

リーフは笑った。

「急じゃないよ」

 

「最初から決まってた」

 

俺は呟いた。

「……何が」

 

リーフは言った。

「あなたが、私の旅の相棒になること」

 

俺は言った。

「相棒で済むのか、それ」

 

リーフは首を傾げた。

「うーん」

 

「相棒でいいし」

 

「恋人でもいいし」

 

「家族でもいいよ」

 

俺は叫んだ。

「範囲広すぎだろ!!!!!!!!!!」

 

リーフは笑った。

「全部まとめて、私のもの!」

 

俺は呟いた。

「……やっぱ最悪だ」

 

リーフはニコッと笑う。

「うん、最悪!」

 

「でもさ」

 

そして、真剣に言った。

「あなたが逃げても」

 

「私、絶対見つけるよ」

 

俺は思った。

(レッドより怖い)

 

リーフは笑った。

「だって私、カントーの女だもん!」

 

俺はため息をついた。

 

このルートは、終わりじゃない。

始まりだ。

 

逃げても追われる。

隠れても見つかる。

諦めても、許されない。

 

でも。

その眩しさが。

 

俺の呪いを、少しずつ薄めていく。

 

そんな気がした。

 

リーフルート 完

(※このルートの八雲零は「太陽」みたいな女に連れ去られて、人生を取り戻す)




GW初日からの日課はこれです
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