3級フィクサーパンチ   作:アリマリア

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レゾンデートル

 

 

 

 返す返す言うが、俺は凡人である。

 都市に生まれた以上、こりゃあ本気で頑張らんとヤバいわねと思い、全力で生き足掻いてこそいるが……。

 結局のところ、身体も脳内も割と平々凡々。才能は微妙にしか持ち合わせていない。

 

 頭脳に関しては、アインやベンジャミン、カルメンにダニエルなんかに到底及ばない。

 アイツらは頭が良すぎて、ガチの研究話になると俺は到底付いて行けなかったりする。研究概要とか基礎理論くらいなら呑み込めるんだけどね。

 

 武力に関しては、先日ついに「赤い霧」の名を得たカーリーに大差をつけられている。

 実際、プロトミミクリーをぶん回す彼女の姿を見ては、「うーん桁違い!w」という感想しか出て来ない。かつてのように「赤」で剣を弾くことも今は難しく、E.G.Oであるプロト涙剣でさえかなり厳しいものがある。

 

 L旧研は才能の宝庫だ。頭脳面武力面、その両面における都市最強が集まっている。

 

 その一方で、イレギュラーたる俺は、半端な才しか持ち合わせてはいないのであった。

 

 まあだからこそ、最近は2日に1度のペースで発生していたエリヤの愚痴飲み会で彼女を励ませていたんだが。

 人間万事塞翁が馬。才能がないことも、時にはプラスに働くものなんだなこれが。

 

 

 

 更に言えば、俺が才能を持ち合わせないのは、何も単純な能力だけの話じゃない。

 精神、メンタル面においても、俺は極々平凡な雑魚に過ぎない。

 

 頑健なように振舞ってこそいるが……というか、あのカスのムスコンババア様のおかげで多少のことには動じない精神こそ構築できているが。

 それでも、俺の根幹を成す精神性はあくまで前世で形作られたものであり、凡人のそれでしかない。

 

 特に感性の部分には、未だかつての影響が色濃く残ってる。

 女に剣を向けるのは今になっても抵抗があるし、あの笑う死体の山見た時はその悍ましさに「!!恐怖」したりもした。

 ダニエルみたいな男には心地良さを覚えるし、エリヤみたいな頑張り屋を見ると応援したくなるし、逆にカルメンみたいな楽観的な世間知らずを見ると反感を覚えてしまう。

 

 そして何より……。

 我ながら青臭いなぁと思うんだけど、子供には幸せに笑っててほしいとも思う。

 

 俺は子供が好きだ。

 子供が安心して笑っていられる環境こそ、俺たちが作るべきものだと思うし。

 逆に言えば、子供が笑えない世界に幸せなんてもんが生まれるわけがねぇ、とも思ってしまう。

 

 誠に都市らしくない思考だとは思うが、奥底に染み付いたこればかりは、そう簡単には変えられなさそうだ。

 

 

 

 さて、ここまで長々と語って来たが。

 つまるところ、何が言いたいかと申しますと……。

 

 端的に言うと、俺は絆されたのである。

 

「コナー、コナー……っ! ありがとう……っ!」

 

 この、歳相応に腰にしがみついて泣きじゃくるガキに。

 

「……僕は、間違えてしまったのかな」

 

 この、歳の程に反して深く思考の海に沈むガキに。

 

 

 

 ……やっちまったなあ。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 俺ことコナーの最終目標は、図書館の指定司書になり、脱都市して悠々自適に余生を過ごすことである。

 指定司書になるにはセフィラになるかローラン枠になるかせねばならず、後者はムスコンパープルの足取りが掴めない限り無理。

 というわけで、俺は当面の目標として、L社のセフィラになることを目指している。

 

 が、同時。

 その目的が果たされるためには、俺自身がセフィラになること以外にも、もう一つの条件もあるのだ。

 

 それは、カルメンが釣瓶になり、L旧研が壊滅し、彼女を讃えるロボトミーが始まり、新L社になり、10,000年の煉獄を経て悟りを開き、白夜、黒昼が起きて、図書館ができ、そうして彼と彼女が許し合うこと。

 つまりは、原作通りに展開を進めなきゃならないわけだ。

 

 その過程で、俺はまた死ぬ必要があるし、多少なりとも仲を深めてきたL旧研のメンバーも皆死ぬ。

 俺はそれを利己的に受け入れ、許容した……はずだった。

 

 だからこそ、彼らの研究に積極的に手を貸したり、アドバイスをしたりはしなかった。

 だからこそ、どんどん沈んでいくカルメンを元気付けたりもしなかった。

 だからこそ、研究所の雰囲気が死んでいくのを黙認していた。

 

 それらは全て、あの結末へ至るために必要な過程と犠牲だったからだ。

 俺が落ち着いた、何物にも脅かされない暮らしを手に入れるために、避けられないと思っていたからだ。

 

 実際、そう動くことは、この研究所に来るずっと前から決めていた。

 俺が組んだ、L社初期メンしれっとに紛れ込んでセフィラ&指定司書にしてもらって、上手いこと主人公たちを誘導してトゥルーエンドに到達させるRTA、New(N)Life(L)+レギュにおけるチャートの一部というわけだ。

 

 

 

 ……だけど。

 

 ただ知識の上でキャラクターとして理解することと、実際に顔を合わせ言葉を交わして理解することの間には、あまりにも大きすぎる差があった。

 

 彼らを知る内に、俺は彼らに救いあれと望んでしまっていた。

 いずれ破滅に至るとしても、少しでもその過程が楽になるように、その苦痛がなくなる、あるいは報われるようにと思い、動いてしまった。

 これくらいはいいだろうと、計画にない動きをしてしまっていたのだ。

 

 その時点で、もはや俺の行動に、一貫性や正当性はなくなっていたんだろう。

 要はチャートガン無視オリチャーだらけのガバガバRTAになってたんだ。

 

 

 

 そして、その果てに。

 

 俺は、チャートをぶっ壊すことをしたわけだ。

 

 

 

 ガキ2人の頭を撫でながら、俺は考える。

 

 ここからリカバリってできるかな? と。

 

 本来の流れであれば。

 追い詰められたカルメンがエノクの実験参加を許可→エノクが無惨に死亡→リサがブチ切れて「あなたが死ねばいいのよ!」→カルメンが希死念慮を抱く→暫くして自殺未遂……となる。

 

 そして、最後の頃には「釣瓶」さえあればコギトの抽出が可能になるとわかっており、そしてカルメンの体こそがその素材になることが判明していた。

 結果として、アインたちはカルメンの意思を継ぐ(笑)ため、生きたいと望んでいたカルメンの脳と神経をブチブチして釣瓶を作り上げる。

 

 そうして、彼女を讃えるロボトミーが始まる、というわけだ。

 

 ……つまるところ、原作ルートに派生するためには、カルメンがバチクソに追い詰められることが不可避。

 そしてエノクの死は、それを決定付けるものだったのだ。

 

 

 

 で。

 俺はそんな大事なイベントをぶっ壊しちゃったってわけ。

 

 あーもう滅茶苦茶だよ!

 

 寝不足でヤケクソ気味になってるところがあったとはいえ、あそこまでやっちゃうとは……自分の行動力にびっくりだ。

 どうやら知らないうちに、鬱憤が溜まりに溜まっていたらしい。

 

 ……いやまあ、研究所に来てしばらくした頃から、「やっぱこの宗教クソだわ! みんなの前でカルメンぶん殴ってぬるま湯みてえな関係ぶっ壊したろ!」とは思ってはいたんだけどさ。

 実際にやっちゃうと、こう、何とも言えない後悔……いや後悔じゃないな、これからどうしようかなっていう躊躇が湧いて来た。

 

 これどうやって原作に合流させるん?

 どうするよ、カルメンが冷静になって反省したりしたら。そしたらコギト技術いつまでも完成しないから、Lobotomy成立しませんが?

 いやまあこの後「やっぱりエノク実験台にするわ!w」とか言われたら、それはそれでカルメンぶち殺すか~ってなっちゃうけども。

 

 もうどう足掻いても原作か俺、どっちかがブレイクじゃん。

 指定司書ルート、だいぶキツくなっちゃったじゃんねこれ。

 

 

 

 ……それなのに、全然「あんなことしなきゃよかった」なんて気持ちが湧かないんだから、ほんっと俺って馬鹿だよな!!

 

 仕方ないじゃん、ガキ生贄にするとかキショすぎて無理だも~~~ん!!;;

 

 

 

 * * *

 

 

 

 内心ではばちくそ悩みながらも、乾いた笑みを唇に貼り付け、リサの頭を撫でる機械になっているくっそ無様な一般雑魚。

 

 そんな俺に対し、ふと、エノクが疑問を投げかけてきた。

 

「コナー。君は、いつか言ったように、僕を止めてくれたんだよね。

 僕の何が間違っていたんだろう。僕の存在意義に何かを期待するのは、間違っていたのかな」

 

 難しい問いを投げて来ますわね~~~この賢しいガキは。

 

 まあでも、難しいっていうのはあくまで一般論からすればの話。

 俺からすれば、その答えは簡単だ。あまりに簡単すぎて欠伸が出るわ。

 

「エノク、お前、自分が賢いって自覚はあるんだろう?」

「……そうだね。人より少し多く物が見えている、そんな自覚はあるよ」

「じゃあ話は簡単だ。お前がなるべきは実験体じゃなくて、研究者なんだよ」

 

 なーんでそこを間違えるんですかね。エノクも、カルメンも。

 そんなに頭が良いのに、適材適所って言葉すら知らんのか。知らんかそりゃ、前世の日本の言葉だしな。

 

「俺が雑用をやっているのは、相応しいだけの能力がないからだ。

 アインのように頭も良くなく、カーリーのように強くもないからこんなザマだよ。

 逆に言うと、俺みたいな能力のない人間が研究して、アインが雑用してたら馬鹿みたいだろ。

 才能がある人間が、誰でもできるようなことをするんじゃない。そういうのは俺みたいなのに任せとけ」

 

 アホくさ。

 才能あるんだから活かせよ。なんで死のうとしてんだよ。

 俺みたいな才能ない人間に恥ずかしいとか思わんの?

 

「……じゃあ、僕に才能がなければ良かったのかな。

 それなら、研究に参加できた? コナーは許してくれたの?」

「それも違うな。お前もカルメンも、子供の成長性舐めすぎだ。

 大人はろくに成長しないけど、子供は成長期だからぐんぐん能力が伸びるんだよ。

 才能があろうがなかろうが、可能性に満ちた子供を切り捨てるのは愚かだよ。やるんなら、まずは俺みたいな無能な大人からだろう」

 

 …………まあ!

 この辺の理屈は、殆ど後付けなんやけどな!

 

 俺が嫌なだけだよバーカ!!

 自分の意志でガキ殺して死体踏みしめながら生きるくらいなら、俺が死んだ方が幾分かマシだわ!!!

 

 

 

 その感触の良い茶髪を、わしゃわしゃと乱暴に撫でる。

 

「生きられるだけ生きてみろ、エノク。

 自分の存在意義を無理に見つけて定義するんじゃなく、そのためになら死んでもいいと自然に思えるようになる何かを見つけるまで。

 存在意義に希望を見出すんじゃなくて、存在意義を見出すことに期待するんだ」

 

 ……視座が高すぎる故に、生きることに意義を見つけられず、道に迷った少年、エノク。

 

 幸運なことに、彼は孤独ではない。

 もしかしたら……破滅までに、それを見出すこともできるかもしれない。

 

 希望的観測だ。楽観視でもある。

 あるいは、俺の言葉なんかじゃ、何も変わらないかもしれない。

 

 だが……それが可能性として存在するんなら、試さないのは怠慢でしかない。

 

「ひとまずは、俺の腰掴んでグズってるこのお姫様と、ちゃんと話し合ってみろ。

 お前は相手が分かってくれると思ってか知らないが、相手に物を伝える努力が欠けてる。

 この子に、ちゃんとお前の気持ちを伝えてみ」

 

 上手くいくかはわからない。

 ぶっちゃけエノクのコミュ力の低さはアイン級だ。普通にすれ違って、悲劇は加速するかもしれない。

 

 だが、種を蒔かなければ、決して芽は出ない。

 俺にできるのは、精一杯にそれを撒き散らすことだけだ。

 

 

 







(雑記)
 なんかLimbusで近々推しの一人である図書館長様が、アナウンサー? として登場するというお話を聞きましたので、緊急ですがLimbus始めようと思います。
 あと既に中指ぶち折り魔法中年の関係者(?)らしい方が実装されているらしいので、リセマラも頑張ります。
 ただ、図書館長様を獲得するところまで進めたら放置orログインだけして、本編を楽しむのは予定通りLOR編執筆後にする予定です。
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