完膚なきまでにチャートが破綻したRTAもどき、はーじまーるよー。
カルメンは変わったが、変わらなかった。
矛盾しているようだが、しかし俺の感覚からするとこれは正しく。
L旧研の皆も、大体が同じような感想を抱いているようだった。
俺と共に都市に出かけたカルメンは、あっちで一泊してから帰還した。
研究所を出る時にはバチクソに消沈していた彼女だが……。
帰ってきた時にはまるで生まれ変わったかのようにニッコニコの笑顔。なんならツヤツヤしていたくらいだ。
ちなみにその横にいる雑魚はと言えば、頭を抱えて何かを深く悩み込んでいる、っていうか割と忘我している様子であったという。
ダニエルにはすげえ心配されたけど、真実を言う訳にもいかんので、ちょっとぼやかした愚痴に付き合ってもらったりもした。
ありがとう親友、頼れるのはお前だけだよ……。
そうして研究所に帰還したカルメンは……。
今までにも増してギラギラと、黒い輝きを放ち始めた。
「ごめんなさい、前言撤回!
エノク、あなたの研究への参加は禁止よ。でも、別の形で私たちを手伝ってもらうわ。
具体的に言うと、コナーの手伝いね。元よりコナーの仕事量が増えているのは問題だったし、助手のような扱いで頑張ってもらいます。
その中で、少しずつ私たちの研究を学んで、いつか私たちと共に心の病を晴らしましょう!
あと、皆、コナーのことを恨まないであげてね。彼は私のためにああしてくれた……なんて、今更言うまでもないわよね。
さあ、私たちの研究所の再出発よ!」
「このままコギトの研究が詰まるのは良くないわ。私たちもいつまでも頭から隠れられるわけじゃない、実質的にはタイムリミットがあるようなものだもの。
だから……ああ、もうコナーから聞いているのね。
ええ、そう。彼の提案を受けて、私が承認しました。
外郭に住む人たちから、臨床実験の被験者を募ります。彼らが10年働いても得られない対価を与え、その代わり危険性を呑み込んでもらう。
……残酷なことは分かっているわ。でも、こんな茨の道を歩んででも、私たちはこの事業を成し遂げなきゃいけない。これ以上の悲劇を積み重ねないために。
これを、都市の歴史に刻まれる、最後の悪徳にするのよ」
「コナー、カーリー。一つ、私から依頼をさせて!
実験器具を作るための資材が足りないの。これを確保してほしいんだ。
都市北部の工場に、既に注文は出しているのだけれど……どうにも不穏な兆しがあるのよね。
そんなわけで、あなたたち2人でこれを受け取りに行ってちょうだい。
……ええ、つまりはそういうことよ。現地でのやり方や判断は一任するわ。責任は私が取ります。
特色フィクサー赤い霧、そしてそのお供の力、都市に見せ付けちゃいなさい!」
前までと変わらず、苦笑が漏れそうな程に明るい表情で、楽し気に。
しかし前までと違い、小綺麗なやり方だけではなく、ダーティな手法や自ら起こす悲劇を許容して。
それでもなお、確かな希望に満ちた目的のため、一歩一歩と、地に足を付けて進んで行く。
その輝きは、もはやただ優しく温かいだけの、人工的なネオンの輝きではない。
時に明るく人を照らし、時に熱く人を焼き焦がす、本物の太陽の如きギラついた光。
それは今までにも増して目を惹き、そして人を前へと進ませる力を持っていた。
ギラギラ燃えるカルメン 遠距離 コスト3
カルメン専用ページ
戦闘開始時 味方全員にパワー3、忍耐3を付与
貫通5~10 的中時火傷2を付与
貫通5~9 的中時火傷2を付与
貫通5~8 的中時火傷2を付与
反撃貫通5~6 的中時火傷1を付与
強すぎるわナーフしろ。
ハナ皆でバフ撒きしてもいいし、紫涙貫通体勢でマッチ対処と火傷撒きにしてもいいし、リウ系で火傷ビルドの核にしてもいいし、複製テディで連発してもいいし、マジで入れ得の万能ページじゃねえか。
ていうかそもそもルイナの貫通自体が強すぎるんだよな。スティレットもナーフしろ。
でもマジで、今のカルメンはこれくらいヤバい。
今までは天然のカリスマ性で皆を引っ張っていたわけだが、今はそれを自覚し、意識的に使ってるっぽい。
残酷な実験に陰りそうになる研究員に道を示し、信じさせ、使命感まで与えて。
果てには自分が責任者として全ての罪を背負うとまで言い、上手いことその手を引いている。
結果として、多くの研究員がどことなくカルメンの変化を感じつつも、彼女の生む熱狂的な推進力に呑まれ、それを受け入れてしまっているのだ。
マジでこえーよこのラスボス! やっぱ宗教組織の教祖だわ!
まあそんな女を覚醒させちゃったの、俺なんスけどね!
へへっ、やっちまったぜ☆
「あ、コナーは今晩私の部屋に来るようにね!」
……マジでこえーよこのラスボス!!
なんで3級フィクサー相当のはずの俺の体力について来れるんだよ!!
* * *
そんなこんなで、カルメンが職場復帰し、L旧研は再稼働。
ついでに俺のことも執りなしてくれたので、こっちも職務復帰が叶った。
おおよそ4日の長期休暇は終わりを遂げ、俺はハードワークの毎日に逆戻り。
いつも通り、一人でしくしくと働き続けることに……。
……は、なることはなく。
「コナー、廊下の掃除、終わったよ。確認をお願い」
「ふんっ! 私たちがやったんだもの、完璧に決まってるけどね!
別に褒めてくれてもいいのよ! 褒めてくれても!」
カルメンの取り決め通り、エノクが俺の手伝いに付いてくれて。
更に、エノクだけが働くという状況に「置いて行かれる!」と焦りを感じたらしいリサまで、俺の手伝いに来てくれるようになった。
今や俺はロリショタを顎で使う外道系雑魚である。
ゲ~~ッハッハッハ!
ゲスはゲスらしく、ガキ共をこき使うとするか!!
「ふむ……うん、悪くないな。ぴかぴかだ。偉いぞ~2人共!
ただ、ほら見えるか? あそことか、拭き残しが浮き出て来てるな。モップ使う時はもうちょっと水切りすればなお良し、だな!」
「あっ……わ、私よ! あそこ、私の担当部分だから!」
「駄目だよリサ、嘘は良くない。ごめん、コナー、僕のミスだ」
「素直に謝れて偉い! 知らなかったことだししゃーない、次に活かしてこうな。
リサも、咄嗟に友だちを庇おうとしての嘘だな。嘘は悪いことだけど、友だちを思いやったことは偉いぞ。
それじゃ、反省は明日の仕事に繋げるとして、今日の仕事の報酬だ……本日はなんと、冷たくてあま~いアイスだ! 風呂に入ってからおあがりよ!」
「! べ、別に欲しくなんてないけど……いえ、その、あっ……ありがとうっ!」
「素直に言えて偉いね、リサ。コナー、ありがとう。僕も嬉しいよ」
ゲ~~ッハッハッハ!
ガキ共をこき使って働かせた後、いっぱい褒めて風呂に入れて美味いもの食わせるのは最高だぜぇ!
俺、案外保育士とか向いてるんかもしれんな。
もしどうしようもなくなったら、どっかの巣で保育士としてセカンドライフしますか。
俺の手伝いに付いてくれることになった、エノクとリサ。
2人にはまず、危険な薬剤のある実験室を除いた廊下やラウンジ等の掃除をしてもらいつつ、俺の授業で初歩的な知識を付けてもらっている。
リサは勿論、エノクも視座こそ高く頭は良いが、知識があるわけじゃない。いわゆるINTは高いけどEDUは低いパターンだ。
この子たち、一応元都市の住人らしいけど、その頃の記憶が殆ど残ってないので、殆ど外郭の子だ。
都市では当然と思えるようなことさえ、知らないことも少なくない。
まともな常識もなく、各人の研究室に上がったり掃除をしたり手伝いをするのは、まあ危険だ。
「書類を処分して」って言われてライターで火を点けたり、薬剤を零した時に素手で触ったりしかねないし。
なもんで、本格的に俺の仕事を手伝ってもらうためにも、まずは授業をせねばならないのである。
そして流石は子供と言うべきか、ちびっこ掃除隊はとてもスムーズに知識を吸収してくれている。
エノクは、真剣な姿勢を取ってくれるのは勿論、才能の塊すぎて吸収速度がスポンジだし。
リサもリサで、カルメンにねだって買ってもらったらしいノートにメモを取りながら、必死にエノクについて行こうとしている。
大人に比べて記憶力のある子供が真剣に勉強すれば、どうなるかなんて知れたことで……。
2人は一月もしない内に、最低限の常識と、かなり上等な清掃業務の手腕を会得した。
「ふふん! 私たちならこんなものよ! どう、褒めてくれてもいいんだから!」
「よ~~~しよしよしよしよし、よ~しよし偉いぞ~~よく頑張ったなぁ偉い、偉すぎる、生きてるだけで偉いのに頑張っててもっと偉い、偉すぎて偉人伝作られるべき。もはやその偉業余人と比べ難い、誇れよリサお前は世界で最も偉い人間なのだから」
「ほっ、褒め過ぎよ馬鹿!! 言ってることわけわかんないしっ!!」
「2人とも、仲良しだね」
「お前も偉いことを自覚しろよエノク〜〜〜あーよしよし、おーよしよしよし、よく頑張ったぞー偉いぞー!」
「あ……ふふ、偉い、か。ありがとう」
そんなわけで、今は徐々に専門分野の知識に踏み込みつつ、各研究員にちゃんと顔を繋いだり、ちょっとした書類整理や、荒れがちな研究室の整理整頓などを頼み始めている段階だ。
俺と同じであくまで手伝いでしかないとはいえ、2人が研究所のちゃんとした職員になるまで、そう時間もかからないだろう。
……まあ、それより研究所壊滅の方が早い可能性は十分考えられるんやけどな!
カスの運命がよ!
「コナー、子育ても上手いのね! 将来にも期待できそう!」
「お前ホンマ黙れ。師匠譲りの腹パンしたろか」
「やんっ、退散退散!」
子供の前だぞ、変なこと言ってんじゃねえ。
……最近、カルメンが前にも増して神出鬼没なんだけど。
お前も師匠に師事受けてたりすんの? 次元超越の特異点とか埋め込まれたりした?
* * *
さて、俺やちびっこたちの近況がそんな感じで。
その一方、研究員たちの反応がどんな感じかと言えば……。
「コナー!? ねえコナー!? なんか最近カルメンさんと距離が近くない!?
いえ、その、私は良いんだけどね!? むしろカルメンさんが明るくなって嬉しいんだけど!!
あ、そう、本題、本題ね! また資料を作ったんだけど、その内容について話したくて……今夜、部屋に来てもらっても、いい?
……かっ、カルメンさんの先約!? うぅ、そうなんだ……え、今からならいいの? じゃあその、お願いしてもいいかな……?」
エリヤはまあ、良い意味でいつも通りか。
突っ走りがち、かつミスも目立つが、それでも懸命に研究に取り組んでいる。
相変わらずアインにもカルメンにもあまり目を向けられてはいないが、案外本人は平気そうだ。……そうなるように、相談に乗ったり愚痴に付き合ったりしてるわけだが。
まあ、思い立ったら即行動の速攻即決タイプなので、気を抜くことはできないけどね。
いきなりコギトを自分に打ち込んだりしないよう、定期的なカウンセリングと適切な褒め殺し頭撫でタイムは必須だろう。
ただ、依存も度が過ぎると酷いからな。その辺りは程度を考えて上手く立ち回らないといけない。
……俺もう用心棒じゃなくてカウンセラー名乗ろうかな。
「コナー、ようやく職場復帰ですか。……服装にも精神にも弛みはないようですね、安心しました。
あなたが軟禁されていた間の進展について纏めた資料です。完璧に理解しろとは求めませんが、ひとまず頭に入れておいてください。
……それから、分かっているとは思いますが、職員への暴行は規律に反します。自戒するように」
ガブリエルは、淡々としてるし叱責もしてくるが、雰囲気は柔らかかった。
わざわざ俺のために資料を纏めてくれてるし、研究内容の把握を求めてる以上、これからも研究への協力を許してくれてるってことだろう。
嬉し~~~;;
目の前でリーダーに対して突然暴力を振るったというのに、これまでと変わらず対応してくれるとか、もう聖人か何かだろお前……chu……。
ガブにゃんホント良い奴だな。こんな奴腐らせるとか申し訳ないことこの上なし。
なんとか最初から絶望しっぱなしにしてやりたいね。それもそれで残酷か。
しかしガブにゃん、精神の疵が殆ど見えないこともあって、どう接すればいいかわかんねーんだよな。
もっと研究所の空気が悪化するまでは、ちょっと手出しが難しいかもしれん。
ま、普通に雑談でもして仲を深めとくとしますか。
「良かった……カルメンさんと、和解できたんだ。
私、どうなるのかなって……コナーとカルメンさんが喧嘩したら、もう、ここが駄目になっちゃうんじゃないかって怖くて。
でも、コナーもカルメンさんも、ちゃんと分かり合えたんだね。私、それが嬉しい。
コナー、その、無理はしないでね。私なんて頼りないかもしれないけど、もし何かあれば相談に乗るから」
ミシェルは大天使である。
最年少でなんとまだ成人すらしていない年齢、その上性格的にも怖がりだというのに、俺の暴力性を直視してなおむしろ心配してくれている。
推せる。この健気な少女の善性を皆に伝えたい。アイドルに興味はありませんか? つきましては今日からI社はIdol Produce社になるからよろしくゥ!
エノクが死んでカルメンがメンヘラリストカッターに進化するルートを回避し、結果として研究所の空気がかなりマシな今なら、追い詰められることもないだろうが……。
一応、彼女の様子も要チェックだな。
最悪、記憶処理して巣に返すとかも考慮する必要があるかもね。
俺の脳手術のこともあるし、どっかで一度家に戻ってその辺のツテを探ってみるかー。
「カルメンが納得しているのなら、私から言うことはない。
それよりコナー、訓練所に行くぞ。『白』、だったか。あの日に使ったような手札、他にもあるんだろ。
……まさか、相棒と呼んだ私にも見せられないとは言わないよな?」
カーリーは……多分意識的に、いつも通りに接してくれた。
煙草をくゆらせつつも、どこか安堵したように眉間のしわを解くその様からは、カルメンのことは勿論、俺のことも多少は心配してくれたのかなーなんて思ったり。
なんていうか、俺も研究所の一員として認められてる感がして感慨深くなっちゃうね。
それはそれとしてしごきは勘弁してくだせえ姉御ォ!
あんたが思ってるより俺ぁ強くないんでさぁ!
ていうかいくら強くても大切断-縦3連-とかしのげるわけねえだろボケ!!
最終的に、俺は「赤」「白」「黒」「青」の機能とかギミックとか、粗方白状するハメになった。
ただ斬られるだけだったら我慢もできたんだけど、「私は信頼するに値しない、ってか」なんて言われたら黙ってるわけにもいかんかったです……。
「うんうん、良かった良かった。まあ、コナーなら良い形で事を収めるって信頼してたけどね~。
それに、なんだかカルメンの雰囲気も変わったみたいだし……君がそうしたんだろ?
ふふっ、まあ、細かいことまで聞く気はないけどね~。ひとまずは、お疲れ様のコーヒーでもどうだい?」
ダニエルは、当然ながら変わらない。
これでも、もう5年を越す付き合いだ。互いにそれぞれの性格や性質をある程度理解している。
俺は、仮にカルメンをぶん殴っても、その意図を理解し、距離感を変えずにいてくれると信じていたし。
彼もまた、俺が取った行動の意味を信じ、こうして待ってくれていた。
都市において純粋な「友だち」なんて関係は、そうそう在り得ない。
逆に言えば、そうそう在り得ないくらいには頑強で確かな信頼関係が、俺たちの間にはあるのだ。
あと単純に、ダニエルが心底良い奴。
ありがとね、信じてくれて。
それから最後に。
「……………………」
「そうですか、安心しました。
アインさんも僕も、コナーさんの働きはとても有難く思っています。今や研究所において、コナーさんはなくてはならない人材です。
是非ともこれからも、よろしくお願いします」
アインからは、何とも言えない、複雑怪奇な感情を秘めた目線を。
ベンジャミンからは、歯の浮くようなお世辞と社交辞令をいただいた。
まあベンジャミンに関しては、現状殊更に個人的な人間関係を築いてないからね。
あんだけやりたい放題やった俺の存在を許してくれる時点で、むしろかなりありがたい対応だ。
……ていうか、多分コイツアインのことしか興味ないからな。
俺とカルメンが喧嘩したって聞いても「うわ研究遅延するわめんどくせ」くらいの感覚なのかもしれん。
一方アインは……。
すまん……いやほんとすまん……。
カルメンとの付き合いの長いアインだ、彼女が大きく、決定的な程に変わった事には気付けるだろう。
そして、前にも増して俺を追いかけ、自然と俺の隣に並んで来ようとするカルメンを見ていれば……。
それがどのような変化で、俺との間に何があったのかを察するのも、不可能ではない。
クソ陰キャで人の心ない系科学者のアインがどこまで勘付いているかは、正直判然としないが……。
仮に気付いてないとしても、謝らない理由にはならない。
ほんとごめん……。
BSS系の同人誌みたいな展開になっちゃってごめん……。
もうなんか、アレだ、申し訳なさすぎるから誰か俺を殺してくれ…………。
カルメンが元気になったことへの安堵+コナーに任せて正解だったという肯定+カルメンがどこか変わったという確信+コナーに向けられる熱を孕んだ赤い瞳を見たことによる不安
アインの脳はもうめちゃくちゃ。優秀な脳細胞がぷちぷちと破壊されてしまう……。
(追記)
ふと検索してみたら、「原作:Lobotomy Corporation」や「Library Of Ruina」タグ、総合評価で1位になっていました。
…………?????
あまりの事態に、実感と理解が現実に追いつかないんですが、とにかくこれも読者の皆様のおかげです!! いつもご愛読ありがとうございます!!
改めまして、評価・お気に入り・感想等々、本当にありがとうございます! とてもモチベーションになります!
まだの方は、是非お気軽にぽちっとよろしくお願いします!
あとXで本作のことを呟いてくださってる方もいて、めちゃくちゃ嬉しかった(小並感) 見てるぞ♡
(追記2)
我らが図書館長様、誕生日おめでとうございます。
友だちと共に過ごす時間が、どうか誕生を呪いから祝福へと塗り替えますように。