3級フィクサーパンチ   作:アリマリア

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 毎度のことながら独自解釈祭りです。
 そうでないことの方が少なくなってきたな。





問おう、あなたが私の主か

 

 

 

 L旧研が光を発見して、一晩が経ち。

 絶賛二日酔いのカーリーと共に、俺はハナ協会から下げ渡された任務をこなすこととなった。

 

 体調管理くらいしっかりしてくださいよ姉御;; 俺雑魚なんすから、メイン火力のアンタがいなかったら普通にぶっ殺されかねんすよ;;

 ……なーんて心配は無用だ! 安心してほしい。

 

 二日酔いフィクサーと言えばやはり思い出すのは奥歯事務所のオルガだが……。

 そこは流石の赤い霧、多少腕が立つだけの5級フィクサーとは一味も二味も違う。

 

 そもそも、紫の涙のムスコン道場を履修した者は戦士としての心得を会得する。

 如何なる体調・精神状態だろうと、戦場に立てばある程度は立て直せるよう芯に刻み込まれているのだ。

 

 それもあって、カーリーは二日酔いだろうが、全く問題なく戦える状態だった。

 自己管理すら必要ないとか、やっぱ赤い霧しか勝たん! 赤い霧最強!! 赤い霧最強!!

 

 

 

 そんなわけで、カーリーに関しては特に問題は──時々ゲロゲロするので、俺がペットの飼い主みてえに処理しなきゃいけないことを除いて──なかった。

 

 なので、ぶっちゃけかなり油断していたのだが……。

 

 問題はカーリーではなく、むしろハナから下げ渡された依頼の方にあった。

 

 都市災害ランク、都市の星。

 まあここはいい。これまでも何件か都市の星級の案件は攻略してきたからな。

 問題は、排除目標の敵が軍勢であることが予測され、本来は高い位のフィクサーをドバドバ投入しないとヤバいような案件ってことだ。

 

「なんで俺ら2人に依頼するんすか!? アホかな!?」

 

 勿論、俺はこの依頼を渡してきた2課の部長に食って掛かった。

 

 赤い霧陣営の戦士は、俺とカーリーの2人きりだ。

 最強+金魚の糞の少数陣営である俺たちは、頭数が必要になる案件には強くない。

 だというのに、今回はめちゃくちゃ数が必要なタイプの依頼だ。ミスマッチここに極まれり。

 

 変な依頼を流されるままに受けてしまえば、カーリーはともかく俺は死にかねない。

 適切な依頼を渡してくれないと困るよー。

 

 

 

 対し、2課部長──時々思うけど、なんで課なのに課長じゃなくて部長なんだろう──は、ぶくぶくと贅肉の付いた顔を、嫌らしい笑顔に歪めた。

 うわーブサイク。明らかに悪意が籠ってるし、確実に陰気で嫌な奴だなコイツ。

 

「赤い霧と灰色の従者なら、どうにかできるのでは? なにせ……都市最強、なんでしょう?」

「確かに赤い霧ならなんとかするか(納得)」

「拒絶するようならあなたたちもそこまで……ん?」

 

 確かに、赤い霧に適切でない依頼かと言われれば、それは全く以て否だわな。

 

 多少敵が多いくらいで任務を遂行できないのなら、それは都市最強でもなんでもない。

 敵が単体なら大切断-縦-、敵が群体なら大切断-横-、どうしようもないなら全力大切断-縦横無尽-で全部ぶっ壊すからこそ赤い霧なのだ。

 俺の相棒は最強なんだ! 圧倒的で絶対的で無敵で伝説で誰にも負けないんだ!!(無邪気なキラキラ目)

 

 そういう意味では、この2課部長め、なかなか良い目をしてると言えるな。

 俺としても、相棒を高く評価されて悪い気はしない。

 むしろ、カーリーを信じてこんな報酬の依頼を回してくれるとか……2課部長、第一印象はカスの都市住民かと思ったけど、多分こう見えてめっちゃ良い奴だわ。

 人格者で部下にも慕われてるに違いない。よく見たらぶくぶく太った顔も愛嬌があるように見えて来たな。

 

 あ、でも1ついい? せめてお前らは俺を灰色の従者とか呼ぶのやめられるか?

 ハナのフィクサーまで俺を色付きの名前で呼んだら、ガチで特色っぽく見えちゃうだろうがよ。

 いやまあ本名を伝えてない俺も悪いんだけどさ。変に家族の耳に名前が入ったらアレだし……。

 

 まあいいや、信頼には応えるのが俺の信条。

 しっかりと依頼をこなすとしましょうか!

 

「それじゃ行ってきまーす。ほらカーリー、行くよー」

「うぅ、クソ……気分が悪い……」

「……ま、まさか本当に、いや、いい、万全にこなしてくれたまえ。……こなせるものなら、な」

 

 

 

 そんなわけで安請け合いしたこの仕事だが、ぶっちゃけ都市最強に依頼されるに相応しい、だいぶヤバげな修羅場っぽい。

 

 幸いなことに、事前調査で排除目標の正体は透けている。

 ていうか軽く聞き込みして背景を洗った感じ、あの2課部長が懇意にしてるフィクサー事務所送り込んで壊滅したから、その尻拭いとして俺たちにお株が回ってきたみたいだ。

 そりゃあ情報も遺されてるわな。

 

 そもそも、事の発端は約1か月前。

 あのノスフェラトゥやエレナと同じような化け物である、血鬼──つまりは吸血鬼。

 それがどこからともなく、都市の18区に現れた。

 以後、18区では定期的に住民が行方不明になっているのだという。

 

 本来であれば、3級4級くらいのフィクサーのいる事務所がサクッと刈り取って美味しいね^^ で終わるはずだった案件なのだが……。

 ……送り込んだフィクサーが全然帰ってこない、という大惨事になっちゃったらしい。

 最後にハナの2課部長が送り込んだのは、1級フィクサーも所属する大手の事務所だったんだが……最後に通信で「駄目だ、多い、多すぎる、こんな地獄」と言い残して、彼らも消息を絶ち。

 

 その結果として、ハナ協会はこれを都市の星に認定し、担当する2課部長は赤い霧への依頼を決定した。

 

 俺は詳しくはなかったんだが、血鬼は放っておくとヤバいらしい。

 眷属を増やし、それで強者を殺してまた眷属にし、更に強い者を殺して眷属にし……という循環を繰り返すことで、どんどん軍勢が大きくなって手が付けられなくなるんだとか。

 既にだいぶ手遅れ感がしないでもないが、これ以上やべーことにならないよう、赤い霧の姉御に首斬ってもらおうぜ、という流れだ。

 

 そんなわけで今回の俺たちのミッションは、多分むちゃくちゃいるだろう眷属諸君をぶち殺して穴を空け、奥にいると思しき血鬼君をぶち殺すことになる……。

 

 

 

 ……ん、だが。

 

 俺はなんとなく、すごく嫌な予感がしていた。

 

 

 

 具体的に言うと、契約書の中にしれっと「R社からの提言で、必要な場合は記憶処理を行う必要がある」とか書いてた辺りで、嫌な予感が過った。

 

 ついでに言うと、現在はLobotomy本編の10年くらい前に当たるわけだが、どうやらR社はLobotomyの頃と同じ企業っぽいことからも、嫌な予感が強まった。

 

 R社……特異点……「多すぎる」……。

 

 まさかな。

 …………まさかね?

 

「……カーリー、これめっちゃ死闘になるかもしれんけど、だいじょぶそ?」

「う……待て、コナー、あんまり喋るな……頭が痛い……」

「死んだかな俺」

 

 

 

 * * *

 

 

 

 俺の嫌な予想は、見事に的中した。

 

 血鬼の根城らしい施設からは、少量の元フィクサーと思しき化け物と共に、何百という数の同じ顔をしたバケモンが溢れかえって押し寄せて来たのだ。

 

 おいR社ァ!! てめェ特異点の管理ちゃんとしろやボケェ!!

 

 

 

 ……未プレイの人にはネタバレになってしまうが、R社の特異点は、クローンの生成だ。

 

 頭の規定では、人間のクローンは7日以上オリジナルと同時に存在できない。

 しかしR社は、精製したクローンとオリジナルを「孵化場」と呼ばれる戦場に詰め込み、7日7晩(T社の特異点を使っているので、実際にはこの何百倍もの時間)殺し合わせて蟲毒を開催。

 勝った強者をオリジナルとすることでこの規定を逃れているのだ!

 

 こうしてR社は、自身が保有する戦力を極めて屈強にし、また常に数を保つことができるのである。

 戦場で何人死のうが、本社でいくらでもクローン作れるからね! 安心して死んでいってね!

 うーん、この都市クオリティ。でもめっちゃお世話になったから否定はできませんね。

 

 

 

 で、だ。

 どうやら今回、そんなR社がどっかでトチって、何百というクローンを血鬼にぶん取られたらしい。

 

 しかもかなり強いから、これ多分上位の群れだ。

 

 アホ!!!!!!!

 

 死ね!!!!!!!

 

 いや死ぬ!!!!!!!!

 

 

 

「クソがッ、死ねR社ァ!!」

「ちっ、流石にこの数は……!」

 

 そんなわけで現在俺とカーリーは、何百体という赤い肉塊のゾンビみてえな眷属に取り囲まれ、孤軍奮闘しております。

 ゾンビパニック映画ならもう負け確定の状況だ。ていうか現実でもほぼ負け確。クソくらえ!

 

 

 

 ……本当ならこんなカスのゾンビ共、我らが赤い霧の大切断-横-で消し炭である。

 だが、今回はそうもいかない状況を、とあるものが生み出している。

 ゾンビ共がその手に持つ、得物だ。

 

 この眷属共が元何群の何部隊かはとんと存じ上げねえが、その手に握られている武装には、よーく見覚えがある。

 

 銃である。

 

 本来、都市であれば馬鹿みてえな税がかかり、使用が制限されるはずのそれが。

 どうしたってそこまで多くはならないはずのそれが……。

 

 今、クローン技術によって何百とコピペされ、ほぼ全ての眷属のカス共が握っている。

 

 結果、今俺たちには何十という銃口が向いていて、目も眩むようなマズルフラッシュと耳が潰れる程の発砲音と同時、一瞬で全身をミンチにできるだけの弾丸の嵐が襲いかかっている。

 

 

 

 ……もうちょっと具体的に、分かりやすく言えば。

 俺とカーリーにそれぞれ40本ずつくらい、一方攻撃の赤い矢印が飛んで来ている感じであった。

 

 地獄かな?

 

 地獄だよ!!!!!!

 

 

 

「がああああクソッ、涙剣のラッシュですら間に合わねえ! すまんカーリー!!」

「くっ……!」

 

 プロト涙剣で絶望の騎士の殻を被り、その剣術を模倣。

 一秒で10を越える刺突を繰り出し、なんとか襲い来る弾丸を弾くが……。

 結局のところ、10の刺突で弾けるのは10発までだ。

 ダイスどころかバトルページ自体が40枚向けられている以上、どれだけ節約したところで到底防ぎきれるものではない。

 

 なので、鼻血が出そうになるのも我慢して、右手で速度に長けた「青」のナイフを振るい、追加で5発程斬り飛ばしている。

 殻を被りつつ他の武装を使うの、マジで脳の処理が追いつかん! あと精神を落ち着ける余裕がなくて、自我が侵食されてメンタルが壊れる!!

 

 しかも、それでなお足りねえ!

 叩き落せているのは40発中15発。残りの25発は素通りだ、クソったれが!!

 

 

 

 そんな不甲斐ない俺のカバーをしてくれてるのが相棒、カーリー。

 

 彼女は自身のE.G.Oを纏い、怒涛の勢いで俺の周囲を駆け周りながら、弾を斬り落としてくれている。

 

 ……凄まじいことに、彼女は自分に向けられた射線の殆どを回避し、俺に向けられたものと含めて、20発以上を毎秒叩き落とし続けているのだ。

 

 アンタが持ってるの大剣だよ? 大振りの武器だよ?

 なんでレイピアと短剣を振るう俺より多く落としてんの、おかしくない???

 

 赤い霧最強! 赤い霧最強! お前も赤い霧最強と叫びなさい!!

 

 

 

 勿論、ただこうしていても、こちらが消耗するだけだ。

 状況を好転させるためにも、今は考える時間が必要だった。

 同時、俺たちの疲労を抜く時間も。

 

「クール空けた、カーリー!」

 

 叫び、俺は右腕の偽装を解いて、「白」を起動する。

 

 武装「白」の祈り。短期間、襲い来るありとあらゆる攻撃を反射する能力。

 やろうとすれば、これは他者を庇護範囲に入れることもできる。

 

 そうすると発動時間自体が短くなってしまう上、カーリーが不条理なくらいに強すぎるが故に、これまで必要にならなかったが……。

 

 この状況はまさに、使うべきタイミングと言う他ないだろう。

 

 

 

 ちりんちりん……なんて次元ではなく、リリリリリリリリリと、クソうるさくなり続ける鈴の音の下。

 周りから浴びせられる銃弾の嵐を反射する安全圏で、俺とカーリーは背中を合わせた。

 

「ふぅ、ふっ……ははっ、お互い血塗れだな! 元気ィ!?」

「無駄口を叩くな、息を整えろ! お前、限界が近いだろう!」

「あらァ元気だ、流石は最強、俺の憧れ! 俺が守りたい、守れない、俺をうら、裏切る、いや、俺の信じる相棒だなァ!」

「っ! ……もういい、喋るな!」

 

 体はもうボロボロだ。

 肺が痛い。肩が痛い。口が痛い。頭が痛い。

 痛さは熱さ。熱く、熱く、限りなく体が煮え滾る。

 

 目が片方見えない。片方は眩んで赤く染まってる。

 両腕は動いてるはずだが反射でしかなく、意識は通っていない。

 片足は多分さっきもがれた気がするが、白昼夢だったかもしれない。

 

 何より自我がまずい、先程からどうにも思考や言葉が空転する。

 隙を見せた心に、誰かの意志が流れ込み、ぐちゃぐちゃに混ざり合うようだった。

 落ち着いて立て直さないと、絶望に吞まれる。いやもう吞まれてる?

 

 ……知るか、黙れ。

 んなこたどうでもいいんだよ。

 

 肝要なのは俺じゃなく、相棒だ。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 状況は絶望的だ。

 包囲状態からの射撃は絶え間なく、その全てを弾き切るにはカーリーでさえ足りないものが多すぎる。

 

 もはや全てを維持することはできない。

 生かすものを、そして捨てるものを、選ばなければ。

 

 守、守り切れな、「守り切る勇気」を持つカーリーという女は、誰かを守るためにこそ真の実力を発揮するが、そんな裏切り者たちは同時に彼女の足を引っ張ってしまう。

 

 研究所を襲撃された時だって、味方を見捨てさえすれ 見捨て 裏切る? 駄目、そんなことはあってはならない、俺私は守り守るべき最後の誇りまで穢されたところで奪われたところでそれでも私はきっと守って守り抜いて今度こそ最後まで守り抜いて、何のために、だって私は騎士だから、剣を持つのだから、弱い者を守────。

 

 

 

 ……あのさ。悪いけど、一旦静かにしてくれないか。

 

 君の気持ち、少なくとも一部はわかるよ。

 俺だって守りたい奴らがいる。そう思った要救助者に裏切られたこともある。絶望だって、まあ味わったことはあるからな。

 

 でもさ、今必要なのはそれじゃないんだ。

 

 俺は今、「分別できる理性」を失うわけにはいかない。

 正しいと思える道を、最期まで貫き通すために。

 

 そのためには、絶望にかまけてる暇はないんだ。

 

 俺は戦わないといけないんだよ。

 たとえ雑魚だろうが力がなかろうが、俺は俺自身の戦いをして、勝ち取らないといけないものがある。

 ジョバンニと同じように、自らの命の使い方を決め、俺の日記の最後のページに「これでヨシ!!」って走り書きしてやらないといけない。

 

 だから、今は少しだけ、黙ってくれ。

 そして、俺に少しだけ、その力を貸してくれ。

 

 大丈夫、また話聞きに行くからさ。

 絶望はその時にたーっくさん教えてくれよ。

 

 ……うんうん、話がわかる君が大好きだぜ、騎士ちゃん。

 大丈夫、俺だってこんなところで死にたいとは思わねえさ。

 

 

 

 よし……落ち着いた。話の分かるアブノマで助かったわ。

 

 話を戻して。

 カーリーは、殆どの弾丸を躱し、俺を庇って弾丸を切り落とすような余裕まであるんだ。

 

 わざわざ俺なんていう雑魚を気にしなきゃあ、この包囲すら余裕で振り払い、簡単に血鬼の首を獲れる。

 

 

 

 畢竟、この戦場において、俺はカーリーの足を引っ張る不要なファクターに過ぎない。

 

 俺さえいなければ、カーリーは確実に事を為せる。

 

 

 

 俺と赤い霧なら、後者の方がずっと価値がある。

 

 もしもこれから頭が襲撃してきたとして、俺には調律者と爪2人を片すなんてことは到底できない。

 研究所を守るためには、赤い霧こそが必要だ。

 

 カーリーには、こんなところで死んでもらっちゃ困るんだよ。

 だから絶対に生きて帰す。

 

 そのために俺がすべきことは……。

 

 

 

 ……また君か。黙っててほしいってお願いしたんだけどな。

 

 いいや、違う。そうじゃない。俺はそんなご大層なことは……。

 

 …………ああクソ。

 もう、わかったって。

 

 いいよ、認めるよ。

 そうだよ、アンタと同じだ。

 

 研究所だなんだは理屈の後付けに過ぎない。

 

 俺はただ、分不相応にも、彼女を守りたいと思ってるだけ。

 

 俺にできることをして、彼女に無駄に命を散らすことなく、生き残ってほしいだけだ。

 

 生きててほしいんだ、カーリーには。

 だって、すげえ良い奴だから。

 あいつのことが好きだから。

 

 少しでも長く生きて、少しでも多く笑ってほしいんだよ、俺の相棒に。

 

 それが俺の、雑魚が抱くには不相応な正義感、あるいはちっぽけな誇り。

 

 だから……すまんな。

 俺のエゴに、最期まで付き合ってもらうぜ、騎士。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 長いようで一瞬だった思案の霧を抜け、俺は叫ぶ。

 

「この局面を突破する妙案はあるかよ、赤い霧!」

「……ない!」

「嘘吐けェ! あんだろうが一個、わかりやすい回答がよぉ!!」

「黙れ!」

「行け、相棒! この雑魚共は俺が引き付ける、テメェがこの地獄の元凶を殺せ!」

「黙れと言っている!!」

 

 俺は彼女の頭を引っ掴み、思い切り自分のそれと打ち付ける。

 

「ぐっ!?」

「がっ……ああクソ、ちょっとすっきりしたァ!」

 

 馬鹿なヤツ。こんな行動に抵抗もできないくらい、俺の言葉に精神をかき乱されるとは。

 俺みたいな雑魚がどうこうなるより、お前がどうこうなった方が、よっぽどやべえってのに。

 

 俺は額を打ち合わせたまま、僅か5センチ先の黄金の瞳へと訴えかける。

 俺の全てを込めて、がむしゃらに。

 

 

 

「てめえの相棒を信じろ!!! こんなところで俺は死なねえ!!!」

 

 

 

「ッ……!」

 

 ……「白」の祈りはもう切れる。

 猶予はねえ、コイツの決断力に期待するしかないか。

 

 まあ、大丈夫だろう。

 だってこいつはカーリーで、最強で、赤い霧で……。

 

 俺の相棒だからな。

 

「行け!!!」

 

 

 

 俺が突き飛ばした勢いそのままに、カーリーは駆けだした。

 

 ……クイック20くらい付いてそうな俊足だ。

 こりゃあ1、2分くらいで血鬼は死ぬ運命だろう。可哀そうに。

 

 まあ、問題は……その長すぎる時間、俺が生き残れるかどうかだが。

 

 

 

 「白」の反射で逆に弾幕が出来たことで、眷属共は少し勢いをなくしていたが……。

 あと数瞬先、「白」が力尽きてしまえば、再び……いいや、カーリーに向けられたものも含めれば、先程までの2倍の密度の弾幕が襲い来るだろう。

 

 弾けるかと言えば、まあ、無理だね。

 耐えられるかと言われても、まあ、無理だわ。

 

 俺が使えるのは、プロト涙剣と、「赤」「白」「黒」「青」、それから騎士の加護か。

 涙剣はかなり有用だが、弾けて10発。

 「赤」のダガーや「青」のナイフで5発追加。

 「白」のクールダウンが空けるまで数分かかり、霧は実弾に効果を為さず。

 一点集中の「黒」は、いつも通り役にたたない。

 加護は有用だが、死ぬまでの時間が5秒から10秒に伸びても、あんまり意味はない。

 

 死なねえと言ったが、すまんありゃ嘘だった。

 俺の持つ武装じゃ、普通にどうしようもない。

 武装なしの俺は一般通過3級フィクサー。こんな地獄を切り抜けられるわけもない。

 

 俺は死ぬ。未来は決まった。

 

 

 

「……まあ、諦めねえけど」

 

 どれだけクソみてえな環境でも、どれだけ絶望的な状況でも。

 

 それは諦める理由にはならない。

 

 最後の最後の最期まで全力で抵抗し、死に物狂いで足掻いて、一秒でも長く生き残り、一発でも多くの銃弾を凌ぎ、一匹でも多くの敵を殺す。

 

 それが、要領だけじゃなく諦めまで悪い、雑魚の生き様ってモンだろう。

 

 俺は、俺の掲げる生き方だけは、死んでも曲げはしない。

 

「さあ……何匹道連れにできるか、スコアアタックといくか」

 

 不退転、決死の覚悟を固め。

 俺は涙剣と「青」のナイフを握りしめて、眷属共を見やり……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あなたは……あなたの正義は、揺るがないのですね』

 

『どれだけの絶望の淵にあっても、それでもと、正義を為すのですね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ?」

 

 剣を握る手を通して伝わってくる、極めて鮮明な声に、戸惑いを零してしまった。

 

 

 

 

 

 

『自らの死と絶望の際に立ってでも、誰かを守り抜くことを誓い』

 

『共に戦う友のために、その剣と意志を以て道を切り開き』

 

『自らの誇りをかけて、悪なるものたちを討つ』

 

『あなたのその想いこそ、私がかつて抱いていた希望そのもの』

 

『あなたという人こそ、私の守りたかった正義の体現』

 

 

 

『であれば、私は』

 

『あなたと共に抱く誇りのため、絶望の闇を斬り払うため』

 

『誰かを守ろうとする、あなたを守りましょう』

 

『この身は再び、剣と盾で以て主の身を守る、騎士となりましょう』

 

 

 

『さあ……私に再び、正義の輝きを見せた善なる者よ』

 

『この空虚に堕した心に、小さな希望を灯した、我が主よ』

 

 

 

『あなたに、勝利を!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……何これ。

 もしかして、覚醒イベントってヤツ!?!?

 

『…………ええ、まあ。ひとまずはそれで構いません』

 

 

 







『O-01-73-02』

 それさえ戴けば、もう道に迷わない気がした。






(Limbusプレイ雑記1)
 初ヴァルプル楽しむぞ!
 ということで、新規の子たちに加え、絶望ロージャ、終止符の2人組、ハナフダイシュをお迎えしました。
 天上までの間にケセドもお迎えできましたし、上々の結果で大満足です。

 そして絶望ロージャの人格ストーリーも読めました。
 うお、本作と全く逆方向の向き合い方してる……。



(Limbusプレイ雑記2)
 それから、4章、クリアしました。

 万感の想いに焼かれ、感想を纏め切れません。
 未だ完全には咀嚼しきれていませんが、しかし1つだけ言えることがあります。
 このゲームが現時点を以て、神ゲー以外の何者にもなれなくなったということです。

 過去も、部屋も、全てを振り切って。
 どうかどこまでも飛んでいけ、僕らの翼よ。
 以上。
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