3級フィクサーパンチ   作:アリマリア

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わしにしね と いうんだな!

 

 

 

 ダニエル。

 

 俺の友だちである彼は、Lobotomy Corporationの重要キャラの一人だ。

 ……いや、重要キャラか? 本編内には直接登場してないけど、重要キャラと言っていいのかな。

 

 ピンと来ない人には、こう言えば伝わりやすいだろう。

 

 原作で登場する彼、あるいは彼によく似たキャラの名は、ケセド。

 福祉チームセフィラ、あるいは社会科学の階指定司書である。

 

 あのカフェイン中毒の熱い男の元となった、超エリートの優男こそ、俺が今生で得た友達なのである。

 他に友だちはいないのか、だとぉ……? うるせー! 友だちは数じゃねえ、質なんだよ!! なあアンジェラ(図書館長)、お前もそう思うよな!!!

 

 

 

 俺の最終目的は、図書館の司書となり、都市を卒業することだ。

 図書館とかいうクッソでけえE.G.Oの中にいれば、アンジェラによる保護が及ぶ。外郭に追放されてもある程度以上の安全が保障されるのである。

 クソ終わり散らかした都市を安全に卒業するには、アンジェラ様の司書となって手となり足となるのが一番早いのだ。まあそこまでの道中は地獄of地獄だが……。

 

 しかしながら、言うは易く行うは難し。

 図書館の司書になるのは、実のところかなりハードルが高い。

 

 まず、図書館の司書は大きく分けて2種類ある。

 指定司書と、司書補たちだ。

 

 この内、司書補は基本Lobotomy社の職員たちがそのまま流用される形になるが……。

 このLobotomyの職員というのが、アインによりよくわからん基準で選定された、殆どランダムにも近しい都市の人々。

 都市にはめっちゃ人がいるっていうのに、その中で50人弱のメンバーに選抜されるなんて望み薄すぎる未来だ。普通に無理。

 一応クソ程倍率の高い入社試験もあるらしいが、俺の能力だとぶっちゃけ普通に落ちそう。頭脳も武力も半端だからなあ……。雑魚の悲哀であった。

 

 

 

 というわけで、司書補ルートはすっぱり諦めよう。

 俺が目指すべきは指定司書ルートである。

 

 司書補が元Lobotomy職員で構成される一方で、指定司書は魔法中年☆マジカルローラン以外はLobotomy社におけるセフィラが流用される。

 なもんで、俺の第一目標はまずそこになるわけだ。

 

 ……嫌だなぁ、自分から死んで脳みそ缶詰される予定立てるの。

 

 いやまぁ、ここに関してはしゃーないと考えよう。

 体が死んでも俺の自我が死ぬわけじゃないし……ああいや、セフィラによっては割と乖離することもあるっぽいから確定ではないが。

 それでも、最終的にこのゴミ溜まりみてえな都市脱出できると考えれば、決して悪い話じゃないんだから。

 

 

 

 で、だ。

 セフィラの数は9。

 

 指揮チームのドジっ子(マルクト)

 情報チームのネクタイ締めマン(イェソド)

 安全チームのアル厨画伯(ネツァク)

 教育チームの天使(ホド)

 

 中央本部チームのロリショタ(ティファレト)

 福祉チームのカフェイン中毒(ケセド)

 懲戒チームの赤い霧(ゲブラー)

 

 記録チームのAファンボ(ホクマー)

 抽出チームのAファンガ(ビナー)

 

 一人残らずネームドで、席はパンパンに埋まってる。

 俺がセフィラになるのなら、それを奪わなければならないわけだ。

 

 まあセフィラなんて席、座ればみーんな不幸になるんやし、むしろ善行やろガハハ!

 せっかくやし、こんな俺に付き合ってくれる友だち救ったるか!

 

 ダニエルの穏やかな都市ライフは、俺が守る!!

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ────などと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。

 

 

 

「来たわね、カフェイン中毒者!」

「ふふ、俺はダニエルだよ」

「そうなのね。これからよろしくね、ダニエル!

 仕事についての詳しい説明は、隣にいる彼に聞いてね」

「手際が良いね。まるで俺がここに来ると確信してたみたいだ」

「言ったでしょう? あなたがどれだけ優秀でも、既に私の手のひらの上だって!」

 

 ……俺は今、壁に寄り掛かり、友だちと女の会話を聞いている。

 

 それ自体はまあ、よくあることだった。

 コイツの送迎の時、テキパキ部下に指示を飛ばす様を遠巻きに眺めるなんてことも多々あったから。

 あとついでにコイツめっちゃモテるしね。流石は伊達男である。

 

 

 

 が……いつもと違って、問題が3点程ございます。

 

 まずは場所。

 ここが巣でもOの本社でもなく、よりもよってバケモン蔓延る大魔境、外郭の片隅だってこと。

 俺は諸事情あって時々来ることもあったが、都市の人々の大部分は、立ち入ろうとも思わないだろう場所なのである。

 

 そして、相手。

 ダニエルが話している相手は、女は女でも、激ヤバクソリプ新興宗教の教祖だ。

 できれば友だちには一生近づいてほしくはない、ファム・ファタール。

 ていうか俺も近付きたくない。許されるなら今すぐ巣に帰りたい。

 

 最後に何より……目の前にいる、もう一人の女。

 俺の対面の壁に寄り掛かる、長い赤い髪を持つその女は、黄金の視線を俺一点に突き立ててきている。

 

 

 

 やべえ。

 リアルカーリーだ。こわい。

 

 

 

 カーリー。

 将来セフィラとなり、ゲブラーを名乗ることになる女。

 

 確かこの時は、まだ普通の2級フィクサーなんだったか。

 将来的にはカルメンの導きによって特色フィクサー「赤い霧」となり、なんかもう意味わからんくらい鮮烈な強さを誇ることになる存在である。

 

 そんな女に、今俺は睨まれている。めちゃくちゃ警戒されている。

 視線がもうめちゃくちゃ痛いのだ。多分貫通4~8(的中時麻痺2付与)くらいある。

 

 なんでこんなに見られてるん?

 ……っていう疑問への答えは、まあ、俺の強さ故だろう。

 

 紫の涙に師事していた俺は、一応3級フィクサー相当の能力を持っている。

 今もあまり目立たないようにしているとはいえ、左腕には武器を抱えており、何が起こってもきちんと対処できるよう重心を下げて警戒もしている。

 

 そんな人間がいりゃあ、警戒すんのもおかしな話じゃないだろう。

 ごめんね。別にここへの害意とかはないんだけどね……クソリプおばさんが怖くてさ……。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「……で、そちらの男の……多分男の人よね? 彼は誰かしら?」

 

 視線を感じ、ついそちらに目線を投げると、その女と目が合ってしまった。

 

 

 

 やべえ。

 リアルカルメンだ。こわい(人格的な意味で)。

 

 

 

 赤い髪留めでポニーに纏めた黒茶の髪。

 雑に着崩した私服に、大きな白衣。

 活発で人懐っこい印象を与える赤い瞳に、人好きのしそうな緩い相好。

 

 こちら誰あろう、新興宗教カルメン教の教祖、カルメン様となっております。

 

 Lに関わる諸々の物語の元凶。

 善性か悪性かで言えばまあ善性ではあるものの、その善の輝きと自身のカリスマを以て周りをぜーんぶ巻き込んで、状況ぐっちゃんぐちゃんにしていき、そのくせ責任とか尻拭いは全然しないヤバ女。

 

 いや、ホントどうかと思うよ。

 みんな巻き込んで破滅に突っ込んだくせ自分は自殺して一抜け、果てには都市のみんなが使うSNS「井戸」でクソリプしまくって、狂っていく人を見て喜ぶおばさんとか……。

 控えめに言ってカス! ハッキリ言ってもカス!

 

 お前一回アインに謝れ。あるいは感謝してもいいぞ。

 あのクソナードでも最後の最後にはできたのに、なんでテメーはできねぇんだ。

 アイツお前のために10,000年間狂い続けたんやぞ、わかっとんのかオイ。

 ……いやまぁ未来の話だから、現時点のカルメンは、ただの理想家に過ぎないんだけどさ。

 

 

 

 さて、そんなクソヤバ女の目線に、俺は動揺を内に隠して応えた。

 

「やあカルメン! 僕はコナーだ!」

「おおう、元気いっぱいの挨拶ありがとう!」

「その挨拶、俺以外でも変わらないんだね~。

 ここのことを話したら、彼も興味を持ってくれてね。外郭に出るってこともあって、俺の用心棒兼、職員候補として連れて来たんだ」

 

 ダニエルの紹介に、カルメンは赤い瞳を爛と耀かせる。

 ……おい、比喩じゃなくてホントに光っとるが。催眠作用とかありそうで怖い。

 

「ええっ、ほんとに!? すごい、素敵なことだわ!

 それに用心棒ってことは……もしかしてコナー、強かったりするの?」

 

 彼女の素直な疑問に「いえいえそんな、俺なんて雑魚ですよ^^」と謙遜を返そうとしたが……。

 先んじて、俺の対面で気怠げにしていた女が口を挟んで来た。

 

「……ああ。そいつ、結構やるぞ」

「カーリーのお墨付きなら安心だね!」

 

 え、なんかカーリーに認められたんだけど。

 

 ……やばい、流石に嬉しい。紫のクソBBAに虐められた日々が報われたとすら感じる。

 打撃体勢でひたすら腹パンされ続けて、ゲロ半分血半分の嘔吐が半日続いたあの頃の俺……努力と忍耐はいつか認められるみたいだぜ。

 

 でも普通に買い被りなんで勘弁してください。

 3級フィクサー相当の俺が未来の特色フィクサーに認められるレベルなわけないだろ!! 目ぇ曇ってんのかカーリーしっかりしろ!!

 

 

 

 * * *

 

 

 

「それで、興味を持ってくれたって話だったけど……その」

「理解しているのか? ここの研究内容、その意味を」

 

 カルメンの言葉を遮る、あるいはその役割を代わるように、彼女の横にいた男性が口を開く。

 

 

 

 やべえ。

 リアルアインだ。こわい(狂気的な意味で)。

 

 

 

 黒い髪に黄の目、白衣の下に黒一色の服。

 オタクならば黒に染まれ──という感じの彼こそが、アイン。

 

 いずれカルメン亡き後、Lobotomyを一人で動かすバケモン。

 所詮仮説の段階止まりだったカルメンの計画を、たった一人で修正し完成させ台本を書いて、10,000年の苦痛をかけて悟りを得、完遂した男だ。

 

 ……改めて考えるとコイツほんとやべーな、ドン引きだよ。

 それが愛であれ信仰であれ、そこまで為せるってのは狂気が過ぎるわ。

 

 

 

 ともあれ、あまり忘我してるわけにもいかん。

 俺はアインの言葉に、まぶたを閉じて答える。

 

「『根源的な人の心の病を取り払い、都市の人々に自分らしく生きさせる』……その目的は正しいものだろう、どうしようもない程に。

 対し、頭の表向きな取り決めに、どれだけの意義があるものかは疑問だ。そもそもアイツら全然仕事せんし。

 それぞれが為された未来を仮想すれば、前者の方が俺にとって、そして全てにとって理想的。

 この短い命をどこかに使うかと考えれば……ただ漫然と燃える蝋燭じゃなく、ただ一時不純物を燃やし尽くす刹那の炎でありたいと望むのは、そうおかしなことでもないだろ」

 

 つまるところ、アイアムファ~イア~!

 せっかく燃えるんなら派手に燃え盛ろうぜ、ってこと!

 

 ……ま、嘘なんですけどね。

 別に大義のために死ぬつもりとかないです。

 

 いや、何から何まで嘘ってわけではないけど。

 実際頭の管制下で、いつ死ぬかもわからん腐った生を過ごすより、たとえ一度死ぬとしても落ち着いた情緒ある余生を過ごしたいと望んでるわけで……。

 

 これはいわば、誇張した本音。

 俺がL社旧研究所に属するために使う理由だ。

 

 

 

 ともあれ、まずまず良いスピーチができただろうと、内心満足気な俺。

 

 実際、ダニエルは微笑してるし、カルメンはちょっと驚いてるけど納得した感じの雰囲気だ。

 アインは……コイツクッソ無表情だから何考えてるかワカンネ。

 

 しかし、そんな肯定的な反応をする者たちと違い、眉をひそめる女が一人。

 

「おい、お前」

「やあカーリー。僕はコナー!」

「うるさい。お前」

 

 わざわざ名前教えたげたのにガン無視である。ひどいぜ。

 

 しゅんとした俺に対し、向かいの壁に寄り掛かっていたカーリーは……。

 

 

 

「私と戦え」

「嫌どす……」

 

 とんでもねえ無理難題と共に、その手に持つ剣を向けて来た。

 

 ふむ…… わしにしね と いうんだな!

 

 

 







 3級フィクサー相当の主人公 vs 2級フィクサー

 これは良い勝負になりそうだな!!!
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