その人生は熱い想いから始まります。
死ぬのには、まあ、人並み以上に慣れている。
なにせ、死にかけたことは数知れず、ちゃんと死んだのは2度目である。
前世と今世で1回ずつだ。
穏やかで緩やかな病死と、不意打ちで急激なGood Bye。
死に方にはだいぶ大きな差があったが……それはそれとして。
自分の中の大切なものが外に漏れていく、凄まじい喪失感を伴う断絶は、俺としてはちょっと……いや、だいぶ……ごめん見栄張ったわ、ぶっちゃけすんげえ嫌いだ。
アレ、ほんと怖いし辛いし痛いのよ。俺は精神も雑魚なんで、正直耐え難い。
時には仕方ないこともあるが、極力避けたいところではある、というのが偽らざる本音だ。
そういう理由もあって、師匠であった紫の涙からは防御体勢をメインで学び、4色武装をもらって。
L旧研に勤め始めてからも、カーリーの味方に取り入り、騎士とは主従関係を結び、味方を増やすことによって自分なりに死から逃れようとしたわけだ。
自分と、それから、大切な人たちの死。
それは俺からすれば、到底受け入れられるものではなかったからね。
……まあ、そんなこと言ってたら?
調律者ぶっ殺して油断したところを、ポチに後ろからグサー!w されて無様に死んだんやけどな!
ガハハ! 我ながら、とんでもなく決まらねえなぁこの死に様!
ジャイアントキリング成功で喜んでるとこを刺されるとか、マジモンの三下じゃん!
やっぱ俺は主人公じゃなく雑魚なんだなーってこういう時に痛感するよね。
あ~あ、俺が主人公だったらなぁ~! そもそもエリヤが殺される前に颯爽と駆けつけたりもできたんだろうな~~~!!
それに比べてコナー! お前はなんだ!!
今更「何もない」なんかに負けて! 赤い霧の相棒として恥ずかしくないのかてめぇ!!
いや恥ずかしいよ;; カーリーの比類なき武勇に瑕を付けてしまったこと、おいは恥ずかしかっ! 生きておられんごっ!!
しかし、調律者には勝てるのに「何もない」に負けるて。
どうしよう、こんなんじゃ都市最強Tier表がとんでもねえことになっちまうよ。
SSS 赤い霧(E.G.O発現)
SS カーリー(通常時)
S カーリー(疲労時)
〈超えられない壁〉
A 「何もない」(第四形態)
B 3級フィクサー
C 調律者
や~い調律者、3級フィクサー未満~~~!
ハナ協会は今度から3級への昇格要綱を「調律者を単独討伐可能であること」にしてくださ~~い!!
……なーんて。
こんなゴミみてえな思考とはいえ、物事を考えることができるのは、つまりは俺の思考と人格が生きているということの証左であり。
なんと俺は、この都市ですらそうそう発生しないだろう、2度目の転生を遂げたらしい。
いや、正確に言えば、2+n回目の転生なんだろうけども。
流石にギネスとか載れるんじゃないこれ!? なんか申し込みとかした方がいい!?
あ、ちなみに2度目とは言ったが、また人の体に生まれ変わったってわけじゃないぜ。
今のところ感覚はないから確かめようがないが、今回は多分、金属の箱の中に改造脳みそをPON! だ。
そう。
俺はどうやら、かつて思い描いていたチャートの通り、26の翼が一つ、Lobotomy社の部署管理AI──セフィラとなれたらしい。
ぶっ壊れ散らかしていた図書館指定司書チャート、奇跡の復活である。
ありがと~アイン! 愛してるぜ~~~!!
* * *
さて、そんなわけで俺は、めでたくも生まれ変わったわけなんだけど……。
残念ながらというか当然ながらというか、自由を保障されるような身ではない。
現に今も、指先一本に至るまで、体が一切動かせないしね。
別に拘束されてるとかそういうんじゃなく、単に俺の体はまだ「起動」していないんだ。
どうやら今は、起動前の準備時間みたいなものらしい。
脳内には先程から、「自身の名と役割を把握しろ」という、冷たい男性の声が響き渡っている。
おいおいアインく~ん!^^ 声優業始めたんなら言ってくれないと^^ 綺麗に澄んだ良い声だと思うぜ。
機械にはまず、自身の呼称と役割を理解させる。ああ、なんともアイツらしい発想だ。
どうやら規定のオーダーをこなすまではずっとこのままなチュートリアル時空っぽいので、俺は素直に脳内にインプットされた知識をほじくり返すことにした。
第二の生で、俺は「コナー」という、どこぞのアンドロイドみてえな名を賜っていたわけだが。
第三の生で与えられた新たな名前は、「ダァト」と言うらしい。
あー、なんだっけ。
日本のオタクの必修科目である生命の樹の内、隠されたセフィラだか他のセフィラの共有体だか、そんな感じの特殊なヤツだったか。
正直よく知らん! 神話関係はエアプなんだわ俺。
とにかく確かなのは、この「ダァト」という名はマルクトやイェソドたちみたいな、セフィロトの樹由来の名前ってことである。
いや~こんな名前を与えられちゃうと、いよいよ俺もセフィラの一員! って感じがして、ついつい嬉しくなっちゃうな!
いや、L旧研時代から既にアイツらの一員ではあったんだけどね? なんか原作開始感があるというか? 舞台がL社に移ったんやなあって感慨深く思うわけよ。
しかし、思い違いかね?
確か原作Lobotomyでは、「カルメンこそダァト」みたいな匂わせがあったような気がするんだよな。
なんだっけ? 起動画面で、カルメンの釣瓶がある部屋が「Daat」って表示されるとか、そんな感じで。
それなのに、俺にダァトの名が与えられたってことは、俺がカルメンの代わりに就いたってことか?
あ、いや……違うっぽいな。その辺の知識も脳内にインプットされてら。
詳しくはようわからんけど、俺とカルメン(釣瓶)の2人でダァトらしい。プリキュアかよ。
……え? 俺、思ったより重要人物じゃない?
なんかこう、どうでもいいオマケ程度のセフィラになる予定だったんですけどそれは。
でもって、そんな俺の担当部署名は……パス。
通路とエレベーターの総称らしい。
……通路とエレベーター!? フロアじゃないの!?
オイ!! 俺ホームレスやんけ!!
ざけんなカスアイン、次会ったら本気め3級パンチ確定!!
いやまあ……理解できないわけじゃないけどさ。
セフィラの共有体(?)だしな。各部署を繋げ、全体的な繋がりを保つ通路が仕事場ってことか。
確かに、各部署間の通路ってどの部署の担当なのかわかりにくい範囲だったし、セフィラが追加されても違和感はない……か?
それで、業務内容は……ふんふん、なるほど。
各部署の業務補助、部署間の折衝、鎮圧手伝い、情報や物資の輸送、清掃作業。その辺の雑務か。
うーん、これは雑用係!w
L旧研の用心棒コナーと同じ、雑魚らしいお仕事である。
お前にゃ専門職は任せられませんよ、ということだろうね。
うわ~俺の部署に就く職員かわいそ。完全に窓際じゃん扱いがさ。
でもまあ、俺としちゃ、一安心だな。
「カルメンと一緒にセフィラやれ」なんて言われてどうしたもんかと頭を抱えたが、流石のアインも雑魚に重大な役目を与えようとは思わんかったらしい。
組織には往々にして雑用係が必要なもんだ。
特にここの通路なんか、主に試練の鎮圧とかで、血肉や残骸でべっちょべちょに汚れるもんな。清掃係は確かに必要だろう。
よーし、この元L旧研の雑用係に任せろ!
俺がここの通路を、夢見る流れくらいの速度で歩けるよう、ツルッツルに掃除したる!
……ん?
なんだこれ、秘匿情報?
うわビックリした、いきなり警告でてきた。
統括AIアンジェラと下層セフィラを除く全てのAI、職員、管理人に対して、以下の内容の口外を禁じる。
禁を破れば、問答無用でTT2プロトコルが起動して時間が巻き戻る……とのこと。
おい、なんだこれ。
すげえ露骨に厄ネタっぽいもん頭に放り込んでんちゃうぞアイン。
ていうか、シナリオリブートのこと俺に言っちゃっていいの?
それ多分、下層セフィラとアンジェラ以外、誰も知らなかった情報だよね?
雑用にお漏らしするのヤバくね?
うわぁ……見たくねえなこの先。
でも、見ないことには前には進まないっぽい。
ため息一つ、俺はその情報に目を通す。
えーと、何々?
先程の担当部署及び業務内容は、フェイク。
はあ、なるほど?
何、俺裏切り者の始末をする暗殺部隊でもやらされんの?
それで、実際の俺の仕事は……?
真の担当部署は、カルメンの釣瓶のある、あの部屋……ダァトフロア。
真の業務内容は、釣瓶であるカルメンの護衛と、それに不用意に近づく者の殺処分、L社地下本部で行われる惨劇の統括補佐。
そして何より、誤った悟りを開いたXをぶちのめすのも俺の役割、と。
雑魚に重責負わすなボケーーッッ!!!
俺みてぇな雑魚に重要な役割任せすぎだろあのナード!!
狂ってるのかな? 狂ってますねぇ!!
何をどう考えたら「あのコナーとかいう半端な雑魚に、皆のリーダーであり俺の大切な人でもあった女性の脳兼会社の特異点の核たる装置守らせてみよw」ってなるわけ!?
もっと言うと、俺なんかに光の種シナリオ統括補佐しろとか正気か!?!?
もしかして狂いすぎてクソ駄作シナリオ書き上げちゃってないか、あのクソカスボケナード!!!
ふぅー……ふぅー……。
よし、一旦落ち着け、俺。
ぶっちゃけ今すぐにでも悲鳴を上げたいところではあるが、今は喉すら動かん。
……多分、そもそも喉ないねこの体。発声デバイスか。
とにかく、情報の確認を続けよう。
最悪なことに、秘匿情報には続きがある。
えーと? 何ですってぇ?
L社の目的はエネルギー製造とされているが、これは欺瞞である。
真の目的は、頭の監視網にかからないよう建造された本社地下の本部で、社員とアブノーマリティたちを用いて精製したエネルギーにより、コギトから光を抽出、高濃度に圧縮して都市に散布すること、と。
オイ!!!
なんかもう全部言っちゃってるじゃねえか!!!
とんでもねえクソネタバレかましてきおったわ、あんのド陰キャ!!!
えー……? 俺、本当にこれ見ちゃっていいの?
アンジェラに渡すべきデータが混ざっちゃってるとかじゃねえだろうな?
いやまあ、違うんだろうけど。
なんか途中から説明が口語口調に崩れて来て、ところどころで俺の名前呼んじゃってるし。
続き。
都市に光を散布する際、そのままではただ自らの心の殻を破るだけになりかねない。
それを抑制するため、都市に散布する光の中に正しい悟りを開いた自分が溶け込むことで、人に与える精神影響にある程度の指向性を与える必要がある。
そのため本社でエネルギーを精製すると同時、アイン自身は記憶を喪い、人の心の表象たるアブノーマリティや職員、そして何よりセフィラたちと向き合うことで、「正しい心の在り方」を学ばなければならない。
人の心の善と悪、清と濁を知り、その殻を正しく剣と出来るように。
己の心という恐怖と向き合い、病を絶つ未来を創る。
それこそがL社の目的。
俺の組んだ「光の種シナリオ」の本義であり……。
俺やカルメン、そしてきっとお前……コナーの見ていた未来である、と。
……うん。
いやごめんアイン、多分これ読んでびっくりすべきなんだろうけど……。
知ってた。
うわぁ、なんだろう、この……知人が「これ伝えたらびっくりするだろうなぁ!」って顔で話してきた時、それをもう知ってた時みたいな気まずさ。
いやまあアレだ。
ぶっちゃけ、なんでアインが光に溶けてたのかは知らなかったから、そこは知れて良かった。
光は人の心を解き放つ因子だ。
恣意的に言い換えれば、自制心とかをぶち破り得る洗脳物質とも言える。
指向性も持たせずにばら撒けば、変な方向に弾けるヤツが出てしまうだろう。それこそねじれみたいに。
だから責任者たる俺が命を賭して、そこはセーブするね、と。
……いやコイツ、マジで責任感の怪物だろ。
カルメンの理想を押し付けられただけなのに、平然と自分の命投げ出して事を為そうとするとか……。
もっとご自身の命を大切にされた方がよろしくてよお前???
ああいや、でも、そうか。
冷静に考えると、こっちの世界では、カルメンに理想を押し付けられたわけじゃない可能性もあるのか。
俺のいるこの世界は、俺がやりたい放題オリチャーしまくったせいで、原作からだいぶ流れが変わってしまった。ごめんね。
変わってしまった歴史の、大まかな流れとしては……。
まず、実験台になって死にそうだったエノクを助けた。
で、その後カルメンを変な感じに覚醒させてしまい、関係を持った。
赤い霧の相棒「灰色の従者」としてフィクサー活動を手助けし、幾度か死線を越えた。
皆のメンタルケアをして、ミシェルが思いつめないようにして、密告を防いだ。
……しかし、結局は俺のやらかしで研究所に調律者は来てしまった上、なんと今なら特大サービス! 調律者が1人おまけでついてくる! となり。
本来なら赤い霧と刺し違えて死ぬはずのガリオンをぶち殺し。
その後、クッソ無様に油断を晒したところをポチに狩られ、死んだ。
改めて振り返ると、なんというか……。
やりたい放題だなぁ前世の俺!!
いぇーい自己中万歳! オリチャー万歳!!
独善でやりたい放題するの気持ち良いぃ~~~!!www
いやごめん、さすがに嘘。反省している。後悔はしていない。
思えば俺、Lobotomyのストーリーが好きだった身として、とんでもねえ原作レイプを決めてるな。
ティファレトはティファレト(B)がアレだから美しいんであって、こっちの世界じゃティファレトがシナリオの良さを出せるか、あの悟りに至れるかもわからない。
カルメンも原作通り闇堕ちしてるのか不明だし、闇堕ちしてなかったらねじれが生まれるかもわからんし、あーもうめちゃくちゃだよ。
……でもさぁ!
正直さぁ!!
ゲームなら受け入れられるけど!
現実で目の前に死にそうな子供がいたら、助けるでしょうよそりゃあ!!!
俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!!
いやマジで悪くねえだろ。
悪いとしたらガキ犠牲にしようとしたカルメンだわ普通に。
……ああいや、少し話が逸れ過ぎてしまったが。
とにかく、こっちではだいぶ歴史が変わってしまった。
その中でも、最大の変化が何かといえば……。
少なくとも俺が生きていた間には、カルメンがリストカッターメンヘラクソ女にならなかったこと。
ていうか後半のカルメンは、なんていうか、覚悟がガンギマっていた。
その過程で生み出す犠牲を受け入れ、自らの矮小さと醜悪さを直視しながら、それでも前へ進まんとする漆黒の意志があった。
あんなギラギラメンタルになっちまった女が、自殺なんて道選ぶかぁ??
ないない。少なくとも、罪や苦痛からの逃避という意味ではあり得んね。
しかし同時、こうしてL社が成立している以上、カルメンは釣瓶になったはずだ。
実際、俺の中には「カルメン守ってね」っていうアインの命令が刻まれているわけで、これは間違いないだろう。
じゃあ、一体何が起きてアイツは死んだんだ?
頭の襲撃に巻き込まれたのか?
それとも煙戦争で流れ弾にでも当たったか?
それか暗殺でもされた?
あるいは……どうしても釣瓶の候補が見つからず、自らその道を選んだとか?
…………うん、わからん!
なんも分からんわ!
だってそれを知れるところにいなかったんだもん、俺! 当たり前だよな!
なにせ俺ったらL旧研メンバーで真っ先に死んだからな、ワハハ! 無知っ無知っ♡
* * *
あー、しかし……キッツいなぁ。
俺はメンタルざぁこざぁこ♡なので、責任を負ったり期待されたりするのに弱い。
こんな急にL社の中核を背負わされたりしてもさぁ! 正直戸惑うっていうかさぁ!!
アインはマジで何を思って俺なんかを選んだんだよ。
悪いこと言わんから、ダニエルにしとけダニエルに。
アイツの方が俺よりずっとカッコ良くて頭も良い、天才のエリートなんだからさ。
……ん? あれ。
なんかすげえ隅っこの方に、まだちょろっとテキストデータが残ってるな。
もーアインったら、ちゃんと情報は整理してよね!
部屋の掃除はいっつも幼馴染の私に押し付けて……ま、まあ? 別に嫌じゃないけどっ♡
さてさて、中身は……?
「コナー。一度永き安眠に就いたお前を再び呼び戻し、こんなことを強いるのは、申し訳ないと思う。
お前に倣って、まずは謝ろうと思う。
本当に、すまない。
だが、お前以外に、適任がいない。
俺を止め、そして道を正せるのは、お前しかいないだろう。
きっと俺は、幾度となく間違える。
今この瞬間にも、間違えているのかもしれない。
正直に言えば、俺はもう、自分が正しい行動をしている自信すらもない。
今こうしてお前に綴っているテキストでさえ、今からでも削除した方が良いのではないかと、そう思ってしまう程に。
このような計画を立てることが、果たしてカルメンの真意に沿うことなのか。
去った者を呼び戻し、眠った者を叩き起こし、これを為すことが正しいのか。
俺はこの道の中、正しい悟りに至れるのか。
そこで失ったものに、どう償えばいいのか。
何も、わからない。
今、心底、お前の意見が、話が聞きたい。
お前ならばきっと、正しいことは正しいと、間違ったことは間違っていると、そう言ってくれる。
あの時、道に迷いかけたカルメンを止めたように……。
俺のことも、殴ってでも止めてくれるだろう。
それがどれだけ得難いもので、どれだけお前が確固とした我を持っていたのか。
この1年で、俺は、俺たちは、何度も思い知ることとなった。
だから、そんなお前を呼び戻すことでしか、俺はきっと至れない。
本当にすまない。
終わったはずの苦行の旅を、本来あるべきそれの何十何百倍と、繰り返させてしまう。
そしてそれを知りながら、お前の友たちに何ら伝えることを許さず、孤独な旅を強いてしまう。
彼ら彼女らへの、そしてきっとお前自身への裏切りであろうそれを、させてしまう。
それだけの残虐を、俺は、お前以外の誰にも頼めないんだ。
俺のことを友と、そう呼んでくれたお前にしか。
俺のことを、助けてくれ。
この罪悪を、煉獄の底を、共に背負ってくれ。
俺の、唯一の友だち、コナー」
……………………。
やってやろうじゃねえかよこの野郎!!!!!
あのド陰キャにここまで言わせたんだ! やらねえ方が男が廃るってもんだぜ、オイ!!!
おっしゃ任せろアイン!
この俺が!
お前の組んだ綿密なチャートに沿って!
自分の意思は後回しに!
完璧に計画を遂行して……!
完璧に……遂行……。
チャートにちゃーんと、従う……?
あんだけオリチャー発動しまくってチャート破綻させた、俺が…………???
いや、ごめんアイン!
ちょっと、ちょーっと俺、この役割向いてないかも!!
今思い出したんだけどさ、俺ってば綿密なチャート破りまくることに定評があったわ!!!
ぐぉぉおおお、どうしよう!? 友だちの期待に応えられるのか俺!?
いやもうやるしかないけど! 任された以上、死力を尽くすけれども!!
* * *
『起動シーケンス、スタート』
機械のような、生体のような、不思議な脳でそんなことを考えていると。
どうやら情報の整理が終わったと判断されたのか、俺の体が、徐々に動くようになり始めた。
……よし、一旦切り替えよう!
スイッチカチッ! よし落ち着いた。
こういう時に便利だよな、師匠直伝の戦士スイッチ。
一旦切り替えるだけで、余分な感情は大体落ち着いてくれる。
さてさて、それじゃあ……。
L社のセフィラとしての、何度目になるかもわからない仕事の始まりだ。
精々俺にできることを、出来る限りで頑張っていきますかね、と。
そう思い、まぶたを開いた、その先で。
「おはよう、ダァト。気分はどうかしら?」
一人の女性が、俺の起床を待っていた。
白、水色、灰色のグラデーションに彩られる長髪を、赤いヘアゴムでサイドテールに纏め。
豊かな肢体を包み込んだスーツの上に、白衣を纏い。
機械らしい蒼白の肌と、とても綺麗に整った顔形を持つ、女性。
L社本部で管理人Xを支える秘書AI。
この煉獄で悲劇を引き起こし続ける先導者。
あるいは……人の心を持って生まれ、けれど誰に受け入れられることもなかった女の子。
アンジェラ。
そうか……やっぱり、君がいるのか。
胸を突いた感情を、押し殺す。
これは、今、必要のないものだ。
俺はコナー、改めダァト。
陽気で、馬鹿で、彼女の鬱屈を晴らせ、あるいはぶつけられる相手。
必要のない感情は表に出すな、アンジェラのためにできることをしろ。
よし……。
それじゃ、最初はやっぱアレだろう。
俺は彼女にお決まりの挨拶を投げようとして……。
……直前、それに気付いた。
彼女は、俺の予想に反して、そのまぶたを閉じておらず。
その神秘的な琥珀色の瞳は今、遮られることなく、俺に向けられている。
そして彼女は、とても柔らかい、自然な微笑みを浮かべて……。
俺に、そっと手を差し出してきていた。
…………………ま、マジか。
初期アンジェラだこれ!?!?
「これからあなたと一緒に働いていくAI、アンジェラよ。
お互い不慣れな業務になるでしょうし、助け合っていきましょう」
初期どころか1周目ってマジ!?!?!?
お久しぶりです。
本日から毎日投稿再開です。
執筆・投稿状況等について。
例の如く40話くらいストックがあるので、基本失踪はしないはずです。
また、Limbus Companyは5章までしか履修できておりませんので、設定の矛盾等あるかもしれません。ゴメンネ。
時々、読み進めた感想なんかをあとがきでお伝えするかもしれません。
なんだか章タイトルに(前編)って付いてる気がしますが、恐らくそういうことかと思われます。
2章 辿り着くことのできない