3級フィクサーパンチ   作:アリマリア

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禁断の「やあ! 僕はコナー!」"二度撃ち"

 

 

 

 ダニエル、改めケセド。

 彼はどうやら、記憶と再認能力をしっかり保有していたらしい。

 

 なんで??? という疑問はあるが……。

 「ははっ、何かと抱え込みがちな友だちを一人になんてできないよ~」などと言われてしまうと、うん、なんかもう駄目だ。

 それ以上何かを訊くのも野暮かなぁって思ってしまった。

 

 とにかく、今大事なのは……。

 ダァトとなった(コナー)と、ケセドとなったダニエルは、依然として友だちであること。

 

 それ以上に重大な事項なんて、何もないだろ。

 

 

 

 多分1年以上ぶりの再会になったんだろう彼に、当然ながら俺は、いくつも聞きたいことがあった。

 例えば……箱ボディの腕部は基本黒いはずなのに、お前の左腕だけは白いのか、とか。

 

 多分彼も、俺にいくつも聞きたいことがあったはずだ。

 なんで箱ボディに意味不明に穴を空けてグロい肉を見せてるか、とかね。

 いや、それは俺も知りたいんだけども。

 

 ……けれど、そんな「必要な会話」は横に置いて。

 俺たちは、したい会話を、したいように楽しむこととした。

 

 

 

「いやあ、まさか死んだ先で箱詰めにされて、また翼勤めすることになるなんて……O社にいた頃は想像もしてなかったなぁ。コナーはどう?」

 

「完璧に予想できてました^^ はい俺の勝ち^^」

 

「うわ、本気っぽい。久々にコナーに頭で負けたなぁ、どこから予想できたんだい?」

 

「俺の例のよく分からん知識やね。ああ^~天才に勝つの気持ち良えんじゃ^~」

 

「ちょっと~、それズルじゃない? フェアな条件でスタートしないのはどうなのかなぁ」

 

「じゃあお前もその頭脳の冴えを俺に寄越せーッ!!

 何がフェアですか! こんな才能と能力に大差が開いてる頭脳戦にフェアなんてありませえええん!!

 土台都市が不公平の坩堝なんだから多少ズルしたって大して変わりませんよぉぉおおおお!!」

 

「なんだってぇ……」

 

「あ、てかこれ美味しい。どこの?」

 

「22区のだよ、落ち着く香りでしょ?

 コーヒーの豆は揃えてもらってるから、これからもいつでも淹れられるよ。飲みに来てね〜」

 

「毎朝通っちゃう^^」

 

「毎朝淹れちゃおうか」

 

 

 指定司書を目指すにあたって当面の目標になったセフィラ化が叶い、俺としても正直、これまでずっと張り詰めていた力が抜けたような気分で。

 なおかつ友だちとも再会できたんだから、少しばかり気が緩むのは、何もおかしな話じゃないはずだ。

 

 特に、こうして箱詰め機械にされることなんかは、ようやく話題に乗せられるようになったことの1つ。

 ずっと黙ってるしかなかった隠し事を、ようやく友だちに話せるようになったんだ。そりゃテンションも上がってしまうってもので。

 

 勿論、今でも言えないことは多い。

 これからLobotomy社で、どのような悲劇が繰り返されるか。

 彼が、彼らが、どれだけ劣悪な抑圧を受け続けるか。

 その先で得た光がどうなるか。

 俺たちが最終的に、どこに行き付くのか。

 

 けれど、それでも。

 

 一つ一つ、友だちに話せることが増えていって、こうして笑顔を交わし合える。

 それは俺にとって、無上の価値を持っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 …………後から思ったことだけど。

 この時の俺の行動、ぶっちゃけだいぶヤバかった。

 

 俺が楽しかった。それはとても良いことだ。

 

 だが、ケセドを楽しませすぎたり、ストレスを軽減しすぎんのは……ヤバい。

 

 

 

 これより煉獄となるL社。

 その根幹には、「光の種シナリオ」ってモンがある。

 

 天才オブ天才の最強科学者アインが書き上げた、光の抽出と散布、及び自身の悟りを目的とした、実に10,000年もの時間かけて実行される長大な計画だ。

 

 100年程度しか生きられない人間が10,000年とか何言ってんの? って感じだが、マジなんだなこれが。

 

 アイツは時間の特異点を持つT社に働きかけ、馬鹿みたいな金と膨大なエネルギーを供与することで、TT2プロトコルを完成させた。

 

 極めて狭い閉所──とは言っても、これは特異点規模の観点であり、投与エネルギー次第では半径3キロメートル程度までは適用可能らしい──に対して適用できるこれは、端的に言えば特異点版逆行時計。

 範囲内にあるもの全てを、既定の時間まで巻き戻すことができるという、やべー代物だ。

 

 エンケファリンを持ってなければまず賄えない膨大すぎる消費エネルギーや、巻き戻しが不完全であるが故に外側での時間がゆっくりとではあるが進行してしまう等のデメリットはあるが……。

 常に定速かつ一方通行のはずの時間を何度も遡行できる、インチキ特異点技術である。

 

 アインはこのTT2プロトコルを使い、同じ時間を何度も何度も何度も何度も繰り返す果てで、悟りを得ることを考えた。

 それが光の種シナリオであり、俺たちと彼女がこれから辿ることになる煉獄だ。

 

 

 

 で。

 この光の種シナリオの台本なんだが、ゴミみてえなことが書いてある。

 

 一部例外を除いたセフィラたちの精神を抑圧しまくり、精神的に暴走させることで本音を吐き出させる……いわゆる、セフィラ崩壊によるクリファ顕現が必要なことだ。

 

 これは「できればこうしたい」とかの推奨事項ではなく、光の種シナリオを進めるための必須条件。

 そして、たかだか20日30日程度で、健常な状態からそこまで精神を追い詰めるのは……まあ、なんだかなんだ身内に優しかったアイツにゃ無理だろう。

 

 なもんで、管理人Xが舞台に登場するまでにある程度以上、彼らの精神を追い詰めておかないといけない。

 彼らへの精神抑圧が不足すれば、その時点でシナリオエラーが発生し、TT2プロトコルが起動。

 俺がさっき目覚めた時点まで、時を巻き戻されてしまう。

 

 

 

 ……勿論、俺の友だち、ケセドとて例外ではないだろう。

 

 俺にインプットされた光の種シナリオの台本は、すんごい大雑把にしか中身が書かれていないため、実際にこの世界でどんな形になるかは判然としないが……。

 

 原作Lobotomyの光の種シナリオであれば、部下や職員をとても大切にするケセドに、彼らを犠牲にする裏切りを強いる。

 アンジェラをクッソ非道な怨敵に仕立て上げ、非情な判断を強制し続けることで彼の誇りを折り、穢し、ただ恥じ続けるだけの怠惰な10,000年を送らせるのだ。

 

 アインップさぁ……なんだい? この人の心のないシナリオは。

 

 

 

 勿論、友だちとして、それを止めたいとは思うが……。

 そうすると、このループがガチのマジで永遠に続いてしまう。

 

 俺はホクおじではないので「友だちと一緒に過ごせるなら煉獄でもいいよね^^」とか思ったりはしない。

 普通にさっさと解放されて、外郭の図書館で一緒にティータイムをしたいのだ。

 

 なもんで……誠に不愉快ではあるし、アインの奴はやっぱ一発ぶん殴らんとあかんが。

 俺はその地獄の日々を、見過ごす他ないし。

 彼の抱えるだろうストレスを、軽減することも許されない。

 

 ……ある意味において、これこそ俺に与えられた最大の罰であり、精神抑圧なのかもな。

 

 

 

 

 

 

 ま、そんなこと忘れて、めちゃくちゃ楽しく会話しちゃったんだけどね!!!

 

 でも、なんかシナリオエラーは吐かなかったのでセーフセーフ! しなやす!!

 

 

 

 * * *

 

 

 

 で。

 

 そうして数時間、会話を楽しんでた俺たちなんだが……。

 テーブルと2杯のカップを囲んでいた俺たちの元に、不意に通信が届いた。

 

 セフィラたちとアンジェラに搭載されている通信機能。

 その内線に、つい先程も聞いた女性の声が乗ったのだ。

 

『……セフィラの皆、聞こえるかしら。

 それぞれ、色々と整理をしているところだろうけど……ごめんなさい、今から一度、管理室に集まってもらえる?

 これから一緒に仕事をしていくためにも、顔合わせの時間を取りたいの。よろしくね』

 

 う、うおぉ~~……!

 多分最初期のアンジェラからしか取れない、生真面目だけど優しい、AI感のある声音だ!

 他の大半の反復の俺は、ここまで真心いっぱいなアンジェラの声は聞けないだろう。なんか得した気分だ。

 

「相変わらず、楽しい時間はあっという間だな」

「そうだね~、俺ももっと話したいことがあったんだけど。

 まあでも、これからだって話をする時間はいくらでもあるだろうし、今はアンジェラの下に行こうよ。

 他のセフィラがどんな様子なのか、見なきゃいけないだろ?」

「至極正論。ほな行こか~」

 

 ……ケセド、戸惑ってるセフィラいたらケアする気満々だな。

 流石は俺の友だち。気が合うことこの上ないぜ。

 まあ、このシナリオがそれを許してくれるかはわからないが……。

 

 さあさ、楽しい時間は一旦ここまで。

 ここからは俺の本懐を果たす時だ。

 元L旧研専属カウンセラーとして、微力を尽くすとしましょうか。

 

 

 

 さて、中央本部チーム。

 

 馬鹿みたいにでかくて行き来に時間がかかり、アインの絶望的な建築センスを露呈する、クソデカフロアだ。

 

 その片隅に隠された、普段は動かないエレベーターでしばらく下り。

 その先の秘匿された通路を進むことしばらく……。

 

 そこには、いずれ管理人Xの拠点となる予定の、施設管理室がある。

 

 誰だかの研究室を思い出すような多数の壁掛けモニターと、一つの写真立ての置かれたデスク。

 それ以外には何もない、生活感に欠けた部屋に……。

 

 今、アンジェラと、俺を含め9人のセフィラ──正確には10人だけど、2人で1人のセフィラがいるので、セフィラとしてのカウントは9人──が集まっていた。

 

 

 

「皆、会えて嬉しいわ。

 もう顔を合わせたセフィラもいるけど、改めて挨拶をさせて頂戴。

 私はこの施設を統括的に管理するAIの、アンジェラよ。

 あなたたちが、私の業務補助に当たってくれるセフィラなのね。よろしく頼むわ」

 

 アンジェラはモニター群の前に立ち、俺たちに温かい声音で告げて来る。

 

 いや~……改めて、これは1周目アンジェラですわ。

 

 戸惑いもなければ焦りもなく、軽蔑もなければ憎悪もない。

 これからの明るい未来を疑わないその声音に、ちょっと暗い気持ちになってしまう。

 

 この子、これからとんでもねえ虐待とネグレクトを受けるんだよな……こんな純心な子供がな……。

 

 ……いや、彼女への対応は既に色々考えてる。今思い悩むべきことじゃない。

 今は俺のすべきことを、つまりは周囲のセフィラたちの観察を優先しよう。

 

 

 

 俺の隣に立つケセドは、先程までのやり取りで、ダニエルと変わらないことを確信できた。

 互いに言いたいこと、聞きたいことはあれど、彼は変わらず俺の友だち。それさえわかれば後は些事。

 

 今はセフィラの一団から離れて、後ろの方で壁に寄りかかってるビナーもそうだ。

 コイツはまぁ……うん。正直ガリオン/ビナーは精神抑圧が必要ないし、仮にやっても壊れるとか全く想像できんし、メンタルケアの必要性は皆無。

 観察対象から外してヨシ。

 

 

 

 となれば、次に注目すべきは……。

 

「どうも初めまして、アンジェラさん。ホド、です。これから、よろしくお願いします」

 

 そう言い、一歩前へ歩み出たセフィラだろう。

 

 橙色の箱にでっけえアホ毛アンテナ、どこか恥ずかしそうにその手をもじもじ絡ませる彼女は、ホド。

 L旧研のアイドル、大天使ミシェルが元になったセフィラだ。

 

 ……しかし、少し意外だな。

 ミシェルはかなり内気で奥手な少女だった。自分から活発に行動を起こすタイプじゃない。

 

 それなのに、彼女が元になってるはずのホドは、まるで皆を先導でもするように、真っ先にアンジェラの言葉に応じて前に踏み出したんだ。

 その上、名前を名乗ったりぺこりとお辞儀したり、アンジェラと握手までしてる。

 めちゃくちゃ積極的に動くじゃんこの子。

 

 やっぱアレかな、こっちの世界でも良い人になりたいモード入ってるのか?

 でもなー、原作と違って、ミシェルはL旧研の密告とかしてないはずなんだよな。

 あの襲撃は俺が情報をお漏らししたことで発生したわけで、そこで彼女が罪悪感を覚えることはない。

 

 だったら、そんな強迫的なまでに良い人にならなきゃ、なんて思わない気がするんだが……。

 もしかして、俺の死後に何かあったパターンかしら?

 今更ながら、L旧研から一抜けしたことによる情報のディスアドバンテージがでかいぜ。

 

 まあいいや、改めてよろしくなァ!

 さっさとこの反復終わらせて、約束通り落ち着いて話がしてぇなあ!!

 

 

 

「楽にアンジェラって呼んで。これから、ここで一緒に頑張って行くんだし」

「じゃあアンジェラ、私たちは何をすればいいんですか?」

 

 アンジェラの言葉に続いたのは、四角張った紫の瞳のセフィラ、イェソド。

 ガブにゃんパイセンが元となった、情報チームセフィラだ。

 

 彼はあくまで冷静に、自分たちがこれからどうすべきかをアンジェラに尋ねている。

 やはりというべきか、イェソにゃんはしっかりガブリアスの遺伝子を引いているらしい。素敵♡ たまごわざですてみタックルとか覚えそう。

 

 しかし、うーん……やっぱり箱の体にテープを巻いてるのは変わらんか。

 くそぅ、あそこで死んでしまったが故に、ガブにゃんのカウンセリングができなくなっちゃったことが悔やまれる。

 都市の意志さん厳し~♡ 俺ならそんな思いさせなかったのに……ッ!!

 

 どうにかその膿を解消してやりたい気持ちはあるが、一度こびり付いた妄執はなかなか厄介だ。

 下手にコミュってリブートするのもアレだし、コア抑制の日までは、割と手の出しようがないか……?

 

 ガブにゃん/イェソにゃんに対しては、いつも後手に回ってばっかだな、俺。

 どうにも巡り合わせが悪いわね。

 

 

 

「いつか管理人さんが来る前に、私たちが先にやっておくべき業務があるの。

 ……マルクト、きっと上手くやれるわ。そう焦らなくて大丈夫よ」

「うっ……うん、ありがとう、アンジェラ。私、精一杯頑張るから」

「うん。私も応援するし、必要ならサポートもするからね」

 

 お次は、綺麗な四角に黄の瞳、そしてメモとペンを持ち歩いている、マルクト。

 俺にバブみを感じていたドジっ子、エリヤが元になったセフィラである。

 

 彼女は……うーん、どことなく元気なさそうに見えるな。

 いや、元気なさそうっていうか、なんか自信なさげ?

 

 ちらちらとこっちを窺ってきてる辺り、ぼんやりとでも、俺に何かを感じているのかもしれん。

 記憶の残滓が目覚めるにはちょっと早すぎる気もするけど……さて、どう解釈したものかな。

 

 てか、そんなに見て来なくとも、そっちが求めるならいくらでも頭撫でタイムやるよ?

 なんなら髪がなくなった以上嫌悪感もなくなったので、前と違って24時間でも撫でるよ?

 いやでも、そんなことしてたらリブートか。この辺ほんと心苦しい。

 

 あと彼女、時々ティファレトの方もチラ見してるな。

 エリヤだった頃は、あの2人結構面倒見てあげてたもんな。親心とか芽生えてるのもかもしれない。

 

 ……エリヤの自認が俺の娘で、リサとエノクが彼女の娘?

 今更だけど、俺こんな歳でおじいちゃんになってたのか!?

 

 

 

「ネツァク……そんなだらしなく突っ立ってるだけじゃダメよ? シャッキリしましょう。

 私達が準備しないといけないことは山積みなの。皆で少しずつ片付けていかないとね」

「まあ……そうですねぇ」

 

 歯切れ悪く答えるのは、右に突き出たパーツに緑の瞳を持つ、ネツァク。

 元はジョバンニ。自らの意志を以てその人生を決め、L旧研に光をもたらした男であり。

 ろくにアインや研究所と関わりもなかったのにセフィラに登用された、被害者枠筆頭だ。

 

 彼とはいずれ、ゆっくり話す機会を持たなければならないだろうな。

 彼が今、何を考えているか。生きることを、そして再び生まれてしまったことを、どう思うのか。

 

 可能であれば、彼自身の意志で生きることを望んで欲しいが……。

 そう思わせるのは、管理人の仕事か。

 

 俺は……彼に、何をしてやれるだろうな。

 まあ、できるとしても、この反復が終わった後になるだろうが。

 

 

 

「その管理人って人、私たち以上に仕事ができるんでしょうね?」

「ティファレト、ちょっと失礼だよ。僕たち、まだ新しい仕事を覚えてもないんだから」

「そうね……きっと、この上なく優秀な人でしょう。私たちも、しっかり勤めないとね」

 

 声を上げたのは、2人で1人のセフィラ、ティファレト。

 元は勿論、L旧研の可愛いガキこと、エノクとリサだ。

 

 彼と彼女がどのタイミングでどう死んでしまったのか──考えるだけでも胸糞悪いな──はわからないが、あの頃と精神的な差異が大きいようには感じられないな。

 ここの業務も、ティファレトたちにとっては、L旧研時代の仕事手伝いの延長線上なのかもしれない。

 

 しかし……はぁ~。

 光の種シナリオ的に、あんまり2人のこと可愛がれないの萎えるわ~~~。

 

 俺としては今すぐにでも、2人のこと撫でまわしたいんだけど?

 なんならエノクなんて、俺のこと時々チラ見してきてるんだけど? 撫で倒すぞ。

 

 ……てか、2人の呼び分けどうしよ。

 リサレトとエノレト? ……微妙に語呂が悪いな。

 だからって、前世みたいにABで呼び分けるのは、ちょっと人の心ないしな。

 

 ごめん、普通にエノクとリサ呼びでいい?

 あだ名ってことで勘弁してくれ。

 

 

 

 

「……私に与えられた役割は、アブノーマリティの鎮圧と、問題を犯した職員の懲戒ですか」

「ええ、ゲブラー。……ごめんなさい、まだぼんやりしているでしょう?

 最初期のあなたには不具合が出て、何度も初期化を繰り返していた。

 未だ人格と記憶がしっかりしないのはそのせいよ。

 時間が経つと共に、少しずつあなた自身に馴染んでいくはず。少しだけ我慢してちょうだい」

「了解しました」

 

 赤い霧が敬語使ってて草wwwwwwwwww

 似合わね~~~! 赤い霧といえば傲岸不遜、カルメン以外の誰に阿ることもない最強だろ!! 相棒として解釈違いを申し上げる!!!!!

 

 ……しかし、そうか。序盤のゲブラーが敬語で機械的なのってそういう。

 原作の最初期のゲブラーは、起動する度にビナーをぶち殺そうとしており、その度何度も初期化することで負荷がかかったとのこと。

 それでまだカーリーらしい人格を取り戻せていないんだろう。

 

 ……あの、ゲブさん。

 この世界のその人、別にアブノマも解放してないし、研究員の一人も殺せてないっす。

 ダニエルの腕くらいっす落とせたの。それも俺が仇打ったし。

 もう1人の調律者だっていう、エコンだっけ? ソイツもカーリーがぶち殺したんだろうし、八つ当たりっすよそこまでいくと。

 

 まあ当然、気持ちは分かるけどもね。

 俺もこの手で直接殺してなかったら、普通にキレてブチ殺してたかもしれないし。

 

 ともあれ、今の彼女は俺たち他のセフィラの方に視線をやることもなく、ぼんやりしているが……。

 まあ、その内カーリーっぽくなることは分かってるし、一旦後回しでいいかな。

 

 できれば、あの戦いでどんな風に頭相手に無双したかとか聞きたかったんだけどなぁ。

 勝ったのは確定として、爪2人と調律者相手の大立ち回り、できればこの目で見たかったぜ。

 

 

 

 そんなことを考えてたら、アンジェラの琥珀の瞳が俺を捉えた。

 

「ダァト、あなたからは何かない?」

 

 おっと、俺か。

 

 全くアンジェラさん、流石は人間初心者だ。

 こういう時にはまずこれ、って定石がありますわよ!

 

「ん? ……ありますねぇ提案がね!

 一旦さ、みんな自己紹介から始めん? これから一緒に働く同僚なんだし」

 

 横のケセドの瞳がにやりと細められ、アンジェラが首を傾げるその前で。

 

 俺はちらちら脳の見えるクソグロい自分の体を、ピッと指差した。

 

 

 

「やあみんな! 僕はコナー、改めダァト!」

 

 

 

 やっぱ最初はこれだよね!

 

 

 

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