3級フィクサーパンチ   作:アリマリア

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今日は記念すべき日! あなたはまだ恥ずかしがり屋なの?

 

 

 

 

-反復3,069回目-

 

 

 

 今日も今日とて反復、反復、また反復。

 

 勿論、ただボーッと繰り返すだけじゃない。

 その中で、自分なりにアンジェラを支え、魔法少女にどう接すべきか考え、アブノマを鎮圧し、管理を手伝う。

 

 やるべきことは多く、時間は飛ぶように経過していき……。

 

 その中でも、俺はアンジェラと、光の種シナリオ攻略のため、順調にチャートを組み上げていった。

 

 

 

 施設管理に関しては、もはや問題はないと言っていい。

 

 3,000周を経た今、アンジェラはプロ管理人と言っていい知識と状況判断能力を獲得している。

 

 ぶっちゃけ既に、前々世の俺よりもずっと腕が良い。

 このカスみてえな縛りプレイじみた環境で、それでも高い精度で管理作業の指示を飛ばし続けているのだ。

 流石はアンジェラ、と言うべきなんだろうな。

 

 そんなわけで、俺は既に、管理者としての彼女に全幅の信頼を置いている。

 

 勿論、失敗がないってわけじゃない。

 時には唾棄共で事故って、施設壊滅したりもするし。

 まだブラックリストに入ってなかったわけわからんアブノマを抽出したりすれば、リブートを避けられないこともある。

 

 だが、そんな時はもうどうしようもないので、素直にやり直しを受け入れている。

 「しゃーないしゃーない、事故は起こるさ」と落ち込むアンジェラを慰める日々だ。

 

 

 

 原作では、アブノマの総数は100ちょっとくらいだったけど……。

 当然と言うべきか、人類の感情の表象であるアブノマの総数が、その程度なわけもなく。

 

 アレはアンジェラが、反復を通してめちゃくちゃに厳選した、滞りなく管理できるアブノマたちなのだ。

 現に憤怒の従者なんかは、原作じゃ抽出されても支部送りにされてたからな。危険すぎるとか管理困難なアブノマは弾かれてたのだ、アレでも。

 

 で、絶賛反復中の俺たちの手には、完成されたブラックリストはない。

 むしろ、原作にはいなかった無尽蔵なアブノマたちを観察・分析し、その中からアインの管理に適切なものを選別しなければならない。

 

 

 

 当然と言えば当然だが、そんなアブノマたちの中には、原作の唾棄すらマシに思えるカスがたくさんいる。

 

 この前なんか、乗馬した死神みてえなアブノマが収容されたんだけど、アレマジで酷かったからね!

 

 クリフォトカウンター初期値が1で、5分の時間が経過するか、収容室の前を職員が通ると減少。

 一番近くにいる職員に解除不可の魅了を付けて、自分の収容室の中に入れて……。

 

 問答無用で即死だ。

 

 また即死だよ!!! お前らホント即死大好きだな!!!

 

 じゃあ管理作業で上手いこと抑えないといけないのか、と思うだろうが……。

 そんなことができれば、原作にだって登場しとるわ。

 

 このクソカス、作業のために収容室に入ると、その時点で即死。

 そのため、そもそも作業なんてできないのだ、コイツ。

 

 

 

 触れてはならないと同じ、エンケファリンを一切生まず、施設にも職員にも何の利益も生まないゴミ。

 

 しかも、管理人が気を付ければセーフとかではなく、鎮圧や退避中にどうしようもない事故を誘発する。

 

 何が最悪ってさ、思考を分散させなきゃいけないビナー抑制とか、勝手に職員がウロチョロしちゃう終末イベントだよ。

 こんなん鬼のように事故るだろ。

 

 果てにはどれだけ気をつけようと、5分毎に必ず職員が1人犠牲になる。

 残業しなきゃやっていけない世界でコレだ。

 

 一切利益がなく、存在するだけで損害を生む、比類なき害悪。

 勿論、俺とアンジェラ、全会一致でブラックリスト入りしました。

 

 二度と顔見せんじゃねえぞボケ!

 

 

 

 こんなどうしようもねえ地雷を踏み抜き、反復すること幾星霜。

 

 俺とアンジェラによるブラックリスト製作は少しずつ進み。

 今では、ある程度管理できるアブノマを選べるようになってきてる。

 

 アンジェラの技量と知識の向上もあって、施設管理の方はなんとか形になってきた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ……さて、管理作業は順調に推移している。

 

 そうなると肝要になって来るのが、やはりと言うべきか、各セフィラへの対応を纏めたチャートである。

 

 この反復を終わらせるのに大事なのは、セフィラの精神抑圧だ。

 だが、だからと言って過剰にやるのは、俺も嫌だしアンジェラとしても心苦しいわけで。

 反復の中で対照実験を続けることで、確実にリブートが発動しない、なおかつできるだけ彼ら彼女らの精神を傷つけないラインを探り、50日目でそこに着地するためのチャートを組む必要があった。

 

 人の心の機微ってヤツは難しい、仮組みを作るのさえ3,000周もかかったわよ。

 まだまだ未完成のチャートなので改善の余地ありありだが、ひとまずは形にはなってきたな。

 

 ま、頻繁に起こる事故や唐突に現れる未知のアブノマを加味すると、チャートがあってもなお完走率はどちゃくそ低いんだけどね!!

 なにせ3,068回は再走してるわけで、安定度を最重要視する親父殿から破門されるだろこんなもん。

 

 

 

 ……さて、せっかくの機会だ。

 

 現状の、対セフィラ精神抑圧チャートをちゃーんと解説していこう。

 

 

 

 まずは、マルクト。

 

 彼女は基本的に、放置してたら勝手に焦ってやらかして曇っていくので、そこまで強い干渉は必要ない。

 ただし、場合によっては精神抑圧が足りなくなる場合もあるので、ちょろっとその行動を失敗に導いたりしなきゃいけない。

 

 で、それでもなお、40日目までに本格的な躁鬱状態にならない場合、ちょっとした対策を取る必要がある。

 

 即ち、俺が1回死んで、再起動することだ。

 これにより、マルクトの精神抑圧は一気に進む。

 

 いや~、なんか想われてるみたいで嬉しくなっちゃうね!

 

 アンジェラは50反復くらいの間、こういう形で俺の死をチャートに組み込むのを拒否し続けたが。

 最終的には「俺もセフィラ、彼らと同じ苦しみを背負うべきだ。頼む、エラ、俺にも役目を果たさせてくれ」という趣旨の言葉で論破ァ!

 反論できないようなら俺の勝ちだが?

 

 

 

 大丈夫大丈夫、セフィラは脳のクローンを使って再起動できるからね。

 1回再起動するくらいなら、そこまで精神削れたりしないし。

 

 ……まあ、その俺は死にはするけど。

 正しく、前任者は破壊されました、私は新型です、というわけだ。

 

 それに、俺には騎士による記憶の同期もある。

 再起動すれば記憶はリブート地点まで遡ってしまうが、すぐに直前までの記憶を取り戻せるなら、特段のロスもあるわけでもない。

 

 死んだとて喪われるのは、俺の自我の欠片だけで、意志自体は引き継がれる。

 その上、シナリオリブートすれば時間が遡り、欠損した自我も物理的に復活するので問題ない。

 実質的には、今まで2回繰り返した転生と同じようなもん。転生先もここで決まってるので安心である。

 

 今の俺にとって、体や脳、そして命は、替えが利くリソース。

 いざという時には切れる有用な手札の1枚に成り下がったのである。

 

 ……いやまあ、クッソ痛いけどね! 脳まで食われたり斬られたりするの!!

 ま、もうちょっとチャートが洗練されて、この手札を切らずに済むようになるまでの我慢ですかね。

 

 

 

 さて、次にイェソドだ。

 

 彼については、割と初期から、処理チームに人員を割きすぎると抑圧率が低くなることが判明していた。

 逆に言えば、処理チームの人員を少なくすれば効率的に抑圧が進む。

 俺がいつも職員を1人しか抱えていない理由の一つだ。

 イェソパイは俺をデスマーチ地獄に突き落としたいのかな;;

 

 追加すると、イェソパイはとっても良い奴なので、自分の職員が死ねば死ぬ程どんどん追い詰められる。

 なので……最低限、15日目までに1人、30日までに4人、50日までに15人を目途に、情報チームの職員たちには記憶保管庫で眠ってもらうことになる。

 

 ……というのが、旧チャート。

 今は時代が進み、もっと効率の良い手法が発見された。

 

 俺が死ぬことで、一気に抑圧を進行させるというものだ。

 

 まさかのマルクトと条件被り!

 おいおい、お前ら俺のこと大好きかよ。

 

 これを使うことで、50日目までの職員の犠牲を、最高で3人くらいにまで抑えることができた。

 ぶっちゃけ職員の犠牲を抑えることができたのは、個人的に嬉しかったが……。

 

『……愛する人が死ぬ姿を見るのは、本当に、辛いわ。

 もう、あの時の気持ちを繰り返すのは……嫌』

『これも主の決意と誇りであると、理解はしますが……私としても、回避できるなら回避したい、というのが本音になります』

 

 2人も嫌がるし俺も嫌だし、やっぱ駄目だなこれ!

 もっと効率良く事を進めるプランを練らないと。頑張ろうね、エラ。

 

 

 

 ホド。

 

 この子に関しては、俺以上にアンジェラの負担が大きい。

 

 時にケセドと協力して、彼女が積極的に提案してくる、職員への福祉案・心理相談等の提案。

 これをちょっと理不尽めに却下し続け、彼女をまともに動かせないこと。

 そうすることで、ホドの精神抑圧は結構なスピードで進む。

 

 あと、なんか密かに俺のことをライバル視してる? っぽくて、俺が職員のこと助けたりメンタルケアしてるとそこそこ抑圧できるっぽい。

 じゃあカウンセリングバトルしようぜカウンセリングバトル!

 

 まあそのくせ、俺が死んでも抑圧がガッと進むっぽいけど。

 いつもの。君たち俺のこと好きすぎ~!

 

 まだチャートが洗練されてない今は、ちょっとでも情報を集めるため、俺が一旦死んでもう少し先の未来を覗くことも珍しくないわけだが……。

 アンジェラはそんな俺の死を避けようと試行錯誤するあまり、最近は八つ当たり気味に、ホドを含むセフィラたちへの当たりが強くなってしまっている。

 やっべ、むしろ俺が悪影響生んでるじゃん^^; どうすっぺこれ。

 

 「あの子たちのせいじゃないよ、大丈夫、これくらい痛くも痒くもないよ」と、抱き締めてなでなでしながら説明してるんだけど……どうにも納得し切れない様子だ。

 

 まあ父親代わりの死は、取り返しが付くって理解したとしても、感情的に受け入れ辛いものもあるんだろう。

 本当にごめんね……。

 

 

 

 ネツァク。

 

 条件はイェソちゃんに近く、職員の死で抑圧が進行する。

 ……しかし、優しさの塊たるイェソぴっぴと違って、ただ死ぬだけだとなかなか目標ラインに到達しないのが困りもの。

 

 コイツ、原作の印象と違って、めちゃくちゃ精神的に頑健なんだわ。

 

 流石にヤク中はまずいだろうと、俺がアンジェラを拝み倒して設置が叶ったビール自販機で酒を買い、仕事をサボって飲んでる姿は、まさしく駄目人間だが……。

 しかしてその実、どんなことがあろうと「自分の生き方は自分で決めます」という軸がブレない。

 

 そこまでいったらお前も試練型コア抑制やってくれよ……と思うが、アインのジャッジだと暴走型のコア抑制になるらしい。

 

 じゃあどうすんねんコイツ!! と、俺とアンジェラは頭を抱えた。

 彼の攻略法を見つけられないこと、数百周。

 俺とアンジェラはネツァクを「ラスボス」「ストッパー」「無敵の人」「つよつよマリモ」などと呼び、恐れていたわけだが……。

 

 

 

 しかしある反復で、何故かぬるりと、抑圧ノルマを達成することができた。

 その周でようやく判別できた、ネツァクのストレス蓄積要因は……。

 

 俺である。

 またか!!

 

 あ、でも今回は死ななきゃならんってわけじゃないよ?

 なにせその周では俺、死んでなかったし。

 まあ死んだらほぼ確でノルマ達成できるレベルで抑圧できるっぽいけど、それはさておいて。

 

 その周の最大の変化は……偶然、俺がネツァクとよく接触していたことだ。

 話し合ったり、一緒に酒飲んだり、管理補助したり、鎮圧の際に話したり。

 そういったことを、他の周よりいくらか多くやっていた。

 

 ……そう。

 ネツァクとかいう飲んだくれ野郎、俺と一緒にいると、バチクソストレスを受けるみたいなのだ。

 

 え、俺、嫌われすぎ……?

 俺、みんなに好かれてると思ったけど、そうでもない?

 

 セフィラたち、裏では「ダァト菌移ったー!」「ダァトマンだ、ばっちぃー!」とか言ってたりすんのかな。

 泣けるぜ;;

 

 ともあれ、その抑圧条件は、他に比べてとても簡単と言っていい。

 俺がネツァクに高頻度で絡めばいい。ただそれだけだ。

 

 職員もセフィラも、そして俺も。

 何一つ犠牲にならない、最も優しい解決法だ。なおネツァクのストレスは除く。

 

 かつてラスボスと思ってたヤツが、実は一番優しい展開……アンチRPGかな?

 

 

 

 さて、上層セフィラが終わり、次に中層セフィラ、ゲブラー。

 

 彼女は原作のゲブラーに近い。

 アブノマが職員を、特に他部署の職員を殺せば殺すほど、精神抑圧が進む。

 

 ……が、やりすぎると管理人X到着を待たずブチ切れ、コア崩壊する危険性アリ。

 その瞬間に問答無用でリブート確定なので、割と気を遣う必要があるセフィラだ。

 

 あと、例によって俺が死ぬと一気に抑圧が進む。

 やっぱお前ら俺のこと大好きかよ~~~! 俺もみんなのこと大好きだよ♡♡♡

 

 ……しかし正直、怒り狂ってるゲブラーを見るの、まあまあ心に来るんだよなぁ。

 ミョが言ってたこともわかるというか……うん。

 

 凄まじい力を持ちながらもそれを我がために振り回すことなく、あくまで守護者であった、俺の誇るべき相棒。

 彼女が自分の怒りに呑まれて暴れ回ってるのは、まあまあ尊厳破壊感がある。

 

 別に彼女が箱になったから、どうってことはないが……。

 今のゲブラーの在り方が、カーリーのそれを穢すようですらあるのが、なかなかにちょっとね。

 

 

 

 

 さて、最後はティファレト2人とケセドだ。

 

 彼ら彼女らは試練型のコア抑制なので、精神抑圧の必要、ナシ!w

 過度に心を支えて変に落ち着かせちゃうのはヤバいが、程々の距離感なら接触オーケーだ。

 色々と気遣う必要のあるセフィラたちの中で、彼ら3人は本当に癒しである。

 

 本来、アブノマのエンケファリン生成は、職員が死んだり苦痛を感じることでより進むので、そんな3人の職員たちも犠牲にしなければならないのだが……。

 

 この世界では、俺が騎士と話すだけでほぼ無制限かつ多量にエンケファリンを抽出可能だ。

 なんなら俺でなくとも、新人職員に剣術道場に行かせるだけでかなり集まる。

 

 返す返すも正義の騎士が神アブノマすぎる。

 もう俺騎士がいないと生きていないかも♡ いやマジでね。

 

 そんなわけで、彼らの職員に関しては、わざと殺すのはフヨウラ!

 まあこんな場所だし、死ぬ時は普通に死ぬんで、その辺りはどうしようもないけどね。

 

 そんな犠牲を可能な限り減らさんと、ティファレトとケセドは今日も福祉案を練っているのだった。

 ハイパーエリート友だちは勿論だが、ガキ共も偉すぎるだろ!! 反省しろ!! そろそろガキを褒めないと死ぬぜ!!

 

 

 

 え? 何? 下層?

 

 ビナー? 自分の精神くらい自在に操れるよアイツ。

 ホクマー? アインがああなってる時点でもうノルマ達成できてるよ。

 

 

 

 というわけで、セフィラたちとの付き合い方は以上!

 

 要するに わしにしね というんだな!

 

 ……冗談抜きで、俺が死ねば、めちゃくちゃ効率良く抑制できる。

 ある意味、L旧研で俺が信頼を稼いだからこその僥倖と言えるだろう。

 

 ただ前述の通り、職員の犠牲を減らすためとはいえ、これは簡単にやるわけにもいかない。

 

 そもそもアンジェラにチャートに組み込むための条件として、本当にどうしようもない時にしかやらないという制限をかけられたのもそうだが……。

 これしちゃうと、ティファレトやケセド、そしてアンジェラと騎士とカルメンまで曇ってしまう。

 あとビナーはゾッとする程声に艶が乗って怖い;;

 

 俺からしても、そもそも死ぬってのがめちゃ嫌いだし……。

 今回の反復に限っての話ではあるが、自我もちょっとだけ削れてしまい、なんというか、感情が隆起し辛くなる。

 違和感もすごいし、できれば避けたいことには違いない。

 

 

 

 そんなわけで。

 俺の死という事態の回避のため、アンジェラは嫌な上司の演技を続けながらも、よりチャートを洗練させようと頑張ってデータを集めてくれている。

 

 本来なら「ただ台本を遂げるため」以外に努力する理由を持てなかった彼女が、それ以外に積極的に動くモチベーションを持てたことは……。

 どうだろ、良いことなのか悪いことなのか。

 

 少なくとも、無気力な諦めに陥ることはないので、そこだけは幸いかな。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 そんなこんなで。

 

 アブノーマリティの管理方法と同時、セフィラの管理方法も纏まって来て、50日到達チャートが組み上がったことで……。

 

 俺たちは割と安定して、反復を攻略できるようになりつつあった。

 

 

 

 勿論、事故ることはあるけどね。

 

 魔法少女が4人揃った上に同時脱走して、虚無の道化師が職員に憑依し、虚無オーラでオフィサーぶち殺してパンデミック、施設壊滅したり。

 

 オズシリーズが全員揃っちゃって、嘘をつく大人が顕現し、職員じゃ倒しようがないので俺が単騎で出向くことになったり。

 

 三鳥が合体しちゃって、クリフォト暴走と魅了で施設がめちゃくちゃになったり。

 

 陰陽合体しちゃって、全部ひっくり返って詰みになったり。

 

 ……やっぱイベント系アブノマが揃うとロクなことがない。

 特に道化師、アイツヤバいわ。今のところ勝ち目が全く見えん。

 

 

 

 でもまあ、それでも。

 反復を繰り返す度、アンジェラが集めた情報から、少しずつ、少しずつ、安定感は増していき……。

 

 

 

 

 

 

 反復すること、3,000回。

 

 ついに、その日が来た。

 

 

 

 

 

 

 その日。

 

 アンジェラは、セフィラたちを管理室に集め……。

 声に滲む喜色を隠し切れないまま、言った。

 

「さぁ、みんな注目。

 ついに明日から、管理人さんがここにいらっしゃるはずよ」

 

 

 

 

 

 

 50日目の到達。

 言い換えてしまえば、管理人Xの到着。

 

 光の種シナリオにおける前提条件は、ついに達成された。

 300年強の時間をかけて、俺とアンジェラの第一目標は、ようやく叶ったのであった。

 

『いやぁ、ついに成し遂げたわね!

 アインに会うのも本当に久しぶりね。私の感覚としては2年ぶりくらい?』

『そうですね、私としましても、あの者を見るのは久方ぶりです。

 何はともあれ、ひとまずの目標達成、おめでとうございます、主よ』

 

 脳内のカルメンと騎士も喜んでおるわ。

 こっちこそありがとね、本当お世話になっております。

 

 

 

 これ以降は、アンジェラから管理人へと、この施設の管理権限が移ることになる。

 

 いやまあ、言っても管理人がやるのなんて、アブノマの管理指示を飛ばすこととか、脱走アブノマとパニック職員の鎮圧指示だけ。

 実際に必要な数多くの手続きや情報伝達、各種調整等の殆どの業務は、変わらずアンジェラが統括し、各セフィラたちが行って、俺が手伝うんだけど。

 

 とにかく、目の前にいる8人……エノクとリサを別カウントにすれば9人のセフィラにとっては、直属の上司であるアンジェラの上に更に上司ができるようなもの。

 

 これは割と重大発表なはずなのだが……。

 

 

 

「そう、なんですね……」

「その人が、この施設の管理を全て任される、ということですか」

「はぁ……誰が来ようが、ここじゃみんなみんな無意味に死ぬでしょうに」

「……きっと、立派な人なんでしょうね」

 

 上層セフィラの反応は、鈍い。

 鈍いっていうか、みんな割とどうでもよさげで草ァ!

 気にしてるのイェソにゃんくらいだわ!

 

 みんな抑圧に疲れ切ってるから、まともに反応する余裕ないでやんの。

 まあそこまで追い詰めたのは、他ならぬ俺たちなんですけどね、ハイ。死にてえなぁ。

 

 

 

 ちなみに今回の反復では、アンジェラが獅子奮迅の神調整をかましてくれたおかげで、俺が死ぬこともなかった。

 なので、ここからみんなからチラチラ見られるようなこともない。

 

 まあ、琥珀の夕暮れへの対処中、うっかり罰鳥に手ぇ出したアホ職員を庇って罰鳥バイトに直撃し、危うく死にかけたことはあったけど……。

 その時も、アンジェラがK社製のHP-N弾を3連射してくれたから、なんとか無事だったしね。

 

 いや~すさまじいわ、アンジェラ。

 TT2プロトコルもなしに、高速で跳び回る俺の体に、3連続の直撃だぜ?

 100倍の速度の思考を持つとはいえ、とんでもなく神がかった能力だ。

 

 勿論その後は、感謝の言葉ととっておきの料理を送りましたとも。

 なにせ命の恩人なのでね。その日ばかりはチートデー、アンジェラが好む甘いものを大量に用意致しましたよ。

 

 

 

 ちょっと話が逸れたが、上層はそんな感じで鈍かった一方。

 中層組の反応は、それぞれ違う。

 

「そう。実務形態は変わらないのよね? ならいいわ、どうでもね」

「…………うん」

「ちっ、こんなことのために呼び出されたのか」

「職員を大事にしてくれる人だと嬉しいなぁ」

 

 リサはあまり興味なさげで、エノクはアンジェラと俺の様子を観察してる感じ。

 ゲブラーは時間の無駄だと言わんばかりに舌打ちし。

 ケセドはアンジェラへの皮肉……ではなく、割と逼迫した祈りだな、これは。

 

 この4人の中で唯一抑圧を受けているのはゲブラーなわけだが、それはそれとして、やっぱりアンジェラは嫌われがちだ。

 まあ、職員を使い捨てたり、セフィラに嫌なことを押し付ける上司だと思われてるからな。

 

 エノクはアンジェラの事情を察してるっぽいし、ケセドも俺の様子を見てか、ちょっとだけアンジェラに寄り添ってくれてはいるが……。

 それでもリサを含むセフィラたちの大半は、アンジェラを恐れるか嫌うかしている。

 

 こればっかりは仕方ないんだけど、アンジェラのことはあとで慰めんといかんね。

 50日初到達記念で、シャンパンでも開けてぱーっとお祝いし、これまでの労をねぎらうとしようじゃないの。

 

 

 

 ちなみに残る一人、下層セフィラは……ま、語るべくもないだろう。

 

「ふふ……あの者に会うのも久方ぶりか。

 とは云え、此度に邂逅が叶うかは分からないがな」

 

 ビナーは、うん、嗤ってる。

 

 X(A)のことは好きにしていいから、これからも邪魔しないでね。

 

 

 

 総合的に見て──若干一名、ワイングラスでも揺らしそうに愉悦してる奴もいるが──好意的とは言えない反応に、まぶたを閉ざしたアンジェラはため息一つ。

 しかし、意識を切り替えるように、明るめな口調で言った。

 

「あなたたちが、私のことを快く思っていないことは分かってる。

 でも、管理人さんは私とは違う。ここを変えることが出来る方のはずよ」

 

 ……どうかなぁ。

 俺は内心、小首を傾げざるを得ない。

 

 X、もといA、もといアインのことは、この場では俺が一番よく知ってるだろう。

 でもそんな俺からして、アイツがこの状況を好転させるべく、積極的に行動を起こす姿は……ちょっと想像が付かない。

 むしろ「そういう職場なら仕方ない、俺も馴染むしかあるまい」みたいな思考パターンだろアイツ。カルメンがいなきゃ基本事なかれ主義だし。

 

 まあ、アンジェラが生まれた頃、恐らく既に狂気に呑まれていただろうアインのことを、俺は知らないわけで……。

 もしかしたら、アインがそんな突然変異を遂げてる可能性はないわけではないが。

 

 

 

「……ええ、そうよ、きっと」

 

 そう呟く、無理に明るくした声からして……。

 ただ、そう信じたいだけのようにも思えるけどね。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 そうして迎えた翌日。

 業務開始日たるDAY 1を迎える前の、いわばDAY 0とでも呼ぶべき日。

 

 実は最初から管理室の隔壁の向こうでコールドスリープしていたアイン、改め管理人Xの体を取り出し。

 

 久々に見た友だちの顔に懐かしさを覚えつつ、良い感じに嘘の記憶をちょちょいっとインプットして。

 

 そうして、彼をデスク前の椅子に座らせて、準備完了。

 

 

 

 アンジェラはデスクの前に立ってXの目覚めを待ち。

 俺は台本通りに突入できるよう、管理人室の外で待機。

 

 初の管理人Xお出迎えに、さしもの俺もドキドキしつつ、室内の様子を盗み聞きしていたんだが……。

 

 

 

 そこで聞こえて来たのは、意外すぎる言葉だった。

 

 ……いや、マジでね。

 

 

 

 

 

『ようこそいらっしゃいました、管理人さん。

 ロボトミー社への入社を、心より歓迎します。あなたの到着を心待ちにしておりました』

 

 

 

『ああ、こっちこそよろしく! 管理作業、頑張らせてもらうよ!

 それで、君の名前は?』

 

 

 

『…………あ、ああ、すみません。

 私の名前はアンジェラ、あなたの補佐をするAIです』

 

 

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 ?????????

 

 

 

『……誰ですか? あの者』

「誰!?」

『ねえ、誰なの!? 怖いわよぉっ!!』

 

 俺たちが耳にしたXの声は、ちょっと俺たちの知らない誰かのものだった。

 

 

 

『そうか。アンジェラ、これからよろしくね!』

 

『は……はい……』

 

 

 

 マジで誰だよコイツ!?!?!?

 

 

 







 陰キャナードの今日の顔



(Limbus近況報告)

 7章クリアしました。
 以下ネタバレ等ありますのでご注意ください。



 一つの夢が終わり、しかし一つの夢は終わらず。
 彼が見た夢、その続きを子は演じ続ける。

 全ての武勇伝を嘘にしないために。
 新たな明日に「ドン・キホーテ」の名を残すために。



 今回もバチクソ面白かったですねぇ!!

 正直、ドンキ(真)の「壮大な理想を持って皆を巻き込みつつ地獄に直行する」この感じは、Cさんを思い浮かべてしまった。
 都市はそんな優しい世界を許さない。本当に残酷なことに。
 誰が悪いかと言えば、悪い人なんておらず、優しい罪人と盲目の追従者がいるばかり。

 ……と思ったら、第一眷属とガチでやり合える推定特色級の実力を持つ、すんげえ見覚えのあるヤツが出てきてひっくり返りましたね。
 うおっ流石にそれは名前も無かった子すぎ……君ブックハンターに似てるって言われない?
 マジか。出て来るのか君。まあ蒼白の司書を討てるくらいだし強いのは間違いないだろうけども。

 バリさんがやったことが悪とは欠片も思わないんですが、地獄への道は善意で舗装されてましたねこれは……。
 都市っていつもそうですよね!! 住んでる人たちのことなんだと思ってるんですか!?

 ……あとサンチョ、最終決戦で憎しみE.G.O使わせてごめんね。
 多分「私はどんな顔でこれを撃てば……!?」ってなってたと思う。
 でも、大事な決戦でそういう台詞を叫んだりするのもドンキホーテっぽくて良いなと思います。



 そして難易度に関して。

 あなや~~~! 破壊不能コインとマッチ不可と出血の合わせ技で囚人いっぱい死ぬなり~~~><!!
 12人総参加の連続戦闘になったこともあり、難易度が急激に容赦なくなりましたね。
 6章までは囚人死亡数0だったんですが、今回のラスボスでは4人くらい囚人が飛ばされてヒリヒリしてました。一応初見で勝てたけど歯応えがすごい。
 なんなら道中でもオートしてたらクッソ出血して混乱しまくって、「これこれ~!^^ プロムンはこうじゃなきゃ~~!^^」ってなりましたね。

 破壊不能コインに関しては、押し勝つ、保護や耐性を盛る、防御や回避する、回復する以外に被害の軽減ができなさそうですし、上手く使っていかないといけませんねぇ。
 環境の変化を感じる……!
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