3級フィクサーパンチ   作:アリマリア

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 あの高難易度ゲームにイージーモードが搭載!?
 果たしてどんな難易度なんだ──!?





Lobotomy Corporation(イージーモード)

 

 

 

 初めての管理人Xを迎えた俺たちだったが。

 ここに来て、1つ、学びがあった。

 

 どうやらXは、迎える度に性格が変わるらしいことだ。

 それも、だいぶ想定外の方向にまで。

 

 

 

「Xが根明とか意味不明なんだけど、なんで???」

 

 俺のクッソ雑で大雑把な台本には、特にそんな記述はなかったのだが……。

 訊いてみたら、どうやらアンジェラにインプットされた膨大な台本の中には、それがあったらしい。

 

 俺の横で微睡んでいたアンジェラは、小さく呻った後、答えた。

 

「ええと……同じ条件で同じことを行っても、結果は同じになるから……らしいわ。

 だから、無理のない程度に自身の人格と思考パターンに手を入れ、それを変数として差し込むことで、現状打破を目指す。

 更に言えば、どのような人格が悟りに至るかを観測することで、より悟りを深める狙いもあるんだとか」

「ああ、そういう……?」

 

 ……無理のない範囲で手を加えた?

 

 アレで? あのクソ程似合わない陽キャっぷりで???

 

 無理があるだろうがよ!!! 色んな意味でよ!!!

 

 

 

『………………まあ、アインっぽくはなかったわよね、ええ。

 若干コナーっぽさを感じなくもないけど……なんかこう、慣れない人が頑張ってる感じっていうか』

『あの頃は個別の認識が甘かったので、確かとは言えませんが……主がいなくなった後、確かあの者は更に沈み込んでいたと思うのですが……』

 

 カルメンと騎士も、俺に並んでドン引きである。

 

 なんならアンジェラも、Xと会った直後は混乱を隠せない様子だった。

 まあ、これまでずっと無視されてたのに、急にフレンドリーにされてもね。困惑が先立つよね。

 

 何? アイツ、並行世界から明るい人格の自分でも取り寄せたの?

 それとも、抑圧してただけで、実は明るい心がアイツにもあったの?

 信じられねぇ……真正陰キャだと思ってたのに、俺を裏切ったのかアイン……ッ!!!

 

『真正の根明なあなたに裏切ったなんて言われても、アインも困ると思うけどねえ』

『それも主の美点の一つですので』

 

 

 

 ゆったりと包んだ腕の中、アンジェラは深い安堵の息を漏らした。

 

「でも……ようやく、あの人が来てくれた。

 これでいいのよね。これで……長かったこのシナリオも、終わるのよね。

 コナー。私も、あの人の期待にも、応えられるのよね……?」

「……どうだろうな」

 

 アンジェラの明るい……あるいは明るく取り繕った、肯定を求める声に。

 けれど俺は、慎重な声音で応えた。

 

「え……でも、あの人なら、TT2プロトコルを自由に使えるのよ?

 セフィラたちの代わりに統括した管理権限が与えられるし、管理に慣れてからにはなるけど、R社のウサギチームだって派遣できるし、ダァトたちにも出動要請できる。

 私たちが厳選するから、意味がわからないふざけたアブノーマリティたちも抽出されない。

 これなら、管理なんて簡単じゃない」

 

 まあそりゃあ、君からすれば、とんでもねえイージーモードに見えるよね。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 俺たちは3,000周の反復の中で、何度も何度も、管理面で失敗してきたわけだが。

 その理由として、まさに今アンジェラが口にしたことが挙げられる。

 

 管理人Xには使えて、俺たちに使えない機能が多すぎるのだ。

 

 

 

 俺たちが自分の意思でシナリオリブートを止められないことからも分かる通り……。

 アンジェラやダァトには、TT2プロトコルの管理権限が与えられていない。

 

 光の種シナリオの核たるそれを自在に扱えるのは、煉獄の指揮官たるアインのみ。

 シナリオリブートはあくまで、俺たちの指示なく自動的に動き続けるシステムに過ぎない。

 

 だから俺たちは、時間を止めたり倍速したりもできず。

 その日を最初から再挑戦することも、チェックポイントに戻ることも許されない。

 ノルマ達成を目指して出来る限り足掻き続け、失敗やガバが重なり続けて進行不能に追い込まれれば、問答無用の「はじめから」を受け入れるのみ。

 

 ブラックリストが完全でない今は、まあまあガチの害悪が登場することも多いし。

 虚無の道化師なんか出れば、職員はほぼ瞬間的に全滅する。

 そうでなくとも、セフィラたちの抑圧が上手くいかずリブートすることも枚挙に暇がない。

 

 勿論、職員の育成状況やE.G.O抽出状況の引継ぎなんてできるわけもない。全部最初からやり直しだ。

 

 やめたくなりますよ~反復ぅ~……。

 

 

 

 Lobotomyを遊んだことのある管理人がいればわかってくれると思うが、こんなんもう縛りプレイとかいうレベルじゃねーぞ!!

 

 常時ホクマー抑制&1周限定&よくわからんMODのアブノマ出放題&セフィラへのカウンセリング必須とか、とんでもねえ縛りプレイですよこれは。

 ただでさえ難易度が高いLobotomyのルナティックモードとか、こんなんクリア率1%もねえだろ!! 絶対クリア不可能のクソゲー認定されるわ!!!

 

 で、そんな不可能を可能にするためにこそ、アンジェラは1秒を100秒に感じる程の超高速思考能力を備えているわけだ。

 まあ、いくら彼女の思考が100倍になっても、言葉を発したり情報を伝達するのに必要な時間自体は変わらないので、防げない事故ってのはいつだって発生し得るわけだが。

 

 あとは彼女が完全な記憶能力を持ってるのも、せめてループ毎にアブノマの管理情報を引き継ぐため、という側面が大きいっぽいね。

 アンジェラは既に、既に千近いブラックリスト入りのカス共も含め、殆どのアブノマの管理情報をそらんじることができる。

 

 そしてその知識は、間違いなく反復を旅する糧となっていた。

 主にアンジェラの管理の腕前的な意味でね。

 

 

 

 で、だ。

 そんな俺とアンジェラの労働環境に対して、管理人Xの管理は、かなりのイージーモード。

 

 なにせ極一部の例外を除いて、いつでも時止め、倍速、やり直し、強くてニューゲームが可能なのだ。

 前世でそれやってた身から言うのもなんだが、だいぶズルだよズル。羨ましい。

 

 

 

 これまではセフィラがチーム単位で管理していたため、どうしても情報伝達によりロスが発生していた。時間もそうだが、内容もだ。

 

 アブノマが脱走した、ナンバーが何々、名称が何々、これこれこう言うことに注意してくれ……なんて伝える数秒の内に、職員はぼこぼこ死んだり狂ったりするし。

 口頭での伝達ではどうしても情報の欠落や誤解が生じ、ディスコミュニケーションの結果、とんでもねえ事故が起こったりもする。

 

 それが指揮系統の一本化により、解消される。

 この時点で既にめちゃくちゃありがたい。羨ましい限りだ。

 

 

 

 更に言うと、それぞれ特徴的(オブラートに包んだ言い方)なセフィラたちは、それぞれ向いている方向性が大きく違うので、方針のすれ違い等によって連携が取れないことも多い。

 

 マルクトはトチるし、イェパイは冷たいし、ホドは焦るし、ネツァクはやる気ないし、ゲブラーはアブノマスレイヤー、ビナーは愉悦癖だもんに。

 

 もしアブノマを取り逃がして別チームに処理でもしてもらおうものなら、秘書AIからの冷淡な(フリをした)叱責と、その部署のセフィラからの大いなる皮肉(一部例外あり)と、雑魚からのちっぽけな慰めだけを得ることになるだろう。

 

 そんな風にセフィラたちの仲も冷え付きまくっているので、複数チームと協調して鎮圧作戦を行うなんて、俺たち処理チームと、それから中央本部&福祉チームくらいしかできないのが現状だ。

 

 こんなんじゃロボトミーコーポレーションじゃなくて、ギスギスーコミュニケーションだよ~><

 

 勿論これも、指揮系統の統一によって解消!

 やりたい放題かよ。

 

 

 

 もっと言えば管理人は、R社の群れの投入も可能だ。

 

 懲戒チームまで行かないと解放されない、エネルギーを一定量譲渡するという縛りこそあるが……。

 E.G.Oが揃っていない状況下でも、ある程度以上のアブノマ鎮圧が行えるのだ。

 いざという時頼れる兵力があるのはめちゃくちゃデカい。

 

 その上、この世界のXに限って言えば、R社的なノリで俺たち処理チームの運用も可能だからな。

 こっちもエネルギー消費のデメリットこそあるが、DAY 1から運用可能なウサギチームみたいなもんだ。

 もし原作にこれがあれば、どれだけ管理が楽になったことか。

 

 俺もしっかり職員を鍛えるつもりなので、WAW級のアブノマ程度なら単騎鎮圧も可能だし……。

 俺が直々に出るとなれば、あの激ヤバ道化師以外なら、問題なく鎮圧できるしね。

 

 

 

 そして、何より。

 

 失敗すれば簡単にやり直せる。

 俺たちのように1からではなく、その日の初めから、あるいはE.G.Oや観測状況を引き継いだ状態で、だ。

 

 俺たちがやってたノーコンティニューなハードコアとは、そもそもゲーム性が違うのである。

 

 

 

 

 そんなわけで。

 

 俺とアンジェラがどうにかこうにか管理をこなす一方。

 管理人X到着後は、俯瞰的な状況確認も可能になるため、情報や時間のロスが発生しないし。

 セフィラたちからXへと職員の管理権限が移され、複数チームによる合同作戦や他チーム職員に作業させることが可能。

 R社や処理チームも使うことができ、E.G.Oが揃ってなくてもなんとかなる。

 アンジェラが情報統括のために各セフィラに話を聞いたり、俺が彼らの折衝をしながら鎮圧補助したりする必要もなくなり。

 果てには、上手くいかなければ無限にコンティニューが可能なのだ。

 

 これだけ揃えば、どれだけ管理が楽になることか。

 

 もう最初からいてくれよX。

 俺たち、このままじゃ過労死してまた転生しちゃうよ;;

 

 あ、もう転生してたわw しかも3,000回以上。

 

 

 

 

 

 

 ……しかし、勿論。

 

 それらが「簡単」と言えるのはあくまで、極めて高い能力を持ち、事を為す覚悟を固めたアンジェラの目から見れば、の話。

 

 管理人Xの視点からは、全く別の答えが返ってくるだろうが。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 あまり彼女の心を乱すようなことは言いたくはないが……。

 無駄な期待は避けさせた方が、彼女のためだろう。

 

 俺は重い唇を、無理に震わせた。

 

「残念ながら、管理人が上手く仕事をこなせるとは限らないよ。

 勿論、不真面目にやるって意味ではなく……アイツ、繊細だからなぁ」

 

 俺の言葉にちょっと不安になったらしいアンジェラを強めに抱き締め、頭を撫でる。

 そうすれば、彼女の琥珀の瞳はとろんと蕩け、籠った緊張が息と共に「ほう」と吐き出されて、俺の背に回されていた腕には力が籠った。

 

 

 

『わ、私のコナーが! ベッドで! 他の女と抱き合ってる!!!』

『あなたと主の娘という話だったのでは……?』

 

 最近恒例になってる添い寝だろうがよ。いい加減見慣れろ。

 

 いつだったか、アンジェラが「コナーと一緒にいた方がよく眠れる」と言い出して以来、夜は箱から人の体に移り、彼女と一緒に寝る……というか寝かしつけるのが恒例になっていた。

 

 本日も本日とて、ベッドの中でぎゅうっと抱き着いて来るアンジェラを、なでなであやしているわけだ。

 

 うーん、これは紛うことなき育児。

 まあ子供は大好きなんで、俺としちゃむしろ楽しいんだけどね。

 

 

 

『じゃあコナーはアンジェラに「女」を感じないのね!?』

 

 ……まあ、ぶっちゃけ言うと……うん。

 そこは、アレではあるんだが。

 

 アンジェラ、どちゃくそ美人だし、見た目は成人女性だし、柔らかい笑顔浮かべてくれるし、どことは言わないがビビるくらい大きいし。

 割と俺の趣味に合致する容姿なんで、うん、何も感じないと言えば噓になる。

 

『(脳が爆発するイメージ映像)』

『あの、主にグロテスクな映像を送り付けるのやめてくださいね、カルメン。

 主に害を及ぼすなら、いくらあなたでも普通に斬りますよ』

 

 だからってそれを表に出しもしないし、求める気も毛頭ないけどな。

 

 アンジェラは……少しずつ情緒を成長させてると言っても、まだ子供なんだ。

 こうして大人の介助を経て育っていく、謂わば種に過ぎない。

 実を味わうってんならともかく、種を貪り食うとか、趣味が悪すぎるってものだろう。

 

『育てて食べるつもりなの!?!?』

 

 お前そういう発想しか出てこないの!?

 子供はすくすく育てばいいって話をしてるんだけど今!!

 

 

 

「コナー?」

 

 ふと視線を下げれば、アンジェラがどこか不安……いいや、不満げな目でこちらを見ていた。

 

「ん? ああ、ごめん。ちょっと話してた」

「……正義の騎士と?」

「うん」

 

 頷くと、彼女はむっと唇を結ぶ。

 あらかわいい。

 

「…………ねえ、コナー。私といるんだから、私を見てちょうだい。

 言ったじゃない、ずっと私を見てくれるって」

「ごめんごめん、気を付けるね」

 

 ぷくっと嫉妬する子供の髪を梳き、撫で回し、存分に撫でて甘やかす。

 失敗失敗。日中強いストレスに襲われるアンジェラだ、ちゃんと気を遣ってあげなきゃな。

 

 

 

 ……願わくば。

 Xがこのまま無事に事を遂げ、これ以上彼女が苦しまずに済めばいいのだが。

 

「急ぐことないし、ゆっくり様子を見ていようか。

 あのXが……全然アインらしくない根明Xが、どこまで事を為せるかをさ」

 

 

 







 2周目を開始するとDAY 1でアンジェラに管理権限を返すことができるようになり、鬼のようなハードモードが始まって、実は1周目はイージーモードだったことがわかるヤツ。



(Limbus近況報告)

 定期健診のネタバレ注意です。



 ホーエンハイムとかいう男に狂わされました。
 一見人の心の無い昼行燈のように見えて、「私がやったのは思い出に刻むことだけだ」等と言いながら、滂沱の涙を流し、両手の指が血に染まるまで瓦礫をかき分け続けた男。
 控えめに言って最高すぎるだろお前。そりゃあ部下に慕われますわ、理想の上司すぎる。
 お願いなんで今後も時々出てきてください。また会いたいです。3日に1回くらい定期健診やりましょう。俺やれます。やらせてください。
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