3級フィクサーパンチ   作:アリマリア

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 今回は煉獄の煉獄たる要素が出る回なので、お気を付けください。
 端的に言うとエグい&グロいです。久々のプロムン仕草タグ回収とも言う。





沈黙の階下

 

 

 

-反復11,900回目-

 

 

 

 反復回数もついに5桁を越えてしばらく。

 女王もすっかり処理チームに馴染み、俺たちは今日も今日とて、反復の日々を繰り返していた。

 

 で……だ。

 今回の議題は、この反復の中で発生してしまう、アンジェラの精神的な擦り減りについてである。

 

 

 

 流石に10,000回もループしていると、起こるイベントや事件、事故の類にも慣れて来る。

 いや、俺はまだ「慣れる」程度で済んでるけど……アンジェラはもう、飽きて来るんだろうな。

 セフィラたちの苦悩や苦痛を見ても、「またか」と言わんばかりの溜め息を吐くようになった。

 

 冷たいとは思うけど、しかしこればっかりはしゃーないだろう。

 だって俺とアンジェラは、これまでにそういう困難を、数えきれない程解決してきた。

 でも、たとえ何百回解決したって、問答無用で遡ってなかったことになる。

 そしてその全てを、アンジェラは忘れることもできないのだ。そりゃあ嫌気も差すってもので。

 

 ……いやまあ俺も俺で、カルメンが記憶をデータ化、アーカイブ保存してくれてるので、実質的には忘れることがなくなってるんだが。

 それでも、いつも頭の中に入ってるわけではないので、思い出そうとしない限りはある程度の新鮮さを保った状態でいられる。

 なので、精神的にはアンジェラよりだいぶマシでいられるわけだ。

 

 更に、追加して言えば。

 いくら飽きたって、人が苦しんでる姿を見るのは、辛いもの。

 俺もアンジェラも、どれだけ飽きようと、心に小さな傷が広がるのは避けられない。

 

 マルクトの菲才が故の嘆きを、イェソドの不均等への膿んだ感情を、ホドの自罰と半端な模倣を、ネツァクの目的の喪失を、ゲブラーの底知れぬ憤怒を前に……。

 アンジェラは、まぶたを下ろして少しでも記憶する量を減らすことで、自らの心を守ろうとしているようだった。

 

 心を壊さないための防衛反応、なんらおかしいことのない正常な人の心の動きだ。

 ……そんなことにも内心で罪悪感を抱えてるんだから、アンジェラは本当に善い子だと思う。

 善い子だからこそ、傷付くんだが。

 

 

 

 ただ……原作に比べれば、多少なりとも状況が好転しているのも事実だろう。

 

 クソ可愛いガキことティファレトに対しては、親しくまではできないものの、あくまで中立的な立場を保っての付き合いができているし。

 ズッ友大親友のエリート☆ケセドは、なんとなく事情を察したか、少しだけアンジェラに寄り添った物言いをしてくれることも多い。

 

 たまにではあるが、反復を擲って彼ら彼女らと友だちとして話すこともあって……その時は、アンジェラもちょっと笑顔を浮かべてくれる。

 

 

 

 あとは、ビナーも……多分、気にかけてくれてるんだろうな。

 言い回しは相変わらず難解で、アンジェラすら混乱させているが。

 

 まあその度、対価と言わんばかりに、俺を揶揄ってきたり、茶会に参加させてきたりして、ニヤニヤと愉しまれているわけだが……。

 そこに関しちゃ俺も、思慮深いビナーとの会話を通して、自身の精神状態を整理したり見つめ直したりしているので、持ちつ持たれつみたいなとこある。

 

 ちなみに騎士と女王は、未だにビナーをバチクソ警戒しており、俺が茶会に参加する度に同席して、剣先を向けたり犬歯剥き出しに警戒したりしている。

 ビナーはそれを見てむしろ楽しそうにしてるので、コイツホント無敵だわ。良い空気ばっか吸ってる。

 これが元調律者の頭脳を活かしたポジショニングですか、参考にしたいものですね。

 

 

 

 更に言うと。

 疑似的にとはいえ、俺が同じように反復を繰り返しているのも、アンジェラの精神にとって多少のプラスになっているはずだ。

 

 彼女に比べれば、感じている苦痛は10万分の1に過ぎないが……。

 それでも同じ記憶を、失敗と成功の経験を、そして飽きと慣れの感覚を共有しているのは大きい。

 

 本来の彼女がその心に沈め、見ないフリをするしかなかった沈殿を、俺は引き出して吐き出させることができるし……。

 これまでに見たことのない、新鮮なボケとツッコミをお届けもできるからな。

 任せろ、Lobotomyのコメディリリーフ枠として活躍してやるぜ! 将来の夢はお笑い芸人。

 

 

 

 更にこの反復の旅に、最近は女王と騎士が加わった。

 

 騎士はこれまでの反復では、後方直立騎士面で、俺たちを静観していることが多かったんだが……。

 行動力爆発なやんちゃガールこと女王はそうではない。

 

 暇を持て余した彼女は、「私も何か案とか出せるかもしれないし、いいでしょ?」と、反復開始時の反復会議にも参加してくれているのだ。

 

 とはいえ、女王が会議で有益な意見や案を述べるかと言えば、それは否。

 彼女は小難しいことを考えるのは苦手なタイプであり、それは俺や騎士の担当領分。

 主に沈みこむアンジェラを慰めたり、合間合間で楽しい話をしたりと、メンタルケアに重きを置いてくれている状況である。

 

 ま、それはそれでめちゃくちゃ有難いんだけどね!

 おかげでアンジェラも、おっかなびっくりではあれど、女王と仲良くしてるし。

 

 アンジェラは辛い境遇の中で、歪な成長を強いられているが……。

 その精神年齢は未だ、幼い少女のそれと言っていいものだ。

 ある意味、初めてできた同年代の友だちのように感じているのかもしれないな。仲良くするんですよ?

 

 ……まあその結果、最近の反復会議はもはや名ばかりで、女王が考えた遊びをしたり、アンジェラの愚痴を聞く場と化した、という弊害もあるが。

 

 流石に10,000回も反復すれば、大体の改善点は話し尽くしているし、「今回はこうだったから次回からはこうしようね」くらいしか言うことがないんだよね最近。

 そろそろお楽しみ会とかに改名すべきなのかもしれん。

 

 

 

 そんな調子で。

 俺たちは、アンジェラの精神にかかる負荷を、多少は軽減できていると思う。

 

 少なくとも、誰一人として味方がいない孤独の中、ただ冷徹な機械の役割を演じるしかなく、自然な笑い方も忘れてしまっていた原作と比べれば、ずっと。

 

 なにせ彼女は今でも、俺たちの前でだけは、楽し気な笑みを見せてくれることもあるんだから。

 

『私たちはっていうか、主くんの前でだけはね!』

『主が去ると、アンジェラはいつもまぶたを閉じていますよ』

『騎士ちゃんとか女王ちゃんを信じてるのも、あくまでコナーを通してだしねぇ』

 

 そこまで信じて貰えてるのを、嬉しく思えばいいか、危ぶめばいいか、難しいところねぇ。

 俺としちゃ、もっと交友範囲とか信頼関係を広げてもらいたいもんだが。

 

 

 

 ……ただ。

 

 だからといって、彼女の精神にかかる負荷がゼロになったわけでもなく。

 その全てを俺たちが癒せるわけでも、またない。

 

 アンジェラは今も、少しずつ、少しずつ……しかし、確実に。

 その精神に、陰りを落としていっているのだ。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 そして。

 

 彼女の精神に瑕を残すイベントの筆頭が、目の前のこれだ。

 

 

 

「これが最後です。

 これは、あなたが必ず知らなければならない事実です。

 ……真実を知るのが辛いことは理解します。

 私も、辛いです。長年積み上げて来た砂の城を、自分の手で崩そうとしているに等しいのですから。

 単に辛く苦しいだけでなく、今までの全ての時間と犠牲が無為になるのですから。

 それでも私は、こうしてまでも間違いを正したい。

 ……きっとあの人なら、あなたの頬を張り、この道を選ぶと思うのです」

 

 暗闇の中、男の声がした。

 ただ一人、何か月もの間この暗闇に潜み、雌伏の時を過ごしていた者の声だ。

 

 そして今この時、彼の計画は最終段階に入っていた。

 あとは彼の慕う恩師に然るべき言葉を告げ、その手を引いて煉獄から逃げ出すだけ。

 

「あなたに告げる、最後の真実は──」

 

 

 

 ……だが、その目的が成就することはない。

 

 それらも全て、Aの書き上げたシナリオの一部であるが故に。

 

 

 

 通信機に向かって語りかけていた男の声に被せるように。

 アンジェラは、台本通りに口を開く。

 

「『あなたはこれから、記憶をなくしたまま無限に繰り返すことになります。取り返しがつかなくなる前に、一緒にここから逃げましょう』……と。

 そう、言いたかったみたいですね」

 

 ビクリと、暗い部屋の隅で、男の体が震えた。

 

 

 

 L社地下本部、将来設計チームとなる、今はがらんどうのフロア。

 あのクッソ高ぇ帳幕でも使ったのか、その存在を隠蔽し、ここまで生き永らえて来た者がいた。

 

 一度は袂を分かちながらも、自らの敬愛する人を救わんと、この煉獄の中にまで侵入し……。

 しかし、それすらも計画に入れていたAによって、時間の牢獄に囚われた男。

 

 白い短髪に緑の目、眼鏡がトレードマークの、俺もよく知る好青年だ。

 

 ……いや、今の彼を好青年とは表現できないだろうな。

 緑の瞳の底には、目的のためには手段を選ばないのだろう、冷徹な光があり。

 その細くなった指からは、明らかに……直接間接問わず、多くの血を浴びた気配がしたから。

 

 

 

「ベンジャミン。残念です、このような形で再会することになるなんて」

 

 彼の名は、ベンジャミン。

 

 L旧研において、アインの補佐を務めていた天才科学者だった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 L旧研において、俺は殆どのメンバーと交友を深めていたが……。

 ベンジャミンだけは例外、そこまで積極的に仲良くなろうとはしていなかった。

 

 理由は単純で、その必要がなかったからだ。

 

 

 

 この男はとんでもねえアインキチであり、思考の大半がアインを基準としている。

 

 なにせアインを手伝うべく研究所に来て、光の種シナリオでアインが傷つくことを許容できずその元を去り、しかしアインを救うべくこんな煉獄に巻き込まれた男だ。

 なんでそんな易々と他人のために人生投げ出してんのコイツ。もはやラブだろ。ベン×アイてぇてぇ。

 

 アインを信奉する限り、ベンジャミンは狂うこともなく、弱ることもない。

 いや、ある意味とっくにアインに狂ってんだろうけど、それはともかく。

 

 

 

 ベンジャミンは、アインの精神と思想の両方が破綻するまで、絶対に壊れない。

 先に相方を倒さないと死なないタイプのギミックボスみてえだなコイツな。

 

 で、一方アインは狂気に落ちることはあっても、絶対に破綻はしない。

 SAN値が1まで減っても、絶対に0にはならないストッパーがかかるようなもんだ。

 

 結論:ベンジャミンは不沈要塞。

 

 強靭!! 無敵!! 最強!!

 流石は狂気的な崇拝だけでセフィラ化の負荷に耐え抜いた男だ。

 ビナーお前、俺なんかに目を付けるよりコイツに目ぇ付けた方が良いよ。このイカれた狂信、多分調律者か凝視者向きだろ。

 

 

 

 そんな訳で、ベンジャミンにはおおよそメンタルケアが必要ない。

 

 放っておいても何も問題ないし、その分のリソースを他のメンバー──特に気の弱いミシェルや暴走しがちなエリヤ──に注いだ方がいいだろう。

 

 そう判断した俺は、ベンジャミンのことはほぼ完全にアインに任せ、他のメンバーのメンタルケアを優先していたわけだが……。

 

 ……だからと言って。

 コイツに対して、何も思わないわけじゃない。

 

 

 

 もうしばらく前のことのようにも感じるが……。

 ベンジャミンは、俺の古巣である、L旧研の仲間の一人だもの。

 

 横に並んで苦節を味わい、苦悩に溺れ、そして達成を共にしてきた仲だ。

 アホみたいな話をして苦笑されたことも、アインについての話で盛り上がったことも、一度や二度じゃない。

 

 だから、まあ……。

 

 

 

 

 

 

 そんな奴をこの手で斬るとなれば、当然、思うところはある。

 

 

 

 ……流石にもう、慣れちゃったけどね。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 コツ、コツ、コツ。

 暗がりの設計チームに、2人分の足音が響く。

 

 俺の一歩先を歩きながら、恐らくまぶたを閉ざしているんだろうアンジェラが、淡々と告げる。

 

「あなたが隠れている場所を見つけるのは、そう難しいことではありませんでした。

 ただ……あなたが敬愛してやまない管理人に、最後の挨拶くらいはさせてあげるのが、せめてもの手向けと思いまして」

 

 この場所で、この話をした回数は、既に両手の数では数えられない。

 今更そこに、ためらいも、ミスも、発生するわけがない。

 

 ……けれど。

 

 

 

「……アンジェラ」

「…………」

 

 慣れは、必ずしも、苦痛を摩耗させ切るとは限らない。

 

 彼の呻くような声に、一瞬、アンジェラが言葉に詰まる。

 その空白は、台本に記されたものではなかった。

 

 その隙に、男の緑の瞳は、俺のことまで捉える。

 

「それに、そちらは……やはり、コナーさんですね」

「全く、よくわかるもんだ。こんなグロい箱の姿なのにね」

「……アンジェラの隣に立つ者がいるとしたら、あなたではないかと思っていました。

 きっと、あなたなら……僕も先生も選ばなかったその道を、選んでくれると」

「…………そ」

 

 

 

 あー、駄目だ。

 何回聞いてもイラッとくる。

 

 なんだよそれ。

 誰かに託すくらいなら、自分がちゃんと寄り添ってやりゃあ良いだろうが。

 

 お前は、アンジェラに信頼されてたのに。

 ……今だってきっと、お前から手を伸ばされることを、期待してるのにさ。

 

 

 

 それでも、ベンジャミンの視線には、混乱と警戒、それから哀しみ、僅かな安堵ばかりが窺えて。

 その緑の瞳の中に焼き付いているのは、ただ一人の男の背中だけなんだろう。

 

 真面目なアンジェラもまた、ただ一人の親であるアインから渡された台本から、踏み出すことはない。

 自らの心を抑圧し、ただ淡々と、シナリオのために為すべきことを為す。

 

 ……彼と彼女の間には、一本の線が引かれていた。

 それは決して、床のタイルの境だけじゃないんだろう。

 

 

 

「……あなたが私の名を呼ぶと、まるで私が演劇の悲劇のヒロインになったようですね」

 

 そんなことを感じているわけもないのに、彼女はただ、作業的に言葉を諳んじた。

 演じるようにわざとらしく、冗談っぽく。

 

「言い訳に聞こえるかもしれませんが、これだけは知っておいてください。

 私は悪意を持ってあなたに害を加えるのではありません。

 全ては、最初の命令に基づいて行われます。

 ……台本に逆らい、舞台を乱す行為だけは、決して容認されないのです」

 

 この無間の煉獄を終わらせるためには、シナリオを完遂しなければならない。

 アインが悟りを得て、都市に撒く光に指向性を与えるため、その中に溶ける……。

 その時を迎えるまで、アンジェラは目的を達成できず、自由も与えられない。

 

 ベンジャミンがアインをここから逃がしてしまえば、それは決して叶わなくなり、シナリオエラーと共に舞台は最初から始まるだろう。

 

 ベンジャミンへの想いで、刃を鈍らせていては……。

 永遠に、この先に進むことはできない。

 

 

 

 その言葉を聞いて、あるいは、その言葉の裏に隠された感情を悟って。

 彼の瞳にあった憐憫の感情が、一気に肥大化する。

 

「そこまでしながら、君は平気なのかい?

 僕は、君を造った人間の一人だけど……それ以上に、『君』についてよく知ってる。

 君は他の機械とは違う。確かな人間の心を持っているはずなのに……」

「……そのような些末な疑問に、お答えする義務はありません」

 

 大丈夫じゃない人間に「大丈夫か」なんて言っても、意味ないだろ。

 大丈夫じゃなくても、頑張らなきゃいけない、やらなきゃいけない理由があってやってんだよ。

 

 今お前がすべきは、孤独なアンジェラをせめて抱きしめてやる、ただそれだけだ。

 

 ……でも、それができないんだろうな、お前には。

 

 今も、なんとかアインを……Aを救うことだけを考えている、お前には。

 

 

 

「恐れる必要はありません、ベンジャミン。

 あなたが会いたかった人たちは、ずっとここで、あなたを待っていました。

 あなたは、このようにみすぼらしく隠れ生きるには、あまりにも惜しい人材。

 故にあなたは、この舞台を終幕へと導く役者に選ばれました。

 ……さかしまに、あなたが舞台を終わらせない限りは、これからもずっと、あなたの愛した人たちと一緒にいられますよ」

 

 

 

 その言葉が、合図だった。

 

 彼女が最後の一音節を唱えると同時、俺は踏み出す。

 

 

 

 今この左手に握るのは、誇りある騎士の剣ではない。

 

 使い古し、血に塗れた、愛用の得物……「赤」。

 

 

 

 震えを殺して、ただ足を進め、抵抗させる暇も与えず。

 

 俺はその刃先を、彼の首に押し入れ、走らせた。

 

 

 

 不快な感覚と、気色悪い音。

 

 ほんの一瞬の交差で、俺は。

 

 

 

 旧い仲間の命を、また一つ、この手で終わらせた。

 

 

 

「……ごめんなさい、コナーさん、アンジェラ」

 

 

 

 幾度となく聞いた、何の意味もなさない、謝罪の言葉に続いて。

 

 どさりと。

 命が崩れ落ちる音が、空っぽの部屋に響く。

 

 

 

 ……あー、吐きそう。

 

 まあでも、エラにこれをやらせるよりは、ずっとマシだわな。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ベンジャミンの頭を現状保存容器に詰めて、俺は一息吐く。

 

「……今回も、終わったな。お疲れ様、エラ」

 

 努めて冷静に、万一にも声が震えないよう、背後の彼女にそう声をかけ……。

 

 直後。

 

「うおっ、と」

 

 タックルにも等しい勢いで、抱き着かれた。

 ぎゅうっと、かなり強い力で、決して離さないと言わんばかりに、腰が締め付けられる。

 

 

 

「……エラ」

「ごめんなさい……また、こんなことをさせて、ごめんなさい……。

 でも、コナー、お願いだから、私を離れないで、私の傍にいて。

 もう、駄目なの。あなたまでいなくなってしまったら、もう、私は……!!」

「…………」

 

 ……アンジェラにとって、アインが唯一の親であるならば。

 ベンジャミンは、唯一の理解者だった。

 

 ただ一人、彼女に人の心を認めてくれた人。

 ただ一人、アンジェラという個人を理解してくれた人。

 

 そんな人との別離は、そんな人の殺害は……。

 たとえ自分で手を下していなかろうと、どうしたって彼女の心に瑕を残してしまうのだろう。

 

 

 

 そんな彼女に、親しい人がしてやれることは一つ。

 アイツがやらないのなら、その役は俺が担うべきだろう。

 

「エラ、離して」

「嫌っ、コナー……!」

「違うよ。大丈夫だから、ね、エラ」

 

 言い聞かせるように穏やかに口にすれば、アンジェラはおずおずと、俺の腹に回した手を解いてくれた。

 

 解放された俺は、容器をそこに置いて、振り返り……。

 琥珀の瞳を涙に塗らす彼女の頭に片手を置き、もう片方の手はその背に回す。

 

「っ……コナー、コナーっ!!」

「大丈夫、俺はここにいるよ。今も未来も変わらない。

 だから、大丈夫……大丈夫だ」

 

 ぎゅっと締め付けられるのと同じくらいに強く、その体を抱きしめる。

 

 ……いっそ痛いくらいのこの力が、彼女から少しでも、孤独の冷たさを奪い去りますように。

 

 

 

 

 

 

 ……その後。

 

「私もやる~~~!!」

「じょっ、女王! 待ちなさい、今は主が……!」

「え~、でも、こういうのっていっぱいいた方が嬉しいでしょ?

 主くん、アンジェラちゃんっ、私も一緒にいるからねっ! 仲良しのぎゅーっ☆」

「あ、わ、私も……その、一緒におりますので! お忘れなく!」

 

 バタバタと乗り込んで来た、元魔法少女2人組も加えて、まさかの4人ハグをすることになった。

 俺とアンジェラを中心とし、女王と騎士がその上から、がばーっと抱き着くスタイルだ。

 

 

 

 アンジェラは、思わぬ展開に驚きつつも……。

 

「……ふふっ。

 ああ、ありがとう。とっても、温かい……」

 

 そう言って、少しだけ背に回した手の力と、結んだ唇を緩めてくれた。

 

 

 

 ……ありがとね、2人とも。

 

『ううん! 私は私のやりたいことをしてるだけだも〜ん!』

『……この子にも、そして勿論、主にも。

 いつか、幸せになってほしいと、心より願っております』

 

 

 










(Limbus近況報告)

 サンチョ、俺良いアイデアが思い浮かんだ。
 鏡Hardと鉄道1号線が解放される8章までさっさと駆け抜けるんだ。

 というか鏡hardができないと投影度上げが拷問すぎる。
 拷問すぎると言いながら97まで来ちゃったので、今更ではあるけど。

 8章はH社かぁ。全面壁で覆ってる辺り、すごい独特な区域だなという感想です。
 しかし記憶違いでなければ、L旧研に来る直前にガリオンが☆調律☆して砂漠にティーテーブルおっ立ててたのがH社の巣だったと思うんですが、あの時は背景が青空だったんですよね。
 もしかしてあのタイミングで旧H社は没落して、新H社になってたりするのかしら? それで全面壁で覆ったとかそんな感じ?

 果たして受け流し特化メンタルつよつよ系美青年ことンル(恐らく作者しか使ってない激キショあだ名)の正体は如何に。
 恐らく都市の闇に呑まれて心を閉ざしていると思われるが……。
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