3級フィクサーパンチ   作:アリマリア

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 コイツいっつも脳破壊されてんな。





私の脳が爆発する時間ですね。 良い反復でした。

 

 

 

 

-反復34,935回目-

 

 

 

 現在ダァトこと俺には、大きく分けて2つのミッションが与えられている。

 

 1、アンジェラの精神状態を可能な限り取り持ちつつ、シナリオを完遂して舞台を終わらせる。

 2、騎士と女王の友だちたる、魔法少女族アブノマを良い感じに再度善堕ちさせる。

 

 1に関しては、アンジェラやカルメン、騎士に女王と一緒に、長期的にやっていくしかないとして。

 2に関しては、俺が自分から、積極的に取り組むべきことだ。

 

 そんなわけで、いよいよ反復も35,000周に迫り、体感にしても4~5年くらい経った頃合い。

 俺は今日も今日とて、魔法少女族の一人……貪欲の王に接触を図ることにした。

 

 まあ接触って言っても、今のところ、彼女とまともにコミュニケーションを取れた試しはないわけだけどね!

 どうすればええんやホンマ。

 

 

 

「ホド~、お邪魔するよ~」

 

 今回の反復で貪欲の王が収容されたのは、教育チーム。

 

 俺が通りがかりの担当セフィラ、ホドに片手を挙げて挨拶すると。

 彼女はアホ毛アンテナをピンと立たせ──このアンテナ、なんとホドの感情と同期して勝手に動くらしい──、どこか緊張気味に応えた。

 

「あっ、ダァト……うん、どうぞ! お手伝い? それとも何かの連絡かな?」

 

 彼女の言葉の緊張や友愛の裏には……微かな、棘が生えていた。

 

 

 

 ホドは、L旧研のミシェルから続くセフィラだ。

 

 ミシェルは元々、おどおどとした、引っ込み思案なタイプの少女だったはずが……。

 ホドになった彼女は結構明るいというか、積極的に頑張ってる感じ。

 

 理由こそ、あまり健全なものではないかもしれないが……その行動自体は、とても立派なものだと思う。

 俺としちゃあ、むしろ応援したいまであるね。

 まあ、行き過ぎちゃう時もあるので、やっぱりXの手で一旦落ち着かせる必要性はあるだろうけど。

 

 ……まあそもそも、俺はホド本人……本AI? から避けられてるっぽいし、コア抑制までは過干渉する気はないけどね。

 今日もあくまで、貪欲の王の作業のために訪れた形だし。

 

 

 

「アンジェラからの指示でね。貪欲の王に作業しろってさ」

「……そうなんだ。アンジェラさんの指示……わかった、案内するね」

「ありがと、助かるよ。……あ、そう言えばローザの調子はどう?

 この前試練で死にかけてたのを助けたんだけども、元気か?」

「…………うん、元気だよ」

「そか。まあ、ひとまず良かった~」

 

 全然良くないわ。

 なんで職員助かったのにそんな病んだような顔すんのよ。

 

 ……こりゃあやっぱり、原作とはまた違う形で、良い人になりたいスイッチ入っちゃってるなぁ。

 

 

 

 コア抑制の時の言動を見るに。

 ホドは微かに残った印象的な記憶を元に、かつての俺=コナーを理想の「良い人」像に当てはめ、目指そうとしてくれてるっぽいんだけど……。

 

 俺の人の体も知らなければ、かつての記憶も明確には残ってない彼女は、ダァト=コナーという認識がない。

 

 そのためコナーでない俺が人を助けたりすると、「なんで私じゃなくてあなたが」と、嫉妬とか羨望とかが混ざった、悪い意味で熱い視線を向けて来るのだ。

 

 いやー、こりゃもうあかんね。

 あの頃の、バチクソ塞ぎ込んだカルメン以上に手の付けようがない。

 もはや敵対にも近い感情持たれてんだもん、どうしようもないわ。

 

 というわけで、ホドは抑制が終わるまでは処置なし状態。

 今回のXもホドコア抑制、しっかりこなしてくれるといいね☆

 

 なお今のところのホド抑制率は、なんと驚きの2%未満。

 Xさん心弱すぎてワロタァ!

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ……さて。

 何はともあれ、今は貪欲の王だ。

 

 俺はホドに案内された先、彼女が収められた収容室に入った。

 

 いつも通りの無機質な部屋の中には、どこかで見た絵画のような柄の付いた、大きな琥珀があり。

 その中には、白髪に褐色肌、煌びやかな黄金のドレスに身を包んだ女性が、幸せそうな表情で閉じ込められている。

 

 これが、O-01-64。

 危険度WAWクラス、貪欲の王。

 

 魔法少女族の一人、ダイヤ担当の子だ。

 

 

 

 この子は他の魔法少女族とは違い、琥珀の中に封印された状態で収容されている。

 それも、騎士たちの話が正しければ、誰かに封印されたというわけではなく、自己封印なんだとか。

 

 貪欲に落ちた魔法少女は、どこまでも欲望に忠実に、全てを喰らい、呑み込み、終わらせかけ……。

 しかし、彼女に残された最後の矜持が、自身を魔法によって封印せしめた。

 

 欲望が満たされ幸福を得る夢の中で、彼女は永遠に微睡んでいる。

 その夢が醒めた時、彼女は改めて、眩い幸福への欲望を以て世界を喰らい始めるのだ。

 

 

 

 ……つまりはこの子、収容=睡眠であり、起床=脱走&暴走だ。

 

 ずっとすやすやしている貪欲の王とは、コミュニケーションを取る手段がない。

 なので、今のところこの子との接触は、騎士たちと一緒に、琥珀の前で雑談するくらいのものだ。

 

 ぶっちゃけ騎士とか女王、従者以上にどうしていいかわからんわ、この子。

 話すことができればメンタルケアもできようものだが、半ば敵対状態なホドと同じく、対話そのものを拒否られてしまうとどうしようもない。

 

 騎士ちゃんの言う「救い」ってヤツ、こんなことの繰り返しで与えられんのかね?

 

 

 

 さて今日はどうしよっかね~と悩んでいた俺の背後。

 白い光が溢れ、そこからぴょこっと愛の女王が現れる。

 

「あなたへの愛で、颯爽登場っ!」

「やあ女王! 僕はダァトだ!」

「知ってる~! 毎回言ってるよね、それ?」

「お決まりの挨拶みたいなもんなんでね」

 

 楽しそうにニコニコしてる女王に、俺は軽く箱の体をゆすった。

 

 

 

 魔法少女族は、俺と繋がっている元魔法少女な2人が近くにいると、より繋がりやすくなるらしい。

 そのためこれまでも、騎士に付き添ってもらい、一緒に話をしたりしていたのだが……。

 

 女王が処理チームに加入してからは、どちらがこれを担当するかで結構揉めた。

 2人共来てもらうと虚無イベントが怖いので、片方は残ってもらうことにしたのが失敗だったかもしれない。

 

 「主と最も付き合いが長く、確かな信頼関係のある私が適任でしょう」と胸を張る騎士。

 「今度は私の番! 私も主くんとお話したい! したいしたいしたーい!!」とねだる女王。

 

 2人の口論──というか、女王による駄々こね──は2時間くらい続けられ……。

 結局は、2人で持ち回りで行う、ということになったらしい。

 

 なんだかんだ、騎士は女王に優しい、というか甘い。

 

 L旧研時代のカルメンを思い出す甘やかされ方……いや、少し違うな。

 しっかり者の姉が可愛い妹を甘やしてる感じだろうか。

 

 

 

 で、前回の反復で付き添ってくれたのは騎士だったので、今回は女王というわけだ。

 

「えへへっ、主くんっ、待った?」

「今着いたとこ」

「そっか! それじゃ行こっか♡」

「行くっていうか、目的地ここだけどね」

 

 何気なく差し出された手を握ると、ぎゅっと握られ、体ごと引っ張られる。

 そのまま腕を抱かれ、俺たちは肩を寄せ合う形で収容室に座った。

 

 ……相変わらず距離感が近い! 近いってかゼロ!!

 あー良かった箱の体で。人の体だったら変に反応しちゃってたかもしれん。

 

「えっ♡ ……あ、あの、主くんなら、その、いいよ……?♡♡♡」

 

 駄目で~~~す! 今、お仕事中ゥ~~~!

 オラッ破廉恥の女王がよ! しれっと襟広げて見せるんじゃないよこのエッチが!!

 

 ……てか女王さん顔真っ赤じゃんwww

 いつも愛とか何とか言ってるのに実は初心www

 恥ずかしいのに頑張って誘惑してるの可愛いね♡

 

「なっ、い、いやそのっ……!」

『カンカンカーン!! 抜け駆けはNGよ女王ちゃん! 審判の騎士さん、判決を!』

有罪(ギルティ)! 主の活躍記録総集編part109の同時視聴会、出席を禁じます!』

「そっ、そんなぁ! ペナルティキツすぎじゃない!? 控訴! 控訴しまーす!!」

「俺の知らんところで俺の知らん活動記録の上映会が行われている。しかも結構楽しまれてる」

 

 騎士に審判枠を奪われてただの鳥になったO-02-62に悲しき過去──。

 

 

 

 そんな感じにふざけつつも、貪欲の王への作業に取り掛かる。

 

 彼女たち魔法少女組と関係性を築くには愛着作業が一番っぽいので、従者相手には世間話したりゲームしたりして時間を過ごしているのだが……。

 そういうことができないのが、貪欲の王の難点で。

 

 今回も今回とて、俺と女王、それに脳内の騎士とカルメンによる、雑談タイムが始まった。

 こんなんでいいんかと思わなくもないが、これ以外に何もしようがないからね、仕方ないね。

 

 

 

「前の反復で……なんだっけ、あのシェルター? っていうので、すごい脱走起きた時さ、あれは大変だったよね」

「ひっさびさに修羅場だったなぁアレは。銀河の子で4人くらい死ぬし、空虚な夢はバグるし、何より陰陽が速攻で合体して、それで騎士持ってかれたのがキツかった」

『アレは聞いてるだけでもひやひやしたわねぇ。ちなみにpart97に収録済みよ!』

 

 時々挟まるその報告はどの層に向けたものなん?

 

「騎士ちゃんがいなくなると、どうしても手数が足りなくなるし、主くんの加護も外れちゃうしね~。

 あ、でもでも、主くんがやられなくて本当に良かったよ! もしそうなったら、騎士ちゃんがまたすっごい怒っちゃうし!」

『女王』

「ひゃんっ、ごめん、ごめんなさいっ! やめて、背中を剣先でツンツンしないでっ!」

『もうっ、そのことはあまり言わないという約束でしょうに……』

 

 主と仰ぐ俺が自分より先に死ぬと、正義の騎士は闇堕ちして暴れ回る……ようなことはもうないのだが。

 どうやら、ブチ切れてすんごいことになるらしい。

 

 俺が再起動して戦場に戻る頃には、いつもの騎士に戻って心配そうにワープしてくるので、俺自身は見たことはないんだけど……。

 カルメンは珍しく黙るし、女王は顔面蒼白になってるし、騎士もどことなくぎこちなかったりするので、感情的になること自体は嘘じゃないっぽい。

 

 やっぱり、死ぬのは可能な限り避けるべきだろうね。

 アンジェラもすごい心配そうにするし。

 

『お恥ずかしいお話です……まだまだ私も、精神修行が足りませんね』

『まあ、コナーが時々言ってた、発狂して暴れ回ってた頃に比べるとだいぶ落ち着いたとは思うんだけど。

 ……普段冷静な子が本気で怒ってるのって、怖いわよねぇ』

「メジャーアルカナより怖いよあの時の騎士ちゃん」

「そん なに」

 

 

 

 俺からすると、騎士は怜悧な美貌を持ち、常に落ち着いて優し気なダウナー美女。

 共に戦ってきた頼れる戦友であると同時、俺の誇りを預けるに足る最高の騎士だ。

 

 そんな彼女が普段の余裕を崩し、感情的になる様というのは……。

 ……正直、ちょっと興味がないでもないよね。

 

 ていうか、ぶっちゃけ見たい。

 騎士の色んな面を見て、知っていきたい。

 なんなら戦いなんてせず、穏やかな日々を過ごしながら、互いのことゆっくり知っていきたいくらいで……。

 

 まあそんなことはシナリオが許してくれへんのやけどな! ガハハ!

 あ~あ、前々世なら余裕で結婚申し込んで、片田舎に一軒家でも建てて一緒に穏やかな生涯を送ってたんだけどなぁ……。

 クソディストピアに生まれついたもんだからよォ!

 

 いやまあ、この世界に生まれつかなかったら騎士にもカルメンにも女王にも巡り合えなかったわけで。

 そういう意味じゃ、色んなクソ要素すら加味しても、生まれて良かったとは思ってんだけどさ。

 

 

 

 ぼんやりそんなことを考えていると。

 不意に、夜空剣を通して伝わってくる声が艶めいた。

 

『あ、主……っ! その、そこまで言われてしまうと、私……!』

『コナー? ちょっと、あの、いえ、自分の心に素直に言葉を発するのはきっと正しいとは思うんだけどね?』

「主くん、それってわざとやってるの? もうっ、愛の多い人だねっ♡」

 

 ……あっやべ、思考漏れてたなこれ。

 クソっ本当にやり辛い!!

 

「…………いや……今のは違くて……」

『違う、のですか……?』

 

 騎士の声は、涙が出そうな程悲愴だった。

 いや、待って、待ってほしい。

 

「ち、違くはない……っていうか……その、隠すべき部分なので、可能であれば流してほしい、っていうか……」

『え~~~? なんだっけなんだっけ、私たちと会えたことで? この世界に生まれて良かった、って思えたんだっけ???

 あ~んもうっ、告白みたいなものじゃない! 大丈夫、私はいつでもコナーの想いを受け入れるわよ!』

「いいじゃんいいじゃんっ、主くん、私も愛してるよっ♡ ね、ね、私のことも愛してくれるよねっ♡」

 

 ぐっ、この、こっちが一線引いて自重してるのをいいことに、好き勝手言いおって……!

 最近完全に調子にお乗りになってますわね、特にカルメン!!

 

 そっちがそのつもりなら、こっちも出るとこ出るぞコラァ!!!

 

 

 

「…………あのさぁ! 正直さぁ!」

 

 俺の中から何かを切る音がした気がした。

 

 多分アレだ、堪忍袋の緒とか、しびれとか、口火とか。

 あとついでに啖呵も切るかもしれない。

 

「バチクソ美人で友達想いで性格最高な女騎士にさぁ!

 いっつも内心でめちゃくちゃ褒めちぎられたり、感謝されたりしてさぁ!!

 そんな中でさ、命懸けの戦いを共にしながら、何年も生きてたらさぁ!!!」

 

 自分がだいぶヤケクソになってるのがわかった。

 恥ずかしさの余り、次に自分が口に出す言葉をコントロールできない。

 

 なので、多分それは、ずっと底の方に封じて見ないフリをしていた、俺の本音だったんだろう。

 

「そりゃ普通に騎士のこと好きになっちゃうっていうかぁ!!!

 ライクもラブも兼ねて好きですよそりゃあ!! 文句あっか!?!?」

 

『ポキュ゜ッ(脳が爆発するイメージ)』

『あっ、主っ、私、あの、その……っ!』

「あーっ! 言った! 言っちゃった主くんっ! なあなあで流してきたのについに言っちゃった!!」

 

 

 

 一瞬で大騒ぎになった脳内に、俺も頭を抱えて叫び返す。

 

「仕方ねーだろ、俺も男なんですぅ~~~! まだまだ枯れるには早すぎるんです~~~!!

 L旧研の頃は頭に狙われてるっていう危機的状況だから抑えも利いてたけど、ここではもう4年以上同じ生活を続けてるんだぞ!? 流石に弛緩が来てるっていうかぁ!?」

 

 ぶっちゃけ、L社地下本部は、都市では有数レベルの安全な空間だ。

 いや、アブノマが暴れ回り得る時点で、安全も何もあったものではないが……。

 管理人不在の今は、それらの暴走はあくまでシナリオに沿って行われるだけ。

 想定外の襲撃が発生したりはしない。

 

 少なくとも、いつ何時どんなアクシデントが起こるかわからず、頭が攻めて来るかもしれない緊張感のあった、L旧研よりもずっと安全なのである。

 

 そんな場所にいたらさぁ!

 そりゃあねえ! 余裕も生まれるってモンですよ!!

 

「君たちは俺のことを完全超人みたいに扱ってくれてるし、その期待には応えたかったけどさぁ! 俺ってば普通に性欲もあるし下心もあるからァ!!

 異性と心で繋がってて、考えてることが大体バレるって、ホント色んな意味でアレだからね!?

 だからって騎士が嫌いとか嘘でも言いたくないしさァ!!!」

 

 ごめんねぇ期待に添えなくてさァ!!

 

 俺、普通に君たちのこと大好きだからァ!!

 本心を誤魔化して考えないようにするのも限度あるからァ!!!

 

 

 

『主よ、あの、その、わ、私も、主の……ッ……くっ、うぅ、騎士として一線を越えるわけには……!』

 

『あのねあのね、騎士ちゃん。騎士ちゃんが時々コナーのこと好き好き言ってるの、普通に剣に乗って伝わって来てるわよ。気まずくて誰もツッコまなかったけど』

 

『ッ!?!?!?』

 

「ねーねー主くんっ! せっかくだから私にも! 私にも素直な気持ち教えてよ~!

 いつもの『嫌いじゃない』とか『気に入ってる』じゃなくて、『好き』のもうちょっと先の言葉をさ、素直にね! 良い機会じゃない!?」

 

『コナー、ねえコナー? え、私のことも愛してるわよね? 一方通行とかじゃないわよねこの想い?

 いやその、好意的な情は伝わって来てるけど、友だちじゃなくて、女としても見てくれてるわよね?

 実体がなくてできないからって、遠距離恋愛みたいになって冷めたりとかしてないわよね??? 大丈夫よね???』

 

「うるせ~~~~~~~~!!!!!」

 

 

 

 俺は頭を抱えた。

 

 本当に。どうしてこうなった?

 

 俺はただ、普通に、自分らしく生きてただけだったはずだ。

 それなのに気付けば、3人の女性(内2人は脳内)に詰められている。

 

 なんなら騎士は今俺の背後に転移してきた。

 収容室のドアを塞ぐような感じで。

 まるで退路を断つかのように。

 

 ああ……。

 俺がそんな不義理を冒しただろうか?

 むしろ、できる範囲で正しいと思えることをやってきたつもりなんだが?

 

 それなのに、なんで気付けばこんな、背中を刺されかねない状況になってる?

 

 

 

『私たちの心を救ったコナーが悪いわよーコナーがー!』

 

「主くんが悪いんだよっ、この悪者めっ!♡ お仕置きしちゃうんだからっ!♡♡」

 

「主は悪くありませんがっ! その、私も……騎士であると同時、一人の女ですのでっ!!」

 

「やあ騎士! 僕はコナーあるいはダァトだ!

 落ち着いてくれ! 君たちが感じているその『感情』は精神(ソフトウェア)の一時的なエラーなんだよ!!」

 

『は? 違うわよ?』

 

「主くん、それはないよ」

 

「主よ……」

 

「ごめん今のはちょっと卑屈すぎたし、君たちの想いを無下にする言葉だった!! 俺の悪いとこ出たね今のはね、ごめんね!

 でもそれはそれとして、あのすみません一旦落ち着きませんか!? 今ここじゃなくても良くない!?

 この議題は一旦持ち帰らせていただいて、それぞれ一晩ゆっくり考える方向でいきませんか!?」

 

「駄目~! この胸の愛が溢れちゃいそうなんだもんっ! ていうか今から溢れるからねっ♡♡♡」

 

「主よ……お、お覚悟をっ!!」

 

『私も予約! 予約入れるからね! 体を取り戻したらねっ!♡♡』

 

「ここ収容室ゥ! エラも見てるゥ!!!」

 

 

 

 愛の女王と正義の騎士。

 2人のZAYINクラス(大嘘)アブノマが、俺を追い詰めるように、ジリジリと近寄ってくる。

 その目は、あのJ社の巣の夜に見たカルメンと同じように、情に爛れていた。

 

 流石に俺も立ち上がり、まるでラプトルを落ち着けるかのように中腰で手を伸ばしたまま、ジリジリと後退を強いられる。

 

 まずい、経験則で分かる!!

 

 このままでは……喰われるッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──それは偶然だったか、あるいは必然だったか。

 

 

 

 あるいは、俺たちがその部屋で、そんな大騒ぎをしたことが、最後の一押しになったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が後ずさりして近寄った、琥珀から。

 

 小さく、パキンと、亀裂が走った音が響く。

 

「ッ!」

「主っ!」

「ん?」

 

 俺が咄嗟に戦士としてのスイッチを入れ、夜空剣を抜き。

 

 騎士も女の顔から騎士の顔に戻り、俺の傍に剣を飛ばし。

 

 女王だけが、不思議そうな顔で首を傾げたその時。

 

 

 

 バキィィイイイン!!

 

 大きな炸裂音共に、背後の琥珀が、割れた。

 

 

 

 そして、その中から突き出る拳と、黄金色の手甲。

 

 咄嗟に身を躱した俺のすぐ傍を通過し、それは凄まじい速度ですっ飛んで……。

 

「あっ、王ちゃっ、ふぎゅ────!?」

 

 ぱっと歓喜の表情を浮かべた愛の女王の顔面に、綺麗に吸い込まれていった。

 

 

 

「うるせぇぇぇええええええ!!!」

 

 

 

 それは本当にごめん!!!

 

 

 







 人が穏やかに寝てる横で痴話喧嘩するのは、やめようね!
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