3級フィクサーパンチ   作:アリマリア

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 お久しぶりです。
 本編再開はもうしばらく先ですが、お待たせしている読者様のために、ちょっとしたオマケの企画をお持ちしました。
 正直需要があるか不安で最後までお出しするか迷いましたが、ご興味のある方だけお読みいただき、ない方は次章までしばしお待ちください。





余談(1)
あなたは選択しなければならない


 

 

 

-とある反復-

 

 

 

「ふんふん、ふふ~ん♪」

 

 まだ本日の業務が始まる前の早朝。

 俺の私室に、控えめながらご機嫌な鼻歌が響いた。

 

 

 

 L社地下本部に備えられたセフィラたちの私室は、恐らくはアインの計らいだろう、各種の機能性をしっかり備えている。

 ていうか、イメージ的にはもはや私室というより、賃貸マンションの一室に近いくらいだ。

 

 間取りとしては2LDといったところで、広さもまずまず。

 食事は食堂で事が足りると思ったのか、個別のキッチンこそ付いてはいないが、人間的な生活を送るためだろう、トイレやバスルームは割としっかりしてる。

 リビングに元魔法少女組とエラを呼ぶと、流石にちょっと手狭にはなってしまうが……。

 逆に言えば、俺含めて7人が無理なく滞在できるくらいの面積があった。

 

 ……いやまあ、女王とか道化師はめちゃくちゃ引っ付いて来ることが多いので、面積的にはだいぶエコさせてもらってるんだが、それはともかく。

 

 

 

 そんな部屋の中で、可愛らしい鼻歌が響くのは、バスルーム。

 浴室ではなくその前の洗面脱衣室で、椅子に座った少女の緑色の髪を、俺は櫛で梳いていた。

 

「お客様ー、痛いところはありませんかー?」

「ん、大丈夫。……ふふ、ありがとうね? クセが強くて骨が折れるでしょ」

 

 確かに、クセは強い。

 彼女の──勇気の従者の髪は、もこもことした独特のクセがあって、痛まないよう整えようとすると結構気を遣う必要があった。

 

 だが俺としちゃ、それも苦にならないし……。

 どころか、嬉しいまであるんだよね。

 

「いいよいいよ、このくらい。むしろ俺としちゃ、髪を触らせてもらえて嬉しいんだよね。

 髪は女性の命じゃん? それを触らせてくれるってことは、それだけ強い想いの証だって思えるから」

 

 そう言って、なかなか言うことを聞いてくれない跳ねっかえりと悪戦苦闘していると。

 従者は不思議そうに問いかけて来る。

 

「確か主さんって、マルクトの元になった……ええと、エリヤだっけ。

 あの子の髪を触るのは、ちょっと嫌がってたって話じゃなかった?」

「そりゃあ、エリヤは仲間で同僚だったけど、恋人とか妻とかではなかったからね。女性の命を握る責任って考えると、ちょっと俺には重すぎた。

 でも、君たちは違う。俺が生涯をかけて幸せにする相手だ。だから……こうして命すら預けてくれる信頼を向けてくれるのは、嬉しいに決まってるよ」

 

 そう言うと、緑色のカーテンの向こうに見える、白かった耳が真っ赤になった。

 

「そ、そっか……そっか……」

「あ、こらこら、恥ずかしいからって前髪イジらないの。ヘアオイル落ちちゃうから」

 

 そもそも、このくらいのこと、ここ最近は毎晩のように伝えてるだろうに。

 

 

 

 従者や道化師と心を繋げてから、500年くらいか。

 ちょっと前の反復で、俺と従者の関係性は、変化を迎えた。

 俺側の心構えはそう変わんないんだけど……従者の側が、心の底から振り絞った勇気を以て、こっちに踏み出してくれたのだ。

 

『従者ちゃん、勇気って名前もらってるのに、踏み出すのに500年かかったね!』

『従者は昔から、この手の話題には奥手でしたからね。仕方がないでしょう』

『まあまあ。これで従者も夜気まずい思いをせずに済むし、良いことじゃないか』

『やーい いくじなし チキン むっつりすけべ うおっ流石にそれは湿度高すぎ』

「う、うるさいから! 私には私のペースがあるの!!」

「こらこら、動かないの~」

 

 脳内から襲い来る元魔法少女ーズの揶揄いに、従者は真っ赤になって反論しているが……動かれるとお櫛が引っかかってしまいますわよ?

 

 みんなも、あんまり揶揄わないの。特に女王と道化師。

 人が頑張ってるのを冷笑すんのは良い文化じゃないぜ。

 

『『はーい』』

 

 元気なお返事で偉い! 反省が伴えばもっと偉い!

 

 

 

 ともあれ、そうして関係性が変わったとしても、俺が従者に向ける心構えはそう変わりはしない。

 

 自分を責めがちな彼女にとって、ほんの僅かにでも自分を信じられる、外付けの根拠になりたい。

 そう願い……俺の命の尽きる時まで、彼女と共に責任を背負う覚悟である。

 

 ただその対象が、信頼し尊敬する友だちから、愛する女へと変わっただけで。

 

「っ……あ、主さんって、そういうこと平然と言うよね」

「言ってないけどね? ただそうしようって思っただけだけどね?」

 

 思考や感情が勝手に漏れちゃうのは、流石にもう慣れたし諦めました。

 この子たちも心の底まで晒してくれたんだから、俺だって自分を明かして当然だろうしね。

 

 まあ、俺のつまんない醜悪な心根を見せちゃうのはだいぶお恥ずかしい上お目汚しだが、そこはもう受け入れてもらう他あるまい。

 

 ……いや、いいから。

 そんな全員一斉に否定してくれなくていいから。

 

 どうしようもないじゃんね、個人的な好悪として、俺は俺のことが好きじゃねーのであるからして。

 

 ま、そんなどーしようもない俺でも、君たちが愛してくれるから、少しくらいはマシに思えてるよ。

 皆ありがとね、いつもさ。

 

 

 

 

 

 

『私のコナーがまーた無差別広範囲にメロいこと言ってる!!!』

 

 

 

 

 

 

 うるさ。

 

 脳の中に鳴り響く爆音、その主はもはや疑いようもなく彼女──井戸の中でE.G.O使って自我を保ってるバケモン兼、俺の愛する女の一人でもある、カルメンである。

 

 今日はやけに静かだったけど、急に爆発するじゃん。何かあった?

 

『強いて言えば、かつては私が不動のヒロインポジションだったのに、最近は元魔法少女組の勢いが強すぎて危機感を覚えてきたってところかしら!

 動画の編集やってる場合じゃねえ! ってわけで飛んできたわ!』

 

 何言ってんだコイツ。

 あと何やってんだコイツ。

 

 お前が不動のヒロインポジションだったことなんてなかった…………とは、まあ、言わんけど。

 

 俺は5股かけるクズではあるが、誰かを見たからって誰かから目を逸らすようなマジモンのクズになるつもりはないわよ。

 俺の理想は自分一人の幸福じゃあなく、君たちを幸せにすることなんだから、しっかり全員に目を配るつもりですよ。

 

 

 

『この男、ちょっと理想的すぎない? 何これ私に都合の良い夢小説?』

 

 は? こんな良い女に囲まれてる俺にこそ都合の良いハーレム夢小説だが?

 

 びっくりだよ俺、あの悪名高い都市に転生しておいて、カルメンと元魔法少女たちでハーレム作ることになるとか思わなかったからね。

 いやホントに。マジでどうなってんだこの流れ、ちょっと俺に都合が良すぎるぞ。

 

『まあでも、別に良いことばかりってわけでもないじゃない?

 せっかく調律者を倒したのに不意打ちで死んじゃって、それで研究所の皆が激曇りしたりしたし。

 コナーがすっかり落ち着いた今だから言うけど、当時は私も拒食症になったりして大変だったのよ?』

 

 うおっそれはガチで効く……。

 いや本当にL旧研の皆にはご迷惑をおかけしましたので、これから皆で幸せになれるよう頑張らせていただく所存ではありますが。

 

 

 

『って、そういうことが言いたかったんじゃなくて……とにかく!

 コナーはちょっとね、八方美人が過ぎるんじゃないかと思うのです!』

 

 はい。まあ自覚はありますね……。

 ハーレムとか作ってる時点で、もうね。

 

 でも別に、無理に自分を飾ってるわけじゃないし。

 なんか素で付き合ってたら、皆が気に入ってくれただけだし。

 

『いや、責めてるんじゃなくてね? コナーはコナーのままでいいんだけど。

 あまりにも私たちに差を作らないじゃない、あなた。

 それぞれで対応の温度感は違うけど……一緒に過ごす時間とか込める感情とか、そういうのはキッチリ同じくらいだし』

 

 え、そりゃあそうじゃない?

 だって俺、別に上も下もなく、全員それぞれに好きなんだから。

 

 カルメンはこう見えて人の感情をよく見てるし、助けてもらってるし、綺麗だし。

 騎士はとても誇り高くてカッコ良いし、一番長く一緒に戦ってくれてる戦友だし。

 女王は見てるだけで元気をもらえるし、愛に生きる一途な様は照れくさくなるし。

 王は人として尊敬できる強さを持ってるし、実は乙女なところもめちゃ可愛いし。

 従者はいつも冷静で賢くて、共に過ごす時間を知的な楽しさで満たしてくれるし。

 道化師は子供であると同時大人らしい側面もあって、いつも心を支えてくれるし。

 

 それぞれが別々の側面で優れていて、別々の軸で好感を持てるんだ。

 それを無理に比べるって方がおかしな話じゃん。

 

 勿論、内面もそうなら外見もそうだ。

 そりゃあ純粋に数値的に見れば、どっちの方が整ってるとか大きいとか、そういうのもあるだろうが……。

 それぞれがそれぞれ、持つ強みも魅力も違うわけで、違うベクトルを並べて「どれが上!」って定義するのは違うしさ。

 

 みんな違ってみんな好き。

 俺は大体そういうスタンスでございます。

 

 

 

『いや本当に良く見てくれてるわよね! そういうところ、本当に大好きよ!

 でも……いえ、それ自体は全く以て感心な態度ではあるんだけどね?

 けどやっぱりね、コナーにだって個人的な好き嫌いはあるんじゃない? 極力それを排除してはいるんだろうけども』

 

 まあ……そりゃあ、ないわけじゃないが。

 

 何が言いたいんだコイツと、俺が首を傾げている一方で……。

 元魔法少女組は、思考の彼方ですんごい過敏に反応し始めた。 

 

『待ってください。カルメン、まさかあなた……!』

『せ、戦争を起こす気なの!?』

『やめろカルメンッ、何を考えてる!?』

『あなた、何が望みなの……?』

 

 え、何? そんな大事なのこれ?

 

『当然だよぉ! 仲良しグループの中でハッキリ序列を付けるなんて、女子のグループが壊れかねない大事件なんだから!

 こういうのはなあなあにしとかなきゃ、すっごく気まずくなるんだよ!!』

 

 あ、そういう……。

 あんまり俺が立ち入り辛い問題だったわ。

 

 

 

『不和を生み得るのはわかってるのよ! 今の関係が心地よい距離感ってのも分かる!

 でも……知りたくない!? 実際コナーの中で、自分がどれくらい想われてるのか!!』

『……否定は、できませんが』

『いやそれは知りたいけど』

『私は主ちゃんを幸せにできて、幸せにさえしてもらえればいいし……(震え声)』

『…………黙秘権を行使する、かな』

 

 元魔法少女たち、よわい。よわすぎる。

 

 なんか良い感じにE.G.O発現みたいな善堕ちしといて、意志がへにょへにょじゃねーか。

 まあそういうところも可愛いが。

 ……俺、全肯定botみたいになってんな? あばたもえくぼって奴かねこれが。

 

『それに、コナーなら大丈夫よ! たとえ私が圧勝したって、皆等しく愛してくれるから笑』

『言うじゃんねェこの女!!』

『やはり一発引っ叩きましょうか』

『中央本部チームに行こうぜ……久しぶりにキレちまったよ……』

『道化師ってカルメンの代わりみたいなこともできるんだよね? カルメン締め出そうよ』

『うーん 肯定と非推奨 パパ カルメンから離れること 望まない 綺麗だから

 それはそれとして 悪いことしたら 罰は必要 お尻ぺんぺんとか』

『私の夫が私以外と交う様子を何千年と見せつけられてるし、もう十分過ぎる程に罰は受けてるわよ!』

『それはそう。私ならブチ切れてるかもしれん』

『よく耐えてるよね~。愛の力かそういう性癖なのかわかんないけど』

『むしろ私にキレる権利ない?』

 

 

 

 やいのやいのと盛り上がる女子会。

 俺は男子な上に5股クズ野郎なので、こういうノリには付いて行き辛くて、ちょっと黙る他ない。

 

 ……まあ、でも。

 自分で言うのもなんだけど、その辺りに関しちゃ、ホントに心配いらないと思うけどね。

 

 なにせ俺、今改めて比べようとしてみても、君たちの中から誰か一人を選べないし。

 意識してなお、一番上も一番下も作れないってことは、やっぱ皆同じくらい大好きなんだと思うよ。

 やーいコナーくんってば優柔不断! こんなんだから5股かけるようなクズになっちゃったんでしょうね俺は(猛省)

 

『確かに、意識の上では全然差がない……? 道化師ちゃん、ファクトチェック!』

『結論から言うと パパの主張は **正しい** 無意下の好感度も 大きな差 ない

 あと ちょっと類を見ないくらい 全部クソデカ らぶらぶ』

『大きく差はないってことは、多少の差はあるってことね!?』

『多少はね? パパも 人間だから』

『じゃあそこよ! その微妙な好感度の差!

 明確な序列になる程の差はないとして、やっぱり情報は欲しいわ! 今のところの首位は誰なの!?』

『教えなーい パパ 教えないでほしいって 思ってるし』

『コナー!』

 

 

 

 いや、そら自分の深層心理なんて人に明かしたくはないでしょうよ。

 

 人は外界と向き合う時、多少なりとも殻を被って飾り立てるものだ。

 ある意味ではその極致こそ、心の殻を剣とするE.G.Oだと言ってもいいだろう。

 

 その殻を引っぺがして本心を晒させるのは、言わば社交性の剥奪。

 人間を動物へと引き戻す行為に他ならないわけで……。

 文明人としちゃ、そういうのはちょっと呑み込み辛いものがあるんですわ。

 

『そ、そんなに見られたくないの……?

 ごめんなさい、私、あなたがそんなに気にしてるって思わなくて……』

 

 いや、今のはてきとう言って煙に巻こうとしただけだけど。

 普通に君たちの争いの種になりかねないし?

 

『コナー?』

 

 

 

 ……こほん。

 真面目な話するとね。

 

 表層意識レベルなら、まあ覗かれてもいいんだよ。

 そこで出て来るのは、ある程度俺の社会性のフィルター……つまりは、不快にならない言い訳や取り繕いを済ませている意思だから。

 はい騎士、ちょっと静かにね。今はそういう反論とか一旦いいから。

 

 ……だが、深層意識ってのは、偽りようのない本音だ。

 そこには、君たちを不快にする感情の煮凝りがあるだろう。

 なにせ俺も人間だもの、そりゃあ色々思うところはあるわけで。

 

 本音を言えば、俺の腐った深層意識なんぞ、道化師にだって見せたくはないんだ。

 いや、見せたくない、というよりは……それを見て、彼女に傷付いてほしくない、ってのが本音か。

 なにせ人の心の濁りだ、さぞ気色悪いことだろう。

 

『え? いや 私 そういうの 慣れてるし

 何より パパの心 すごく住みやすい よ

 濁りが全くないとは言わない でも とっても綺麗で 不快になったこと ない』

 

 え……あ、そう……。

 そりゃあ、なんというか……良かった、かな?

 

『コナー!!』

 

 いや、それでも駄目! 駄目ったら駄目!

 

 どっちにしたって恥ずかしすぎるだろ、心底の本音を晒すとか!!

 俺は恥も外聞も気にしないプライド0の3級フィクサーだが、それでも愛する女にくらいはカッコ付けたいの!!!

 

 

 

『っ、もうっ、愛する女なんて♡ ……って、それじゃ誤魔化されてあげないからね!?

 わかった、じゃあせめて、こう……特定のシチュエーションでの一番を教えてよ!

 例えば、そうね、休みの日に一緒にデートするってなったら、誰が真っ先に思い浮かぶ!?』

 

 え~……休みの日に一緒にデートォ?

 まあ休憩に使う反復では、毎回のように誰かとデートしてるから、突飛な発想って程じゃないけど。

 

 そうだなぁ。

 強いて言えば、最初に頭に浮かぶのは……。

 

 

 







 というわけで、ヒロイン組人気投票のお時間だコラァ!!
 読者様からの人気具合を把握しておきたいので、是非下記のアンケートの方をポチッと押してご協力お願いします。

 めでたく1位となった子は、せっかくなのでデートエピソードを書こうと思っています。
 期限は2026/6/30まで。今回はエラやケセド(???)たちは対象外です。

 また、それぞれのデートの概要は大体以下の通り。

 騎士:剣はいつでもあなたの傍に。穏やかな語らいの中で絡まる指と伝わる熱。
 女王:伝説の樹(?)の下でピクニック! 楽しく明るい魔法のような時間を共に。
 王:飯・暴力・男! 飯・暴力・男って感じで! これぞチートデー。
 従者:手作りボドゲ部の一日。おいどこ見てんだむっつりさんがよぉ!
 道化師:子供のようで大人なような彼女に甘やかされる一日。たまには 逆転もいい よね?
 C:体がなくてはデートできない……それは雑魚の思考だ。大丈夫、私(対精神では)最強だから。領域展開!

あなたの好きなヒロインは?

  • 正義の騎士
  • 愛の女王
  • 幸福の王
  • 勇気の従者
  • 兆しの道化師
  • カルメン
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