前回までのあらすじ
・10,000年の反復をなんとか乗り越えて、ついに最終反復に到達
・ダァト(コナー)は、井戸から交信してくるカルメンや騎士のおかげで、疑似的に記憶の引継ぎが可能
・騎士、女王、王、従者、道化師の、元魔法少女組が味方になってくれてる
・エラ(アンジェラ)は、食事したりアブノマたちと和気藹々したりダァトに添い寝してもらったりして、原作よりやや精神的に健康
「管理人、答えてください。 あなたにパンチはありますか?」
俺ことダァトは、Lobotomy Corporationで行われるクソクソ舞台こと光の種シナリオにおいて、統括及び裁定の役目を与えられている。
要するに、アンジェラと共にシナリオが上手く回るよう調整したり、Xがアホな悟りを開いた場合はぶん殴って更生を促したりするわけだ。
改めて、俺みたいな精神も身体もよわよわの雑魚おじさん♡ に任されるには、ちょっと重すぎるくらいの役目だ。
……誰がおじさんだオラァン!? 俺は齢10,000年のぷるぷるおじいちゃんじゃぞ!! 年寄りを労わらんかい!
ともあれ、どれだけ重い荷物でも、分け合って分担すれば持てるってもので。
共に歩んでくれる騎士、女王、王、従者、それに道化師という元魔法少女組と、彼女たちを通して井戸から交信してきているカルメンの協力によって、なんとか熟せている……というのが現状でございます。
『いやぁ、シナリオが始まった頃は私と騎士ちゃんだけだったのに、ここ10,000年でだいぶ協力者が増えたわね! 次は誰堕とす? あの溶ける愛って子か、あそんでちゃん辺り? あとはレティシアちゃんとか?』
別にアブノマを堕とすのが目的じゃないからね??
女王たちはあくまで、騎士からのお願いがあったから、なんとかお話できる状態に持って行ったってだけ。
別にこれ以上アブノマを感化するつもりとかないからね???
『ぱぱ お友達 もっとほしい きらきら』
だーめ!
道化師はもう、元々敵だったとは思えないくらい騎士たちに甘やかされてるんだから、俺が厳しく引き締めます! パパの役割やこれが!
あと君、お友達も何も、時々抜け出してエラとか職員たちに遊んでもらってるでしょ。
俺知ってるからね?
『ぎくっ』
『まあまあ主ちゃん、多少はいいじゃないか。道化師も遊びたい盛りだし、な?』
『道化師もシナリオに障らないよう気をつけてるみたいだし、今までそれでリブートが起こったことは一度もないんだし、許してあげてもいいと思う』
『私としては、そういったことは息抜きの反復で済ますべきとは思いますが……彼女の来歴を思うと、強くは止め難いものがありまして……』
『主くん、たまには遊べる時間も必要だよっ!
どうしてもやめさせるなら、その分主くんが私たちと遊んでくれないとね!』
君たちホント甘くなったよね道化師にね! 初抽出の時の敵対姿勢がもう懐かしいわ。
あと、女王のそれはちょっと私欲入ってるわね。今度バチクソ遊び倒してやるから覚悟しなァ!!
『わーい!』
『女王っておねだり上手だよな……』
とまあ、こんな感じで。
今日も今日とて俺の脳内には、彼女たちの談笑が溢れているわけだが……。
80,000回弱も反復してれば、流石にこの声にも慣れて来る。
序盤は脳内で2人が喋るだけで「やかましいッ! うっおとしいぜッおまえらッ!」となっていた俺だが、今や脳内で6人が喋っても綺麗に聞き取れる。
俺の前々々世は聖徳太子だったのかもしれない。やっと眼を覚ましたかい?
むしろ今は、平穏で和気藹々とした喧噪を楽しく思えるくらいだ。
なにせ、好きな女や大切な友だち、守りたい子どもの声だもの。当然かもしれないけどね。
……が、その一方で。
80,000回近く反復を経験した今でも、どうしたって慣れないこともあり、楽しく思えないこともある。
セフィラや職員たちの感じる苦痛や精神抑圧、ベンジャミンの首切り、クソカス害悪唾棄アブノマ共の抽出もそうだが……。
落ち着かなさで言えば、今目の前で起こっているイベントに勝てるものは、一つたりともないだろう。
「こんにちは、X。
ロボトミー社への入社を、心より歓迎します」
ドアの向こうからは、少しくぐもったエラ──アンジェラの声が聞こえて来る。
今、俺がいるのは、中央本部から続く秘匿エレベーターの先にある、管理室前。
扉の前に立って出番を待ちながら、向こうの会話を盗み聞いている状況である。
そう、本日はめでたきDAY 0。
今回の反復も無事、リブートの起点から50日を越えることができた。
そうすれば自然と発生するのが、管理人X到着イベントである。熱 烈 歓 迎。
管理人X。
それは、俺のクソ馬鹿友だちことアインが正しい悟りを得るため、セルフ脳くちゅをキメて、俺たちとの記憶を失って人格を改竄した状態だ。
改めて考えても、極めてなにか精神に対する侮辱を感じます。アイツ自分の人格を何だと思ってんだマジで、仮にも俺の友だちなんだから自分を大切にしてクレメンス;;
迎える反復ごとにXの人格は様変わりするため、これまでの反復で、俺たちは様々な管理人Xを見てきた。
ドジっ子系Xもいれば、不器用系Xもいて、ダウナーXもいれば、ツンデレXもいた。
特に面白かったのは、やっぱ陽キャで多弁なX。もうこれ尊厳破壊人格だろ。
コミュ障陰キャの今日の顔、あるいは今日も恥ずかしがり屋(笑)。今日は良い反復! あなたはまだクソナードなの?
で、そんな管理人Xが到着するのは、俺たちセフィラたちがL社地下本部を50日管理した先。
いよいよLobotomy Corporation本編が始まるDAY 0……。
つまりは、今日なのである。
管理人Xは今回もコールドスリープから目覚め、今まさにアンジェラから歓待を受けている。
いやまあ、歓待と言える程温かい対応じゃないけどね。
むしろエラの声に慣れ親しんだ俺たちは、これが温かみもなければ冷たさもない、一切温度の籠らない声音だと理解できる。
ま、それも当然だろう。
なにせ、この管理人はもはや……えー……。
カルメン、何人目?
『14,096人目ね!』
そう、14,096人目の管理人だ。改めて聞くとすごい数!
もはやエラもその顔や声に心を揺らすこともなくなって、平静に台本を読み上げるだけになっているのだ。
俺? 俺ももうすっかり慣れましたよ。
序盤は割と台本をそのまま読み上げる部分が大きいし、繰り返すともうテンプレムーブが身に染み付いちゃうので。
業務開始と共にオフィサーに処分弾撃ち込むのが癖になるようなもんだ。
「君は」
「私は、あなたがより快適に我が社に適応できるようサポートするアシスタントであり、話し相手であり、秘書を務めます、AIのアンジェラと申します」
「……AIか。人工知能倫理改正案がある以上、AIに人の形を取ることは許されないはずだが」
「ご存知なのですね。ええ、私の存在は本来許容されないものです。
ですが、我々のような翼にとって何より優先されることは、特異点を用いた都市の発展。そこで経る過程など、大きな意味を持たないとは思いませんか?
もっとわかりやすく言えば、本社管理人たるあなたの秘書には、AIによる効率的な管理能力と、人間的なコミュニケーション能力の両立が求められるのです。必要不可欠な選択とお思いください」
おお~、今回の管理人はだいぶ真っ当なタイプだな! 嬉しい。
管理人Xは迎える度に、持ってる知識とか設定上の過去が変わっている。
時には、都市についてロクに知識持ってねえ、お前どうやってここまで生きてきたねんという感じの管理人になることもあるし……。
逆に、こうして割と真っ当というか、アンジェラという存在の厄さを理解できるXになることもあるわけだ。
そして何より、ちゃんと自分からエラに名前を聞けてる!
コミュニケーションを取ろうとする姿勢はとても偉い! +300D(ダァト)ポイント!
そんなことすらできねえコミュ障X、かなり多いからね! 流石はエリヤの名前を覚えていなかった男。
「さて、管理人。私の自己紹介も済みましたが、他に質問はありますか?」
「ない。俺のこなすべきタスクと必要情報を提示しろ」
「……仕事熱心な方で、とても助かります」
でもエラがAIって分かった瞬間、露骨に嫌悪感が出たし興味も失ったな!
そういう差別はダァトくん良くないと思います! -1,000Dポイント!
あー、機械嫌いをそのまま引き継いでるタイプのXか。
アインって義体嫌いが多い14区出身なこともあって、結構偏見入ってんだよなぁ。
前世義体ユーザー兼エラの友だちの俺としては、ちょっと残念な思いが避けられない。
まあ、それ自体はアインの個性だし、別に悪いことじゃあないんだけどさ。
……ていうか、この一見絶対零度のように感じるけど、実はコミュニケーションの広げ方がわからないだけな喋り方とか、すげえアインに似てるな今回のX。
いやまあ元がアインなんだから、むしろ似てない方が異常なんだけど……。
これまでにないくらい、元のアインと似てるかもわからんね、今回。
『主よ、そろそろ』
ん、そだね。そろそろ俺の出番だ。
そんじゃ、今回もバッチリ台本通りに演技決めていきますか。
俺の台本はかなりガバガバなので、細かい演技指導とかは入ってないんだけど……。
なにせ80,000周弱もやってきたんだ、演技の要点はバッチリ掴んでるとも。おかげでだいぶ演技力も上がった実感あるしね。
『来るわね……アイン解釈のコナー!』
『うーん、毎度微妙に解釈違いなんだよね、この主さん』
『そう言ってやるな、何千年と主ちゃんと一緒にいた私たちと違って、アインってヤツは1年半しか一緒にいれなかったんだろ?
ここは主ちゃん推し古参として、後方で腕を組んで見守ってだな……』
まあ古参で言ったらアインの方が古参なんだけどね? 時系列的に。
てか王、後方腕組み彼女面じゃん。
いやまあ彼女面っていうか、実際過半数が彼女なんだが……。
6人も後方で腕組みしてたら逆に目立つだろそれは。君たち、ただでさえ美人揃いなんだから、もうちょっと自分の容姿を客観視した方がよかですよ。
『主くんって大体の武器を使いこなせると思ってたけど、ブーメランまで得意なんだね!』
うるさ。
「ではこれより、L社での業務のチュートリアルを……。
……いえ、少々お待ちください。どうやら紹介すべきAIの一人が、あなたに面会を要求しているようです」
「他にもAIを使っているのか」
「はい。私は非常に優れたAIですが、この会社の創始者たるAは、広大なL社全体を隅々まで統制することは困難だと判断しました。
現在この施設には、私の他に9つの各部門に1人ずつ、そしてそれらの緩衝に1人、合計10のAIを配置しています」
今エラが話している「紹介すべきAI」とは、勿論俺ことダァトである。イッツミー、ダァトー。
実はダァトくん、流石は統括・裁定役と言うべきか、セフィラストーリーだけでなくデイストーリーの方でもめちゃくちゃ出て来るセフィラとなっている。
登場頻度はアンジェラよりちょっと低いくらいで、もはやメインパーソナリティとすら言っていいレベル。
出演料よこせ♡ 無給でのやりがい搾取やめろ♡ 労基ロボに訴えるぞ!! あっ壊されちゃった……。
で、そんなダァトくんとは、初日のデイストーリーの時点で顔合わせすることとなる
原作では、DAY 1のデイストーリーでアンジェラとの会話が行われ、そこからマルクトのセフィラストーリーに繋がる流れだったと思うけど……。
こっちじゃ、起点から50日目の業務終了後にDAY 0のデイストーリーとしてこの会話が設けられていて、俺と顔を合わせたりし、DAY 1にあたる明日にマルクトのセフィラストーリーが行われる流れだ。
俺としては、やっぱ最初は色々と衝撃的なマルクトのストーリーからやった方が、空気感とか世界観を掴みやすいと思うんだけどねぇ。
原作ブレイクしちゃったのは少々心残りというか、申し訳ないというか。
『ねぇ、その「原作ブレイク」てのやめたら?
だって、この世界がコナーの人生の原作でしょ?』
ポチャ~ン(体内で潤滑油が落ちる音)
「構わない。連れて来い」
「承知しました。少々お待ちくだ……。
全く、本当に言うことを聞かない。
すみません、X。どうやらそのAIが到着したようです」
さ、そろそろ本格的に出演の時間だ。
というわけで、戦士スイッチを一瞬だけカチッと上げて精神統一し、扉にノックを少々。
イメージとしてはアレだ、事件捜査中の刑事が怪しい物件に踏み込む時の、ひとまず様子を窺うくらいの自然なノック。
つまりはみんな大好き、デトろ! の前振りである。
あの静からの動の移行、ギャグとしての完成度が高いんだわ。
『ねえ、主ちゃんってそれ毎回やらないと気が済まないの?』
仕方ねーだろ、俺の原作なんだから。
ローランたち筆頭に、プロムンのキャラの名付けは、何らかの小説とか伝説とか物語に基づいて行われることが多いのだ。
であればコナーという名を頂いた俺は──いや、正直他にもコナーなんて名前のキャラは無数にいるだろうが──やっぱりコナーをやらねばなるまい。
任務の失敗はチャートにないんだよ!(建前) 助けてくれカーリー!!(本音)
『へえ、そういう理由が……』
『嘘 普通にその場のノリ 持ちネタ 擦ってるだけ 惰性』
やめなさい道化師、人の心を明け透けに語るのは!!!
「入れ」
入れと言われたので、ガン無視してもう1回強めにノックし、ついでに一言。
「すみません」
ここまでテンプレ。ここからもテンプレ。
『普通に入ればいいのに』
『まあまあ、女王。主ちゃんの趣味みたいなもんだし』
台本に「この辺は好きに振る舞え」とか雑に書いたアインが悪いよアインがー。
てか、なんで俺の台本こんな雑なんだよマジで。
『どうしてもコナーの行動が予測し切れなかったが故の、苦肉の策に一票!』
『いえ、主の正しさを信じるが故の放任でしょう』
『普通に主ちゃんのイカれたムーブが好きだった説は?』
『自分の意志を介在させて、主さんっていう人の在り方を歪めたくなかった、とか』
『作者の人そこまで考えてないかも!』
俺としては、騎士と従者の考察を支持するかな。
友だちである俺への信頼と、正しいかわからん自分が俺を歪めたくないって思いは確かに強そうだ。
アイツ、やけに俺への評価高いからな……。
「どうぞ」
「…………」
「……仕方がない」
よし、このタイミングだ。
いつも通り、俺はドアに向かってがなりたて、扉を蹴った。
遺物パワー……はなくなったけど、箱ボディパワー!!
「開けろ!!
パスセフィラ市警だ!!!」
思い切り蹴破った扉の先には、2人の人影があった。
管理室のチェアに腰かけた、どう見てもアインだけど人格的にはアイン本人ではない、管理人X。
そして、デスクを挟んで体面に立つ、どう見てもカルメンには似てない、エラ。
冷静なようでいて驚愕に染まった金の瞳と、冷ややかなようで強い親愛の情の籠った琥珀の瞳。
そんな凸凹親子に見つめられつつ、俺はいつも通り、元気よく口を開いた。
「やあ管理人! 僕はコナー!」
い つ も の
や っ ぱ こ れ だ ね
本 日 の 1 0 割
何 か 書 い と け
「……そうか」
俺の渾身の持ちネタは、微妙な顔で受け流されてしまった。
微妙な顔っていうか殆ど無表情なんだけど、アインの友だちたる俺は微妙な変化も見逃さないぜ☆
しかし、この勢いに負けて鼻白む対応、めちゃくちゃ懐かしいな。
今回のXは本当にアインに近いっぽい。なんなら殆ど同じなんちゃうこれ?
『なんだか久々にアインに会った感じがするわね。
これまでは、なんちゃって根明だったり、めんどくさがりのポンコツだったり、すごくアホっぽかったりで、アインに近い管理人Xは少なかったし』
まあ、俺に手記を残した頃のアイン、自己嫌悪が爆発して自己肯定感暴落してたみたいだしね。
自分に近い性格じゃ、悟りは開けないと思ってたのかもしれない。
あるいは……長い旅を経た上に辿り着いたこの人格こそ、本命だったりしてな?
いや、これは流石に期待し過ぎか。
「ダァト、違うでしょう。管理人に誤った情報を与えないように。
管理人、彼の名前はコナーではなく、ダァトです。ほら、きちんと自己紹介しなさい」
そうこうしてると、エラが溜め息一つ、台本通りに訂正を口にした。
いやまあ正確に言うと、エラなんて名前は台本にないので、エラが加筆した分なんだけど。
ここからは基本的に台本読み上げの時間だ。
チュートリアルだし、丁寧にいこう。
「怒られちゃった! はいはーい、エラ」
「改めて、俺はコナー、もといダァト。
各部門を繋ぐ
「このロボトミー本社において、部門間での情報の整理統合伝達、職員の円滑な移動、物資の搬入、諍いが発生した際の中立的折衝、他清掃作業や各種調整、鎮圧時のサポートなどを担当している」
「……要は、みんなから良いように使われる雑用係ってわけだな!
部門職員も広さと業務に対してクッソ少ないし、この辺は我が上司に異論を挟みたいところだが」
別に思ってないけどね、人員が少ないとか。
処理チームには、相変わらず職員が1人配属されるし……。
虚無イベントという呪縛から解き放たれた今、道化師を除く騎士たち元魔法少女組は全員処理チームに所属し、バリバリ働いて助けてくれてる。
おかげでここ1、2万周は、俺の負担もかなり減っているのであった。
ただ、当然と言えば当然だが、エラって名前と同じく、騎士たちアブノマ連合も台本に想定されてない存在なんだよね。
ありえん程の天才ことAも、流石に俺と騎士の絆とか他アブノマの感化までは台本に組み込めなかったらしい。
そのため台本上は、処理チームは職員が少数しか分配されない不遇な人材不足チーム、ということになっているのだ。
なお実態は、業務量こそ多いものの、転移魔法使い放題のおかげで業務がバチクソ効率化されており、L社地下本部の中でもかなりホワイトなチームである。
『まあ給与も出ないし休暇もないし辞められない時点でドブラックだけどね!』
……そういえばブラックだったなこの環境。
体感ですら10年もここにいたわけで、もうこれが俺の中での普通になっちゃった……。
『それと、毎度主さんの鬼のしごきで、職員さんは毎回泣いてるけどね』
まあそこはね?
俺の職員ってことはつまり俺の弟子だし、多少はね?
閑話休題。
今はXとの話に戻ろう。
職員不足は本意ではないが、この辺はただの台本読み上げなので仕方ない。
ちらっとエラの方を見ると、彼女もそれは理解してるので、Xに見えないように肩をすくめていた。
「社の規定に沿った、適切な配分よ。あなたの能力ならば十分に仕事を為せるでしょう」
「こんな雑魚をえらく買ってくれちゃってぇ~。信頼に応えるべく、頑張っちゃおっかな♡」
……なんといいますか。
自分で言うのもなんだけど、茶番すぎるわねここ……。
今更「頑張っちゃおっかな♡」とか言うまでもなく、俺とエラは10,000年の間共に頑張ってきたんだぞ?
もはや仲間どころか戦友、立派な友だちである。そら期待には応えるわよ命がけで。
エラの方も、綺麗な琥珀の瞳に、ほんの微かに苦笑みたいな色を乗せていた。
お遊戯会も友だちと一緒にやると楽しいよねっ! 嘘だよ流石に俺もエラも飽きて来てます。
……さて、後は俺の自己アピールをして終わりだ。ヤなことはさっさと済ませましょ。
パンチもせんといかんしな。俺は叱責するで? 拳で。
「さて、管理人。俺の担当する業務の都合上、これからは業務提携を行うことも多いだろう……というか、殆ど常にそうなるかな。
ただ一つの条件さえ吞んでくれれば、俺はあんたの業務が円滑に進むよう取り計るつもりだ」
言いながら、左手を差し出す。
握手は万国共通……というわけではないが、都市でも普通に通じるマナーである。
どうでもいい話だが、右手じゃなく左手を差し出したのは、義体化手術の名残だ。
前世じゃ右腕が「白」の遺物だったので、俺の利き腕は左腕なのです。
そういえば、昔のアインやカルメンはまあまあ義体アンチだったので、義体バレしてからは右手で握手するとちょっと微妙な顔してたんだよね~、懐かし。
『わ、私、そんな顔してた?』
まあ、J社の巣でホテルに泊まった日までは、ちょっと表情に歪みはあったわね。
その日以降はなくなったけど。
『うーん、お恥ずかしい。コナーを100%受け入れたのってあの日だったからなぁ……』
まあ、別に気にしてないよ。
ぶっちゃけ義体って都市じゃ結構偏見持たれがちなんで、慣れてるんだわ。
なんで、あんま気にすんな。
俺はその時拒否感持たれた以上に、今受け入れてもらえてることが嬉しいんだわ。
『愛♡』
はいはい。
で、握手なんだけども。
「よろしく頼む」
今回のXは割と素直系のXなので、特に疑ったり拒否感を持ったりすることもなく、素直に手を握ってくれた。
よしよし、話が早い。
早速次のフェーズに進めるわね。
「ああ、よろしく~。じゃあ早速、さっき言った条件言うね?」
「何だ」
……正直、今からやろうとしてることは、俺的にあんまり快い事とは言えない。
相手からすれば理不尽でしかないし、今この瞬間に限って見ればメッセージ性も薄く、何の生産性もない暴力でしかないもの。
でも、これは一種のノルマだ。
L社のセフィラ・ダァトとしてはともかく、エラの友だちとして、俺はこのクソみてえな状況を作ったアインを認めることはできない。
そして、俺の行動一つで、エラが少しでも心を軽くできるのなら、それに越したことはない。
それに、これはきっと……未来のAに、必要なことになる。
であれば、これは俺の為すべきこと!
迷うまでもなしッ!!
俺は機械の左腕を振りかぶる。
行くぞっ! 近接、普及、コスト2、打撃2~6、打撃2~4ッ!!
「一発殴らせろやこのコミュ障陰キャ天才ネグレクトクソナードがァ!!」
「喰らえや必殺!! 3級フィクサーパァンチ!!」
若干本気めのパンチを喰らって、Xは顔面を変形させ、数メートルくらい吹っ飛んだ。
ごめ~~~ん!! K社製アンプルで治療する手筈なんで、どうか俺を憎んでくれ~~~!!
で、そんな光景を見て。
「……はぁ。相変わらず、やりたい放題ね」
エラは無表情な仮面の下で、ちょっと愉快そうに笑っていた。
どうやら今回も、多少は無聊を晴らせたらしいかな。
……親代わりとしては、あんまり他人の痛みを悦楽にしてほしくはないんだけどね。
図書館を開いて都市から脱するまでは、仕方ないかなぁと思うのです。
* * *
ちなみに、いつものことではあるが。
その日の夜は、Xに会って強いストレスを感じたエラと添い寝することとなった。
順調に情緒が育っているらしい彼女は、最近添い寝をちょっと恥ずかしがるようになってきたのだが……。
Xと会う日は、やっぱりどうしてもね。
なにせ、彼女はまだ子供なんだ。
親という存在は、その柔らかな心の、最大の弱点となってしまう。
彼女の揺れる心が穏やかに休めるよう、俺も尽くすといたしましょう。
……ちなみに。
最近のエラは、俺と添い寝する時だけ、赤い髪留めで纏めていた髪を解くようになった。
もう時間の余裕がないぞX!! そろそろ決めてくれX!!
『割と自業自得じゃない?』
うるせ~~~!!
大遅刻、本当に申し訳ない! 大きく間が空いてしまったので、是非前までのお話と合わせてお楽しみください。
「これ本当に面白いか?」症候群に陥ったり、リアルが多忙だったりと、色々あって滅茶苦茶に遅れてしまいました……!
ともあれ、本日から毎日投稿再開です。
執筆・投稿状況等について。
例の如く40話くらいストックがあるので、基本失踪はしないはずです。
Limbus Companyは10章までプレイ済みですが、色々な設定の食い違いには微かに目を背けています。一度始まった二次創作は、このまま自分勝手に断ち切るわけにはいかないんだよ……!