3級フィクサーパンチ   作:アリマリア

9 / 81
情緒不安定な追う子

 

 

 

 俺の目の前で、ずーんと沈み込むエリヤ。

 自分の能力、っていうか才能のなさを嘆いてるっぽい。

 

 ちびちびとコーヒーを楽しみつつ、俺は彼女にどう接するすべきか考える。

 

 

 

 L旧研は今のところ、なんとか上手いこと回っているが……それはカルメンという人工太陽がここを照らしているからだ。

 何かしらの破綻が起きれば、その太陽はすぐさま曇り、陰り、そして消える。

 そうなれば、暗がりに落ちたここは、速やかに破綻を迎えるだろう。

 

 エリヤもまた、暗がりに呑まれる者の一人。

 カルメンが消えて釣瓶が出来上がり、しかし研究は遅々として進まず、皆が焦り自分のことにいっぱいいっぱいになっていく中で……。

 彼女は自らの不出来を呪い、人から──いいや、憧れたアインから認めてもらうべく、独断で自らにコギトを打ち込み。

 

 苦痛と絶望、悶絶と孤独の中で、死ぬ。

 

 都市らしい悲劇の一端だ。

 俺もこの二十年余りで見慣れた光景。

 歩いていれば目の前を通り過ぎる景色と同じくして、無数に目に入り意味を持たない日常の欠片。

 

 だからと言って、不快なことに変わりはないが。

 

 

 

 結局のところ、結末は決して変わらない。

 みんないずれ、絶対的な喪失の中で死ぬ。それは分かり切った未来だ。

 

 コギトによって自らの身体を崩壊させるか。

 あるいは、自他の境界が曖昧に溶けるか。

 友を喪い裏切られたことに心を壊すか。

 もしくは、裏切ったことで心を壊すか。

 幻想体(アブノーマリティ)に喰い殺されるか。

 足爪の処刑者の暴威に晒されるか。

 調律者の妖精にバラバラに開かれるか。

 死闘の果てに相打ちになるか。

 蒼白の秘書に捕まるか。

 ……自ら光の中に溶け行くか。

 

 手段と過程に違いはあれど、その終わり方は一定だ。

 死と、それによる全ての喪失。

 彼らは……彼らを筆頭とする都市の人々は皆、有限という絶望の中、不意の喪失に怯えながら、苦しむために生きている。

 

 その救いなき迷路を、救世願望のある狂人は病と呼び、苦痛を愛する復讐鬼は道理と言い……。

 そして、何の力もない中途半端な凡人は、悲劇と認識する。

 

 もしも、俺にそれを塗り替える力があれば、話は大きく変わっただろう。

 転生特典でも天才的才能でも選ばれた天運でも、何でも良かった。

 これというただ一つの強みがあれば、あるいは彼ら彼女らの悲劇を止められたかもしれない。

 

 だが、武力も知能も運も、何もかも中途半端な俺には……そんな大それたことはできない。

 

 エリヤは死ぬだろう。

 ガブリエルも、ミシェルも、エノクもリサも、カーリーもダニエルもベンジャミンもアインも、勿論カルメンも、そして俺だって。

 必ず死ぬ。避けられない定めだ。

 

 終末は必ずそこにあり、俺たちの足は決して、他の道に逸れることはない。

 人生で積み上げてきたものを、いつか全て崩され、喪う時が来る。

 

 

 

 ……まあ、だからと言って。

 

 全力で生きない理由にはならないわけだが。

 

 

 

 いつか喪う? そりゃあ結構。

 

 トランプタワーは高けりゃ高い程、崩す時が楽しいもの。いつかバラバラに崩れるとしても、組み上げることに意味はある。

 ゲームだってそうだ、いつかはエンディングが来て終わる。でも、だからこそ、そこを目指して頑張るのが楽しいんだよ。

 

 そうでなけりゃ、人はなんで建物を立て、服を仕立て、道具を作り、子を成すのかって話だ。

 人は破滅を知りながら、それでも少しでも良い未来を望み、懸命に生き足掻く。

 それこそが人の美しさであり、生きる意味であり、生まれた価値。

 少なくとも俺はそう思ってる。

 

 人生はいずれ終わる。

 努力は潰える。価値は失せる。想いは果てる。

 それを知ってもなお、今この瞬間、より良い未来やより良い結末を目指して歩いていく……。

 

 それこそが、「生き続けるという勇気」ってヤツだろうしね。

 

 

 

 ……まあ、そうは言っても。

 その「より良い未来」っていうのは、あくまで俺にとっての「より良い未来」。

 

 結局ゲスな俺は、独善的に行動を起こし続けるばかりなんだけどな!

 

 

 

 というわけで、さっそく手出しを開始しよう。

 落ち込んでる同僚がいるんなら、支えない選択肢とかナイナイ。

 今この瞬間にできることをやるのがコナー流である。

 

「俺から見て、お前はよく頑張ってると思うよ、エリヤ」

「……え?」

 

 俺はコーヒーから口を離し、相手の瞳を見る。

 髪と同色の薄茶の目は、どこか不安げに揺れていた。

 ……カルメンの滴る血みてぇな赤色じゃないだけで、だいぶ安心しますね。エリヤたんすこ♡ 結婚しよ♡

 

 こんな目ぇするくらい精神にヒビの入った人をそのままにはしてらんない。

 こっちに迷惑が及ぶ可能性とか、業務に遅延が発生するとか、そういう理屈以前の問題。

 俺に状況を少しでも改善できる道があるなら、それを選ばないのはいっそ裏切りだ。

 

 ふっふっふ……今はLobotomy社のクソクソリブートシステムもないんだ。

 存分に同情して傷の舐め合いしてやるぜ!

 

 なにせ俺、エリヤの同類だからな!

 同類ってか同じ穴の貉っていうか、ぶっちゃけ無能側の人間だからな俺!!

 

 

 

「君の気持ちはわかるつもりだ。なにせ俺も、上にはカーリーとかいうバケモンいるしね。

 上を見上げればキリがねえわ、カーリーばっか評価されるわ、貢献はできねえわ、自分の才能のなさは恨めしいわ、なんでこんな簡単なこともできないんだって嘆くわ……。

 生まれの才っつうのは残酷よな。ただそう生まれただけで何もできねえんだから」

 

 俺の言葉に、エリヤは傷付いた……では、ないな。

 今初めて自分が傷ついていることに、痛みを感じてることに気付いた、って感じの表情を浮かべていた。

 自覚はなかったか。まあ、まだ初期症状だった感じだしな。

 

 ちなみに言うと、言ってる俺もめちゃくちゃ心が痛い。

 別にエリヤの傷に同調してるとかじゃなく、普通に自分で言ってて自分で傷付いてる。

 俺も才能あればな~! L社押し入り魔王アイン討伐ルートとか、図書館押し入りアンジェラローランボコって説得ルートとか、いっそ頭討伐ルートとか、自力で都市脱出して外郭スローライフルートとか、もっとやり様もあったんだけどな~~~!!

 

 は~クソ、俺が恵まれてることとか、原作知識があることと巣に生まれたこと、それと紫の涙に気に入られたくらいだよ。

 いやめっちゃ恵まれてるけどさぁ! 転生者なんだからもっと無茶させてくれ~!! 特色パワーで無双ゲーしたかったよ~~~!!

 

 

 

 荒れる内心を落ち着けつつ、薄茶の瞳を見ながら言葉を続ける。

 

「俺はある程度、自分に見切りを付けた。

 今でも強くなる意志はあるけど本気で努力まではしてないし、わざわざここの研究に加わって知識を付けようともしてない。

 ま、諦めてるんだよ、自分を」

「そんな……それは……」

 

 薄茶の瞳が、悲痛に歪む。

 

 ある意味じゃ、俺のこのザマは、エリヤの可能性の一つだろう。

 天才たちへ追い付くことを諦め、走ることを止めて、不相応な目標を捨て去った……。

 マルクトの言葉を借りるのなら、「色の美しさを知ってほしい」という目的を諦めた、彼女の可能性。

 

 実際は、そんなご大層なモンでもないんだけどね。

 俺はただ身の程を知ってる、小賢しい大人ってだけで。

 

 そんな怠惰な俺より、今も頑張ってるエリヤの方がずっと尊いんだから。

 

「でも、お前は違うだろ、エリヤ。自分の不足を悟った上で、『それでも』って走り続けてる。

 ここに来てちょっとしてから、少しでもミスを減らすためにメモを取るようになったろ。

 その中でやることをリスト化して整理して、わかりやすくしてるのも知ってる。

 あとは、研究員たちに効率良く情報伝達できるよう、アプリを作ってたのも……まあアレはバグって駄目になったけどさ」

「なっ、え、なんで!? なんで知ってるの!?」

「なんでってお前、俺はこの研究所の召使いみたいなモンですから」

 

 データ提出待ちの待機時間とか、外出の際の護衛とか、緊急時や残業時の業務手伝いとか、あとエリヤに関してはドジって薬剤零したりした時の後始末とか。

 そうやって一緒に過ごす内に、所属研究員の癖やら貢献やら活躍やらドジやらポカやらカルメンキチっぷりやらアインキチっぷりは、よーく見てますとも。

 

 むしろなんで見られてねぇと思ってんだコイツ。俺節穴って思われてる!?

 

 

 

「アインやカルメンは『持ってる側』だからな。『持ってない側』の苦悩や苦労を知らないだろう。……ワンチャンカルメンは理解はできるかもだが、共感はできないだろうし。

 だけど、俺は知ってる。それが血反吐を吐く程辛いことを」

 

 いやマジで辛い。

 才能がない人間が能力を付けるには、血の滲む努力を積むしかないんだよ。

 ……って言って、クソカスムスコンムラサキババア師匠(打撃体勢)に腹パンされ続けた日々。

 

 血反吐を吐くって言葉はなぁ! あくまで比喩なんだよ馬鹿が!

 血とゲロの混合物を吐くだけで貴重な休日を過ごすハメになった俺の気持ち分かるか!? 人の心とかないんか!

 

 割と本気で「逃げるか自殺するかどっちにしよう」とか考えてたからなあの頃!

 俺セフィラになったら、あの思い出だけでクリフォト暴走起こせるんちゃうかな……。妨害内容は施設各地に紫の涙が複数出没。やべえ勝てる気がしねえ。

 

 まあでもね、そんなクソカスみてえな過去のおかげで、俺はなんとか3級フィクサー相当の戦闘能力を身に付けられたわけで……。

 色々ひっくるめて考えたら、師匠にはこれで結構感謝してるんだけどね。

 

 全部が終わった後、あの人の息子探しに協力しようと思ってるくらいには。

 

 

 

 俺は嫌な思い出を振り払うように軽く頭を振り、改めてエリヤを見た。

 

 劣等感、無力感、自分への失望、もどかしさ、やるせなさ。

 様々な悪感情を抱えながらもそれを抑え込み、俺があの日味わってきた地獄──彼女の場合、摩耗するのは体じゃなくて精神だろうが──を走っている女性を。

 

「そんな辛いことを、お前は自らやってんだ。立派だよ、本当に。

 それが結果を結ぶか結ばないかは俺にはわからんが、自分から頑張ってる時点で俺から見たらすごい」

 

 最初は自分から紫の涙に教えを乞いに行った俺だが、一週間後には普通に逃走計画練ってたからな。

 もう何か月って単位で、それも未だ前向きに頑張ってるコイツは、ホントにメンタル強者だと思う。

 

 ジュースとポテチ片手に楽しんでた前世じゃ、「エリヤちゃん焦ってて可愛いね♡ メンタルよわよわで草ァ!w」とか思ってたんだけどね……。

 実際当事者になったら「むしろようやっとるわ」って感想になりますわよ、流石にね。

 

 

 

 どうあれ、エリヤが死ぬ未来は変えられない。

 頭がある以上都市の物語は尽きることなく、それを抜け出すだけの力を蓄える光の種シナリオもない今、頭に背いた研究をしてる俺たちの未来は真っ暗闇だ。

 まあ俺も頑張るが、ガリオンさんが来たら大体みんな死ぬはずである。

 

 だけどまあ、エリヤのあんな……何とも言えない、雑魚死みたいな死に方は、さ……うん……。

 

 アインとしては、自分が犯した最も基本的で初歩的で、けれどどうしようもないミスを直視する機会にはなるんだろうけどさ。

 同じような境遇の俺としては、流石にあんな死に方は、ちょっと思うところがあるっていうか……。

 

 

 

 要するに、俺が何をしたいかと言えばさ。

 

「君はすごい奴だよ、エリヤ。他の誰も認めなくても、俺が君を認める」

 

 オリチャー発動!!

 エリヤの精神衛生整えてもうちょっとマシな死に方させるルートで行きます!!

 

 任せろお前、今日から俺はL旧研所属、用心棒兼召使い兼カウンセラーや!

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 俺の言葉に、エリヤはしばらく固まって動かなくなってしまった。

 あれ? TT2プロトコルってまだないよな? なんて思っていると……。

 

「……ぅ、っ、あ、ありがとうっ!!」

 

 しばらくして、言葉に詰まりながらもそう言って視線を逸らし、手に持っていたコーヒーをぐいっと飲み干した。

 そして、熱さか酸味にけほけほと咳き込んでいらっしゃる。ドジっ子可愛いね♡

 

「顔赤いぞ^^ 照れてんの?^^」

「うぅうっ、うるさいわねっ! その、いや、仕方ないでしょ!?

 研究所に来てから、人に褒められるなんて初めてで……これまでも、あんまり褒められることなんてなかったし……慣れてないのよっ!」

 

 空になったカップごと両手をわたわたさせるエリヤ。

 その瞳の中はぐーるぐる、まさしくパニック状態である。

 あぶねー、殺人性パニックじゃなくて助かったな、エリヤ。俺の師匠直伝の反撃腹パンは痛いぜ。打撃2~4、的中時次の幕に出血を1付与。

 

 ……ていうかエリヤ、そんだけ頭良くて褒められることなかったってマジ?

 確かマルクト曰く、エリヤは「巣に生まれて普通に生きて普通に勉強してた」らしいが……あんまし褒めて伸ばすタイプの親じゃなかったのか。

 

 そこもまた、結構共感できるポイントだ。

 俺の両親と兄はまあビビりつつも褒めてくれたが、師匠はあんま褒めてくれるタイプじゃなかった。

 いやまあそれは、俺が将来の特色級のバケモン共に比べてあまりにも雑魚で、褒めるべき点がなかったからなんですけどね!

 むしろ最後に及第点をもらった時、「よく頑張ったね」って言われた時はかなりビビったもん。天変地異の前触れかな? って。口にしたら幻影乱舞されそうだから言わなかったけども。

 

 

 

「……その。嘘、とかじゃないのよね? さっきの……」

「君への評価なら嘘じゃないよ。その一点に関しては誓ってもいい」

 

 なにも手に付いた能力だけで人の評価が決まるわけじゃない。

 困難に自分から挑みかかるその姿勢と精神性は、十分に評価に値するものだろう。

 マジですげえと思ってるよ、エリヤのことは。俺にはそんなこと絶対できないからね。

 

 言うと、エリヤはその顔を耳まで真っ赤に染めたまま……。

 

「…………それなら、あの、その~……た、試しに、撫でてみてほしいんだけど」

「撫でる? ……もしかして頭を?」

「う、うん……そういうこと、されたことないし。モノの本では、すごいストレス解消効果があるとかって話で、気になってるっていうか……! お父さんお母さんにはされたことなくて、ちょっとコンプレックスというか、ああいや、何言ってんだろ私……!」

 

 恥ずかしそうに手で顔を覆うエリヤ。

 

 ……なかなかすげえことをお願いして来たな、コイツ。

 え、どうしよ、普通に嫌だな……。

 

「髪、崩れるぞ?」

「そ、それはいいから! 気にしなくていいから!」

 

 こちらに向けられる、潤んだ薄茶の瞳。

 そこには親愛と共に、何やら甘く柔らかな感情が含まれていた。

 

 これはまさか……。

 

 いや、間違いない、コイツ……!

 

 

 

 俺に父性(バブみ)を感じてやがるな!?

 

 

 

 確かに甘やかそうとは思っていたが……まさかこの歳で、20代の娘を持つパパにされるとは。

 流石の俺も、エリヤのぶっ飛び具合にビックリだ。

 

 正直、俺は女性の髪にあんまり触れたくない。

 髪は女の命、ってのは前世も今世も変わらない。勿論、こっちじゃ巣の住人に限った話だけどね。

 だから、綺麗な髪を触れって言われると、どうしても躊躇が先立つ。

 言うならばアレだ、綺麗にカッティングされた宝石を触るイメージ。指紋とか油とか付いて価値落とすんじゃね? って思ってしまうわけだ。

 

 あんまり趣味ではないんだが……。

 ……仕方ないかなぁ。

 

 彼女は父性に、そして承認に飢えてるっぽい。

 であれば、その穴を埋めることこそ、今の俺の役割だろう。

 

 これもメンタルカウンセリングの一環として割り切るべきか。

 発動したオリチャーには責任を持ち、投げ出さず完走しなくてはならない。親父殿との約束だ。

 ……いやまぁ実際にはリセすることの方が圧倒的に多いだろうが、現実はそう簡単にリセとかできない。TT2プロトコルがない限り。

 

 

 

 俺は寄りかかっていた壁から背を離し、エリヤに近付き……。

 ……いや、そんな動揺する? 君が撫でろって言ったんじゃんね。

 

 俺は男にしては背が低い方で、エリヤともそう変わらないんだが、幸い彼女は今座ってる状態だ。

 ちょっと躊躇いがちにはなったが、エリヤの頭に手を置くことは容易だった。

 

「偉いな、エリヤ。君はよく頑張ってるよ」

「あっ、ん……ぅ」

 

 ポンポン、さらさら。

 うわ髪質良っ! 全然指引っかからんのやけど。

 外郭とかいうカス環境で長髪をこの状態に保つとか、めちゃくちゃ良いトリートメント使ってそう。

 あんまダメージ与えないよう、触り方には気を付けんとな。

 

 で、本人は……なんとも気持ち良さそうなことで。

 目を閉じてうっとり、頭に伝わる感覚──というか、ようやく誰かに認められた感慨だろうけど。それに浸っていらっしゃる。

 口はだらしなく緩んで頬まで染めて、この世の悦楽の全てを知ったような表情である。

 

 えぇ、そんなに……?

 これまでどんな人生送ってきたらそこまで承認に飢えるんだよ……都市ってやっぱこええわ……。

 

「じゃあそろそろ……」

「あっ、コナー、その……もう少しだけ、お願いできない……?」

「アッハイ」

 

 流石にこの流れでお願いを断るのは空気を読めてなさすぎる。

 でも撫でれば撫でる程髪に手の油とか皮脂が付きそうで怖いんだけど……。

 

 ……すまんな、エリヤの髪。

 今日ばかりは、君の主の我がままのために傷付いてくれ。

 

 

 

 結局、それから10分くらいの間、俺はエリヤと撫で撫でコミュニケーションしていた。

 

 すんげえ気持ち良さそうにしていらっしゃるし頬も紅潮してるしで、ぶっちゃけ変な気が起きそうになって自制が大変だったわ。

 この魔性の女め! このままエロいことに持ち込む気でしょ! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!

 

 まあ勿論、何事もなく別れたんだけどさ。

 

 何事もなかった、はずなんだけどな……。

 

「えっと、その……ありがとね、コナー! また今度、ゆっくりお話ししましょ!」

 

 最後に見送ってくれた彼女の瞳は、とろっとろに蕩けていた。

 なんなら誰かにこのシーンを見られたら、変な誤解を受けそうなくらいに。

 

 

 

 …………なんか距離感近付け過ぎた気がする! 大丈夫かこれ!?

 

 いや、まさかあそこまで承認に飢えてるとは思わないじゃん!!

 確かに原作でも「褒めてもらいたかった、認めてもらいたかった」とは言ってたけど、研究所に来る前からずっと餓えてたなんて思わないじゃん!!

 

 カルメンの興味をそそったことに引き続き、完全なる想定外。言い逃れのできないガバである。

 でも再走要求兄貴は自分で走ってから言え。お前も都市に産み落とされて地獄を見ろ。

 

 まあ、しかし……うん。

 落ち着いて考えれば、リセ確定の大ガバって程ではないか。

 

 俺はアイン……Aではない。彼女が本当に認めてほしい相手じゃないんだ。

 一般通過雑魚に認められたとしても、Aに名前すら憶えてもらってない以上、マルクトは問題なくメルトダウンするはずだ。

 ていうか、そうなるまで光の種シナリオで抑圧を受けることになる……と思うし。

 

 アンジェラに余計な精神負荷がかかるかもしれないから、そこに関しては申し訳ないが……。

 そこに関しては、なんとか俺が一部負担を肩代わりしたりとか、いっそ俺がエリヤを抑圧したりとか、いい感じにアドリブ利かせてリカバリするしかない。

 

 逆に言えば、まだリカバリ可能な範囲であるということで。

 大丈夫、まだ致命傷ではない。そのはずだ。

 

 

 

 後ろ向きになっても仕方ないな、逆に考えよう!

 

 俺と彼女の距離がちょっと縮まったことで、むしろL旧研での立ち位置が定まって動きやすくなる。

 アド! むしろアドだ! 今後のことを考えれば十分取り返せる!!

 

 ていうかそうだ、別に多少仲良くなっても問題ないわ!

 どうせ後でハイパー嫌われイベントが待ってるし。そこで彼女との関係も破断することだろう。

 

 そう考えると、一時的にでも仲良くなって動きやすくなるんなら、これは単純に爆アドなのでは?

 むしろチャートに書き加えるべき新たな定石なのでは?

 

 うん! 問題ないな! ヨシ!!

 

 

 

 * * *

 

 

 

「あっ、コナー、奇遇ね! 今話す時間ってある? そういえばコナーって何歳? どの巣住み? というか連絡先教えてくれない? それなら私の部屋に来なくても夜話せるでしょう?

 いや、あなたが私の部屋に来たくないって言ったんでしょう。だから折衷案を取ってるだけです。

 ……あーもうめんどくさいわね! 所長命令! 連絡先をよこしなさい!」

 

「コナー、丁度良かった! お願いがあるんだけどいい? これ、ダニエルに渡しておいてくれない?

 いっ……いやいや! 別に、あなたを待ち伏せてたわけじゃないわ! 私が直接渡しに行かなかったのは、その、ちょっと用事があって……。

 というか、その……もう1つお願いがあるんだけど……その、仕事が終わったら、また、いい……?」

 

 

 

 やべえストーカーが増えた!

 

 

 







 女性2人に追い回される……うーん、これはハーレムもの!w
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。