オーバーロード -もう一人のUNDEAD- 作:サタン
「領地の獲得、か」
ナザリックの客間でヴィクトルが呟いた。
「えぇ。ナザリックを維持するためにはユグドラシルの金貨が必要。そして定期的に安定して入手するにはモンスター素材や農耕で得た作物をエクスチェンジボックスに入れる必要があります」
(それが問題だよなぁ)
うーむとヴィクトルはうねった。
原作だったら腐敗した王国をどうにかする形で領土を得られたのだろうがこの世界に王国はそこまで腐っていない。
六大貴族は普通に政治をしているし腐敗なんてもってのほかだ。
ただ全土が健全かというとそうでもなく、僻地は腐っていたりするのはさすがにどうしようもないだろう。
必要なのはエ・ランテル近郊だ。そこにナザリックがあるのだから。
「……マッチポンプをすることになるが、出来るかもしれん」
「マッチポンプですか……」
モモンガはマッチポンプという言葉にうねった。
あまり心象はよくないが必要ならばするしかないともモモンガは考える。
「わかりました。その方法は?」
「トブの大森林にレベル八十を超える巨大なトレントのモンスターが居る。近々そいつをワールドアイテムで支配してスレイン法国の戦力にする計画があるんだが、そいつを使う」
その台詞にモモンガは恐怖した。ワールドアイテムの存在に。
「
「うーんマッチポンプですね。ですが確かにいい作戦です……うちのNPCに頭がいいって設定あるやついるんで、そいつ……デミウルゴスと相談してからでもいいですか?」
「ああ、問題ない」
そうしてデミウルゴスを含めてこの作戦の話をし、最終的にこの作戦で行くことになった。
■
城塞都市エ・ランテル。
そこにモモンガはNPCのナーベラルと共に来ていた。
モモンガは普段の格好そのままだ。ただし仮面と小手を付けてアンデッドであるのは隠している。
ナーベラルは旅の冒険者風の格好をさせている。
だが二人はすごい注目を集める。
モモンガの装備が見た目からしてすごいのもそうだが連れているナーベラルが美人なのもある。
この世界の顔面偏差値の高さに慣れてきたヴィクトルをして美人としか言えない容姿をしているのだ。
更にその中にアダマンタイト級冒険者として、かつての十三英雄の一人としても活動していたヴィクトルが入っているのだ。注目を集めないはずがない。
「ここだ」
エ・ランテルを暫く歩いていると目的地の冒険者組合に到着した。
中に入ると当然注目を集める。
ヴィクトルとナーベラルは気にもせず、モモンガは少し気になりつつも受付に進む。
「冒険者登録をしたい」
モモンガがそう告げると受付は「わかりました」と書類を出す。
「ではこちらに名前をご記入ください。登録料一人銀貨一枚です」
「わかった」
モモンガは財布を取り出す。中身はヴィクトルからもらった金貨や銀貨、銅貨が入っている。
銀貨二枚を渡す。その間にヴィクトルが名前を書いておいた。
「はい。モモンガさんとナーベラルさんですね」
このモモンガは偽名を使っていない。
やることがあるのだ。それは自身の領地を得るという事。
その計画のためにモモンガは
既にデミウルゴスとアルベド、パンドラ・アクターとも話して計画は順調に進んでいる。
「冒険者組合一同あなた方の活躍を祈っています」
それは定型文でありつつも受付嬢の本心でもあった。
数百年の時を生きるヴィクトルが直接連れてきた存在となると冒険者組合側も何かあるだろうと勘繰るしかない。
「じゃあこれで。俺は王都の方に用があるからな」
「ありがとうございました」
そうしてモモンガとヴィクトルは別れた。
■★だいだい原作通りだったのでカットだ!
数日の時が経った。
その間にモモンガはンフィーレアという薬師と親交を持ち、カルネ村での薬草採取の依頼をこなした。
そしてエ・ランテルで起きたアンデッド事変を解決しランクはミスリルにまで上がった。
冒険者のランクが銅、鉄、銀、金、白金、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトとくるので上から三番目、この街最高位の冒険者になった。
そしてモモンガはエ・ランテルの冒険者組合近くの公園でぼーと空を眺めていた。
(……そろそろ、か)
今日が例の作戦、
そのためにヴィクトルは王国と交渉し第三王女ラナーをエ・ランテルに連れてきている。
カンカンカン、とけたたましい鐘の音が鳴り響いた。
(気合を入れろ、俺)
よし、とモモンガは冒険者組合に向かった。
「諸君集まってくれて感謝する! 職人はこれから非難する市民の護衛を頼みたい!」
冒険者組合に入ってそうそう冒険者組合長プルトン・アインザックがそう発言した。
その台詞に冒険者たちはざわめく。
「今このエ・ランテルに百メートルを超えるモンスターが接近中だ! 難度は最低でも二百、人間が叶う相手ではない! この街を放棄するしかない!」
難度二百、という言葉に全員が戦慄した。
難度とはレベルかける三の数値をもとにした強さの指針だ。アダマンタイト級冒険者が九十とされている。三十の差があれば勝てなくなるとされている。
その三倍近い数値という事は誰も勝てないという事。希望があるとすれば世界を駆け巡るヴィクトルぐらいのものだろうと。
すぅっとモモンガは手を挙げた。
「そのモンスター、私が倒してきましょうか?」
「何を言っている! 人間が勝てる相手ではない!」
「人間なら、ね」
モモンガは仮面を外した。
「アンデッド?!」
「
冒険者たちはざわめくも武器を抜くことはない。
これは幽霊船の船長グレルネやデイバーノック、吸血姫イビルアイなどアンデッドとも共存を成り立たせているのだ。
そのためアンデッドの冒険者は二例目なので問題はない。
「私は第十位階魔法さえ行使できる。私ならば見事にそのモンスターを倒して見せよう」
「……その強さの証明は?」
「これでいいかな──<中位アンデッド創造>」
モモンガは
創造されるはデスナイトだ。
「で、デスナイト……英雄級のアンデッドを従えているのか……」
プルトンは唾をのんだ。
デスナイトはこの世界の知識層の上位の者は一般的に知っているアンデッドだ。カッツェ平野で何度か湧いたことのある驚異的なアンデッドとして。
「その通り。力の説明はこれでいいでしょう? 私の難度も二百を超えます」
「信じられるか! 昨日今日来たばっかの新人がなんでそんなに強いんだよ!」
それに異を唱えるのはイグヴァルジだ。
「認めたくないのかもしれませんがこれが現実です」
「なんだと……」
剣呑な雰囲気になりつつある場を変えたのは黄金の姫だ。
「モモンガ様。貴方に任せてもいいでしょうか?」
冒険者組合の入り口からそう発言しながらラナー王女が入ってきた。
「えぇ。任せてください」
「ありがとうございます。モンスターを倒した暁には多大なる褒美をとらせましょう」
「それはありがたい。では、行ってきます」
そういうとモモンガは冒険者組合を出ていった。
そして
飛んでエ・ランテルから少し出ると其処にはザイトルクワエが居た。
木の部分だけで百メートルを超え、木の根の触手は三百メートルもある巨大なモンスター、ザイトルクワエである。
「じゃあ……行くか。
モモンガが魔法を唱えると万の雷がザイトルクワエに降り注ぐ。
ダメージによってザイトルクワエが怯む。
「
その間に情報系魔法で相手のHPを見る。
(聞いてた通り膨大、レイドボス級だな)
こりゃ骨が折れそうだとモモンガは気合を入れた。
モモンガは多数の魔法を行使し、ザイトルクワエとの戦闘に挑んだ。
「ゆ、夢でも見てるのか、俺は」
イグヴァルジがそう呟いた。その言葉はこの光景を見ている者全員の内心だった。
「これこそがモモンガさーんの力です」
ふふんとそこそこ大きい胸を張るのはナーベラルだ。
都市の中からでもザイトルクワエとモモンガの戦いは目に映る。何せ全高百メートルを超える怪物なのだから見えない訳がない。城壁より高いのだ。
その怪物を魔法を持って一方的に殴ってるのがモモンガだ。
「あれこそが真のアダマンタイト級冒険者だ……」
プルトンはそう呟いた。
そうして五分も戦えばザイトルクワエは倒され、躯を晒した。