オーバーロード -もう一人のUNDEAD-   作:サタン

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第5話

 

 この世界の各国上層部は頭が柔らかい。物理的な意味ではない。

 そのためにプレイヤーという異世界からの神々についてもよく知っている為、柔軟にモモンガを受け入れた。

 それゆえにこれは必然である。

 

「ではここに。リ・エスティーゼ王国第三王女ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフの名において。破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)を倒してくださったモモンガ殿にこのエ・ランテルと周辺の村々一帯を譲ります。これからは貴族としてモモンガ・アインズ・ウール・ゴウンと名乗るように」

 

 これは既に予定されたセリフだ。元から決まっていたのである。

 

「承りました。モモンガ・アインズ・ウール・ゴウンとしてこの都市を反映させることを約束しましょう」

 

 こうしてモモンガはエ・ランテルを手に入れた。

 

 

 

 ■

 

「疲れた……」

 

 ナザリック地下大墳墓のモモンガの自室にて。モモンガはベッドにダイブした。

 

(なんだよ、転移して一週間足らずで領主になるって。サクセスストーリーにもほどがあるぞこんちくしょう)

 

 モモンガは息が出来ない体の癖に深いため息を吐いた。

 

 だが必要なことではあった。ナザリックを維持するのに必要な。

 

(これはあれだな。恥を忍んでパンドラにでも内政の勉強を教えてもらわないといかんな)

 

 やることが多いなぁ、とモモンガは更にため息を吐いた。

 

「と、時間か」

 

 今のモモンガは多忙という訳ではないが、やることはそこそこある。

 史上初のアダマンタイト級冒険者兼領主だ。今日の午後からは都市長のパナソレイとの会合がある。

 

 さぁ頑張るぞい、とモモンガは気合を入れた。

 

 

 

 ■

 

 二週間の時が経った。

 その間、問題らしい問題はなかった。

 モモンガもパンドラとデミウルゴスに頼み勉学を教えて貰っている。アンデッドなので不眠不休で働けるからこその領主の仕事との並行しての勉強である。

 流石に領主初めてのモモンガがあれこれとするわけにはいかないためパンドラやアルベドが内政の殆どを取り仕切っている。

 その結果わかったのは、わかりやすい内政チートの殆どは既にやられた後だという事。

 これはラナーのカウンセリングをしたヴィクトルが原因だ。ラナーは遠慮せずその人外の頭脳を駆使して人の発展を補佐した。

 尚その裏には犠牲になったクライム君がいる。南無三。

 

 そして元都市長の館で債務をしているとアルベドが入ってきた。

 

「モモンガ様。お伝えしたいことがあります」

「なんだ?」

 

 アルベドの表情からしていいことではなさそうだと察し、事実それは正しかった。

 

「ナザリックの一部の者たちからヴィクトルを軽視する声が上がっています」

「何故……いや。ヴィクトルは人間。異形種で構成されるナザリックのNPCからすれば人間程度にいいように使われていると思われたのか」

「はい。ご明察通りです」

 

 ここまでモモンガは殆どヴィクトルの計画通りに動いてきた。それはナザリックの利益にもなるのでモモンガは気にしてなかった。

 だがモモンガ至上主義のNPCたちからすればそれはよく思わなかったのだ。

 

「……どうすべきだと思う?」

「ヴィクトルには利用価値があると強く知らしめる必要があります。まずは最もわかりやすい、強さを示してもらうのがよろしいかと」

「……なるほど。ではヴィクトルにそう相談してみるとしようか」

 

 

 

 

 ■

 

(うっほいまさかのシャルティアとの一騎打ちだぜ★)

 

 ナザリック第六層の闘技場の控室で。ヴィクトルは緊張していた。

 シャルティア・ブラッドフォールンとのタイマン戦闘。緊張しない訳がない。

 だが、勝ち目がない戦いという訳ではない。

 何せこっちはHP無限スタミナ無限なのだ。レベル差が三十もあるならば兎も角五から十程度ならば戦いようがある。

 それにこれで力を示せばナザリックの者たちからの視線も変わるだろう。無様な真似をすれば当然そういった目に変わるが。

 

『さぁさぁアダマンタイト級冒険者ヴィクトルと我らが誇る最強の守護者シャルティア・ブラッドフォールンとの一騎打ちだ! 両選手入場をお願いします!』

 

 そうマイクで覚醒されたアウラの声が響いた。

 

 その声に従いヴィクトルは控室を出て通路に行き、闘技場内へと足を進めた。

 

(うわ。すごい熱気)

 

 そこは熱気で包まれていた。

 観戦席に座るは多種多様な異形種たち。

 悪魔やらホムンクルスやらなんやかんや色々いる。

 

 そして目の前には鮮血の鎧を纏ったシャルティア・ブラッドフォールンが居る。

 

『では両者見合って……始め!』

 

 アウラの合図によって両者駆け出した。

 ヴィクトルは右手の拳の先から死刃(デッドブレイド)を生成。更に武技<硬化>に<戦気梱封>を使う。

 これで死刃(デッドブレイド)聖遺物級(レリック)相応の強度と鋭さを得る。

 

 シャルティアのスポイトランスと衝突する。

 

 ヴィクトルはこの六百年で鍛えた剣術を持って対応する。

 シャルティアの怒涛の攻めに対しヴィクトルも攻め立てる。

 ヴィクトルは左手の手首から先を<自傷>の武技で無くした。

 

死道(デッドロード)

 

 超高圧の血が噴出される。

 シャルティアはそれを正面から喰らい奥へと吹き飛ばされる。

 闘技場の壁にぶつかり圧殺されかける。

 

<上位転移>(グレーター・テレポーテーション)

 

 シャルティアは転移魔法を唱え転移した。

 転移先はヴィクトルの背後。背後から心臓をスポイトランスで貫いた。

 

「やったな」

 

 ヴィクトルはにやりと笑い上半身をぐるりと回転させる。筋肉がちぎれる嫌な音がした。

 右手の死刃(デッドブレイド)で斬りかかるもシャルティアはバックステップで回避した。

 

「心臓を貫いたはずなのだけど……不死というのは本当のようね」

 

 シャルティアは唇をなめた。

 

(だけど完全な不死なんてないはず。回数制限かMP消費か……殺し続ければ死ぬはず)

 

 シャルティアはそう考えるもそれは大きな間違いだ。

 ヴィクトルは完全な不死だ。例え惑星の崩壊に巻き込まれたって死にはしない。

 だがさすがにワールドアイテムや始原の魔法を使われれば死ぬ。具体的にはロンギヌスの槍や滅魂の吐息を使われれば死ではなく消滅になるので死ぬ。

 

「どれ、少し本気を出そう」

 

 ヴィクトルは右手の死刃(デッドブレイド)を消し<自傷>で両手の指先を消す。

 

死閃(デッドライン)

 

 血のビームとでもいうべきものが放たれた。

 シャルティアはスポイトランスを盾のように構え防御。

 多少鎧が斬られダメージを受ける。

 

 すぐさまヴィクトルは両足を<自傷>で無くし血を噴出させ飛行する。

 音速を優に超える速度の飛翔だが守護者最強のシャルティアは問題なく視認出来る。

 死刃(デッドブレイド)とスポイトランスが衝突し合う。

 

 二人は空中を飛び回りながら何度も衝突し合う。

 

 

 

 

 

(え、強くない、ヴィクトルさん)

 

 モモンガは内心顎を外した。

 貴賓席でモモンガはヴィクトルとシャルティアの戦いを眺めている。

 その戦いはユグドラシルの上位のプレイヤーとみてもそん色ない戦いぶりだ。

 何せ守護者最強として創造されたはずのシャルティアが押されているのだ。

 

(……ヴィクトルさんは己を完全な不死といっていた。ワールドアイテムを使われない限り死なない、と)

 

 話半分で聞いていたがそれは事実なのだとモモンガは今実感した。

 再生能力を使ったごり押し戦法ではない。不死であることを最大限生かした戦い方だ。

 

(……敵対したら封印ぐらいしか勝ち目なさそうだな)

 

 敵対しなくてよかったとモモンガは内心ほっとした。

 

 

 

 

 

 

(くそ、強い!)

 

 シャルティアは内心舌打ちをした。

 強い、強すぎる火力が高い。

 何故ここまで攻撃力が高いとシャルティアは考える。

 

(おそらくバーサーカーなどのHP低下に応じて火力が上げる系のクラスや特殊技術(スキル)を使っているはず。だけどなんで死んでない?)

 

 ヴィクトルは足を斬って血を噴出させるという出血死まっしぐらの方法をとっている。人間なら死んでいるはずだ。

 いかにリジェネーターなどの再生系特殊技術(スキル)を持つクラスについていたとしても死んでいなければおかしいはずだ。

 

 それには当然種があり、HPが減ったそばから不死の力で再生しているのだ。

 いわばHP十から二十を行ったりきたりしてその間の火力を出し続けているのだ。HP低下率に応じて攻撃力が上がるクラスを習得しているのと不死だからこその力技であった。

 

 

「仕方がない……」

 

 使用は禁じられてはないが、それでも使う気がなかった奥の手をシャルティアは解禁する。

 

死せる勇者の魂(エインヘリヤル)

 

 シャルティア最大の切り札を発動した。

 

 シャルティアから霊魂が分離するように動いた。

 現れたのは真っ白なシャルティアとそっくりな存在。

 シャルティアと同じステータスを有する分身系の特殊技術(スキル)だ。装備品も本体と同じ性能を持つ。

 

「ならばこちらも手札を切ろう──分裂弾(ディヴィジョンバレット)

 

 ヴィクトルは左手の中指を放った。

 中指が再生していきもう一人の上半身だけのヴィクトルとなった。

 

 それにシャルティアは驚愕するも即座に動く。

 エインヘリヤルと分身ヴィクトルが衝突する。

 

<魔法集団化・(マスターゲティング)朱の新星>(ヴァーミリオン・ノヴァ)

 

 瞬間二人のヴィクトルが業火に焼かれる。

 対個人最強の炎魔法。それによって両方とも動きが止まる。

 その隙を逃すシャルティアではない。両方のシャルティアは動きスポイトランスで粉々に切り裂いた。

 

 だが──不死は殺せない。

 

 破片一つからヴィクトルは全身を再生させた。

 

「んなっ」

 

紅渦弾(ボルテックスバレット)百回転(ミリオンツイスト)

 

 左腕をヴィクトルは飛ばした。

 百の回転する拳を本体シャルティアは腹に受けた。

 

「ぐぅぅぅう!」

 

 そして鎧が砕け腹がねじれた。貫通はしなかった。レベル百に近い攻撃力を持つとはこういう事だ。

 

「まだまだ!」

 

 エインヘリヤルのシャルティアがヴィクトルの背後に移動。ヴィクトルがエインヘリヤルの方を向く。

 その隙をついてシャルティアはいくつかの特殊技術(スキル)を使って急接近。

 

 スポイトランスを使いめった刺しにするも不死なのであまり意味はない。

 

「なんで、死なない!」

 

 シャルティアはイラつくように叫んだ。

 

「不死だからな!」

 

 そうヴィクトルは笑みと共に返した。

 

 ヴィクトルは死閃(デッドライン)を放った。

 直撃しシャルティアが斬り飛ばされる。

 

 試合は泥沼化していった。

 

 

 

 

 

『──そこまで! 引き分けとします!』

 

 

 そうした戦いが十分ほど続いた後。最終的にモモンガの判断で引き分けとなった。

 残ったのはアンデッドの癖に疲労したように見えるシャルティアと無傷──再生してすべてのダメージをなかったことにしたヴィクトルだ。

 

「ぐっ……」

 

 シャルティアは苦い顔をした。最強として作られたのに勝利できなかったのだ。

 悔しい気持ちもあるし相手に殺意が沸いてくる。それ以上に己に対し憎悪を抱く。

 ペロロンチーノ様に創って頂いた身で何たる失態──と。

 

「良い試合だったな」

 

 ヴィクトルは体を治し、そう告げた。

 服は着ている。

 

 この世界の法則的に再生持ちが体を切られた場合、服事再生する。といっても服がマジックアイテムの場合にのみ限るが。

 そのためにヴィクトルは全裸を晒す必要がない。上半身は常に裸だが。

 

「さて、これからどうなるかな……」

 

 

 この世界は原作と違う。違いすぎてもはや原作要素がキャラクターぐらいしかない。

 この世界でアインズ・ウール・ゴウンは世界征服を成し遂げられるのだろうか──そう思いつつヴィクトルは第六層を後にした。

 

 

 尚一年で人類国家全て支配して二十年で大陸支配した。

 RTAのごとき速さにヴィクトルは馬鹿みたいに笑った。

 

 

 完

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