海鳴産地の魔導戦鬼(旧題:ややガイオウモンのマジカル戦記) 作:町コアラ
「よお、おつかれ」
『オツカレー」
アースラの食堂で宮園武道に声を掛けたのはモングレイとちっさいままのバドの2人組、彼らも事情聴取も終えたところである
「そっちもお疲れ、どうでした?悪いようにはされないはずですけど」
「ま、思ったより人間扱いしてもらえそうだな」
『ボクらは聖王教会の預かりになりそうだってさー』
詳細は後程ではあるがほぼ確定とのことだった。シスターノワール達の上司も動いてくれたらしく最低限の自由は保障されるらしい
「で?おめえの方は難しい顔してどったよ?」
「いや、すっげえ個人的なことで…」
『遠慮しないでよ一時とはいえ共闘した中じゃない』
「この前殺し合った人間と面会することになったけど、どんな顔していけばいいか
分かんない」
「『やー、専門外です』」
「うん、知ってた」
3人がそれぞれ軽食をつまみながら、話しているとシスターノワールとブランの姉妹もやってきた何やら籠を抱えている
「ハイハイ皆揃ってんねー話あったからちょうどよかった」
「あとタケミチくんにはクロノ執務官から伝言だよー『証拠残そうとしたのは分かってるがあんな状態ならいっそのこと灰にしとけ』って愚痴ってた」
「えー?せっかく手間かけたのに」
◆◆◆
少し前、クロノ・ハラオウン率いる現場検証のための部隊はある問題に直面していた
「臭い!!」
誰かが思わず口にだした。今回宮園武道が最後に相手をしたキメラ、その再生能力を止めるため丁寧にじっくりそれでいて灰にして証拠隠滅とならないように懇切丁寧に焼いた結果、あたりにまき散らされた大量の血痕も相まって残ったものはものすごい臭気
肉だった部分はほぼ焼け焦げ残りは骨ぐらいしかないがそれだって大事な情報源、推定ロストロギアの残っている体を調査しないわけにはいかなかった
◆◆◆
「諸々の検査の結果まではもう少しかかるけどあのキメラがロストロギアでほぼ確だって」
「でねでね、3人に話ってのはこの子の事なんだけど…」
シスターブランがそう言って籠を開くとそこにいたのは現在のバドと同程度の一頭身で一本の角を生やした茶色い毛皮の哺乳類のような動物。しかし手足はない
『この度は解放していただき感謝している』
「分かりにくいかもだけどあの砲台しょってた狼よ」
「ああ、あの」
『そうだ。君に殴り倒された者だ。名前に関しては型番しかなかったので彼女たちから〈ゼド〉と呼び名をもらった』
「で、2人の教会行きが正式に決まったのとこの子も教会で預かる事になったんだけど…仲良くしてね!」
モングレイとバドは頷く
「似たような境遇同士だ、仲良くやろうや」
『よろしくね~ゼド』
そしてゼドは宮園武道に向くと
『改めて君には感謝をアレに良いようにされる前によく制圧してくれた』
「あはは、そりゃあよかった」
その後6人でちょっとしたお疲れさん会のようなものをして
「…で、俺っちに相談ってなんだと思えば手合わせしてえと」
「本局着いたらお別れだし、着くまでお互い暇だし、そっちも消化不良でしょう?」
宮園武道はモングレイを連れ出していた
「確かに暇だけどなんでまた連れ出してまで__」
「「何何!?お別れが惜しいって!?教会に来たいってことなら私たちも相談のるよ!!」」
「__なるほど、どこでも人手不足と…」
そんな一幕もありつつアースラは本局への帰路へ着いた
「じゃあなタケミチ!こっからは出世勝負だ!教会で騎士になっておめえより有名になってやるよ!」
「俺は別に出世目的じゃあねえです」
『じゃあねタケミチ元気でね。マイスターごっこに付き合ってくれてありがとう』
「あれぐらいなんでもないさ。そっちもげんきでな」
本局に着いて武道がモングレイとバドとそれぞれ別れの挨拶をしているとシスターノワール、ブランをはじめとした教会の面々がクロノとリンディと共にやってきた。シスターシャッハ、シエルそして見慣れない人物がいる
「タケミチ、こちらは騎士カリムだ。シスターシャッハの上司にあたる人物だから粗相のないように」
「初めまして宮園武道さん。私はカリム・グラシア、活躍の程はかねがね伺っています。」
クロノの紹介で金の長髪の女性が挨拶をする
「ご、ご丁寧にどうも宮園武道です」
「かしこまらなくて大丈夫ですよ今日はほぼオフレコのようなものですから、先日の
シスターシエルがびくっとする。カリムに先日の武道の舐められたら云々がリンディを通して伝わったようである。カリムからしてみれば
「あ、いえいえ!全然そういうのじゃないんで!それ以前の…もっといえば俺自身の性根の問題なので!はい!」
「そうですか?いずれにせよ部下が失礼を働いてしまったことは確か。何かあれば遠慮なく相談してくださいね?」
武道はそれを否定。カリムも必要以上に食い下がる事も無かった
「それじゃあね。あんま無茶しちゃだめよ?」
「今度会うときは仕事じゃない時に会えたらいいね!」
『達者で』
「3人も元気で」
引継ぎも終わり、シスターノワールとブランそしてゼドとの挨拶も終えた後に後ろから武道にシスターシャッハに連れられ、シスターシエルが声を掛けてきた
「やー、ホントにごめんな、かばってもらう形になっちまった」
「別にかばったわけじゃないんで気にしなくていいですよ。気になるんなら今度会ったら暗器の扱いとか教えてくださいよ」
「まあ、そんなもんでいいなら…」
「ではその時は私も付き合いましょう。経験値は少しでも多いに越したことは無いでしょう」
「ありがとうございますシスターシャッハ。あなたとも一戦交えてみたかったんです」
そうして聖王教会メンバーは去り、正真正銘この事件は幕を下ろした
◆◆◆
「いや、すまないね…仮にも親子であるというのにあまり時間が取れなくて」
「いえ…全然お気になさらず大丈夫ですよ。グレアム提督」
武道はその後グレアム提督と2人きりで茶会をしていた。なんとグレアム提督本人が淹れた茶である。
「私の故郷の茶だ。子供でも飲みやすいものを淹れてみたのだがどうだろうか?」
「はい。おいしいです」
「………それで……今回は特に暴れたようだね」
「う、それは…」
「ああ、すまない。説教という訳ではないんだ。ただ懐かしいと思っただけなんだ」
「懐かしい?」
武道はついオウム返しになる
「私も国が違うとはいえ世界、星は同じ出身でしかも男だ。君が地球の魔導、その他異世界に対する防御の脆弱さに危機感を抱いてより強くあろうとするのは理解できるつもりだ。ましてや君の周りには同じ出身地の女の子の魔導師もいる。彼女をはじめ故郷に戦禍が及ばないようにとやる気もひとしおだろう」
「…まあその通りです」
武道は見透かされているようでこそばゆい思いを感じていた
「照れずともいいんだ。それほどの愛を注げる相手がいるというのは喜ぶべきことだ」
「あ、愛!?」
「愛といっても恋愛だけの話では無い。それともそういう話だったかな?」
「か、からかわないでください!」
武道は顔を真っ赤にして否定する
「ははは。しかしどうだね?肩の力は抜けたかな?」
「あ…」
「このように私も今この場ではただのいたずら好きの老人だとも、君も少し力を抜くといい」
「ずりい…」
「そうそう、言葉も崩してしまいなさい。実は息子というものに対して私も少し憧れがあってね。そうだ!我が家の茶の淹れ方を教わる気はあるかね?紅茶をかっこよく淹れられれば女性受けもいいぞ?君の周りには女性も多いからねえ」
「だ~から!そういんのじゃねえです!!」
結局なんやかんや茶の淹れ方の手ほどきを受ける事となった武道であった
数日後プレシア・テスタロッサとの面会の日がやって来た
あと2話以内には幕間終わらすよう頑張るぞ!