部屋に積もった誇りを箒やはたきを使い払い、掃除をしていた僕はふと窓の外に見える景色を眺める。
様々な制服を着ており、体には角や羽が生えその手には銃を所持し頭に光輪を浮かべた少女達が行き交うその景色は、まるで夢のようであるが、現実である。
目の前の光景にフッと息を付きつつ、僕は掃除を続行する。
ここは学園都市キヴォトス、様々な学園によって形成された学園都市だ。
常に爆発と混沌の広がる自由なゲヘナ学園。
優雅で規律を重んじる所謂お嬢様学校のトリニティ。
最先端の科学に力を注ぎ急激な発展を遂げたミレニアムサイエンススクール。
昔こそキヴォトス一の勢力だったが、突発的に発生する砂嵐により荒廃した砂漠の広がるアビドス。
豊かな自然と観光文化の栄える百鬼夜行連合学園。
伝統を重んじ観光業と飲食業が盛んな事が特徴的な山海経高級中学校。
キヴォトスの北端、一年中雪が積もっている僻地に位置する革命の地、レッドウィンター連邦学園。
連邦生徒会の直轄地や、自治区外の治安維持を担う、謂わば警察を育成するヴァルキューレ警察学校。
ヴァルキューレでも対処が難しい広域犯罪や危険な事件に投入される特殊部隊育成を目的とした、SRT特殊学園。
キヴォトス全体に広がる鉄道の運転、管理等。鉄道に関する教育に特化したハイランダー鉄道学園。
長い歴史を持つ、芸術専門のワイルドハント芸術学院。
報道に特化し、所属する生徒がテレビ中継や雑誌の作成を行う、報道の学園クロノスジャーナリズムスクール。
他にも沢山の学園が存在するこの場所は、ゲーム『ブルーアーカイブ』の舞台だ。
そんなすべての学園の生徒が訪れるであろう場所、D.U地区.……正確に言うならばDistrict of Utnapishtim。
そして現在僕が掃除しているのが、連邦捜査部S.C.H.A.L.E、いつか現れるこの世界の主人公ともいえる存在……シャーレの先生の活動拠点の予定地だ。
ここは
ふと見れば、ガラスに反射して映っているのは、金色の瞳と真っ白な毛並みの巨大な猫が2本足で立ち、その手にモップを持って掃除している姿。
僕は、言わば転生者と呼ばれる存在だ。
友人にブルーアーカイブというゲームを紹介され、友人の想像を超えてどはまりした僕は、気が付けばこの世界に白猫の獣人となって転生していた。
トラックに跳ねられたり、通り魔に刺されたり、自殺をした訳でもない。
家に帰りブルーアーカイブにログインし、デイリーミッションを終わらせアプリを閉じて布団に入った。
そして目が覚めると僕は、今まで住んでいた世界とはまるで根幹から違うキヴォトスという世界の、猫の獣人になっていた。
どうしてこうなったのか、分からないし混乱もしたが僕は考えた。
どういう理屈でこうなってしまったのか分からないが、こうなってしまったのなら仕方がない。
解決手段も、何もないのだからこの世界を楽しむことにしようと。
楽観的だとか、適当とか友人は僕をそうや揶揄っていたが、僕にとってこの在り方は楽だし今後も変えるつもりはない。
そんな僕が何故ここで清掃員をしているか?これは僕がある日、僕の本業……仕事先に送られてきた、連邦生徒会からの一通の手紙が原因だ。
何でも、行方を眩ませた生徒会長が僕を清掃員として指名したらしい。当然ながら断ることも可能だったが、ブルアカのメインストーリーを間近で眺められるのなら、断らない理由はなかった。
せっかくのキヴォトスでシャーレにいるんだからこれを逃さない選択はなかった。
何故、連邦生徒会長が僕を指定したのかは知らないが、せっかくの機会だし楽しませてもらおう。
「此方です、先生」
背後から聞こえてきたその声に片付け終えた掃除用具の入った清掃カートに片手を添えて振り返る。
そこには連邦生徒会の連邦生徒会長代行である眼鏡をかけたエルフ耳の少女、我らがリンちゃんこと七神リン。
そして恐らく七神リンが連れてきたのは、片手でタブレット端末を持った優しそうな顔と雰囲気が特徴的な
彼女は部屋に入った瞬間に此方を見つめると、ピシリと固まった。
「ここが、連邦捜査部S.C.H.A.L.E……おや来ていたのですか。先生、シャーレの清掃を任せれているのがこの……
ふむ、どうやら彼女が先生であることは間違いなさそうだね。
どうやらこの世界は女先生だったようだ、これから様々な事を生徒と乗り越えていくこととなる。
それと同時に、生徒に対して様々なセクハラ言動とキモい行動をとることとなる。
パッと見は、優しそうな……それこそ先生や保育士なんて似合いそうで、原作のような行動をとるとは思えないのだけど。
そわなことを考えつつ、此方を見つめる先生に少し首を傾げながら目を細め微笑む……すると。
「"おっきな猫ちゃん!よーしよし!"」
そういいながら僕へと近付くと、僕の頭や首を撫でてきた。
訂正やっぱりこの人は先生、だ。
間違いないね。
さて身一つでこのキヴォトスにいつの間にか転生?らしき状態となった僕だが、転生特典と呼べるのか分からないが一つだけ、特筆した特徴があった。
金色の瞳を持つ白猫、当然だがこの世界の獣人は喋る、当然
「ふふっ、そんなに迫られたら照れてしまうね?」
「"うぇ!?"」
そう、僕の声は……CV石◯。
聞いただけで、裏切るのでは?と想像してしまいそうになる、あの人の声なのである。
せっかくの声なので、この声のキャラに似せた口調で話すことを意識している。
「"猫がしゃ、喋って……"」
「先生、少し距離感を考えるべきかと。相手は男性ですよ」
「"お、男の人!?す!すいません!とんだ失礼を"」
「構わないよ。はじめまして、僕の名前はシロネ。白猫のシロネさ、分かりやすいだろう?よろしくね、シャーレの……先生さん?」
そういいながら握手の意味でてを差し出すと先生はその手を両手で握った。
「?」
「"ぷにぷにが気持ちいい……"」
そして、そういいながら握られた手の肉球に触れ続けどこかだらしないというべきか、なごんでいるというべきな表情を浮かべている先生。
この先生、さては猫好きか?
猫好きに悪い人はいないというけど、彼女がそうなら確かに猫好きに悪い人はいないようだ。
便利屋68のカヨコと一緒になって暴走しないことを祈りたいね。
「ふふ、どうやらシャーレの先生はとても面白い人のようだね。リンちゃん」
「誰がリンちゃんですか……先生、説明を続けても?」
その後、この場所についてのリンちゃんからの説明と共に他の場所を確認しに向かうのを僕は見送ってから清掃カートを押して新たな掃除場所へと向かう。
ここで清掃員をしているが、あくまでも副業だ。
夜には本業が残っているし、体力は残す感覚でのんびりやろうか。
シャーレの先生がキヴォトスへ現れてから、目に見えて治安が良くなった。
やはり、主人公パワーはすごいな。
先日は掃除中にセミナーオオフトモモこと早瀬ユウカさんが来日したから、恐らくは先生とメモロビ(意味深)したんだろうね。
だとするなら、次に起こるべきことは……。
「"あの!"」
「おや?ただの清掃員である僕に、何か用かな先生」
背後から聞こえてきた声に振り向きながら、余裕を持った吐息多めの返事を返す。
「私、これからアビドスへ向かうことになりまして。戻るのは未定なので暫くは執務室の掃除は大丈夫です!」
「なるほど……分かったよ。それにしても、アビドスか」
とうとう始まるんだな、ブルーアーカイブのメインストーリー!アビドス廃校対策委員との出会いそして何より、ゲームで一番有名な一人称といっても過言ではないキャラ。
おじさんこと、小鳥遊ホシノとの出会いだ。
とても、わくわくするね!現場にはいないけど。
「君は、その選択をするんだね。うん、わかったよ」
「"あの、アビドスについて知ってるんですか?"」
先生の言葉にここど説明すべきか迷うところだ。
ここで何かいらない発言をして、先生がシロコに助けられる展開が消えてしまうのは避けたいところだ。
ここはアビドスについて話している風にして、説明しない言い回しをすれば良い。
さぁ行くぞカヲルくん語録!
「物語はいつだって、一番追い詰められた場所から始まる………アビドスは物語の始まりであり、終わり。そして繰り返される場所……貴方は太陽を見るだろう」
「"え、えーっと?"」
「ふふ、たまには詩のような言葉を吐いてみるのも面白いね。分かりやすく言うならば、砂漠だよ。水分は多く持っていくと良い」
これぐらいなら、別に物語に影響しないだろう。
さて、先生の部屋は暫くは掃除しなくて良いみたいだし良い感じに手を抜いて早く終わらせよう。
…………本業もあることだしね。
「ふふ、僕のような年寄りはね、若い人が選択する未来を見るのが好きなのさ」
「"年寄り……?"」
「ふふ、気にしないで。君は……ちゃんと“正しい場所”へ行く」
前世から年を考えるなら、もう年寄りをなのって良い……はずだしね。
清掃用具を持ち直し、出口へ向かいながらあのキャラっぽく振り返りながら言う。
「だから無事に帰ってくるんだよ。続きが、見たいからね」
「"……見たい、って?"」
「行ってらっしゃい、先生………さぁ、青春の物語の始まりだよ」
ご愛読ありがとうございます
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CV石◯ 彰の名言、迷言
お待ちしています。
続きはケイと一緒に過ぎ去りました。