ロシア連邦、異世界にて飛躍する   作:兎の助

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第九話:国境戦

 

朝日が徐々に昇り、辺りが薄っすらと明るくなりつつある。

 

ワーザルクト帝国軍がハティリア王国に向けて進軍を開始し、大勢の兵士と大量の攻城兵器が国境線に集結していた。

帝国は初動として北部から50万に近い軍勢をヴォロヴェツ要塞に向けて移動させ、攻撃を開始した。

 

帝国の兵士達は激しい戦闘に向けて戦意を奮い立たせていた。だが対照的に将軍達はこれだけの軍勢がいれば、堅牢な要塞も一日か二日、長くても一週間以内には堕とせるだろうと考えていた。

 

だがそれは短絡的な考え方であったと思い知ることになる。

 

 

 

 

午前6時00分 ハティリア王国軍 ヴォロヴェツ要塞指令室

 

「敵軍、国境を越えました!規模は…推定で50万!」

 

「レーダーに多数の目標を確認!帝国軍のワイバーン部隊です!」

 

王国軍のレーダー管制官が、司令官に向けて叫んだ。ロシアから供与されたP-18レーダーが、大規模な航空部隊(ワイバーンの群れ)の接近を探知していた。

 

「総員、第一種戦闘配置!全砲兵隊、射撃準備!兵士各員は対空砲の配置につけ!急げ!!」

 

ハティリア王国軍北部方面副司令官、ロベルト・フォン・アルトハイム准将が命令した。

 

「それから…ロシア軍に緊急支援を要請!そして、首都に報告せよ!国王陛下が寝ていても叩き起こせ!!」

 

 

 

 

午前6時15分 アルゴスタ空軍基地(ハティリア領内)

 

「報告します!緊急出動命令です!ワーザルクト帝国が国境線を超えて進軍を開始!」

 

「総員搭乗せよ!国境線に向かうぞ!」

 

Давай! Давай!! Давай!!!(急げ急げ急げ)

 

アラームが鳴り響く中、デジタルフローラの装備品を身に纏った完全装備のロシア軍兵士達が、列をなして駆けていく。

 

ロシアはハティリア領内に基地を幾つか設置していた。ここはその中の一つで、ワーザルクトとハティリアとの国境線に一番近い基地であり、他の基地と比べて一番規模が大きい基地であった。

【挿絵表示】

 

空軍基地というだけあって敷地内には巨大な滑走路や航空機の格納庫はもちろんの事、数万人を収容できる兵舎群に戦車・装甲車の格納庫、ヘリポートにレーダー、通信アンテナ等、充実した設備を持っている。

 

そしてそこには、第1機甲旅団(T-90A及び T-80BVM戦車・合計60両、BMP-2及びBMP-3歩兵戦闘車・合計80両、BTR-82装甲兵員輸送車・70両、その他トラック等の車両)、第1砲兵旅団(2S19ムスタ自走榴弾砲48両、BM-30スメーチ及びBM-21多連装ロケット砲、合計24両)、そして航空部隊(Su-35戦闘機24機、Su-25攻撃機36機、Ka-52攻撃ヘリ12機、Mi-24攻撃ヘリ8機、Mi-28攻撃ヘリ4機、Mi-8輸送ヘリ24機)が配備されていた。

 

「全車両、エンジン始動!前進!!」

 

T-90A戦車の125mm滑腔砲が、朝日を反射して輝いた。

 

 

 

 

午前6時30分 ペレンゾ半島要塞線 ヴォロヴェツ要塞

 

ヴォロヴェツ要塞の城壁には、ハティリア王国軍とロシア軍の兵士達が配置についていた。

 

ハティリア軍:約8,000名(AKM自動小銃、RPD軽機関銃、SVD狙撃銃で武装)

 

ロシア軍:約500名(AK-12及びAK-74M自動小銃、PKP機関銃、SVD狙撃銃で武装、ATGM対戦車ミサイルと対空ミサイルを運用)

 

 

城壁上には

 

D-30 122mm榴弾砲:6門

 

SPG-9 73mm無反動砲:12門

 

ZU-23-2 23mm対空機関砲:8門

 

DShK38 12.7mm重機関銃:18門

 

9K38イグラ携帯式地対空ミサイル:多数

 

そして要塞の背後には、ロシア軍の2S19ムスタ自走榴弾砲が6両と120mm迫撃砲8門が控えていた。どれも砲口を上へと掲げ、そこに納められた(装填)圧倒的なまでの暴力を解き放つのを今か今かと待ち構えている。

 

「敵、視認!距離15キロ!」

 

見張りが報告した。

 

ヴォロヴェツ要塞の司令官、ハティリア王国軍のエドワード・ストーンウォール将軍は報告を受けて要塞の一番高い側防塔に上った。

彼は50代半ばのベテラン軍人で、多くの戦いで経験を積んできた歴戦の猛者である。しかし今回の敵の規模は、これまで彼が見てきたものとは桁違いだった。

 

「敵の兵力は?」

 

「ここから見える限りでは推定で約50万ほど。ベルザード要塞や国境要塞線からの報告も合わせれば最低でも100万以上。おまけにその後方にも予備部隊がいることを考えれば、200万は下らないでしょう。その内、約10万が我が要塞への先遣攻撃部隊と思われます」

 

「10万か…」

 

エドワードはアルトハイム准将の報告を聞いたのち、改めて塔から敵の軍勢を見下ろした。地平線まで、黒い軍列が長く続いていた。

 

「確かに多いな…だがしかし、我々にはこの堅固な要塞がある。そして、ロシアの武器と共に戦ってくれる同志たちがいる!」

 

彼は、城壁上に配置された武器を見渡した。数々のロシア製武器に、厳しい訓練を受けてきた歩兵。彼らはAKMやRPDで武装しており、その表情に怯えや恐怖の色は無い。彼らにあるのは故郷を守るという一心のみ。

将軍は深く息を吸い込むと、城壁上に展開している兵士たち向けて声を張り上げた。

 

「全将兵各員に告ぐ!これは我々の国土を、誇りを、大切なものを守る戦いだ!決して一歩も引くな!例え手足が千切れようと、(はらわた)が零れ落ちようと戦意を断つな!!戦うことをやめるな!!」

 

城壁上の兵士たちの視線が、一斉に塔の方へと向いた。

 

「ここで我々が墜ちれば、この後ろにいる多くの王国臣民が帝国の手によって殺され、辱められ、未来や希望を奪われる!!その中には、君たちの大切な者もいるかもしれない!!ここにいる我々が、この国の最初で最後の守りだ!!」

 

兵士たちは誰一人、一言も喋ることなく将軍の声を聞いていた。

 

「ロシア軍は必ず救援に来てくれる!!だから耐えろ!ここで耐えしのげば、我々の勝ちだ!!」

 

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」

 

要塞にいる兵士たち全員が気合を入れ、雄たけびを上げた。

 

「全砲兵隊、射撃準備!ただし、敵が射程内に入るまで待て!」

 

エドワード将軍が命じた。彼の頬からは、一筋の汗が流れ落ちた。

 

 

 

 

午前6時45分

 

夜明けと共に、帝国軍の攻撃が始まった。

 

まず帝国軍のカノン砲部隊が、要塞に向けて砲撃を開始。黒色火薬の煙が立ち込め、重い砲弾が空を飛ぶ。

砲弾が要塞の城壁に着弾し、石が砕け散った。しかし城壁は厚く造られている為、一発当たっただけでは簡単には崩れなかった。

 

「反撃しろ!D-30でカノン砲を吹き飛ばせ!」

 

ハティリア軍の砲兵たちが、反撃としてD-30 122mm榴弾砲を発射。近代的な榴弾砲は、帝国軍のカノン砲よりも遥かに長射程で精度も高かった。

榴弾が帝国軍の砲兵陣地に着弾すると、黒色火薬が詰まった樽に引火して爆発が連鎖し、カノン砲が次々と天高く宙を舞って破壊された。

 

「よし!このまま…」

 

しかしその時、見張りが叫んだ。

 

「警戒!敵ワイバーン、接近!」

 

空が黒く染まった。約500騎のワイバーンが、要塞に向かって飛来していた。

帝国軍の竜騎兵隊長が部下に向かって叫んだ。

 

「全騎、私に続け!ハティリアの田舎兵どもを叩き潰すぞ!!」

 

「来るぞ!対空砲、迎撃準備!」

 

ZU-23-2対空機関砲が、空に向けられ…

 

「射程内に入った!撃て!」

 

「叩き落せ!」

 

23mm機関砲が連続して発砲。無数の曳光弾が、空に赤い線を描いた。

 

「な、なんだ!?」

 

ワイバーンと竜騎兵の体が次々と撃ち抜かれ、一騎、また一騎と撃墜されていく。しかし物量というのは、たとえ現代兵器でもってしても完全に防げるものではない。

一部のワイバーンが、塹壕や城壁に向かって急降下を開始。そして口から炎を吐き出し、火の雨が降り注いだ。

 

灼熱の炎が狭い塹壕内を這うように広がっていき、複数の兵士たちが火だるまになっていく。彼らは火を消そうと転げ回りながら悲鳴を上げた。

 

「うぎゃああああっ!」

 

「だ、助けてぐれぇ!!」

 

「熱い!熱い!!」

 

「衛生兵!水だ!水を持ってこい!」

 

塹壕内の兵士たちも反撃を開始。9K38イグラ携帯式地対空ミサイルを肩に担ぎ、狙いを定める。ロックオン完了のビープ音が小さく響くと同時に、兵士たちは引き金を引いた。次々と発射されたミサイルは、ワイバーンを追尾し撃墜していく。

 

「クソッ!振り切れない!!」

 

「どこまでも付いてくる!!た、助け――」

 

ミサイルに搭載された高性能爆薬は、ワイバーンと竜騎兵を吹き飛ばしミンチ肉へと変えた。

要塞線全域でAKMとAK-74Mの銃声が響き、低空飛行するワイバーンに向けて集中砲火が浴びせられた。

 

30分に及ぶ激しい空中戦の末、ワイバーン部隊は約200騎を失って撤退した。

しかし同時に要塞の守備隊も、約300名の損害を出していた。

 

 

 

 

午前8時00分

 

空中戦が終わると、帝国軍は次に地上からの攻撃を開始。帝国軍の歩兵約3万が、要塞に向かって進軍してきた。

 

「前進!突き進め!!」

 

「来るぞぉ!!射撃開始!」

 

城壁上のDShKや兵士たちのAKM及びRPD等の銃火器が、一斉に火を噴いた。

放たれた弾丸は帝国軍の隊列に降り注ぎ、最前列の兵士たちが次々と倒れた。彼らの着ている革鎧や木の盾、そして騎士の甲冑などは7.62x39mm弾を受け止めることが出来ず易々と貫かれていく。

DShKの12.7x108mm弾は兵士の頭を、まるでスイカのように原型が残らない程粉々に吹き飛ばす。周囲に飛び散った肉片や骨が仲間の顔や体に降り注ぎ、兵士たちは恐怖した。

 

しかし帝国軍は止まることなく、倒れた兵士の死体を乗り越えて後続が前進してくる。

 

「狙え!…今だ、発射!」

 

SPG-9 73mm無反動砲が、対人榴弾を発射。榴弾が敵の隊列中央で爆発し、数十名の兵士が吹き飛ばされた。

 

「榴散弾装填完了!発射!!」

 

D-30榴弾砲が発射すると、空中で炸裂した榴散弾が無数の金属片となって地上に降り注いだ。

真下にいた帝国軍の兵士たちは、雨のように降る注がれる金属片に貫かれていく。しかし、それでも帝国軍は前進を続けた。

 

やがて運よく城壁真下に取り付いた兵士たちは、梯子を城壁にかけて登ろうとする。

 

「奴ら城壁に取り付こうとしています!」

 

「手榴弾を投げろ!梯子を叩き落せ!」

 

兵士たちが手榴弾の安全ピンを引き抜くと、城壁上から次々と投げ落としていく。直後、爆発が連続し城壁の下にいた帝国軍兵士たちが梯子もろとも吹き飛ばされた。

 

 

 

 

同時刻 ベルザード要塞 城門前

 

南部のベルザード要塞でも、王国軍と帝国軍による激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

「城門を破壊しろ!」

 

帝国軍が、巨大な破城槌を持って城門に突進してきた。

 

「城門を守れ!決して中に入れるな!!」

 

要塞の守備隊が、城門の上から石や熱した油を投げ落とした。

 

しかし、帝国軍は必死だった。何度も何度も、破城槌を城門にぶつけた。

 

城門が、徐々に亀裂を生じ始めた。

 

「まずい!このままでは破られる…!」

 

「RPGで城門下を狙え!」

 

城壁上からRPG-7が発射された。OG-7V破片榴弾が、城門の真下にいた帝国軍兵士たちを吹き飛ばした。

破城槌は倒れて作戦は失敗するも、新たな脅威が彼らの前に現れた。

 

「何だ、あれは…!」

 

地面が揺れ始めた。そして森の中から巨大な影が現れた。それは地竜(ランドドラッヘ)だった。

全長約12メートル。4本の太い脚と長い尾を持つ、巨大なトカゲのような魔獣。その皮膚は硬い鱗で覆われており、並大抵の攻撃では傷つかない。

見た目はトリケラトプスとステゴサウルスを掛け合わせたような見た目と言えばいいだろうか。

 

そしてその地竜の後ろには、ジャイアントオークとトロールの群れが続いていた。

 

ジャイアントオーク—身長3メートルを超える、緑色の肌を持つ獣人。筋骨隆々とした体躯で、巨大な棍棒を振り回している。

 

トロール—身長4メートル近くに達する、灰色の肌の巨人。驚異的な怪力と再生能力を持つ。

 

帝国軍魔獣部隊、総勢約150体が要塞に向かって突進してきた。

 

「まさか早々に魔獣部隊を駆り出すことになるとはな…前進!城門を破壊しろ!!」

 

「魔獣部隊だ!」

 

「標的を魔獣に変更!!撃てぇ!!」

 

D-30榴弾砲が、地竜に向けて発射された。榴弾が地竜の背中に命中し、爆発。地竜は苦痛の咆哮を上げるものの、まだ倒れるまでには至らなかった。

 

「よし、効いているぞ!もう一発だ!」

 

再び榴弾が命中。今度は地竜の脚に当たり、脚の骨が砕けて地竜は地面に倒れた。しかし、ジャイアントオークとトロールは止まらなかった。

 

「連続で射撃しろ!浴びせるんだ!!」

 

無反動砲が、次々と魔獣たちを撃った。

ジャイアントオークの一体が、頭部を撃ち抜かれて倒れた。しかしトロールは榴弾を受けても、再生能力で傷を癒していく。

 

「トロールには一発だけじゃ効果が薄い!もっと集中砲火だ!」

 

複数のSPG-9が、一体のトロールに集中射撃を浴びせた。次々と命中し、腕や腹の肉が吹き飛ばされていくと、流石のトロールでも再生能力が追いつかず、膝から崩れ落ちて倒れた。

 

こうして魔獣部隊との激しい戦闘が2時間ばかり続き、最終的には魔獣部隊は壊滅したが、要塞の守備隊も約200名を失った。

 

 

 

 

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