ロシア連邦、異世界にて飛躍する   作:兎の助

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第十三話:シサフィール半島の攻防

2032年11月16日 午後3時00分 オゼラ首都エルフィア 最高評議会議事堂

 

オゼラの首都エルフィアは、ペルデア大森林の奥深くにあるマスファン湖の湖畔にあった。

この湖は、オゼラとアサヒノ国の国境線上に位置しており、美しく輝く青い水面が両国の間に広がっている。

首都エルフィアの街並みはとても美しく、白い石造りの建物や木造の民家が緑の木々の間に点在しており、自然との調和を生み出している。

 

最高評議会議事堂はその中でも最も古い歴史を持ち、最も荘厳な建物。その議事堂の最奥、円形の議場に約100名近い長老と議員が集まっていた。

中央の演壇には、最高議長老エルロンの姿がある。彼の手には、一枚の報告書が握られており、その手は小さく震えていた。

 

「…ここにいる者の中には、既に知っている者もいるだろう…」

 

彼の声は、かすれていた。

 

「諸君…ネレシア島が陥落した…」

 

議場が一瞬静まり返り、そして次の瞬間、騒然となった。

 

「何だと!?」

 

「ネレシア島が!?」

 

「まさかそんな…」

 

エルロンは手を挙げて場を制すると、報告書を読み上げた。

 

「昨日11月15日午前6時頃、ワーザルクト帝国海軍艦隊がネレシア島を攻撃。島に駐留していた我が軍の守備隊2,000名は、弓矢と魔法で応戦したが…力及ばず。同日午前8時に島は陥落。守備隊は戦死者約1,200名を出し、残りの約800名はそのまま捕虜となった。」

 

彼はそこで一旦区切り、一呼吸置いた後、説明を続けた。

 

「さらに…島にいた民間人約2,000名も、同じく捕虜となった…。現在、合計約3,000名の捕虜が帝国軍の支配下にある…」

 

議場に、絶望の声が広がった。

 

「そんな…」

 

「ネレシア島は、我が国の要衝だったのに…」

 

「守備隊長のセレンディア・ムーンシャドウ殿は?彼女はどうなった!?」

 

「…捕虜となったと思われる。だが詳細な情報までは…」

 

エルロンの声は、重かった。

その時、一人の中年エルフ――改革派の長老であるカエラン・スターウィンドが立ち上がった。

彼は改革派のリーダー格として、以前からロシアの技術導入を訴えていた人物だった。

 

「これは…この結果は、一体誰の責任だ!?」

 

カエランの声は怒りに震えており、彼の視線は議場の一角に向けられている。

視線の先には、保守派の長老たちがバツが悪そうに座っていた。

 

「ソレン長老!」

 

カエランが、一人の男を指差した。彼は保守派のリーダー、ソレン・オークハート。オゼラの伝統を重んじる保守派の重鎮だった。

 

「あなた方保守派が、ロシアの技術導入に反対したからだ!」

 

「な、何を言う!」

 

ソレンも立ち上がり、反論する。

 

「ネレシア島の陥落は、我々の責任ではない!」

 

「では、誰の責任だ!?」

 

別の改革派議員、若いエルフのアリエル・ウィンドランナーが同調するように叫んだ。

 

「我々は何度も言った!ロシアの兵器を導入すべきだと!ロシアの技術を導入し、訓練を行い、防衛力を強化すべきだと!しかし、あなた方保守派は、何と言った!?」

 

アリエルの声は、激昂していた。

 

「『エルフの伝統を守れ』、『弓と魔法で十分だ』、『異世界の技術など不要だ』…そう言って、反対し続けた!」

 

「そ、それは…」

 

ソレンは言葉に詰まった。そんな彼の様子を見て、カエランが報告書を掲げた。

 

「だが結果はどうだ!?ネレシア島は陥落し、島民約3,000名は捕虜となっている!!ネレシア島の守備隊2,000名は、弓矢と剣、そして魔法だけで戦った!島にあった近代装備は、わずか4基の対空砲のみ!それで一体、どうやって数十倍もの差がある帝国軍と戦えというのか!?」

 

彼女は声を荒げ、肩で息をする。

 

「現在、我がオゼラ軍の近代装備普及率は、わずか30%程度だ!残りの70%は、未だに弓と魔法に頼っている!もし全軍が近代装備を持っていたら!もし十分な訓練を受けていたら!結果は自ずと違っていたはずだ!現にハティリア王国はワーザルクト帝国軍の猛攻を耐えきった!この事実が何よりの証拠だ!!」

 

保守派の長老たちは、その言葉に何も言えなくなってしまった。事実、保守派が改革に反対したせいでオゼラ軍の近代化は他国と比べて大幅に遅れている。

導入した部隊も現状、十分な訓練を受けていない。

 

「あなた方は、責任を取るべきだ!」

 

彼女の声に合わせて別の改革派議員が続々と立ち上がり、次々と保守派を糾弾し始める。

 

「辞任しろ!」

 

「保守派は、もう黙っていろ!」

 

ソレンは周りからの声に気圧され、へなへなと椅子に座り込んだ。

彼の顔は、蒼白だった。

 

騒然とする光景を前に、エルロンは手を上げ、そして声を張り上げた。

 

「静粛に!!今は、責任追及をしている場合ではない」

 

エルロンの声に場は静まり、視線が彼に集中する。

彼は、議員たちを見渡した。

 

「我々は、今すぐにでも行動を起こさなければならない。…ロシアとハティリア王国に、支援を要請する。これに、反対する者はいるか?」

 

議場は静かだった。保守派の長老たちも、何も言わなかった。

もはや彼らは、反対できる状況ではなかった。

 

「ではこれより採決を取る。支援要請に賛成の者は挙手を…」

 

全員が、手を上げた。満場一致だった。

 

「可決。それでは直ちにロシアとハティリア王国、そして隣国のアサヒノ国との緊急会談を設定せよ」

 

 

 

 

同日 午後5時00分 4カ国緊急テレビ会談

 

オゼラ、ロシア、ハティリア王国、アサヒノ国の4カ国首脳による緊急テレビ会談が開催された。

大型モニターの画面には、オゼラのエルロン最高議長老、ロシア連邦のヴォルコフ大統領、ハティリア王国のエルドバラン、そしてアサヒノ国のヤシャ・オマツ王の姿が表示されている。

最初に口を開いたのは、エルロンだった。

 

「諸国の首脳の皆様、この度は緊急の会談にご参加いただき大変感謝しております」

 

エルロンの声は、疲弊していた。

 

「既にご存知の通り、我が国オゼラはワーザルクト帝国の攻撃を受けています。ネレシア島は陥落し、3,000名の同胞が捕虜となっている状況です。今後帝国軍は、ネレシア島を起点に次の攻撃を行うでしょう…予想ではシサフィール半島への攻撃が一番、可能性として高いとのこと…我々だけでは帝国軍の攻撃を防ぎきれません。同盟国の皆様に、支援を要請します…」

 

この訴えにヴォルコフ大統領が答えた。

 

「エルロン議長老、ロシアは全力で支援します。ですが…」

 

ヴォルコフは、言葉を詰まらせた。

 

「現在、我が国は部隊の編制中です。ハティリア王国のみならずオゼラへ派遣できるよう部隊の準備を進めていますが、すぐには出動できません。最短でも、7日から10日は必要です」

 

「我がハティリア王国も、現在国境線で帝国軍と睨み合いを続けている。今、国境の防衛から戦力を引き抜くのは難しい状況だ…予備部隊も準備と派遣に一週間以上はかかる…」

 

エルドバラン国王も申し訳なさそうに答えると、エルロンの顔が曇る。

場に重苦しい空気が漂う中、アサヒノ国王ヤシャ・オマツが答えた。

 

「エルロン議長老殿、我がアサヒノ国が貴国を支援します」

 

エルロンは驚いた表情で、ヤシャの顔を見た。

 

「ほ、本当か…貴国が…?」

 

「えぇ。我が国とオゼラは、マスファン湖を挟んで隣接しています。もしオゼラが墜ちれば、次は我がアサヒノに帝国軍は攻め入るでしょう」

 

ヤシャの目が、鋭くなった。

 

「ネレシア島の二の舞だけは、絶対に阻止しなければならない。それに、貴国は我が国の友好国。見捨てるわけにはいかない」

 

そう言うヤシャの声はとても力強かった。彼は拳を握りしめ、言葉を続ける。

 

「我がアサヒノ国陸軍より、戦車12両、装甲車40両、歩兵二個大隊からなる部隊を派遣します。総兵力は約3,000です」

 

「ヤシャ国王陛下…感謝します…」

 

エルロンの目から涙が溢れ、それを見たヤシャは微笑んだ。しかし、彼はすぐ表情を真剣なものに戻す。

 

「ただし、部隊が準備を整えオゼラ国境に到着するまで、最短でも3日から4日はかかります。それまでの間、オゼラ軍にはなんとか持ちこたえていただきたい」

 

「分かりました、必ず持ちこたえます。我がオゼラ軍は、全力で戦います」

 

「ロシアも、できる限り早く部隊を派遣します。それまでアサヒノ国の皆さん、オゼラを守ってください」

 

「了解しました」

 

「我がハティリア王国も国境の防衛が成功し、余裕ができ次第、支援部隊を送ろう」

 

4カ国の首脳は、互いに頷き合った。同盟の絆が今、試されようとしていた。

 

 

 

 

同日 午後6時00分 ネレシア島 帝国軍司令部

 

元は防衛拠点として使われていた砦は現在、帝国軍の前線司令部として使われている。

会議室ではヘルムート・フォン・グロスマン中将の他、帝国軍の幹部や将校数名が作戦会議を行っていた。

 

卓上の地図を前に、グロスマン中将は次の作戦を立案していた。

 

「諸君、ネレシア島は我が手に落ちた。次は、オゼラ本土を攻め落とす」

 

彼の指が、地図上のシサフィール半島を指した。

 

「明日、このシサフィール港を占領する。そしてそこを足掛かりに、ペルデア大森林を通って首都エルフィアを攻略する」

 

【挿絵表示】

 

 

彼がそこまで言ったところで、そばで聞いていた将軍の一人が尋ねた。

 

「閣下、森はエルフたちの庭のようなものです。奴らは地の利を生かして森の中でゲリラ戦を展開するでしょう。そうなれば我が軍にも少なくない被害が出ます。それにオゼラの隣国のアサヒノ国が援軍として駆け付ける可能性もあります」

 

「ならば、援軍が来る前に森を焼き払ってさっさと攻め落とせ。時間をかければかける程、奴らは防備を固める。そうなる前に多少の犠牲を出してでもオゼラ全土を手中に収める必要があるのだ」

 

グロスマンは、冷酷に言った。

 

「森なぞ全て燃やして灰にしてしまえばいいのだ…」

 

 

 

 

2032年11月17日 午前7時00分 オゼラ シサフィール港

 

シサフィール港は、シサフィール半島の先端にある商港だ。

大きな港町に、約10,000人ものエルフが生活している。漁業や貿易の中心地として首都エルフィアと並ぶ一大都市として機能している。

 

港には漁船や商船が並び、町の住民たちはいつものように朝の準備をしていた。

その時、見張りが叫んだ。

 

「帝国軍だ!海から敵が来るぞぉ!」

 

水平線の向こうから、無数の帆が見えた。帝国海軍の艦隊がネレシア島からやって来たのだ。

戦列艦が約10隻に投石船が約20隻の艦隊。港の住民たちはパニックに陥った。

 

「逃げろ!」

 

「首都へ避難だ!」

 

しかし逃げるような時間をくれる程、帝国軍は優しくなかった。

帝国艦隊は港に接近し、そして砲撃を開始した。

 

戦列艦の大砲が火を噴き、砲弾が港の建物に命中。木造の建物が、粉々に吹き飛んだ。

投石船はカタパルトで巨大な石を投擲。石が港の倉庫の屋根に命中。

屋根が崩壊し、中にいた人々が次々と下敷きになる。

 

「うわああああっ!」

 

「助けてくれぇ!!」

 

悲鳴と助けを求める声が、港のあちこちから響いた。

 

砲撃が続く中、今度は上陸作戦が始まった。

帝国海軍の海兵隊、約2,000名が小型ボートで港に接近。次々と港に上陸してくる。

 

オゼラ軍の守備隊、約200名が応戦。弓兵が矢を放ち、魔法使いが火球を放った。

 

しかし、あまりにも数が多すぎた。

瞬く間に上陸部隊は市内へと突入。剣と剣が交わり、火花が散る。

 

オゼラ軍は必死に抵抗を続けるも、数で圧倒的に劣っていた。

 

攻撃は、約1時間にも渡って続いた。港の建物の大半が破壊され、火災が発生し、黒煙が空に上る。

そして、喧騒が止んだ。守備隊は壊滅し、逃げ遅れた市民約1,000人が捕虜として捕まった。

 

僅か2時間余りでシサフィール港も陥落した。

 

 

 

 

2032年11月17日〜19日

 

帝国軍は占領したシサフィール港を起点に、猛烈な速度でシサフィール半島を侵攻した。

兵士たちは休むことなく、一つの村を占領した後、すぐさま次の村や町へ向けて進撃を続けた。

オゼラ軍の装備は殆どが弓と剣だけであり、それだけでは圧倒的物量でもって侵攻してくる帝国軍には対抗できなかった。碌な抵抗もできず、シサフィール半島にある村々は次々と陥落していった。

 

【挿絵表示】

 

 

わずか3日間でシサフィール半島のほぼ全域が帝国軍の手に落ち、住民の多くは首都エルフィアへ避難することを余儀なくされた。

それでも一部は間に合わず、捕らえられシサフィール港に設置された捕虜収容所に収容された。

 

 

 

 

2032年11月20日 午前8時00分 ペルデア大森林周辺

 

ペルデア大森林、そこはオゼラに住むエルフにとっての聖地であり、聖域であり、そして故郷でもある。

樹齢1,000年を超える巨木が立ち並ぶ、広大な森林。

 

その森が今、侵略者の手によって脅かされようとしていた。

 

約1万にも及ぶ帝国軍が、森の入口に集結している。

 

「森の中にエルフたちが潜んでいる。待ち伏せに注意しつつ、慎重に前進しろ」

 

帝国軍指揮官はそう部下たちに命令すると、彼らは森の中へと入っていった。

 

しかし森の中は、木々が密集しており視界が悪い上、地形は複雑で迷いやすかった。だがそれは帝国軍にとっての話。この森はエルフの庭のようなもの。

彼らは、この森を知り尽くしていた。

 

帝国軍が約500メートル程進んだ時、攻撃が始まった。木の上から次々と矢が降り注ぎ、帝国兵が続々と倒れていく。

 

「うわっ!」

 

「ぎゃあ!!」

 

「敵襲!!」

 

「上だ!木の上に敵がいるぞ!」

 

帝国兵が木の上を見上げるも、葉が茂っていて矢どころか敵の姿さえ見えなかった。

次の瞬間、今度は火球が飛んできた。火球は帝国兵の集団に着弾し、爆発。

数名の兵士が、吹き飛ばされた。

 

「反撃しろ!」

 

帝国兵が弓を構えるも敵の姿が見えない為、どこを狙えばいいのか分からない。

帝国軍が狼狽えている間にも、エルフたちは器用に木の枝から枝へとまるでムササビのように渡り、また別の場所から攻撃を行う。

 

矢と火球がまた降り注ぐ。

 

「くそっ!どこにいるんだ!」

 

「見えない!敵が見えない!」

 

その様子を見て指揮官は決断した。

 

「森に火を放て!全軍に通達。火矢を準備しろ!」

 

「はっ!!」

 

その号令を合図に帝国兵たちが矢に油を塗り、火をつけ始める。

エルフたちはその光景を見て、恐怖した。

 

「まさか…森を焼くつもりか!?」

 

「止めなければ!」

 

エルフたちが止めようとするも、帝国軍は森の外。今出ていけば圧倒的物量で押しつぶされるのは明白だった。間に合わない、そう思っていたその時…轟音と風切り音が辺りに響いた。

 

空を見上げればそこにいたのは、ヘリコプターだった。

アサヒノ国陸軍航空隊所属のMi-24D攻撃ヘリ8機が、森の上空に颯爽と現れた。

 

先頭機のパイロット、ケンジ少佐は地上の帝国軍を見た。

 

「目標を視認。これより攻撃を開始する。いいか?森には一発も当てるなよ!!」

 

彼の命令を合図にガンナーがトリガーを引くと、Mi-24の機首に装備された12.7mm機関銃が火を噴いた。

弾丸の雨あられが、地上の帝国兵に降り注いだ。

 

「うわああああっ!」

 

「て、鉄の箱舟だ!!」

 

「あ、あれが国境線に現れた火を噴く鉄の箱舟!?」

 

「ぎゃあ!!」

 

「ぐぎゃ!!」

 

12.7mm弾の直撃を受けた帝国兵は、身に着けている鎧などまるで無意味と言わんばかりに貫かれ、次々と内臓を辺りに撒き散らしながら倒れていった。

 

別のMi-24がロケット弾を発射。

57mmのS-5ロケット弾が、帝国軍の集団に着弾した。十数名の兵士を地面もろとも吹き飛ばした。

 

「何だ!?何が起きている!?

 

次の瞬間、地上からも轟音が響く。その正体は戦車砲の音だった。

辺りを見渡すと、遠くの方に土煙を立たせながらこちらに近づいてくる何かの姿を見つける。

 

「あれは…一体なんだ!?」

 

それはアサヒノ国陸軍のT-62MV-1戦車だった。

 

12両ものT-62が115mm滑腔砲を一斉に発射。砲弾は帝国軍の陣地に着弾し、爆発。

帝国兵が、四肢を四散させる。

 

「敵襲!敵襲だ!」

 

「退却だ!退却しろ!」

 

「全軍、退却!森から出ろ!」

 

帝国軍はパニックに陥り、指揮官も退却を命令する。

兵士たちは必死に森から逃げ出すが、追撃は容赦なかった。

Mi-24が機銃掃射を続け、T-62は砲撃を行う。

 

帝国軍は約2,000の損害を出して、ようやく森から撤退。

シサフィール港へと逃げ戻っていった。

 

 

 

 

午後2時00分 ペルデア大森林 アサヒノ国陸軍野営地

 

戦闘を終え、アサヒノ国陸軍とオゼラ軍はペルデア大森林前に作った臨時の野営地にて合流。

部隊を率いるアサヒノ国陸軍所属のヒロシ・タカハシ少将は、エルフの代表団と会っていた。エルフ側の代表は、改革派のカエラン・スターウィンド長老だ。

 

「タカハシ少将、救援に感謝します」

 

カエランは、深く頭を下げた。

 

「もう少し遅れていたら、我々の聖なる森は今頃焼き払われていました」

 

「我々オーガ族は友を決して見捨てません。帝国軍による犠牲は出ましたが、それも今日までです」

 

タカハシは真剣な表情で答えると、地図を広げた。

 

「これより、我がアサヒノ国陸軍第7機械化師団はシサフィール半島の奪還作戦を開始する」

 

「我々オゼラ軍も、全力で協力します。できる限りの兵を出しましょう」

 

「よろしくお願いします」

 

カエランが頷くと、それにタカハシは敬礼で答えた。

そして、部下たちに命令を飛ばした。

 

「全軍に通達。反攻作戦を開始する。目標はシサフィール港の奪還だ!」

 

アサヒノ国陸軍とオゼラ軍の反攻が、今、始まろうとしていた。

 

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